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8 事業者団体による会員の取引条件の決定への関与

8 事業者団体による会員の取引条件の決定への関与

 燃料の卸売業者を会員とする団体が,大規模災害時に会員が燃料を供給する際の取引条件の決定に関与することは,独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例

1 相談者

 X協会(燃料Aの卸売業者を会員とする団体)

2 相談の要旨

(1) X協会は,燃料Aの卸売業者を会員とする団体であり,国内の燃料Aの卸売業者のすべてが加盟している。

(2) 地方公共団体Yは,大規模災害時であっても,自らの行政区域に所在する重要な施設に,確実に燃料Aが供給される体制を構築することを希望している。X協会は,地方公共団体Yからの要請を受けて,地方公共団体Yとの間で,大規模災害時における燃料Aの安定供給に関する協定書(以下「協定書」という。)を締結した。
 協定書では,安定供給の実施に必要な事項については,X協会と地方公共団体Yで協議の上,別途定めることとなっている。

(3) X協会と地方公共団体Yは,地方公共団体Yの行政区域に所在する施設のうち特に緊急性が高いと認める施設(以下「緊急供給施設」という。)を協議の上決め,今後,両者の間で,大規模災害時において,緊急供給施設に燃料Aを供給する事業者,当該燃料Aの供給価格及び輸送料金並びにその支払方法について協議することとしている。

(4) X協会は,地方公共団体Yに対して,以下について提案することを検討している。

ア X協会が,緊急供給施設に燃料Aを供給する事業者を会員の中から振り分ける。振分けは,緊急供給施設に供給されない事態をできるだけ回避するため,緊急供給施設及び会員の所在地,緊急供給施設が必要とする燃料Aの種類等を勘案し,緊急供給施設ごとに第一順位及び第二順位の会員を決めることによって行う。

イ 緊急供給施設に対する燃料Aの供給価格は,すべての緊急供給施設について,市場価格に連動する同一の算定式によって定める。

ウ 協定に基づき会員が燃料Aを供給する期間は,大規模災害発生後の交通等の混乱が終息し,緊急供給施設の平常時の取引先である燃料Aの小売業者からの供給が可能となるまでの間のおおむね3~7日以内とする。

(5) 緊急供給施設は,第一順位又は第二順位の会員から供給を受ける義務はなく,地方公共団体Yから提示された会員以外の卸売業者又は平常時の取引先である燃料Aの小売業者から供給を受けることは制限されていない。

 このようなX協会の取組は,独占禁止法上問題ないか。

3 独占禁止法上の考え方

(1) 本件は,X協会が,会員である燃料Aの卸売業者の販売活動に関与するものであり,また,当該関与が,燃料Aの小売業者の販売活動にも影響を与える可能性があり,これが,会員である燃料Aの卸売業者間の競争や燃料Aの小売業者間の競争に悪影響を及ぼす場合には,独占禁止法上問題となる(独占禁止法第8条第1号,第3号又は第4号)。

(2) 本件X協会の取組は,緊急供給施設に燃料Aが確実に供給される体制を構築するという社会公共的な目的に基づくものであって

ア 緊急供給施設に対する会員による燃料Aの供給は,会員の本来的な事業活動ではなく,また,大規模災害時の3~7日間という短期間に限り供給されるものであるため,会員の競争手段を直接的に制限するものではないこと

イ 緊急供給施設ごとの会員の振分方法及び供給価格の設定方法は,目的に基づいて合理的に必要な範囲内のものであること

ウ 特定の会員に対して差別的なものではないこと

から,燃料Aの卸売業者の事業活動を不当に制限するものではない。

(3) また,緊急供給施設に対する会員による燃料Aの供給は短期間に限定されていること,緊急供給施設が平常時の取引先である小売業者から供給を受けることが制限されていないことからすれば,燃料Aの小売業者が排除されたり,燃料Aの小売販売の分野への新規参入が阻害されたりするおそれはない。

4 回答の要旨

 X協会が,大規模災害時に会員が燃料Aを供給する際の取引条件の決定に関与することは,独占禁止法上問題となるものではない。

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