平成7年10月30日
公正取引委員会
改正:平成18年1月4日
改正:平成21年9月1日
改正:平成22年1月1日
改正:令和2年12月25日
目次
はじめに
1 本指針の趣旨
(1) 独占禁止法の目的
独占禁止法(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二二年法律第五四号))は、事業者が、私的独占、不当な取引制限、不公正な取引方法等の行為を行うことを禁止するとともに、事業者の結合体である事業者団体が競争制限的な又は競争阻害的な行為を行うことを禁止し、こうした行為が行われた場合にはこれを排除することにより、公正かつ自由な競争を促進することを目的としている。
(2) 本指針の趣旨
本指針は、事業者団体のどのような活動が独占禁止法上問題となるかについて、具体的な活動の例を挙げながら明らかにすることによって、事業者団体による独占禁止法違反行為の防止を図るとともに、その適正な活動に役立てようとするものである。
2 本指針の構成等
(1) 本指針の構成
本指針中、第一では、事業者団体のどのような行為が独占禁止法で禁止されているか、また、違反行為に対してはどのような措置等が採られることとなるか、あるいは事業者団体の適用除外制度等、事業者団体に係る独占禁止法の規定がどのようなものであるかを示している。
第二では、これまでの公正取引委員会の法運用の経験に基づき、事業者団体の実際の活動に即して、主要な活動類型ごとに、独占禁止法の定めるところとの関係について、参考例を挙げながら考え方を示している。
この第二の参考例において、
[1] 「原則として違反する」ものとして挙げられている行為は、これまでの審決における違反行為の内容を整理したところに基づき、行為の内容から見て、それ自体が競争制限的な又は競争阻害的な行為と評価されるものであり、その記述に該当する行為が行われた場合には、独占禁止法の関係規定に原則として違反すると考えられるものである。
[2] 「違反となるおそれがある」ものとして挙げられている行為は、行為の内容、態様等から見て、それ自体で直ちに違反とまでは評価されないが独占禁止法上問題となり得るものである。その記述に該当する行為については、当該事業者団体の市場での位置付け、行為の行われた状況等のいかんによっては違反となるおそれがあり、又は違反行為に伴って行われるおそれがあり、若しくは違反行為につながるおそれがあると考えられるものである。
[3] 「原則として違反とならない」ものとして挙げられている行為は、それ自体では原則として違反とならないと考えられるものである。
(2) 本指針の記述の性格
本指針は、事業者団体の実際の活動と独占禁止法との関係について、できるだけ分かりやすく示そうとしたものであって、本指針中で挙げている参考例はあくまでも類型化された例示である。さらに、参考例等に付された〈具体例〉及び〈違反とされた具体例〉は、各参考例等の記述についての具体的な理解を助けるために、これまでの審決における違反行為を例示として挙げたものであり、また、参考例等に付された〈例〉は、同じく各参考例等の記述についての具体的な理解を助けるために、仮定の行為を例示として挙げたものである。本指針中に示されていないものを含め、事業者団体の具体的な行為が違反となるかどうかについては、独占禁止法の規定に照らして、個々の事案ごとに判断されるものであることはいうまでもない。
(3) 本指針の表記上の注意点
[1] 本指針中で、例えば、「法第八条第一号」と記述している箇所については、独占禁止法第八条第一号を表している。
[2] 本指針の第二において、参考例の記述では、いずれも事業者団体が主体である行為を挙げているが、記述の簡略化のため、「事業者団体が」という主体を示す記述を省略している。
[3] 同じく第二において、参考例、〈具体例〉、〈違反とされた具体例〉及び〈例〉の記述中では、記述の簡略化のため、「事業者団体」を単に「団体」と表記している。
[4] 同じく第二において、参考例等の末尾に「(§8―1、§8―4)」等と記述している箇所(7、8、11、12)については、その記述に関して主に念頭に置いている独占禁止法の規定を、略記号を用いて記したものである。(例えば、§8―1とあるのは、法第八条第一号を略したものである。)
[5] 同じく第二において、「需要者」という用語を用いている箇所(7、8、9)については、商品又は役務を供給する側に立った事業者団体の活動を念頭に置いて記述しているが、商品又は役務の供給を受ける側に立った事業者団体の活動に関しても、該当箇所の記述中の「需要者」を「供給者」と読み替えた上で、同様の考え方が当てはまる。
[6] 同じく第二において、「中小企業者の団体」が行う行為を記述している箇所(10)については、主として中小企業者を構成員とする事業者団体が、構成員である中小企業者を対象として行う活動を、念頭に置いている。
(4) 本指針の策定に伴い、「事業者団体の活動に関する独占禁止法上の指針」(昭和五四年八月二七日公表)は、廃止する。
第一 事業者団体の活動に関する独占禁止法の規定の概要
1 独占禁止法の基本理念と事業者団体
独占禁止法の基本理念は、公正かつ自由な競争を促進し、事業者の創意を発揮させ、事業活動を盛んにし、雇用及び国民実所得の水準を高め、もって一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することにある(法第一条)。
このために、事業者団体による競争の実質的な制限、事業者の数の制限、構成事業者(事業者団体の構成員である事業者をいう。以下同じ。)の機能又は活動の不当な制限、事業者に不公正な取引方法を用いさせるようにする行為等を禁止している(法第八条)。
2 事業者団体とは
「事業者団体」とは、事業者としての共通の利益を増進することを主たる目的とする二以上の事業者の結合体又はその連合体をいい、次に掲げる形態のものを含む(法第二条第二項)。
(1) 二以上の事業者が社員(社員に準ずるものを含む。)である社団法人その他の社団
(2) 二以上の事業者が理事又は管理人の任免、業務の執行又はその存立を支配している財団法人その他の財団
(3) 二以上の事業者を組合員とする組合又は契約による二以上の事業者の結合体
具体的には、○○工業会、○○協会、○○協議会、○○組合といった団体や○○連合会といったこれら団体の連合体が事業者団体に当たる。
ここで「事業者としての共通の利益」とは、構成事業者の経済活動上の利益に直接又は間接に寄与するものをいい、事業者個々の具体的利益であるか、業界一般の利益であるかは問わない。この点から、二以上の事業者の結合体であっても、事業者としての共通の利益の増進を目的に含まない学術団体、社会事業団体、宗教団体等は事業者団体に当たらない。
「主たる目的」とは、いくつかの目的のうち主要なものをいい、定款、規約等で定められている目的にとらわれず、その活動内容等から実質的に判断される。
「二以上の事業者の結合体」という場合の「事業者」には、事業主体のみならず、その利益のために活動する役員、従業員、代理人等も含まれる(法第二条第一項)。したがって、例えば、各会社の役員あるいは部課長をメンバーとする継続的な集まりも、事業者としての共通の利益を増進することを主たる目的とするものであれば事業者団体に当たる。 一定の資格を有する者又は自由業に属する者については、それらの者が業として経済活動を行う場合には「事業者」に該当し、その結合体は事業者としての共通の利益を増進することを主たる目的とするものであれば事業者団体に当たる。
なお、二以上の事業者の結合体又はその連合体であっても、資本又は構成事業者の出資を有し、営利を目的として事業を営むことを主たる目的とし、かつ、現にその事業を営んでいるものは、それ自体事業者であって、事業者団体に当たらないものとされている(法第二条第二項ただし書)。他方、これに該当せず、事業者団体であって、事業者としての性格を併せ持つときに、自ら主体となって事業を行う場合には、当該事業に係る行為に対しては、独占禁止法の事業者に関する規定が適用される。
3 禁止されている行為
法第八条は、事業者団体の次の行為を禁止している。
(1) 「一定の取引分野における競争を実質的に制限すること」(第一号)
事業者団体が、構成事業者が供給し、又は供給を受ける商品又は役務に関し価格の決定、維持若しくは引上げ又は数量の制限を行い、また、構成事業者に係る顧客・販路、供給のための設備等について制限し、あるいは新規事業者の参入制限等を行い、これにより一定の取引分野(市場)における競争を実質的に制限することが、本号に該当する。
(2) 「第六条に規定する国際的協定又は国際的契約をすること」(第二号)
事業者団体が、外国の事業者又は事業者団体と不当な取引制限又は不公正な取引方法に該当する事項を内容とする国際的協定(契約)を締結することで、具体的には、国際的な価格協定や市場分割協定等を締結することが、本号に該当する。
(3) 「一定の事業分野における現在又は将来の事業者の数を制限すること」(第三号)
事業者団体が、一定の事業分野に新たに事業者が参入することを阻止し、又は既存の事業者を排除することによって当該事業分野における事業者の数を制限することが、本号に該当する。
(4) 「構成事業者の機能又は活動を不当に制限すること」(第四号)
事業者団体が、構成事業者の事業活動に関して制限を加え、公正かつ自由な競争を阻害することが、一般的に本号に該当する。
(5) 「事業者に不公正な取引方法に該当する行為をさせるようにすること」(第五号)
事業者団体が、事業者(構成事業者以外の事業者も含まれる。)に、取引拒絶、差別取扱い、排他条件付取引、拘束条件付取引、競争者に対する取引妨害等の不公正な取引方法に該当する行為をさせるように強制し、又は働きかけることが、本号に該当する。
具体的には、非構成事業者と取引しないようにその取引先に圧力を加える行為や安売業者に対し出荷停止等の不利益措置を講じるようその取引先に圧力を加える行為などが挙げられる。
(注) 「不公正な取引方法」とは、法第二条第九項第一号から第五号までの各号の一に該当する行為のほか、同項第六号イからヘまでのいずれかに該当する行為であって、公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち、公正取引委員会が指定するものである。
法第二条第九項第六号に基づき指定された不公正な取引方法には、すべての業種に適用されるものと特定業種にのみ適用されるものとがある。前者は、「不公正な取引方法」(昭和五七年公正取引委員会告示第一五号。以下「一般指定」という。)で指定されている。後者は、特殊指定と呼ばれ、現在、大規模小売業等三業種を対象にして指定されている。
4 排除措置
(1) 法第八条の規定に違反する行為があるときは、公正取引委員会は、事業者団体に対し、当該行為の差止、当該団体の解散その他当該行為の排除に必要な措置を命ずることができる(法第八条の二第一項)。
(2) 公正取引委員会は、事業者団体による法第八条の規定に違反する行為が既になくなっている場合においても、特に必要があると認めるときは、事業者団体に対し、当該行為が既になくなっている旨の周知措置その他当該行為が排除されたことを確保するために必要な措置を命ずることができる(法第八条の二第二項)。
(3) 公正取引委員会は、事業者団体に対し、(1)又は(2)に規定する措置を命ずる場合において、特に必要があると認めるときは、当該団体の役員若しくは管理人又はその構成事業者に対しても、所要の措置を命ずることができる(法第八条の二第三項)。
5 課徴金
事業者団体が、法第八条第一号(不当な取引制限に相当する行為をする場合に限る。)又は第二号(不当な取引制限に該当する事項を内容とする国際的協定又は国際的契約をする場合に限る。)の規定に違反する行為で、商品若しくは役務の対価に係るもの又は商品若しくは役務の供給量、購入量等を実質的に制限することによりその対価に影響することとなるものをしたときは、公正取引委員会は、事業者団体の構成事業者に対し、課徴金の納付を命じなければならない。
課徴金の額は、法第八条の三において準用する法第七条の二等の規定に基づき算定される。
なお、実行期間の終了した日から七年を経過したときは、当該違反行為に係る課徴金の納付を命ずることはできないこととされている。
6 刑罰
(1) 法第八条の規定に違反する行為のうち、第一号、第二号、第三号及び第四号の規定に違反する行為については、それぞれ罰則が規定されている。
ア 法第八条第一号違反の罪は、その法定刑が、五年以下の懲役又は五〇〇万円以下の罰金である(法第八九条第一項第二号)。事業者団体の代表者、従業者等が、その業務等に関して法第八九条の違反行為をしたときは、それらの行為者が前記法定刑により罰せられるほか、当該事業者団体に対しても、五億円以下の罰金刑が科される(法第九五条第一項第一号及び第二項第一号)。
イ 法第八条第二号、第三号及び第四号違反の罪は、その法定刑が、二年以下の懲役又は三〇〇万円以下の罰金である(法第九〇条第一号及び第二号)。事業者団体の代表者、従業者等が、その業務等に関して法第九〇条の違反行為をしたときは、それらの行為者が前記法定刑により罰せられるほか、当該事業者団体に対しても、三〇〇万円以下の罰金刑が科される(法第九五条第一項第四号及び第二項第四号)。
ウ 法第八九条第一項第二号(上記ア)又は第九〇条(上記イ)の違反があった場合に、その違反の計画を知り、その防止に必要な措置を講ぜず、又はその違反行為を知り、その是正に必要な措置を講じなかった事業者団体の役員、管理人又はその構成事業者に対しても、五〇〇万円以下の罰金刑(法第八九条第一項第二号の違反)又は三〇〇万円以下の罰金刑(法第九〇条の違反)が、それぞれ科される(法第九五条の三)。
(2) 上記(1)の罪については、公正取引委員会の告発(注)を待って、これを論ずる(法第九六条)。
(注) 公正取引委員会は、(1)一定の取引分野における競争を実質的に制限する価格カルテル、供給量制限カルテル、市場分割協定、入札談合、共同ボイコットその他の違反行為であって国民生活に広範な影響を及ぼすと考えられる悪質かつ重大な事案、(2)違反を反復して行っている事業者・業界、排除措置に従わない事業者等に係る違反行為のうち、公正取引委員会の行う行政処分によっては独占禁止法の目的が達成できないと考えられる事案について、積極的に刑事処罰を求めて告発を行う方針を明らかにしている(「独占禁止法違反に対する刑事告発及び犯則事件の調査に関する公正取引委員会の方針」平成十七年十月七日公表)。
7 事業者団体に対する独占禁止法の適用除外制度
独占禁止法においては、上記3のように事業者団体の競争制限的な又は競争阻害的な行為が禁止されているが、一定の場合に独占禁止法の適用を除外する制度が設けられている。
小規模の事業者の相互扶助を目的として法律の規定に基づいて設立された協同組合等が、法第二二条各号の要件を備えている場合に、一定の範囲で行う共同経済事業については、原則として、独占禁止法の適用が除外される。これは、単独では大規模の事業者に対抗できない小規模の事業者が、その相互扶助を目的として団結することによって、経済上の有効な競争単位になり得ることが期待されるためである。ただし、これについても、不公正な取引方法を用いる場合又は一定の取引分野における競争を実質的に制限することにより不当に対価を引き上げることとなる場合には、独占禁止法の適用が除外されない(法第二二条ただし書)。さらに、協同組合等が他の協同組合等又は事業者と共同して、価格や数量の制限等を行うことは、独占禁止法の適用除外の範囲外とされる。
なお、その他にも個別の法律に基づく適用除外制度がある。
第二 事業者団体の実際の活動と独占禁止法
(1) 事業者団体の活動は、当該産業に対する社会公共的な要請への対応、消費者理解の増進等多様な目的の下に、教育・研修、情報の収集・提供、政府への要望や意見の表明等種々のものがある。広範な事業者団体の活動の中で、独占禁止法が問題とするのは、事業者間の競争を制限し、又は阻害するおそれがある活動である。
事業者団体の活動が事業者の事業活動に何らかの制限を加える場合には、独占禁止法上の問題を生じないかどうかについて検討する必要がある。
(2) 事業者団体が、事業者の事業活動の諸要素のうち、事業者が供給し、又は供給を受ける商品又は役務の価格又は数量、取引に係る顧客・販路、供給のための設備等重要な競争手段である事項について制限することは、市場メカニズムに直接的な影響を及ぼすものである。また、事業者団体が、新たな事業者の参入を制限し、又は既存の事業者を排除する活動を行うことも、市場メカニズムに直接的な影響を及ぼすものである。
下記「1 価格制限行為」から「5 参入制限行為等」までで具体的に挙げられるような制限行為により市場における競争を実質的に制限する(注)ことは法第八条第一号の規定に違反する。また、市場における競争を実質的に制限するまでには至らない場合であっても、これらの制限行為は原則として法第八条第三号、第四号又は第五号の規定に違反する。
事業者団体によるこのような制限行為が原則として違反とされるのは、その行為の具体的な形態や手段・方法のいかんを問わない。また、同じくこのような行為が原則として違反とされるのは、行為の理由のいかんを問わないのであって、妥当な価格水準にするためとか、商品又は役務の質を確保するためとか、受注の均等化を図るためといった理由によって正当化されるものではない。(「1 価格制限行為」~「5 参入制限行為等」参照)
(注) 「競争を実質的に制限するとは、競争自体が減少して、特定の事業者又は事業者集団がその意思で、ある程度自由に、価格、品質、数量、その他各般の条件を左右することによつて、市場を支配することができる状態をもたらすことをいう」(東京高等裁判所昭和二八年一二月七日判決)。
(3) 事業者団体が、事業者に不公正な取引方法に該当する行為をさせるようにすることは、法第八条第五号の規定に違反する。(「6 不公正な取引方法」参照)
(4) 事業者団体が、商品又は役務の種類、品質、規格等や営業の種類、内容、方法等について制限することは、市場メカニズムに及ぼす影響が上記(2)の価格等に係る制限に比べれば直接的であるとは必ずしもいえないが、法第八条第三号、第四号又は第五号の規定に違反するかどうかが問題となる。また、このような制限行為により市場における競争を実質的に制限し法第八条第一号の規定に違反する場合もあり得る。
事業者団体が、社会公共的な目的等に基づいて構成事業者の事業活動について自主的な基準・規約等を設定し、その利用・遵守を申し合わせるような活動(自主規制)等については、独占禁止法上の問題を特段生じないものも多い。しかしながら、自主規制等の活動の内容、態様等によっては、多様な商品又は役務や営業方法の提供等に係る競争を阻害又は制限することとなる場合もある。(「7 種類、品質、規格等に関する行為」及び「8 営業の種類、内容、方法等に関する行為」参照)
(5) 事業者団体の当該産業に関する諸情報を収集・提供する活動(情報活動)、構成事業者の経営上の知識等に係る相対的な不足を補うため経営上の指導を行う活動(経営指導)や構成事業者の共同による事業活動としての性格を持つ事業(共同事業)の中には、独占禁止法上の問題を特段生じないものも多い。
しかしながら、情報活動については、事業者団体が、価格等重要な競争手段の具体的な内容に関して、構成事業者との間で情報を収集・提供し、又は構成事業者間の情報交換を促進する場合には、その内容等によって、上記(2)のような競争制限行為につながり、又はこれらに伴うものとして独占禁止法上問題となり得る。(「9 情報活動」参照)
経営指導についても、価格等重要な競争手段の具体的な内容について目安に与えるような指導を行うことは、上記(2)のような競争制限行為につながり、又はこれらに伴うものとして独占禁止法上問題となり得る。(「10 経営指導」参照)
また、共同事業については、特に共同販売のように価格等重要な競争手段が共同事業の中で決定されるような事業は、参加事業者の市場シェア等によっては競争制限行為に当たり独占禁止法上問題となり得る。(「11 共同事業」参照)
(6) 事業者に対する公的規制は種々の社会的目的等の下に設定されているが、一方で事業者間の競争に一定の制約を加える効果を伴う。公的規制分野の中で行われるべき競争について、あるいは、規制が緩和された結果回復されるべき競争について、事業者団体が制限することは、上記(2)のような競争制限行為に当たるものであり、是認されない。
また、行政との関係で、例えば公的事業の実施のための業務等が委託され、あるいは行政指導を受けたことを背景に、事業者団体による競争制限行為が行われるようなことがないよう留意を要する。(「12 公的規制、行政等に関連する行為」参照)
(7) なお、事業者団体についても、事業者としての性格を併せ持つときに、自ら主体となって事業を行うに際して、他の事業者と共同して不当な取引制限に当たる行為を行い、あるいは不公正な取引方法を用いるような場合には、それぞれ、法第三条あるいは第一九条の規定に違反することとなる。(「6 不公正な取引方法」等参照)
また、事業者団体の場において、情報交換活動等を通じて、事業者が不当な取引制限をする場合には、それら事業者の行為が法第三条の規定に違反することとなる。(「9 情報活動」参照).
(8) 事業者団体が、競争制限等に関する意思形成に際して、事業者団体としての「決定」を行うが、この「決定」は、事業者団体の正規の意思決定機関の議事を経た明示の決定のようなものに限られず、事業者団体の意思形成と認められるものであれば、慣行等に基づく事実上の決定も含まれる。
(注) 例えば、ある事業者団体で、規程上は意思決定機関でない委員会、部会等における決 定や合意が、慣行上同団体による決定として扱われているような場合には、これら決定や合意は事業者団体の決定に当たる。
(9) 以下では、上記のような観点から、「1 価格制限行為」から「12 公的規制、行政等に関連する行為」までに分けて、主要な活動類型ごとに、それぞれ事業者団体の活動と独占禁止法の定めるところとの関係について、実際の活動例に即して、その考え方を示す。
1 価格制限行為
事業者団体が、次のような価格に関する行為を行い、これにより市場における競争を実質的に制限することは、法第八条第一号の規定に違反する。また、市場における競争を実質的に制限するまでには至らない場合であっても、次のような行為は、原則として法第八条第四号又は第五号の規定に違反する。
1―1 | (価格等の決定) | ○ 構成事業者が供給し、若しくは供給を受ける商品若しくは役務の価格を決定し、又はその維持若しくは引上げを決定すること。 |
---|---|---|
1―2 | (再販売価格の制限) | ○ 事業者が供給する商品について、事業者に再販売価格の拘束(第二条第九項第四号)に当たる行為をさせるようにし、構成事業者に再販売価格の維持を励行させ、再販売価格を決定し、その他再販売価格に関する制限を行うこと。 |
(1) 価格制限行為の具体的な形態や手段・方法
価格等の決定(1―1)又は再販売価格の制限(1―2)(以下この章において「価格制限行為」という。)の行為の具体的な形態や手段・方法は多様 であり、例えば次のようなものがあるが、価格制限行為が原則として違反とされるのは、その行為の具体的な形態や手段・方法のいかんを問わない。
1―(1)―1 (最低販売価格の決定) |
○ 最低販売価格を決定すること。 |
---|---|
1―(1)―2 (値上げ率等の決定) |
○ 値上げ率や値上げ幅を決定すること。 |
1―(1)―3 (標準価格等の決定) |
○ 標準価格、目標価格等価格設定の基準となるものを決定すること。 |
1―(1)―4 (共通の価格算定方式の設定) |
○ 具体的な数値、係数等を用いて構成事業者に価格に関する共通の具体的な目安を与える価格算定方式を設定すること。 |
1―(1)―5 (需要者渡し価格等の決定) |
○ 構成事業者が商品を販売業者に供給する際の価格の設定の基準となる当該商品の需要者渡し価格、小売価格等を決定すること。 |
1―(1)―6 (団体による価格交渉等) |
○ 構成事業者とその取引の相手方との価格に関する交渉を、団体で行い、又は構成事業者に共同して行わせること。 |
(2) 価格制限行為とその実施を確保するための行為
価格制限行為は、その実施を確保するための次のような行為を伴う場合があり、そのような場合には、価格制限行為とこのような行為とが一体として原則として違反となるが、価格制限行為は、このような行為を特に伴わないでも、原則として違反となる(注1)(注2)。
(注1) 以下で記す数量制限行為、顧客、販路等の制限行為、設備又は技術の制限行為、参入制限行為等の競争制限行為の実施を確保するために、例えば、1―(2)―1や1―(2)―3に類似するような行為が行われることがあり得るが、その場合にも、ここで記した考え方が当てはまる。
(注2) なお、価格制限行為の実施を確保するための行為は、それ自体独立で違反となる場合があり(法第八条第四号又は第五号)、例えば、1―(2)―1に記すように、事業者団体が価格制限行為に協力しない事業者に対する取引拒絶を事業者にさせるようにすれば、その行為は、価格制限行為と切り離してそれ自体として見て、法第八条第五号の規定の違反となり得る行為である。
1―(2)―1 (価格制限行為への協力の要請、強要等) |
○ 事業者に対して、価格制限行為の内容に従うよう要請、強要等を行い、又は価格制限行為に協力しない事業者に対して、取引拒絶、団体内部における差別的な取扱い、金銭の支払、団体からの除名等の不利益を課すこと。 |
---|---|
1―(2)―2 (安値品の買上げ) |
○ 価格制限行為の内容の実施を確保するため、安値品の買上げを、団体として行い、又は構成事業者に行わせること。 |
1―(2)―3 (価格制限行為の監視のための情報活動) |
○ 価格制限行為の内容の実施を監視するために、取引価格、取引先等構成事業者の事業活動の内容について、情報の収集・提供を行い、又は構成事業者間の情報交換を促進すること。 |
(3) 価格制限行為における「価格」
価格制限行為における「価格」は、料金、手数料、金利等その名称や形態のいかんを問わず商品又は役務の対価であるものを指しており、割戻し、値引等実質的に価格の構成要素となるものを含む。
〈具体例〉
Xほか自動車整備業者等団体事件(昭和五七年(勧)第一五号)では、構成事業者の自動車継続検査手続代行料金の引上げを決定したことが、法第八条第一項第一号(現行法第八条第一号)違反とされた。
Y家庭用電気器具製造販売業者団体及びZ家庭用電気器具小売業者団体等連合会事件(昭和三二年(勧)第五号)では、Y団体が、家庭用電気器具の小売価格維持を図るため、Z連合会と協議の上、販売業者の利幅及び製造業者が販売業者に供与する歩もどしの率の限度等を決定したことが、法第八条第一項第四号(現行法第八条第四号)違反とされた。
2 数量制限行為
事業者団体が、次のような数量に関する行為を行い、これにより市場における競争を実質的に制限することは、法第八条第一号の規定に違反する。また、市場における競争を実質的に制限するまでには至らない場合であっても、次のような行為は、原則として法第八条第四号の規定に違反する。
2―1 | (数量の制限) | ○ 構成事業者が供給し、又は供給を受ける商品又は役務の数量を制限すること。 |
---|
数量の制限(2―1)の行為の具体的な形態や手段・方法は多様であり、例えば次のようなものがあるが、数量の制限(2―1)が原則として違反とされるのは、その行為の具体的な形態や手段・方法のいかんを問わない。
2―1―1 (原材料の購入制限等による数量の制限) |
○ 原材料の購入量制限、設備の運転制限等により、構成事業者の商品の生産又は販売、役務の提供等に係る数量を制限すること。 |
---|---|
2―1―2 (数量の限度を示唆する基準の設定による数量の調整) |
○ 個別の構成事業者の商品の生産又は販売、役務の提供等に係る数量の限度を具体的に示唆することとなるような基準を設定することにより、数量を調整すること。 |
3 顧客、販路等の制限行為
事業者団体が、次のような顧客、販路等に関する行為を行い、これにより市場における競争を実質的に制限することは、法第八条第一号の規定に違反する。また、市場における競争を実質的に制限するまでには至らない場合であっても、次のような行為は、原則として法第八条第四号の規定に違反する。
3―1 | (取引先の制限) | ○ 各構成事業者が他の事業者の顧客と取引しないことを決定する等により、構成事業者の取引先を制限すること。 |
---|---|---|
3―2 | (市場の分割) | ○ 構成事業者別に、事業活動を行う地域や商品又は役務の種類等の範囲を制限すること。 |
3―3 | (受注の配分、受注予定者の決定等) | ○ 構成事業者間で、受注を配分し、又は受注予定者若しくは受注予定者の選定方法を決定すること。 |
受注の配分、受注予定者の決定等(3―3)に該当するものとしていわゆる入札談合があるが、入札に係る事業者及び事業者団体の活動と独占禁止法との関係に関する考え方については、「公共的な入札に係る事業者及び事業者団体の活動に関する独占禁止法上の指針」(平成六年七月五日公表)を参照されたい。
4 設備又は技術の制限行為
事業者団体が、次のような設備又は技術に関する行為を行い、これにより市場における競争を実質的に制限することは、法第八条第一号の規定に違反する。また、市場における競争を実質的に制限するまでには至らない場合であっても、次のような行為は、原則として法第八条第四号の規定に違反する。
4―1 | (設備の新増設等の制限) | ○ 構成事業者が商品又は役務を供給し、又は供給を受けるための設備について、その新設、増設若しくは廃棄に係る内容又はその稼働量を制限すること。 |
---|---|---|
4―2 | (技術の開発又は利用の制限) | ○ 構成事業者が行う技術の開発又は利用を不当に制限すること。 |
研究開発の共同化及びその実施に伴う取決めに関する独占禁止法上の考え方については、「共同研究開発に関する独占禁止法上の指針(外部サイトへリンク 新規ウインドウで開きます)」(平成五年四月二〇日公表)を参照されたい。
5 参入制限行為等
事業者団体が、次のような参入制限等に関する行為を行い、これにより市場における競争を実質的に制限することは、法第八条第一号の規定に違反する。また、市場における競争を実質的に制限するまでには至らない場合であっても、次のような行為は、原則として法第八条第三号、第四号又は第五号の規定に違反する。
5―1 | (参入制限等) | ○ 例えば、下記5―1―1から5―1―3までに挙げるような行為により、新たに事業者が参入することを著しく困難とさせ、又は既存の事業者を排除すること。 |
---|---|---|
5―1―1 (商品又は役務の供給制限) |
○ 構成事業者や構成事業者の取引先事業者に、特定の事業者に対する商品又は役務の供給の制限をさせるようにすること。 |
|
5―1―2 (商品又は役務の取扱い制限) |
○ 構成事業者や構成事業者の取引先事業者に、特定の事業者が供給する商品又は役務について、その供給を受けることの制限をさせるようにすること。 |
|
5―1―3 (不当な加入制限又は除名) |
○ 団体に加入しなければ事業活動を行うことが困難な状況(注)において、不当に、団体への事業者の加入を制限し、又は団体から事業者を除名すること。 |
(1) 不当な加入制限に当たるおそれが強い行為
事業者団体が、例えば次のような事業者団体への加入条件に係る行為をすることは、上記5―1―3における「不当に、団体への事業者の加入を制限」することに当たるおそれが強いことから、事業者団体に加入しなければ事業活動を行うことが困難な状況(注)においては、違反となるおそれが強い。
5―1―3―(1)(過大な入会金等の徴収) |
○ 社会通念上合理性のない高額に過ぎる入会金や負担金を徴収すること。 |
---|---|
5―1―3―(2)(店舗の数の制限等) |
○ 一定地域における店舗等の数の制限や既存の店舗等と一定の距離を保つことを内容とする加入資格要件を設定すること。 |
5―1―3―(3)(直接的な競合関係にある事業者の了承等) |
○ 団体への加入について、事業の地域、分野等について特に直接的な競合関係にある構成事業者の了承、推薦等を得ることを条件とすること。 |
5―1―3―(4)(国籍による制限) |
○ 「日本国法人」や「日本国籍を有する者」等国籍による制限を内容とする加入資格要件を設定すること。 |
(注) 例えば、事業者団体が、事業活動に重要な影響のある公的事業の実施のための業務を委託された場合に、その実施に際して、非構成事業者を差別的に取り扱うような場合には、「事業者団体に加入しなければ事業活動を行うことが困難な状況」が生じ得る。
(2)加入条件等に係る行為でそれ自体としては問題とならないもの
なお、上記(1)に対して、事業者団体が、その設立目的や事業内容等に照らして合理的な内容の加入資格要件や除名事由を設定することは、それ自体としては、独占禁止法上問題となるものではない。
また、事業者団体が、社会通念上合理的な金額の入会金や合理的な計算根拠に基づいた負担金を徴収すること又は入会金や負担金の金額につき構成事業者間で企業規模等に応じて合理的な格差を設けることは、それ自体としては、独占禁止法上問題となるものではない。
6 不公正な取引方法
事業者団体が事業者に不公正な取引方法に該当する行為をさせるようにすることは、法第八条第五号の規定に違反する。
なお、事業者団体が、事業者としての性格を併せ持つときに、自ら主体となって事業を行うに際して不公正な取引方法を用いれば、法第一九条の規定に違反する。
事業者団体が関与した不公正な取引方法に該当する行為の例を挙げれば、次のようなものがある。
(注) なお、事業者団体が、例えば、事業者に取引拒絶(6―1又は6―2)をさせることにより新たに事業者が参入することを著しく困難とさせ、又は既存の事業者を排除し、あるいは事業者に再販売価格の拘束(6―6)をさせ、これらの行為により、市場における競争を実質的に制限することは、法第八条第一号の規定に違反する(5―1及び1―2参照)。
6―1 | (共同の取引拒絶) | ○ 「正当な理由がないのに、競争者と共同して、次のいずれかに掲げる行為をすること。 |
---|---|---|
6―2 | (その他の取引拒絶) | ○ 「不当に、ある事業者に対し取引を拒絶し若しくは取引に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限し、又は他の事業者にこれらに該当する行為をさせること。」(一般指定第二項) |
6―3 | (取引条件等の差別取扱い) | ○ 「不当に、ある事業者に対し取引の条件又は実施について有利な又は不利な取扱いをすること。」(一般指定第四項) |
6―4 | (事業者団体における差別取扱い等) | ○ 「事業者団体若しくは共同行為からある事業者を不当に排斥し、又は事業者団体の内部若しくは共同行為においてある事業者を不当に差別的に取り扱い、その事業者の事業活動を困難にさせること。」(一般指定第五項) |
6―5 | (排他条件付取引) | ○ 「不当に、相手方が競争者と取引しないことを条件として当該相手方と取引し、競争者の取引の機会を減少させるおそれがあること。」(一般指定第一一項) |
6―6 | (再販売価格の拘束) | ○ 「自己の供給する商品を購入する相手方に、正当な理由がないのに、次の各号のいずれかに掲げる拘束の条件を付けて、当該商品を供給すること。 |
6―7 | (拘束条件付取引) | ○ 法第二条第九項第四号(再販売価格の拘束)又は前項(排他条件付取引)に該当する行為のほか、相手方とその取引の相手方との取引その他相手方の事業活動を不当に拘束する条件をつけて、当該相手方と取引すること。」(一般指定第一二項) |
6―8 | (優越的地位の濫用) | ○ 「自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、次のいずれかに該当する行為をすること。 |
6―9 | (競争者に対する取引妨害) | ○ 「自己又は自己が株主若しくは役員である会社と国内において競争関係にある他の事業者とその取引の相手方との取引について、契約の成立の阻止、契約の不履行の誘引その他いかなる方法をもってするかを問わず、その取引を不当に妨害すること。」(一般指定第一四項) |
7 種類、品質、規格等に関する行為
(1) 種類、品質、規格等の制限行為
商品又は役務の種類、品質、規格等は、事業者間の競争の手段となり得るものであり、事業者団体がこれを制限することにより競争を阻害することは、法第八条第三号、第四号又は第五号の規定に違反する行為である。また、例えば、市場分割の目的で商品の種類を制限すること(3―2参照)等により市場における競争を実質的に制限することもあり得るところであり、このような行為は法第八条第一号の規定に違反する。
(2) 自主規制等、自主認証・認定等
一方、商品又は役務の種類、品質、規格等に関連して、事業者団体が、例えば、生産・流通の合理化や消費者の利便の向上を図るため規格の標準化に係る自主的な基準を設定し、また、環境の保全や安全の確保等の社会公共的な目的に基づく必要性から品質に係る自主規制等や自主認証・認定等の活動を行う場合がある(注1)(注2)(注3)(注4)。このような活動については、独占禁止法上の問題を特段生じないものも多いが、一方、活動の内容、態様等によっては、多様な商品又は役務の開発・供給等に係る競争を阻害することとなる場合もあり、法第八条第三号、第四号又は第五号の規定に違反するかどうかが問題となる。また、自主規制等や自主認証・認定等の形をとっていても、当該活動により市場における競争を実質的に制限することがあれば、法第八条第一号の規定に違反する。
このような活動の法第八条第三号、第四号又は第五号の規定に係る競争阻害性の有無の判断について、自主規制等に関しては、下記の「ア 自主規制等に係る判断」に沿って判断され、また、自主認証・認定等に関しては、このアに「イ 自主認証・認定等に係る判断」に記すところを加えて判断される。
ア 自主規制等に係る判断
自主規制等に関して、その競争阻害性の有無については、
(1) 競争手段を制限し需要者の利益を不当に害するものではないか(§8―4)
及び
(2) 事業者間で不当に差別的なものではないか(§8―3、§8―4、§8―5)
の判断基準に照らし、
(3) 社会公共的な目的等正当な目的に基づいて合理的に必要とされる範囲内のものか
の要素を勘案しつつ、判断される。
なお、以上のような判断基準に照らし自主規制等が競争を阻害することがないようにするとの観点から、自主規制等の活動を行おうとするに際しては、事業者団体において、関係する構成事業者からの意見聴取の十分な機会が設定されるべきであるとともに、必要に応じ、当該商品又は役務の需要者や知見のある第三者等との間で意見交換や意見聴取が行われることが望ましい。
また、自主規制等の利用・遵守については、構成事業者の任意の判断に委ねられるべきであって、事業者団体が自主規制等の利用・遵守を構成事業者に強制することは、一般的には独占禁止法上問題となるおそれがある。(§8―4)
イ 自主認証・認定等に係る判断
自主認証・認定等については、上記アの判断に加えて、以下の点が考慮される。
(1) 自主認証・認定等の利用については、構成事業者の任意の判断に委ねられるべきであって、事業者団体が自主認証・認定等の利用を構成事業者に強制することは、独占禁止法上問題となるおそれがある。(§8―4)
(2) 事業者にとって自主認証・認定等を受けなければ事業活動が困難な状況(注5)において、事業者団体が特定の事業者による自主認証・認定等の利用について正当な理由なく制限することは、独占禁止法上問題となるおそれがあり、その利用については、非構成事業者を含めて開放されているべきである(なお、自主認証・認定等の活動に要する費用等として合理的な負担を非構成事業者等の利用者に求めることは問題とならない。)。(§8―3、§8―4、§8―5)
(注1)
(1) 事業者団体が、正当と考える目的に基づいて、事業者が供給し、又は供給を受ける商品又は役務の種類、品質、規格等に関する自主的な基準・規約等を設定し、その周知・普及促進を行い、又はその利用・遵守を申し合わせ、若しくは指示・要請する等の活動を、この7の記述においては、「自主規制等」という。
(2) 事業者団体が、事業者が供給し、又は供給を受ける商品又は役務が(1)による自主的な基準・規約等に適合することの認証・認定等を行い、認証・認定等した場合に事業者にそれを証する表示を行わせる等の活動を、この7の記述においては、「自主認証・認定等」という。
(注2) 事業者団体が、(1)正当と考える目的に基づいて、技術者等要員の技術、技能、知識等に関する自主的な基準等を設定し、事業者に対してその基準等の周知・普及促進を行い、又はその利用・遵守を申し合わせ、若しくは指示・要請する等の活動を行い、又は(2)その基準等への適合について試験を行い資格を付与する等の活動を行うことがあるが、これについては、それぞれ、上記(注1)の(1)又は(2)に類似した活動として、この7に記述した考え方が当てはまる。
(注3) 事業者団体が、安全・衛生の確保や環境の保全等正当と考える目的に基づいて、構成事業者に係る設備の維持・管理等や技術の内容等に関して、自主的な基準・規約等を設定し、その周知・普及促進を行い、又はその利用・遵守を申し合わせ、若しくは指示・要請する等の活動を行うことがあるが、これについては、上記(注1)の(1)に類似した活動として、自主規制等についてこの7に記述した考え方が当てはまる。
(注4) 事業者団体が、行政機関等公的機関が設定した法的な拘束力のない基準等に係る認証・認定、表示等を受託等して行う場合があるが、これについては、上記(注1)の(2)に類似した活動として、自主認証・認定等についてこの7に記述した考え方が当てはまる。
(注5) 「事業者にとって自主認証・認定等を受けなければ事業活動が困難な状況」が生じ得る場合としては、例えば、構成事業者の市場シェアが極めて高い事業者団体が、行政指導を受ける等して、商品の品質についての自主認証・認定及び表示の事業を行い、これを需要者に積極的に宣伝しており、需要者にとって当該表示の有無が商品選択の重要な判断要素となっているような場合がある。
(3) 違反となるおそれがある行為
上記(2)の考え方を踏まえると、例えば以下のようなものは、違反となるおそれがある。
7―1 | (特定の商品等の開発・供給の制限) | ○ 特定の種類の商品又は役務を構成事業者が開発・供給しないことを決定すること(7―6に該当するものを除く。)。(§8―1、§8―4) |
---|---|---|
7―2 | (差別的な内容の自主規制等) | |
7―3 | (自主規制等の強制) | ○ 構成事業者に、自主規制等を利用若しくは遵守すること又は自主認証・認定等を利用することを、強制すること(当該自主規制等がその内容から競争を阻害するおそれのないことが明白である場合を除く。)。(§8―4) |
7―4 | (自主認証・認定等の利用の制限) | ○ 自主認証・認定等を受けなければ事業活動が困難な状況において、特定の事業者による自主認証・認定等の利用を正当な理由なく制限すること。(§8-3、§8-4、§8-5、§8-1) |
(4) 原則として違反とならない行為
上記(2)の考え方を踏まえると、例えば以下のようなものは、原則として違反とならない。
7―5 | (規格の標準化に関する基準の設定) | ○ 需要者の利益に合致した規格の標準化に関する自主的な基準を設定すること(7―2又は7―3に該当するものを除く。)。 |
---|---|---|
7―6 | (社会公共的な目的に基づく基準の設定) | ○ 環境の保全や安全の確保等の社会公共的な目的に基づいて合理的に必要とされる商品又は役務の種類、品質、機能等に関する自主的な基準を設定すること(需要者の利益を不当に害さないものに限る。また、7―2又は7―3に該当するものを除く。)。 |
7―7 | (規格の標準化等に係る基準についての自主認証・認定等) | ○ 7―5又は7―6に該当する自主的な基準等独占禁止法上問題のない基準・規約等について、その周知や普及促進を行い、又はそれへの適合について自主認証・認定等を行うこと(7―3又は7―4に該当するものを除く。)。 |
8 営業の種類、内容、方法等に関する行為
(1) 営業の種類、内容、方法等の制限行為
営業の種類、内容、方法等は、事業者間の競争の手段となり得るものであり、事業者団体がこれを制限することにより競争を阻害することは、法第八条第三号、第四号又は第五号の規定に違反する行為である。また、例えば、競争制限の目的で販売方法を制限すること等により、市場における競争を実質的に制限することもあり得るところであり、このような行為は法第八条第一号の規定に違反する。
(2) 自主規制等
一方、営業の種類、内容、方法等に関連して、事業者団体が、例えば、消費者の商品選択を容易にするため表示・広告すべき情報に係る自主的な基準を設定し、また、環境の保全や未成年者の保護等の社会公共的な目的又は労働問題への対処のため営業の方法等に係る自主規制等の活動を行う場合がある(注)。このような活動については、独占禁止法上の問題を特段生じないものも多いが、一方、活動の内容、態様等によっては、多様な営業の種類、内容、方法等を需要者に提供する競争を阻害することとなる場合もあり、法第八条第三号、第四号又は第五号の規定に違反するかどうかが問題となる。また、自主規制等の形をとっていても、当該活動により市場における競争を実質的に制限することがあれば、法第八条第一号の規定に違反する。
このような自主規制等の活動の法第八条第三号、第四号又は第五号の規定に係る競争阻害性の有無の判断については、「7 種類、品質、規格等に関する行為」の(2)の「ア 自主規制等に係る判断」に記したところが当てはまる。
(注) 事業者団体が、正当と考える目的に基づいて、事業者の営業の種類、内容、方法等に関する自主的な基準・規約等を設定し、その周知・普及促進を行い、又はその利用・遵守を申し合わせ、若しくは指示・要請する等の活動を、この8の記述においては、「自主規制等」という。
(3) 違反となるおそれがある行為
上記(2)の考え方を踏まえると、例えば以下のようなものは、違反となるおそれがある。
8―1 | (特定の販売方法の制限) | ○ 特定の販売方法を構成事業者が用いないことを決定すること(8―5に該当するものを除く。)。(§8―4、§8―1) |
---|---|---|
8―2 | (表示・広告の内容、媒体、回数の限定等) | ○ 構成事業者の表示・広告について、その内容、媒体、回数等を限定する等、消費者の正しい商品選択に資する情報の提供に制限を加えるような自主規制等を行うこと。(§8―4、§8―1) |
8―3 | (差別的な内容の自主規制等) | |
8―4 | (自主規制等の強制) | ○構成事業者に、自主規制等を利用又は遵守することを、強制すること(当該自主規制等がその内容から競争を阻害するおそれのないことが明白である場合(注)を除く。)。(§8―4) |
(4) 原則として違反とならない行為
上記(2)の考え方を踏まえると、例えば以下のようなものは、原則として違反とならない。
8―5 | (社会公共的な目的等のための基準の設定) | ○ 環境の保全や未成年者の保護等の社会公共的な目的又は労働問題への対処のために合理的に必要とされる営業の種類、内容、方法、営業時間等に関する自主的な基準を設定すること(需要者の利益を不当に害さないものに限る。また、8―3又は8―4に該当するものを除く。)。 |
---|---|---|
8―6 | (消費者の商品選択を容易にする基準の設定) | ○ 虚偽若しくは誇大な表示・広告を排除し、又は表示・広告されるべき事項の最低限度を定める等、消費者の正しい商品選択を容易にすると認められる自主的な基準を設定すること(8―3又は8―4に該当するものを除く。)。 |
8―7 | (取引条件明確化のための活動) | ○ 取引条件明確化のために、モデル契約書の作成、契約の文書化の奨励等を、取引条件自体の内容(注)に関与しないで行うこと(8―3又は8―4に該当するものを除く。)。 (注)「取引条件自体の内容」とは、具体的な価格、支払条件、納期等を指す。 |
9 情報活動
(1) 情報活動の多様性
事業者団体が、当該産業に関する商品知識、技術動向、経営知識、市場環境、産業活動実績、立法・行政の動向、社会経済情勢等についての客観的な情報を収集し、これを構成事業者や関連産業、消費者等に提供する活動は、当該産業への社会公共的な要請を的確にとらえて対応し、消費者の利便の向上を図り、また、当該産業の実態を把握・紹介する等の種々の目的から行われるものであり、このような情報活動のうち、独占禁止法上特段の問題を生じないものの範囲は広い。
(2) 違反となるおそれがある行為
一方、事業者団体の情報活動を通じて、競争関係にある事業者間において、現在又は将来の事業活動に係る価格等重要な競争手段の具体的な内容に関して、相互間での予測を可能にするような効果を生ぜしめる場合がある。このような観点から見て、下記9―1に挙げるような情報活動は、違反となるおそれがある。
このような情報活動を通じて構成事業者間に競争制限に係る暗黙の了解若しくは共通の意思が形成され、又はこのような情報活動が手段・方法となって競争制限行為が行われていれば、原則として違反となる。
すなわち、事業者団体によるこのような情報活動が、1―1(価格等の決定)、1―2(再販売価格の制限)、2―1(数量の制限)、3―1(取引先の制限)、3―2(市場の分割)、3―3(受注の配分、受注予定者の決定等)、4―1(設備の新増設等の制限)、5―1(参入制限等)等に挙げられるような事業者団体による制限行為につながり、又はそれら制限行為に伴う場合は、それぞれ、「1 価格制限行為」から「5 参入制限行為等」までのところ等に記述したように、法第八条の規定に違反することとなる。
なお、事業者団体によるこのような情報活動を通じて、事業者間で、価格、数量、顧客・販路、設備等に関する競争の制限に係る合意が形成され、事業者が共同して市場における競争を実質的に制限する場合には、これら事業者の行為が法第三条の規定に違反する。
9―1 | (重要な競争手段に具体的に関係する内容の情報活動) | ○ 構成事業者が供給し、又は供給を受ける商品又は役務の価格又は数量の具体的な計画や見通し、顧客との取引や引き合いの個別具体的な内容、予定する設備投資の限度等、各構成事業者の現在又は将来の事業活動における重要な競争手段に具体的に関係する内容の情報について、構成事業者との間で収集・提供を行い、又は構成事業者間の情報交換を促進すること。 |
---|
(3) 原則として違反とならない行為
これに対して、例えば以下のようなものは、上記(2)のような競争制限的な効果を持つものではなく、原則として違反とならない。
9―2 | (消費者への商品知識等に関する情報の提供) | ○ 消費者に対して、その利便の向上を図るため、当該産業が供給する商品又は役務について、その正しい使用方法等の情報提供を行うこと。 |
---|---|---|
9―3 | (技術動向、経営知識等に関する情報の収集・提供) | ○ 政府機関、民間の調査機関等が提供する当該産業に関連した技術動向、経営知識、市場環境、立法・行政の動向、社会経済情勢等についての一般的な情報を収集し、提供すること。 |
9―4 | (事業活動に係る過去の事実に関する情報の収集・公表) | ○ 当該産業の活動実績を全般的に把握し、周知するために、過去の生産、販売、設備投資等に係る数量や金額等構成事業者の事業活動に係る過去の事実に関する概括的な情報を構成事業者から任意に収集して、客観的に統計処理し、個々の構成事業者の数量や金額等を明示することなく、概括的に公表すること(価格に関するもの及び1―(2)―3に該当するものを除く。)。 ただし、構成事業者により既に当該構成事業者に係る数量、金額等が公表されている場合には、その数量、金額等を明示しても構わない。 |
9―5 | (価格に関する情報の需要者等のための収集・提供) | ○ 需要者、構成事業者等に対して過去の価格に関する情報を提供するため、構成事業者から価格に係る過去の事実に関する概括的な情報を任意に収集して、客観的に統計処理し、価格の高低の分布や動向を正しく示し、かつ、個々の構成事業者の価格を明示することなく、概括的に、需要者を含めて提供すること(1―(2)―3に該当するものを除く。また、事業者間に現在又は将来の価格についての共通の目安を与えるようなことのないものに限る。)。 |
9―6 | (価格比較の困難な商品又は役務の品質等に関する資料等の提供) | ○ 市場における価格の比較が困難な商品又は役務について、費用項目、作業の難易度、品質等価格に関連する事項についての公正かつ客観的な比較に資する資料又は技術的指標を、需要者を含めて提供すること(事業者間に価格についての共通の目安を与えるようなことのないものに限る。)。 |
9―7 | (概括的な需要見通しの作成・公表) | ○ 当該産業の全般的な需要の動向について、一般的な情報を収集・提供し、又は客観的な事象に基づく概括的な将来見通しを作成し、公表すること(構成事業者に各自の将来の供給数量に係る具体的な目安を与えるようなことのないものに限る。)。 |
9―8 | (顧客の信用状態に関する情報の収集・提供) | ○ 構成事業者の取引の安全を確保するため、顧客の信用状態について客観的な事実に関する情報を収集し、構成事業者に提供すること(構成事業者間に特定の事業者と取引しないこと又は特定の事業者とのみ取引することについての合意を生ぜしめるようなことのないものに限る(注)。)。 (注) 例えば、特定の事業者を不良業者又は優良業者として掲載したリスト(いわゆるブラックリスト等)を作成し、配布することは、このような合意を生ぜしめるおそれがある。 |
10 経営指導
(1) 経営指導の性格
中小企業者は経営に関する知識等において相対的に不足する面があることから、それを補って各事業者がその自主的な判断に基づいて事業の改善を図ることができるよう、中小企業者の団体が経営指導を行うことは、本来独占禁止法上問題となるものではない。
(2) 違反となるおそれがある行為
一方、経営指導の形をとっていても、事業者団体が、例えば次の行為のように、事業者の現在又は将来の事業活動に係る価格等重要な競争手段の具体的な内容について目安を与えるような指導を行うことは、違反となるおそれがある。
事業者団体によるこのような指導が、1―1(価格等の決定)等に挙げられるような事業者団体による制限行為につながり、又はそれら制限行為に伴う場合は、「1 価格制限行為」等に記述したように、法第八条の規定に違反することとなる。
10―1 | (統一的なマークアップ基準等を示す方法による原価計算指導等) | ○ 構成事業者が供給する商品又は役務に係る平均原価、統一的なマークアップ基準等又は所要資材等の標準的な数量、作業量等及び単価を示す方法により、原価計算又は積算の指導を行うこと。 |
---|
(3) 原則として違反とならない行為
これに対して、中小企業者の団体が、例えば次の行為のように、事業者間の競争に影響を与えないような内容の経営指導を行うことは、原則として違反とならない。
10―2 | (知識の普及及び技能の訓練) | ○ 経営に関する一般的な知識の普及及び技能の訓練を行うこと。 |
---|---|---|
10―3 | (個別的な経営指導) | ○ 構成事業者の求めに応じ、個別企業の経営実態等に応じた経営指導を行うこと。 |
10―4 | (原価計算の一般的な方法の作成等) | ○ 原価計算や積算について標準的な項目を掲げた一般的な方法を作成し、これに基づいて原価計算や積算の方法に関する一般的な指導又は教育を行うこと(事業者間に価格や積算金額についての共通の目安を与えるようなことのないものに限る。)。 |
11 共同事業
(1) 共同事業の多様性
事業者団体が、構成事業者の共同による事業活動の性格を持つ事業(以下「共同事業」という。)を行う場合がある。共同事業には、単独では大企業に対抗できない中小企業者による法律に基づく協同組合が有効な競争単位を形成するために行う共同経済事業や事業者団体が構成事業者の本来の事業内容ではない社会文化活動等について行う共同事業等、競争促進的な効果を持つもの又は競争と直ちに関係のないものも多い。他方、共同事業は、その事業内容の範囲において事業者団体が単一の事業主体となって行う事業として市場における競争に影響を与え得るところであり、また、参加する個々の事業者の事業活動の制限につながるおそれもあるところであって、その内容、態様等によっては、法第八条第一号、第三号、第四号若しくは第五号又は第一九条の規定に違反するかどうかが問題となる。
(2) 考え方
事業者団体による共同事業が独占禁止法上問題となるかどうかについては、下記のアからウまでの各事項を総合的に勘案して判断される。
ア 共同事業の内容
共同事業が、その対象である商品又は役務の価格、数量をはじめ競争手段である事項にどのような影響を与えるものであるかが検討される。
例えば、商品又は役務の共同販売、共同購買や共同生産では、共同事業の中でその対象となる商品又は役務の価格、数量や取引先等の重要な競争手段について決定されることとなるため、他の種類の共同事業に比べて独占禁止法上問題となる可能性が高い。
一方、事業者の主たる事業に附随する運送や保管に係る共同事業については、それ自体としては、本来、対象となる商品そのものの価格、数量や取引先に影響を与えるべきものではなく、共同販売等に比べて独占禁止法上問題となる可能性は低いが、共同事業の実施を通じて、構成事業者に係る対象商品の価格又は数量、顧客・販路等の競争手段を制限することにつながらないよう留意する必要がある。
これに対して、当該産業全体への理解増進のための広報宣伝活動、あるいは福利厚生活動や社会文化活動等、市場における競争に対する影響が乏しい性格の共同事業は、原則として独占禁止法上問題とならない。(§8―1、§8―4)
イ 共同事業参加事業者の市場シェアの合計等
共同事業への参加事業者の市場シェアの合計が高い等参加事業者が全体としてみて市場において有力であれば、独占禁止法上問題となる可能性は高くなり、逆に、参加事業者の市場シェアの合計が低い等参加事業者が全体としてみて市場において有力でなければ、独占禁止法上問題となる可能性は低くなる。(§8―1、§8―4)
ウ 共同事業の態様
事業者団体が、共同事業について、構成事業者にその参加若しくは利用を強制し、又はその参加若しくは利用について事業者間で差別的な取扱いをすることは、独占禁止法上問題となるおそれがある。(§8―3、§8―4、§8―5、§8―1、§19)
(3) 違反となるおそれがある行為
上記(2)の考え方を踏まえると、例えば以下のようなものは、違反となるおそれがある。
11―1 | (共同販売等) | ○ 商品又は役務に係る共同販売、共同購買又は共同生産の事業を行うこと(11―4に該当するものを除く。)。(§8―1、§8―4) |
---|---|---|
11―2 | (共同運送・共同保管) | ○ 共同運送や共同保管の事業を実施するに際して、対象となる商品の価格若しくは数量又は構成事業者の取引先に関与すること。(§8―1、§8―4) |
11―3 | (共同事業への参加の強制等) | ○ 共同事業に関して、参加若しくは利用を構成事業者に対して強制し、又は参加若しくは利用について事業者間で差別的な取扱いをすること。(§8―3、§8―4、§8―5、§8―1、§19) |
(4) 原則として違反とならない行為
上記(2)の考え方を踏まえると、例えば以下のようなものは、原則として違反とならない(11―3に該当するものを除く。)。
11―4 | (参加事業者の市場シェアの合計が低い共同事業) | ○ 対象となる商品又は役務に係る参加事業者の市場シェアの合計が市場における競争に影響を与えない程度に低い共同事業を行うこと。 |
---|---|---|
11―5 | (顧客の利便等のための共同事業) | ○ 顧客の利便のための共同駐車場や産業全体の販売増進のための共同展示施設を設置すること。 |
11―6 | (競争への影響の乏しい共同事業) | ○ 当該産業全体への理解増進のための広報宣伝活動、福利厚生活動、社会文化活動等、市場における競争に与える影響が乏しい共同事業を行うこと。 |
12 公的規制、行政等に関連する行為
事業者に対する公的規制は、例えば国民の健康・安全の確保、環境の保全等の社会的な目的や市場メカニズムが有効に機能しない商品・役務についての資源配分の適正化の目的等の下に設定されているが、一方で、事業者の事業活動を制限することにより事業者間の競争に対して一定の制約を加える効果を伴うものである。
特定の政策目的の実現のために公的規制が必要である場合においても、事業者間の競争を制約する効果が最小限にとどめられ、できる限りの競争の機能する余地が残るようにされるべきであり、また、その公的規制分野における事業者間の競争を事業者団体が制限するようなことがあれば、その行為は独占禁止法上問擬される。さらに、公的規制が緩和又は廃止された場合には、その範囲において規制による競争への制約が解消され事業者間の自由な競争が回復されるべきものであることから、その競争を事業者団体が制限するようなことがあれば、その行為は独占禁止法上問擬されることもいうまでもない。
行政機関等から公的事業に関する業務等が事業者団体に委託されるような場合があるが、その業務等の実施に際して、事業者団体が事業者間で差別的な取扱いをする等独占禁止法上問題となり得る行為を行うことがあることに留意する必要がある。
行政機関から、行政遂行の過程で、事業者団体に対して行政指導が行われ、それらを踏まえて事業者団体が活動を行うことがある。このような行政指導が円滑な行政遂行の必要性に基づいて行われるものであるとしても、一方で、行政指導の内容や方法又はそれらを踏まえた事業者団体の活動の内容や態様によっては、事業者団体による競争制限行為につながり得ることに留意する必要がある。
(1) 許認可、届出等に関連する制限行為
事業活動に対して許認可、届出等による公的規制が行われる場合において、事業者団体が、次のような行為により構成事業者に係る価格、設備等について制限し、これにより市場における競争を実質的に制限することは、法第八条第一号の規定に違反する。また、市場における競争を実質的に制限するまでには至らない場合であっても、次のような行為により構成事業者に係る価格、設備等について制限することは、原則として法第八条第四号の規定に違反する。
なお、公的規制による許認可、届出等の制度の下で、各事業者の行政機関への許認可等の申請又は届出について、事業者団体が、一括して行い、又は事業者団体を経由して行わせることは、このような制限行為につながりやすい。
12―1 | (許認可申請等の制限) | ○ 構成事業者の事業活動に係る許認可等の申請又は届出の内容を制限すること。 |
---|---|---|
12―2 | (幅認可料金の幅の中における料金の収受に係る決定) | ○最高額及び最低額の幅をもって許認可等を受けている料金(以下「幅認可料金」という。)について、その幅の中で構成事業者が収受する料金を決定し、又はその維持若しくは引上げを決定すること。 |
12―3 | (認可料金以下の料金の収受に係る決定) | ○ 幅認可料金の最低額又は確定額をもって許認可等を受けている料金における当該確定額を下回る実勢料金による取引が平穏公然としてしかも継続的に行われながら主務官庁により法律的に効果のある措置が相当期間にわたり講じられていないような場合において、当該最低額又は当該確定額以下の金額で、構成事業者が収受する料金を決定し、又はその維持若しくは引上げを決定すること。 |
12―4 | (届出料金等の収受に係る決定) | ○ 届出又は掲示の義務がある料金について、構成事業者が収受する料金を決定し、又はその維持若しくは引上げを決定すること。 |
(2) 公的規制分野における規制されていない事項に係る制限行為
公的規制分野において、価格等の重要な競争手段であって公的規制によって制限されていない事項について、事業者団体が、1―1(価格等の決定)等に挙げられるような制限行為を行う場合には、「1 価格制限行為」等に記述したように、法第八条の規定に違反する(下記〈例〉[1]参照)。公的規制が緩和又は廃止されて規制の対象外となった事項についての制限行為についても同様である(下記〈例〉[2]参照)。
〈例〉
[1] ある事業の分野において、事業者の参入や店舗設置については規制されているが、料金については規制されていないにもかかわらず、団体が、構成事業者間での情報交換等を踏まえて、構成事業者が供給する役務の料金を決定すること。
[2] ある役務に関して料金についての公的規制が撤廃され料金設定が自由となったにもかかわらず、団体が、従来の慣行や構成事業者間での情報交換等を踏まえて、構成事業者が供給する役務の料金を決定すること。
(3) 公的業務の委託等に関連する違反行為
行政機関等から公的事業の実施のための一定の業務等(以下「公的業務」という。)が事業者団体に委託等された場合に、事業者団体が、公的業務の実施に際して、事業者間で差別的な取扱いをする等独占禁止法上問題となり得る行為を行うことがあり、例えば次のような行為は違反となる。
また、事業者の参入等に当たって事業者団体への加入や事業者団体による同意等を求める行政指導が行われるようなことがあれば、このような行政指導自体が独占禁止法との関係において問題を生じさせるおそれのあるものであるが、このような場合には、事業者団体が、事業者団体への加入に関する了承や参入等に関する同意等について、独占禁止法上問題となる行為を行うことがあり、例えば次のような行為は違反となる。
12―5 | (公的業務を伴う事業活動における不当な拘束等) | ○ 公的業務を伴う事業活動を行う場合において、特定の事業者に対してその事業活動を不当に拘束する条件を付ける等不公正な取引方法を用いること。(§19) |
---|---|---|
12―6 | (公的業務の実施等に際しての制限行為) | ○公的業務を実施するに際して、また、行政指導により事業者が参入等に当たって求められた団体への加入に関する了承や参入等に関する同意等に係る判断に際して、非構成事業者等特定の事業者を不当に差別的に取り扱う等して、新たに事業者が参入することを制限し、若しくは既存の事業者を排除し、又は構成事業者の機能若しくは活動を不当に制限すること。(§8―3、§8―4、§8―1) |
(4) 行政指導により誘発された行為
特定の政策目的の実現のために行政機関によって事業者団体に対して行政指導が行われる場合があるが、事業者団体の行為については、たとえそれが行政機関の行政指導により誘発されたものであっても、独占禁止法の適用が妨げられるものではない。
行政指導に関する独占禁止法上の考え方については、「行政指導に関する独占禁止法上の考え方」(平成六年六月三〇日公表)で明らかにしたところであり、公正取引委員会としては、その趣旨を踏まえ、事業者団体の行為に関する行政指導で独占禁止法との関係において問題を生じさせるおそれのあるものについては、関係行政機関と事前に所要の調整を図ることとしている。
(5) 入札談合
公共的な入札において、入札に参加しようとする者等を構成事業者とする事業者団体が、入札に係る受注予定者、最低入札価格等を決定するようなこと(いわゆる入札談合)は、公共的な入札の制度の実質を失わしめるものであるとともに、独占禁止法の規定に違反する行為である。
入札に係る事業者及び事業者団体の活動と独占禁止法との関係に関する考え方については、「公共的な入札に係る事業者及び事業者団体の活動に関する独占禁止法上の指針」(平成六年七月五日公表)を参照されたい。
(6) 国、地方公共団体等に対する要望又は意見の表明
事業者団体が、国、地方公共団体等に対して、法律・制度の内容や運用に関して、一般的な要望又は意見の表明を行うことは、それ自体としては、独占禁止法上問題とならない。
活動類型 | 原則として違反となるもの 等 | 違反となるおそれがあるもの | 原則として違反とならないもの 等 |
---|---|---|---|
1.価格制限行為(注) |
1―1 価格等の決定 |
||
2.数量制限行為(注) |
2―1 数量の制限 |
||
3.顧客、販路等の制限行為(注) |
3―1 取引先の制限 |
||
4.設備又は技術の制限行為(注) |
4―1 設備の新増設等の制限 |
||
5.参入制限行為等(注) |
5―1 参入制限等 |
(2) 加入条件等に係る行為でそれ自体としては問題とならないもの |
|
6.不公正な取引方法 |
6―1 共同の取引拒絶 |
||
7.種類、品質、規格等の関する行為 |
7―1 特定の商品等の開発・供給の制限 |
7―5 規格の標準化に関する基準の設定 |
|
8.営業の種類、内容、方法等に関する行為 |
8―1 特定の販売方法の制限 |
8―5 社会公共的な目的等のための基準の設定 |
|
9.情報活動 |
9―1 重要な競争手段に具体的に関係する内容の情報活動 |
9―2 消費者への商品知識等に関する情報の提供 |
|
10.経営指導 |
10―1 統一的なマークアップ基準等を示す方法による原価計算指導等 |
10―2 知識の普及及び技能の訓練 |
|
11.共同事業 |
11―1 共同販売等 |
11―4 参加事業者の市場シェアの合計が低い共同事業 |
|
12.公的規制、行政等に関連する行為 |
(1) 許認可、届出等に関連する制限行為 |
(6) 国、地方公共団体等に対する要望又は意見の表明 |