ホーム >独占禁止法 >相談事例集 >独占禁止法に関する相談事例集(令和7年度)について(令和7年度・目次) >

6 商品の安全性について、事業者団体が自主認証を行い、推奨マークを付与する取組 

6 商品の安全性について、事業者団体が自主認証を行い、推奨マークを付与する取組 

 事業者団体が、希望する会員を対象に、当該会員が販売する商品の安全性能を認証し、一般消費者に推奨するマークを付与する取組について、独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例

 #自主認証基準、#推奨マーク、#一般消費者の生命・身体の保護及び安全の確保、#商品の安全性能

1 相談者

 X協会(商品Aの製造販売業者を会員とする事業者団体)

2 相談の要旨

⑴  X協会は、商品Aの製造販売業者を会員とする事業者団体である。また商品Aのうちの商品aを我が国で製造販売する事業者の過半がX協会に加入している。


⑵  商品Aは、直接、人の身に着けて使用することにより、人の生命・身体の保護及び安全の確保をするための商品である。商品Aは、事故時の危険の程度が異なることから、利用場面に応じて備えるべき仕様・性能に違いがある。
 商品Aのうちの商品aは、一般消費者が日常生活等において輸送用機械器具Bを利用する際に身に着けて用いる商品であり、一定程度の安全性能が必要とされるものである。商品Aには、他にも、異なる利用場面に応じて、商品aより安全性能が低い商品や、商品aより安全性能が高い商品が流通している。
 商品aを含む商品Aは、全国で販売されている。一般消費者が輸送用機械器具Bを利用する際に、商品aよりも安全性能が低い商品Aを使用することは危険であり、このようなものは商品aに代替しない。
 また、商品aより安全性能が高い商品Aは、商品aと形状及び価格帯が異なるため、これを一般消費者が輸送用機械器具Bを利用する際に用いることは想定されず、代替性は限られている。
 一般消費者は、商品aを選択する際、安全性能のほか、価格及びデザインも重視している。


⑶ア  近年、一般消費者が輸送用機械器具Bを利用する場面において、生命・身体の保護及び安全の確保への関心が高まったため、商品aを新たに購入し使用を始める一般消費者が増加している。国内における商品aの製造販売市場において、X協会会員のシェアは過半を占めているが、需要の増加に伴い、同市場への新規参入事業者(輸入事業者を含む。以下同じ。)の数が増加傾向にある。
 また、商品aの小売市場においては、従来、主に輸送用機械器具Bの専門店が供給を担っていたが、需要増加に伴い、全国の大規模小売店、インターネット上の各種小売店等が相次いで商品aの供給を開始したり、取扱量を増やしたりしている。

  イ (ア) 商品aの安全性能を評価するには、商品aの知識及び一定の安全性能評価試験が必要であり、一般消費者が特定の商品aの安全性能を評価することは困難である。また、商品aには法令による安全基準及び販売規制がない。そこで、商品aの製造販売業者及び流通業者は、商品aを販売する際、民間機関が設定した規格、外国の法令が定める基準等、第三者による基準・規格等(以下「第三者規格」という。)に適合している旨を表示することが多い。第三者規格の中には、事業者及び一般消費者に普及している有力なものが複数ある。

  (イ) しかしながら、X協会が調査したところによると、現在市場で販売されている商品aの中には、一般消費者が日常生活等において輸送用機械器具Bを利用する際に身に着けて用いるのに相応の安全性能を満たさないものや、実際には異なるにもかかわらず、あたかも第三者規格に適合している安全な商品であるかのように、誤解を招く表示が付されたものがあったとのことであり、X協会は、このような商品が販売されている状況は、一般消費者の安全及び合理的な商品選択を妨げるおそれがあると考えている。


⑷  そこでX協会は、会員が製造販売する商品aについて、①一般消費者が、日常生活等において輸送用機械器具Bを利用する際に身に着けて用いるのに相応の安全性能を備えていることを確認し、安心して購入できるようにするため、個々の一般消費者の安全上のニーズに合った合理的な商品選択に資する情報を提供すること及び②消費者安全の向上のため、X協会が行う商品aの普及啓発等の活動の費用を捻出することを目的として次の取組(以下「本件取組」という。)を検討している。

  ア  X協会が、商品aの安全性能について、客観的、明確かつ一般的な内容の認証基準(以下「本件認証基準」という。)を定めて、公表する。

  イ  X協会は、会員が希望すれば、会員が製造販売する商品aについて、本件認証基準に適合しているか否かを、会員が提出する仕様書、試験結果等の書類に基づいて審査を行う。審査の結果、当該商品が本件認証基準に適合しているものと認められた場合には、X協会がこれを証し、一般消費者に推奨することを示すマーク(以下「本件マーク」という。)を付与する。

  ウ  X協会は、会員が希望する場合には本件マークのラベルを1枚数円程度の価格で販売する。会員は同ラベルを商品aに貼付して販売することができる。X協会は本件マークのラベルの売上げを、商品aの使用促進、本件マーク及び有用な第三者規格の普及啓発活動の費用に充てる。

  エ  X協会は、会員から希望があれば、会員が製造販売する商品aが本件認証基準に適合しているかについて特段の制限を設けることなく速やかに審査し、審査に当たっては正当な理由なく差別的運用をすることはないとしている。他方、非会員は本件取組の対象外である。

  オ  X協会は、会員に対し、本件認証基準及び本件マークの利用を強制せず、第三者規格を利用することを制限することもない。


  本件取組は、独占禁止法上問題となるか。


○本件取組の概要図

3 独占禁止法上の考え方

⑴  事業者団体が、例えば、環境の保全や安全の確保等の社会公共的な目的に基づく必要性から、品質に係る自主規制等や自主認証・認定等の活動を行う場合がある。このような活動については、独占禁止法上の問題を特段生じないものも多いが、一方、活動の内容、態様等によっては、多様な商品又は役務の開発・供給等に係る競争を阻害することとなる場合もあり、法第8条第3号、第4号又は第5号の規定に違反するかどうかが問題となる。また、自主規制等や自主認証・認定等の形をとっていても、当該活動により市場における競争を実質的に制限することがあれば、法第8条第1号の規定に違反する。

   このような活動の法第8条第3号、第4号又は第5号の規定に係る競争阻害性の有無の判断について、自主規制等や自主認証・認定等に関しては、以下の基準から判断される。

   その競争阻害性の有無については、

  ・ 競争手段を制限し需要者の利益を不当に害するものではないか

  ・ 事業者間で不当に差別的なものではないか

  の判断基準に照らし、

  ・ 社会公共的な目的等正当な目的に基づいて合理的に必要とされる範囲内のものか

  の要素を勘案しつつ、さらに、以下の点が考慮される。

  ・ 自主認証・認定等の利用について、事業者団体が自主認証・認定等の利用を構成事業者に強制しないか

  ・ 事業者にとって自主認証・認定等を受けなければ事業活動が困難な状況において、事業者団体が特定の事業者による自主認証・認定等の利用について正当な理由なく制限しないか

   (事業者団体ガイドライン第2-7種類、品質、規格等に関する行為、(1) 種類、品質、規格等の制限行為、(2)自主規制等、自主認証・認定等)


⑵  前記2⑵のとおり、本件取組の対象となる商品aを含む商品Aは全国で販売されている。また、商品Aのうち、商品aよりも安全性能が低いものは商品aに代替しない。また、商品Aのうち商品aより安全性能が高いものは、商品aと形状及び価格帯が異なるため、代替性は限られる。したがって、本件取組は、全国における商品aの製造販売市場における現在又は将来の競争に影響を与える可能性があると考えられるため、当該市場に与える影響について検討する。


⑶ア  本件取組は、自主的に本件認証基準を策定し、会員が希望する場合にのみ、任意に認証する取組であるところ、

  (ア) X協会は、会員が販売する商品aの価格・数量・取引先又は種類・品質、規格、販売方法等の競争手段を制限しないこと

  (イ) 認証を受けた会員のうち希望者は、本件マークのラベルを購入するが、その代金は1枚数円程度と極めて安価であり、ラベル代金が商品aの販売価格に転嫁されたとしても、販売価格に占めるラベル代金の割合は非常に小さいことから、会員の販売価格にほとんど影響しないと考えられること

  (ウ) 商品aの小売業者は、本件取組後も、本件マークの有無にかかわらず、消費者のニーズに合った安全性能、価格及びデザインの商品aを品揃えする必要があり、消費者は好みの商品aを選択できること

   から、競争手段を制限し、需要者の利益を不当に害するものでないと考えられる。

  イ  本件取組で策定する本件認証基準の内容は客観的、明確かつ一般的に定められることから、特定の商品、仕様又は第三者規格を不当に排除するものではなく、X協会は、審査に当たって正当な理由なく特定の会員に差別的な運用をすることもないと考えられる。

  ウ  本件取組の目的は、消費者の合理的な商品選択に資する情報を提供すること及び消費者安全の向上のため商品aの普及啓発等の活動に係る費用を捻出することであり、いずれも正当な目的であって、本件取組の内容は当該目的のために合理的に必要とされる範囲内のものであると考えられる。

  エ  本件取組では、会員は、本件認証基準又は本件マークの利用を強制されず、会員は、引き続き自由に第三者規格を利用して、商品aの販売を行うこともできる。

  オ  本件取組は、会員に限定して行う取組であるところ、今後、本件認証基準が特に有力な規格となり、本件マークを付した商品aでなければ販売することが一般に困難な状況となった場合には、本件認証基準の利用を会員のみに制限することは、非会員の商品aの製造販売分野における事業活動を困難にさせるおそれがある。
 しかしながら、現状においては、

  (ア) X協会の会員の製造販売市場におけるシェアは過半を占めているとはいえ、商品aに係る需要が拡大し、新規参入事業者の数が増え、競争が活発化していること

  (イ) 複数の有力な第三者規格が存在し、非会員が利用可能であること

  (ウ) 一般消費者は商品aについて、安全性能に加え価格及びデザインも重視しており、消費者向けに広く販売している小売業者が販売している多様な商品aから、好みのものを探して購入できる状況にあること

  (エ) 非会員のX協会への加入が不当に制限されているものでもないこと

    を踏まえると、直ちに非会員の商品aの製造販売分野における事業活動を困難にさせるおそれがあるとはいえないと考えられる。


⑷  以上から、本件取組は、独占禁止法上問題となるものではない。

4 回答

  本件取組は、独占禁止法上問題となるものではない。 

ページトップへ