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令和3年 委員長と記者との懇談会概要(令和3年10月)

令和3年10月29日掲載
令和3年11月19日更新
(質疑応答部分追記)

 

1 日時

令和3年10月28日(木) 15:00~16:00

2 概要

(1) 委員長からの説明

 委員長に就任して1年余りが経ちました。この間,新型コロナ感染症の下で,公正取引委員会の仕事も大変制約の多い執務環境が続いていますが,事務総局の職員の皆さんも様々な工夫をしてくれて,着実に公正取引委員会の役目を果たすことができているのではないかと思っています。先月末で緊急事態が解除になり,事件審査も,現地に赴いての立入検査や事情聴取ができるようになるなど,徐々に業務が正常化されつつあります。一方で,第6波の懸念も指摘されている状況ですので,引き続き,感染防止に気を遣いながら,ということにならざるを得ませんが,公正取引委員会の担うべき役割がしっかり発揮できるように努力していきたいと思いますので,記者の皆さんには引き続き御理解と御支援をよろしくお願いします。
 今日は,私からは,前回3月の記者懇談以降の,デジタル分野を中心とした公正取引委員会の競争政策の取組についてお話ししたいと思います。
 3月の記者懇談の際に少し予告宣伝しましたが,3月と6月に,2つの報告書を公表しました。
 3月には,「デジタル市場における競争政策に関する研究会」が,アルゴリズム/AIと競争政策を巡る課題・論点について報告書をまとめました。アルゴリズム/AIは,デジタル市場におけるイノベーションの鍵となる技術であり,多くの企業がAIを利用して事業活動を行うようになっています。競争当局としても,アルゴリズム/AIがもたらす競争上のリスクに関して,いち早く知見を集積し,適切に対処していかなければならないという問題意識の下に,我が国で初めて,アルゴリズム/AIについての競争政策上の課題を網羅的に取りまとめた報告書です。AI/アルゴリズムを利用して反競争的な合意や単独行為が見えにくい形で埋め込まれると,競争法上の判断が難しくなるといった,新しい形態の競争状況が生じてきます。具体的には,アルゴリズムによるカルテル,アルゴリズムによるランキングの操作,パーソナライゼイション(アルゴリズムによる顧客ごとに差別的な価格の設定)を取り上げて,競争法上の論点を整理し,AIを通じてでも独占禁止法上問題となり得ることがあることを明らかにしました。もっとも,AIは機械学習とか深層学習とか急速に進化している途上ですので,現時点での考え方をまとめるにとどまっています。特に深層学習のアルゴリズムだと,ブラックボックスの中で生じる作用やその結果をどのように評価し,どう対処できるのか,競争法にとどまらず,政府全体で,AIに対するガバナンス(責任追及や規制)の問題として,検討すべき課題でもあり,公正取引委員会としてもAIやアルゴリズムに対する技術的な知見を含め,AIの進化の速度に遅れないよう習熟度を高めていくしかない。そういう将来に向けての認識も持てた報告書になったと思います。
 また,6月には競争政策研究センターの「データ市場に係る競争政策に関する検討会」が報告書をまとめました。独禁法でデジタル分野での反競争的な行為を取り締まるだけでなく,データ自体のオープンな流通や利活用を進めることが競争政策上も望ましいという考え方でまとめられた報告書です。前任の杉本委員長が,在任中から,デジタル分野への競争法の積極的な関与だけでなく,データの幅広い流通と利活用が市場の競争を活発にし,イノベーションの促進につながるということで,産業分野などで蓄積されているデータを言わば一種の公共財的に共有するデータスペースの整備を進めることが競争政策上も大事な課題だといったことを主張しておられたわけですが,そうした問題意識にも沿ったものになっています。言わば,杉本前委員長の宿題に答えたような報告書だと思っています。①データへの自由かつ容易なアクセスの確保,②データポータビリティやインターオペラビリティの確保,③プライバシーに対する懸念への対応,④仲介事業着やデジタル・プラットフォーム事業者が保有するデータへの公平なアクセス確保のための「事前規制」を含めたルールの検討など,が示されていますが,このようなデータ市場の整備に関しては,競争政策とデータ保護,消費者保護といった関連する政策分野が別々にではなく,相互に連携して取り組む必要があるとの提言になっています。ちょうど,同じ6月に政府の「包括的データ戦略」が取りまとめられていますので,タイミング的にも時宜を得た報告書になったと思います。
 「データ資本主義」と言われることがありますが,デジタル分野ではデータが競争力の重要な源泉になって,GAFAなどのビッグテックが市場支配力を強めて,寡占・独占の状態を作っている,という「新しい市場の構造」,「新しい形態の競争状況」が生じています。これを可能にしているのが,まさに①データと②AI/アルゴリズムのデジタル技術というわけで,この2つに関して,3月と6月の報告書で,公正取引委員会としての現時点での考え方の整理ができたということだと思います。
 一方で,一昨年来進めてきているデジタル・プラットフォームの取引慣行に関する実態調査ですが,これまでオンラインモール,アプリストア,デジタル広告について実態調査を行い,独禁法上の問題や競争政策上の考え方を整理し,公表してきています。今年度は4月からクラウドサービスについて調査を進めていますが,これに加えて今月から,内閣官房の「デジタル市場競争会議」とも連携しつつ,モバイルOSの実態調査を始めました。これまでの実態調査は,デジタル・プラットフォーム上での事業者間取引について競争法上の問題を把握することが主眼でしたが,このモバイルOSの調査は少し趣が違います。OSはスマートフォンを通じて提供されるアプリやスマートフォン周辺の新たなサービスなどの基盤となっていますので,モバイルOSやモバイルアプリの流通経路について,その市場構造や競争圧力の有無など,言わばモバイルエコシステム全体の競争の実態と課題を把握する調査になると思います。
 デジタル市場やデジタル・プラットフォーマーに関するルール整備に関しては,内閣の「デジタル市場競争本部」において,政府全体で一体的に検討する体制になっております。そこでの現時点での成果物が,今年の春から運用が始まった「デジタルプラットフォーム取引透明化法」です。また,データの利活用促進など「包括的データ戦略」に関しては,創設されたデジタル庁を中心に,社会実装,新しい仕組み作りに向けた検討が進められていくと思います。公正取引委員会としては,今御紹介した報告書や実態調査をベースにして,こうした政府全体での検討に積極的に参画し,貢献していきたいと考えています。
 御承知のように,EUや米国はじめ海外の競争当局も,GAFAなどのデジタル・プラットフォーマーの反競争的な活動への対処を含め,デジタル分野の課題に関しては,我々と同様の問題意識を持って,競争法の執行や新たな規制制度の立案の両面で,極めて活発な動きになっており,大変論争的な状況が生じています。私の独断で大雑把に海外の新しい法規制の動向をまとめてみると,おおむねどの国も,寡占状態にあるような,大規模なデジタル・プラットフォーム事業者を規制の対象として,規制の枠組みも,自社優遇などの差別的取扱いを禁止するなどの一定の禁止行為を掲げたり,データポータビリティなどのデータの利活用に向けた義務を定めて,その遵守を監視し,違反に対して制裁金を課すといったようなことで,言わば「事前規制」を導入しようというものです。こうした各国での取組は,始まったところで現在進行形ですので,その動向に目を凝らしていきたいと思っています。6月のイギリスでのG7首脳コミュニケでも「デジタル市場に関する協力の深化」が決定され,こうした動きは各国共通の政策課題でもありますので,海外当局とより緊密に連携し,新しいデジタル時代の競争政策の構築を進めていく必要があると思っています。
 我が国で4月から運用が始まった「デジタルプラットフォーム取引透明化法」は,イノベーションへの過度な介入を避け,市場参加者の自律的な対応により問題を解決するという考え方で,「自主規制と政府による監視」というソフトな「共同規制」の仕組みです。独禁法違反のおそれのある事案を把握したら経済産業大臣から公正取引委員会に措置請求する仕組みにもなっており,私は,独禁法を補完する日本版の「事前規制」とも受け止めています。公正取引委員会としても,経済産業省としっかり連携して,デジタル・プラットフォーム事業者の反競争的行為の未然防止に資するように運用していきたいと思いますが,このような規制が実を上げるためには,何よリもプラットフォームと関わる事業者の皆さんにガバナンスに積極的に関わってもらうこととが大事だと思いますし,取引の実態をスピーディーに把握して対処できるよう監視する行政側に情報提供してもらうことが大変重要と考えています。そういうことでないと,この仕組みは回りにくいのではないかという個人的な感想です。そして,このような「共同規制」というガバナンスの実施状況の評価が今後のルールを巡る更なる議論の深化にもつながると思っています。日本はこういう形で始めましたので,これについての評価が今後の議論の基礎になるんだと,私は理解しています。
 少し長くなりましたが,デジタル分野での公正取引委員会の取組に関しお話ししたかったことは以上です。そのような中で,法執行サイドでは,9月2日に,アップル・インクの件を公表しました。審査官がアップル側と喧々諤々,粘り強いコミュニケーションを重ねていった結果,アップル側から,リーダーアプリを通じて「アップル税」と言われる手数料を払わずに済む外部決済への誘導,いわゆるアウトリンクを認めるという改善措置の申出があり,当方もこれを認めて審査を終了することにしました。私は,イノベーティブで変化の速いデジタル分野の事件については,必ずしも法的な強制措置にこだわらず,本件のように事業者との合意の下に競争の回復が早期に行われる対応を採ることも重要だと考えています。また,このアップル・インクの件は,全世界的に改善措置が実施されることになっていますので,海外の競争当局もビッグテックとの間の訴訟が継続するなど対処が長期化している中で,公正取引委員会が先行して一定の答えを引き出せたという点で一つ貢献できたものと評価しています。
 ちなみに,最近のデジタル分野などでの公正取引委員会の法執行の現状について,排除措置命令等の強制的な処分に至らないで,確約手続や事業者の自主改善を受けての審査打切り等が多く,踏み込み不足ではないかといった指摘も一部で耳にしますが,私は,法的な強制措置を基本としつつも個々の事案ごとに,我が国のデジタル市場の環境や取引実態に即して,できるだけ迅速に競争の回復を図る,言わば相手方の取引慣行やビジネスモデルを変えてもらうということはすごく大事なことで,そういうことを主眼に,事案に応じた対応を行うことが重要ではないかと考えています。そのためには,公正取引委員会のリソースやマンパワーにも制約がある中ではありますが,できるだけ早期に問題事案を把握し,積極的,機動的に法執行を行う体制を構築していくことが必要ですし,実態調査などのアドボカシー活動で得た知見や経験を法執行に反映させていく取組も大事だと考えています。
 独禁法は違反行為を事後的に是正するため,強制措置を行う「重い規制」です。違反行為と競争阻害の事実を確認し,その間の因果関係を認定するために証拠固めをするなど,手間と時間が掛かります。一方で,デジタル分野の事件となれば,デジタル技術に関する高度な技術的知見も必要です。ただ,デジタル分野はイノベーションなどの変化が速く,迅速な競争の回復や競争環境の整備に関して,これまでの独禁法の仕組みで対応できるのかという懸念があります。各国で,新しい規制制度の議論が起きているのも,これまでの競争法執行の経験の上に,こうした懸念を反映している面もあるのではないかと思います。私は,そういう議論は議論として,まずは,現行競争法の執行に当たっても,事案に即して機動的に法執行を積極的に行うということに取り組んでいきたい,その上で,競争状態のスピーディーな回復を図る対応ということを考えていきたいと思います。
 また,少し別の観点から言うと,米国やEUでは,デジタル分野にとどまらず主要な産業分野でマークアップ率や産業集中度が上昇し,大企業が高利潤を得て,それが富の偏在や格差拡大にもつながっているといったことから,競争法の強化や企業結合規制の厳格化が議論される状況があります。これに対して日本の場合は,それほどマークアップ率や集中度が高まっているわけではない,むしろ企業の付加価値生産性を高めて,マークアップ率を高めていくことが必要で,企業の活発なイノベーションによる潜在成長率の底上げといった供給サイドの取組と,賃上げ等の成長の成果を適切に分配できる「成長と分配の好循環」を実現することが課題になっています。加えて,デジタル後進国と言われるほどに,デジタル化の遅れが課題になっています。私は,競争政策の取組に関しても,もちろん国際的にシンクロナイズすることも大事ですけれども,こうした日本経済・社会が直面している課題を見据えて競争政策を展開することが必要だと思います。公正取引委員会の競争政策自体でできることは限られていますが,新規参入やイノベーションが期待される成長分野や成長に不可欠なインフラ分野などの競争環境の確保につながるように,引き続き,実態調査や提言といったアドボカシー活動を積極的に行うとともに,やはり迅速な競争の回復ということを主眼に独禁法の積極的な執行を進めていくことが大事なのではないかと考えています。
 6月に閣議決定された成長戦略実行計画でも,「競争環境の整備を図る競争政策の強化が成長戦略の鍵である」とされ,公正取引委員会の体制と執行の強化の方針が示されていますので,公正取引委員会の質的・量的両面でのリソースの拡充を図るべく,令和4年度の定員要求ではこれまでにない意欲的な要求を行っています。査定当局の理解を得て,今お話ししたような公正取引委員会の取るべき方向に進んでいけるよう,今後,計画的に事務総局の体制強化を行っていきたいと考えています。
 新政権発足に伴い,「新しい資本主義実現会議」が設置され,成長戦略と分配戦略の二本立てで,新政権の経済政策の議論が進んでいきますが,公正取引委員会が担うべき競争政策の位置付けはこれまでと変わることはないように受け止めています。今後,成長戦略,分配戦略の具体的な肉付けが行われる中で,公正取引委員会として担うべき政策の方向性も明らかになってくると思います。これまでも,スタートアップの成長支援やフリーランスの環境整備に関する新たな立法措置の検討など,成長戦略上も課題としてありますし,分配戦略の1つに,下請取引に対する監督強化が掲げられています。こうした課題に,公正取引委員会としても,関係省庁とも連携しながら,対応していきたいと思っています。
 最後に,日本経済の長期停滞を打ち破り,潜在成長率を引き上げる要因として期待されている投資分野はデジタルとグリーンだと言われています。経済の供給サイドで生産性を上げていくためには,データやデジタル技術を活用したイノベーションが急務です。GAFAはオンラインビジネスにとどまらず,集積したデータの力で,自動運転,電気自動車,金融,医療などリアルなビジネスにも進出しています。デジタルトランスフォーメーションを通じてこれまでの産業をひっくり返すような変化が起きており,渦中にある企業は大変だと思いますが,日本社会の経済活力を回復する大きなチャンスであり,今こそ豊富なリアルデータの蓄積を持つ日本の産業,企業が思い切った投資を行い,競争に打って出ることが望まれます。その際,カーボンニュートラルの実現に向けた社会改革として,グリーン分野に投資し,我が国の資本ストックを新しくしていく,大きくしていくことは生産性向上や持続的な経済成長につながっていくんだと思いますので,是非,前向きに日本企業には取り組んでほしいと思います。このようなグリーンディールやデータの利活用によるイノペーションの推進を競争政策サイドからもサポートできることはあると思いますので,産業界,経済界から公正取引委員会に投げかけてもらうくらいであるとありがたいと思っています。

(2) 質疑応答

(問)この1年間の所感と,特に印象に残っている実態調査,あるいは事件などはありますか。また,この1年での最も大きな成果はどこにあるのかというところを教えていただけますか。
(答)杉本前委員長の頃からデジタル化への対応という問題提起を受けて,実態調査や報告書など世の中に対しても大きな発信が公正取引委員会としてできているのではないかというふうに思います。一方で,スピーディーに競争阻害的な取引慣行ですとか,ビジネスモデルを改善してもらう,そういう「答えを出す法執行」というのをやっていく必要があるのではないか,そういう意味では,9月2日に公表させていただいたアップル・インクの件については,なかなか良い答えが出せたのではないかというふうに評価しているところであります。

(問)アップルの件は,公取の審査をきっかけに課金ルールが見直されるということなのですけれども,対象となっているのが動画とか音楽とか一部のアプリであり,ゲームは対象外というところで,ここは不十分じゃないかという声も一部にあると思うのですが,そこに対する所感を教えてください。
(答)音楽のコンテンツなどの配信事業が,日本のコンテンツ業者にとって,著作権料の負担が大きいというコスト構造にある中で,こういう対応がまずできたということは,大変な成果だったと評価しています。諸外国の当局も,対GAFAで同じような議論をしていて,訴訟を継続したりしている中で,制裁金を掛けたり,訴訟を起こしたりして挑んではいるのですけれども,取引慣行を具体的に変えるという結論を得ることができたのは,我々公正取引委員会がある意味で最初でして,一つの答えが出せた,取引慣行を変えさせることができたという点は,私は大きな成果だったと思います。
 着手は,杉本前委員長の時の2016年頃に問題提起をして,ずっとアップル側と議論をし,コミュニケーションを重ねてきている中から生み出された答えだと思いますけれども,カルテルとか談合みたいに,原則競争法違反だというような話とはちょっとこれは違っていて,アップル側にしてみると,これは競争促進的な要素も当然あるのだという議論をしてきたのだと思いますし,セキュリティの問題だとか,プライバシーの保護の問題だとか,消費者の利便性という点で,おそらく,どこが問題なのかといったような反論をしてきたのではないかと想像しますが,アップル側が改善措置を申し出てくるようになったというのは,いろいろな海外当局が問題提起をして議論を重ねてきた状況というのが,こういう結果をもたらしたのだとも思っています。アップル側が全部差し出してこなかったじゃないかという御指摘は,私はもっともだと思いますけれども,ここまでできたという点も評価していただきたいという気がしています。

(問)もう1点ですが,冒頭も触れられたモバイルOSの実態調査は,内閣官房のデジタル市場競争会議と並行で進めているということなのですけれども,今の競争環境を巡る市場の課題というのを,委員長なりにどう見ていらっしゃいますか。今後の規制の方向性も含めて,今後の展開といいますか,見方を教えてください。
(答)御承知のように,我が国ではモバイルOSを中心としたレイヤー構造というところは,アップルのiOSとグーグルのAndroidでほとんどを占められていまして,この2つが,言わば圧倒的に有力な事業者であるわけです。そういう状況で競争阻害的なことが起きていないかどうか,これからモバイルエコシステム全体を評価するような調査をしていくことになると思います。デジタル市場競争会議の方でも,モバイルOSを基盤としたレイヤー構造についての競争評価をやろうということになっていますので,それを踏まえて,次の,どういう規制なりルールを整備すればいいかという議論につながっていくのだと思います。

(問)唱導活動を今後,より強化していこうといった時に,現在,公取がやっている実態調査ですとか,提言,ガイドラインについて,これらに今後,一層力を入れるということなのか,更にプラスアルファ,何かできることがあるとお考えなのか,お聞かせください。
(答)基本的には,今進めております実態調査について,成長分野ですとか,国民生活に影響の大きい分野について,関係省庁の意見も聞きながらやっていくということが基本だと思います。さらに,私が思っていますのは,この間の携帯電話のフォローアップ調査やコンビニエンスストアのフランチャイズシステムの実態調査の時もそうでしたけれども,一般的な実態の把握をして,独禁法上の課題や競争法上の考え方を,一般的に啓発するというだけでなくて,実態調査の過程で,ある意味,行政指導的なことも加えて,先ほど申し上げたような取引慣行やビジネスモデルの改善に,競争政策の観点から資するようなことが具体的にできるのであれば,単に実態調査をして結果を皆さんに知らしめるだけではなくて,そういうこともやっていくことが必要なのではないかというふうに思っています。

(問)先ほど御紹介いただいたデータ市場の報告書ですと,事前規制等のルール作りについて関係省庁の議論を促していたようにも思えるのですが,現状,委員長としては,こういう新しい事前規制型のルール作りについてはどのようなお考えをお持ちでしょうか。
(答)デジタル・プラットフォームは,日本の場合は多くの中小企業のビジネスチャンスの場でもありますし,非常にイノベーティブな動きが続いている場でもありますので,そういうものに過度に介入しないということで,デジタルプラットフォーム透明化法は「自主規制と政府による監視」という共同規制型の,言わば競争法に立ち至る前に事態を改善するという意味で事前規制であり,競争法を補完するものだと私は思っています。欧米ではデータポータビリティのようなデータの利活用についての義務まで定めようというような議論が行われていますので,そういうものが日本で必要なのかどうかについて,先ほど申し上げましたように,政府全体の場で議論していかなければならないのだと思っています。

(問)スピーディーな執行が大事だというお話がありました。例えば,令和2年度においては,特に不公正な取引方法についての排除措置命令は1件もなくて,確約制度を中心に組み立てていると感じていますが,委員長のおっしゃるスピーディーさをより求めるというのがどういう意味なのか,基本的に優越的地位の濫用であるとか不公正な取引方法については,確約手続がベースになっていくのだということはもう既に実態としてあると思うのですけれども,これを更に進めるということなのか,又は,例えば,確約の対象を広げるような新たなルール作りというのを検討したり,確約計画の認定までに至る期間をもっと短くして,その分,執行の件数を増やしていくというお考えなのか教えてください。
(答)私が申し上げたいのは,基本は排除措置命令といった強制的な法的措置を目指して,当然,公正取引委員会は事件審査に入るわけですけれども,事案の状況や案件の性格に応じて,確約手続を含めて,いろいろな手立てを公正取引委員会は持てるようになりましたので,競争の早期の回復,あるいは競争阻害的なビジネスモデルの具体的な改善といったことにつながるような措置であれば,その案件に応じていろいろなことをやっていってもいいのではないかということを考えているということであります。特にデジタル分野はそうなのではないかというふうに思っています。

(問)アップルの事件は,本国の本社に対する違反審査事件でした。単刀直入にお伺いしますが,GAFAと対峙するという意味で,何かこの事件から学んだことや今振り返って思うことはございますか。
(答)デジタル分野で実際に行政処分をすべく審査を行うのは大変難しいということは事実だと思います。したがって,GAFAに立ち向かっていく私ども公正取引委員会も,デジタル分野の技術的知見を含めて,経済分析又はデータ分析といった能力も高めていく必要があると思いますが,今回の事案に対する私の直接的な印象は,やはり「答えを出す」ということが大事なのではないかということです。先ほど申し上げたように,日本が置かれている状況で,GAFAによるデジタル・プラットフォームは,一種ゲートウェイになっていまして,中小企業を含めて日本のいろんな企業がそれに乗っかってビジネスをしなければいけない状況になっていますので,そういった人たちが問題視する,いろいろな取引上,契約上の課題が,競争政策の観点から対応できる問題であるのであれば,当然,排除措置命令といったことを考えながら動きますけれども,今回で言うと,アップル側がこういう形で改善の申し出をしてくれて,それが言わばビジネスモデルの見直しにつながるということであれば,そういうチョイスは十分にあるのだというのが,今回の私の印象であります。

(問)今のお言葉の「難しさ」という表現について,もう少し詳しくお願いします。
(答)個別案件の話を離れて申し上げると,GAFAなどのデジタル・プラットフォーマーがやっているビジネスモデルというのが,具体的に競争阻害のおそれがあるのだということで独禁法の規定を当てはめて立証していくというのはかなりの労力が要るのだと思うのです。私どもが独禁法の執行において努力をしたその先に,海外でも行われているような議論が日本でも場合によっては今後展開されていくということはあり得るのだろうと思います。そこは,私どもだけの議論ではありませんので,政府全体又は経済界を巻き込んでの議論になるのだと考えていますが,透明化法という仕組みがこの4月から動き出したばかりですから,そういった状況も踏まえながら,私ども競争当局としてできることをやっていかなければならないとということだと思っています。

(問)これまで委員長になられて1年以上過ぎて,海外当局のカウンターパートといろいろなオンラインでのミーティングをされているかと思うのですが,意見交換の内容や今後の予定を教えてください。また,米国は,競争政策の非常に大きな転換があって,デジタル企業に対する追及を強めるだけでなくて,社会厚生的なことを目指す方向に舵を切っていますけれども,それによって日本の当局に,例えば,企業結合審査や国際的な案件での連携等に何らかの良い,又はネガティブな影響はあると考えられているのでしょうか。
(答)1年の間に,かなりの海外当局のトップの方と意見交換をすることができました。どなたとどういったお話をしたという具体的なことは差し控えますけれども,おおむね,今日,私がお話ししたようなことと同じような,やはりデジタル経済の進展に対して同様の懸念を持って,同じような対応をしていかなければいけないという問題意識を共有できていると思っています。
 2つ目の質問に関しては,例えば,企業結合審査のプロセスでも,これまで以上に,問題解消措置の中身なども含めて,海外当局との間で綿密に情報交換や意見交換をしていかなければいけない局面は増えていくと思っています。

(問)先ほどのアップルの件で成果が出てきた背景の一つには,多分,エピックゲームズによる訴訟の動向も,アップルの側からするとあるかなと思うのです。日本ではそういう訴訟があまり無く,困っている事業者が声を上げることが少ないので,こういった海外での案件が誘発材となって,良い影響を日本の公取委も受けたのかなと思うのですが,そういった世界的な海外当局の動きだけでなく,訴訟を含めての動きが,今回,どのように影響されたとお考えになっていて,今後,事業者側にどのような行動を期待するといったものがあったら教えてください。
(答)これは私の推測ですけれども,おっしゃるような状況の中でアップル側もこういう対応をしてきたという面はあるのだろうと思います。したがって,海外当局だけでなく,いろいろな訴訟等も,そういう意味では,GAFAに対する牽制として利いてきているのだろうと思います。日本は,残念なことに,民事訴訟を起こして独禁法を問題にする例というのはそんなにありません。ただ,先日,カカクコムの関係で独占禁止法第24条に基づく差止請求訴訟が行われて,裁判所から公正取引委員会に対して初めて意見を求められ,意見書を提出したといったことがありました。経済界や企業の皆さんに私が言いたいのは,取引の実情について公正取引委員会にいろいろと情報提供していただくだけでなく,独占禁止法を使って,競争環境を整備するという作業は皆さんでもできるんだということを改めて認識してもらえるとありがたいということです。競争法を使っていろいろなことをやっていってもらう時代であっていいのではないかというのが,この1年,公正取引委員会で過ごした私の率直な印象であります。

以上

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