ホーム >報道発表・広報活動 >杉本前委員長講演等 >

平成31年 年頭所感(平成31年1月)

平成31年 年頭所感(平成31年1月)

1.新年明けましておめでとうございます。
 昨年3月に公正取引委員会委員長に再任され,引き続きの任に当たることとなりました。改めまして競争政策の運用に当たり,御指導御鞭撻及び御支援の程,よろしくお願い致します。

 私は委員長就任当初から,新時代の競争政策ということを標榜して参りました。我が国経済は人口減少・少子高齢化といった人口動態の変化に直面し,従来型の需要は成熟期を越え,飽和しつつあるという現実に直面しております。こうした中では,イノベーションにより,新しい製品・サービスや事業を形にすることで,需要増大を実現することが,経済を発展させ雇用を確保し,消費者の利益を高めていく上での鍵であると考えられます。したがって,新時代の競争政策とは,自由で公正な競争の障害となる原因を排除し,イノベーションを促進する環境を整えることではないかと考えています。そして,事業者が常に消費者の潜在的ニーズの発掘・開拓・充足に挑戦し続け,かつての成功体験といったくびきから逃れ,既存の事業環境・慣行を革新することを通じて,コンピタンスを高め,企業価値を高めていくための環境を整えることが,現在の日本に求められている競争政策の役割であると考えております。

 この基本的な考え方の下で,本年においても,カルテル・入札談合等への厳正な対処や新たに導入された確約制度の活用など独占禁止法の執行及び競争政策を積極的に遂行していきたいと思います。特に,平成29年に取りまとめられた「独占禁止法研究会報告書」を踏まえ,課徴金の算定方法の硬直性に起因する問題に対応するとともに,事業者の調査協力インセンティブを高めるように,課徴金制度を見直すこと等を内容とする独占禁止法の改正について検討を進めているところです。

2.経済のデジタル化に伴い,プラットフォーマーが,我々の生活・事業活動にも大きな影響力を持つようになっていますが,そのようなプラットフォーマーの行為がどのような場合に競争を阻害していることとなるのかについて,強い関心を持って監視していく必要があります。

 昨年は,経済産業省及び総務省と共に,デジタル・プラットフォーマーを取り巻く各国制度の研究・評価や我が国における課題と対応等について検討を行い,プラットフォーマー型ビジネスの台頭に対応したルール整備の論点である基本原則を策定・公表しました。公正取引委員会においては,これを踏まえ,プラットフォーマーに係る取引慣行を中心に,競争政策上の問題点等について実態調査を行うこととしております。

3.企業活動のグローバル化という観点では,公正取引委員会は他の競争当局と連携を図りながら,グローバルスタンダードに基づいた競争政策を進めていかなければならないと考えております。

 公正取引委員会は,昨年11月に,東京において,競争当局の国際的な集まりであるICN(International Competition Network)企業結合ワークショップを主催し,デジタル経済における企業結合審査の在り方や,グローバル化が企業結合審査にもたらす課題等について議論を行いました。本年も,引き続き,OECDやICNの会合,競争当局間の二国間の会合などを通じて,他の競争当局との情報交換や協議を行ってまいりたいと考えております。

4.このほかにも,新規参入者等による新たなチャレンジが阻害されていないか,濫用的な行為によってイノベーションが抑制されていないかという点に目を光らせることも,公正取引委員会の非常に重要かつ必要な役割であります。

 昨年6月には,「携帯電話市場における競争政策上の課題について」(平成28年8月)のフォローアップを含めた調査結果を公表しました。具体的には,「2年縛り」や「4年縛り」等に対する競争政策上の考え方を示しました。本年においては,昨年11月に規制改革推進会議において取りまとめられた答申において指摘のあった,中古携帯端末の流通実態調査を総務省と行ってまいりたいと考えております。

 また,昨年から中小企業が保有する知的財産権やノウハウに関する大企業からの提供要請等について実態調査を行っており,今後,調査結果の取りまとめを行う予定です。

5.さらに,中小企業に不当な不利益を与える行為に対しては,本年も的確かつ迅速に対処をしていきたいと考えております。特に,今年10月に消費税率が8%から10%に引き上げられる予定となっていることから,消費税転嫁対策特別措置法違反行為に対して厳しい姿勢で臨んでいかなければなりません。公正取引委員会では,引き続き,消費税の転嫁拒否等の行為に対する未然防止のための広報活動や違反行為を行った事業者に対する必要な改善指導等を強力に進めていきたいと考えています。また,昨年から,中小企業庁と共同で,金型に係る取引の実態調査を実施しているところです。

6.今年の5月には新しい元号の時代が始まります。これからの新しい時代に向かって,経済社会の変化に対応した競争政策ということを追究していく必要があると思います。皆様の御健勝と御発展を祈念いたしまして,私の新年の挨拶とさせていただきます。

公正取引委員会委員長 杉本 和行

ページトップへ