メーカーが,販売店に対しインターネット販売において小売価格を表示しないよう制限することは,独占禁止法上問題となると回答した事例。
1 相談者
A社(工作機械用消耗品メーカー)
2 相談の要旨
(1) A社は,工作機械用消耗品メーカーであり,市場における地位は1位・シェア30%である。
(2) A社は,販売店を通じて工作機械用消耗品をユーザーに販売している。今回,一部の販売店がインターネット販売を開始したいと希望しているが,仮に,販売店がホームページ上に小売価格を掲載すれば,ユーザーは複数の販売店の価格情報を知ることができるようになり,この情報を基に取引先を切り替える可能性がある。そこで,A社は,販売店間でユーザーの争奪が行われることを回避するために,販売店がホームページ上に小売価格を掲載しないよう制限することとしたいが,独占禁止法上問題ないか。
3 独占禁止法上の考え方
(1) メーカーが小売業者に対して販売方法を制限することは,商品の安全性の確保,品質の保持,商標の信用の維持等,当該商品の適切な販売のための合理的な理由が認められ,かつ,他の取引先小売業者に対しても同等の条件が課せられている場合には,それ自体は独占禁止法上問題となるものではない。
しかし,メーカーが小売業者の販売方法に関する制限を手段として,小売業者の販売価格,競争品の取扱い,販売地域,取引先等についての制限を行っている場合には,排他条件付取引,再販売価格の拘束,拘束条件付取引の観点から違法性の有無が判断される。[流通・取引慣行ガイドライン第2部第2-5(小売業者の販売方法に関する制限)]
(2) 本件については,A社が,販売店間においてユーザーの争奪が行われることを回避するために,販売店がホームページ上に小売価格を掲載することを制限するものであり,合理的な理由があるものとは考えられず,当該商品をめぐる価格競争が阻害されるおそれがあると考えられるので,拘束条件付取引として独占禁止法上問題となると考えられる。
4 回答の要旨
A社が,販売店に対しインターネット販売において小売価格を表示しないよう制限することは,独占禁止法上問題となる。