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3 音楽配信サービスにおけるコンテンツプロバイダーによる価格の指定

3 音楽配信サービスにおけるコンテンツプロバイダーによる価格の指定

 インターネットを用いた音楽配信事業において,コンテンツプロバイダーが,ポータルサイトを提供するプラットフォーム事業者との間で,コンテンツプロバイダーが指示する価格で音楽配信することを定めた委託販売契約を締結することは,直ちに独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例

1 相談者

 A社(コンテンツプロバイダー)

2 相談の要旨

(1) A社は有力な音楽コンテンツを多数保有する事業者である。
 B社は,インターネットにおけるポータルサイトを運営するプラットフォーム事業者で,ポータルサイト市場におけるシェアは10%に満たない。

(2) A社は,B社と以下のような委託販売契約を結び,楽曲を配信することを計画しているが,独占禁止法上問題ないか。

ア A社は,B社を通じて自らの有する楽曲をB社の所有するサーバーにアップロードする。

イ B社は,A社の指示する価格でB社のポータルサイトから楽曲を配信する。

ウ A社は,B社の課金システムを通じて,当該楽曲をダウンロードした利用者から料金を徴収する。

エ A社は,B社に対して,サーバー及び課金システムの使用料を支払う。

(注1) コンテンツプロバイダーとは,インターネットを通じて,楽曲やニュース等(コンテンツ)を提供する事業者のことをいう。

(注2) ポータルサイトとは,インターネットの入り口となるウェブサイトのことをいう。検索エンジンやリンク集を核として,ニュースなどの情報提供サービスやチャット等の機能を無料で提供して利用者数を増やし,広告や音楽配信等の有料サービスなどで収入を得る。

(注3) プラットフォーム事業者とは,楽曲等のコンテンツをインターネットを通じて配信するために必要な各種サービス(課金・決済,契約処理,広告宣伝等)を提供している事業者のことをいう。

3 独占禁止法上の考え方

(1) メーカーが流通業者の販売価格(再販売価格)を拘束することは,原則として不公正な取引方法に該当し,違法となる。ただし,実質的にみてメーカーが販売していると認められる場合には,通常,違法とはならない。[流通取引慣行ガイドライン 第2部第1-2(6)[2]]

(2) 本件相談は,A社がB社に対して,自らの有する楽曲を利用者に配信する際の販売価格を指示するものであるが,A社はB社に対して,A社の提供する楽曲のB社サーバーへのアップロード及び代金徴収業務のみを委託するものであり,実質的にはA社が自らの有する楽曲を利用者に直接提供するものと認められ,直ちに独占禁止法上問題となるものではない。

(3) ただし,例えば,B社が自社の音楽配信サービスへの利用者の誘引を目的として,利用者に対して,自らの計算において配信料金の一定割合をキャッシュバックし,実質的に配信価格を引き下げるサービスなどを提供することまでをA社が禁止することは,プラットフォーム事業者間の競争を不当に阻害し,独占禁止法上問題となるおそれがある。

4 回答の要旨

 A社が,B社との間で,A社が指示する価格で音楽配信することを定めた委託販売契約を締結することは,直ちに独占禁止法上問題となるものではない。
 ただし,B社が自らの判断で,実質的に配信価格の引下げにつながるサービスを提供することまでをA社が制限することは,事業活動を不当に拘束するものであり,独占禁止法上問題となるおそれがある。

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