オフィス向け商品の製造販売業者等を会員とする団体が、会員の知的財産の保護、労務費の適切な負担及び労働環境の是正を目的として、会員による需要者への営業方法の適正化に向けた抽象的な推奨事項を示す指針を作成する取組について、独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例
#営業方法に係る指針の策定、#人材確保、#価格転嫁対策、#知的財産の保護、#労務費の適切な負担、#労働環境の改善
1 相談者
X協会(オフィス向け商品Aの製造販売業者等を会員とする団体)
2 相談の要旨
⑴ X協会は、オフィス向け商品Aの製造販売業者等を会員とする団体である。国内のオフィス向け商品Aの売上高に占めるX協会の会員の売上高の割合は約80パーセントである。
⑵ オフィス向け商品Aは、オフィスで業務を行うために必要な商品であり、置かれるオフィスのレイアウト、そのオフィスで働く従業員の働き方、生産性にも関わるものである。
オフィス向け商品Aの需要者は、多くの場合、オフィス向け商品Aの購入先をコンペティション方式[1](以下「コンペ」という。)で選定する。X協会の会員は、コンペ主催者である需要者に対して、当該需要者向けにカスタマイズした上でオフィス向け商品Aの配置・レイアウトのデザイン等に係る提案書の作成も行っており、当該提案書には、X協会の会員の知的財産として保護されるべきデザインやノウハウも多数盛り込まれている。コンペ主催者である需要者は、オフィス向け商品Aの購入先について、価格及び当該提案内容の両面から選定を行っている。
また、オフィス向け商品Aの需要者は、オフィス向け商品Aの納入日時に土日や深夜を希望することが多い。
[1] 仕事を発注する際に、受注を希望する複数の事業者から提案を募り、それらの提案内容を見た上で応募者の中から発注先を決める方式。
⑶ X協会の説明によれば、オフィス向け商品Aの営業活動における慣行について、以下のような課題があるとのことである。
ア X協会の会員は、コンペに参加する際、知的財産として保護されるべき自社のデザインやノウハウを提案書に多数盛り込み、コンペ主催者である需要者へ提供している。しかし、多くの場合、これらのデザインやノウハウは、コンペの結果にかかわらず、コンペ主催者である需要者が、提案者であるX協会の会員に無断で、提案書の内容の中から無償で自由に利用できる状況となっているものの、X協会の会員は、コンペに参加するために当該状況をやむなく受け入れている。
イ X協会の会員は、コンペ参加時の提案書の作成に当たり、オフィス向け商品Aの配置・レイアウトのデザイン等に係る提案を盛り込む必要があるため、社内又は社外のデザイナーを関与させ、それに対する費用も支払っている。しかし、多くのコンペにおいては、コンペに参加するための費用はコンペ主催者である需要者に請求しないことが参加するための条件とされており、当該条件につき交渉の余地もないところ、X協会の会員は、コンペに当選した場合はコンペ参加時の提案書を踏まえたより詳細な提案書を作成することとなるため、その作成費用に、コンペ参加時の提案書の作成に要したデザイナーの労務費等も含めて需要者に請求できるが、コンペに落選した場合は、コンペ参加時の提案書の作成費用を需要者に請求できる機会がなく、提案書の作成に要したデザイナーの労務費等を自己負担せざるを得ない状況にある。特に、昨今ではコンペで購入先を選定する需要者が急増しており、X協会の会員の負担は増大傾向にある。
ウ 一般に、オフィス向け商品Aの納入等は、需要者の希望により休日や深夜に行われることが多い。その結果、X協会の会員においては、従業員の深夜労働や休日出勤が常態化しているところ、このような慣行は就職先としてオフィス向け商品A業界自体が敬遠される要因にもなっており、人材確保が困難になっていることにもつながっている。
⑷ X協会は、前記⑶の営業活動における慣行の課題の改善に資するようにするため、会員による需要者に対するオフィス向け商品Aに係る営業方法において推奨される事項を示す以下の内容の指針(以下「本件指針」という。)を策定し、会員に周知して参照してもらうこと(以下「本件取組」という。)を検討している。
ア コンペに提出した提案書に盛り込んだデザインやノウハウの適切な保護
イ コンペに提出した提案書の作成に要したデザイナーの労務費等の適切な負担
(※費用の具体的な水準を示すものではない。)
ウ 深夜・休日の納入等の是正
本件指針の利用の要否は会員各社が任意に判断するものとし、X協会は、本件指針の利用・遵守を会員に強制しない。会員は、本件指針を利用する場合でも、営業活動における慣行の適正化を目指して、需要者との間で、取引実態に応じた交渉を個別に行う。
本件取組は、独占禁止法上問題となるか。
○本件取組の概要図
3 独占禁止法上の考え方
⑴ 営業の種類、内容、方法等に関する自主的な基準・規約等を設定し、その周知・普及促進を行い、又はその利用・遵守を申し合わせ、若しくは指示・要請する等の活動を行う場合、当該活動は事業者団体ガイドライン第2-8⑵に規定される「自主規制等」に当たる。事業者団体が社会公共的な目的又は労働問題への対処のため営業の方法等に係る自主規制等の活動を行うことについては、独占禁止法上の問題を特段生じないものも多い。
一方、活動の内容、態様等によっては、多様な営業の種類、内容、方法等を需要者に提供する競争を阻害することとなる場合もあり、独占禁止法第8条第3号、第4号及び第5号の規定に違反するかどうかが問題となる。
このような活動の独占禁止法第8条第3号、第4号又は第5号の規定に係る競争阻害性の有無の判断については、以下の基準から判断される。
・ 競争手段を制限し需要者の利益を不当に害するものではないか
・ 事業者間で不当に差別的なものではないか
の判断基準に照らし、
・ 社会公共的な目的等正当な目的に基づいて合理的に必要とされる範囲内のものか
また、自主規制等の遵守については、構成事業者の任意の判断に委ねられるべきであって、事業者団体が自主規制等の遵守を構成事業者に強制することは、一般的には独占禁止法上問題となるおそれがある(事業者団体ガイドライン第2-8⑵(自主規制等))。
⑵ 本件取組は、オフィス向け商品Aに係る営業方法についての指針を策定し、会員に周知するものであることから、オフィス向け商品Aの販売市場における現在又は将来の競争に影響を与える可能性があると考えられるため、当該市場に与える影響について検討する。
⑶ 本件取組は、事業者団体がその会員に対し、その営業活動において推奨される事項を示すものであり、事業者団体による自主規制等の活動であるところ、
ア 本件指針は、会員に対し、価格や取引条件に関する基準を具体的に示したものではなく、会員による需要者への営業方法の適正化に向けた抽象的な推奨事項を示したものにすぎず、また、会員と需要者との間の個別具体的な取引条件は、各会員が独自に検討し、個別交渉により決定するものであることから、本件取組は、会員の競争手段を制限し、需要者の利益を不当に害するものであるとはいえないこと
イ 本件指針は、全ての会員が同等に参照して利用の要否を判断可能なものであり、会員間で不当に差別的な内容を含むものではないこと
ウ 本件取組は、会員の知的財産(デザイン・ノウハウ)を適切に保護し、デザイナー等の労務費の適切な負担を促し、会員の従業員等の労働環境を是正することを目的とするものであり、これらはいずれも正当な目的に基づくものであること
エ 本件指針が対象とする事項は、いずれも前記ウの正当な目的に関わる営業方法の範囲に限られており、会員による需要者に対する営業方法を不必要に広範に制限するものではなく、前記ウの正当な目的に基づいて合理的に必要とされる範囲内のものであること
オ X協会は、本件指針の利用・遵守を会員に強制しないこと
から、本件取組は、会員の機能又は活動を不当に制限するものではない。
⑷ 以上から、本件取組は、独占禁止法上問題となるものではない。
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本件取組は、独占禁止法上問題となるものではない。