[配布資料]
【配布資料1】スマホソフトウェア競争促進法説明資料
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【配布資料2】取適法の施行に向けた取組と企業取引研究会の再開について
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1 日時
令和7年12月10日(水) 11:00~11:53
2 概要
(1) 委員長からの説明
公正取引委員会委員長の茶谷でございます。今日はお忙しい中、お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。また、平素より大変お世話になっておりますこと、改めてこの場をお借りして感謝申し上げます。
今年の5月21日に公正取引委員会委員長に就任して、それから半年余りが経ちました。こういった形で記者のみなさんとお話させていただきますのは、その就任の翌日に、ここで会見させていただいたとき以来になりますが、公正取引委員会は足元で、来週12月18日に「スマホソフトウェア競争促進法」の全面施行、1月1日に、下請法を改正した「中小受託取引適正化法」、「取適法」と略称しておりますが、この取適法の施行を控えています。また、事務的な話ですが、公正取引委員会本局は引っ越しすることになっておりまして、来週12月15日から港区虎ノ門の虎ノ門アルセアタワーに順次移転いたします。そのような意味で、現在、公正取引委員会は大きな節目を迎えておりまして、本日はこのような非常にありがたい機会ですので、私から近々施行されるスマホソフトウェア競争促進法と取適法について、お手元の資料に基づいてまずは簡単に御説明をさせていただきたいと思います。
それではまず、スマホソフトウェア競争促進法から御説明いたします。資料の1ページには、これまでの経緯が書いてあります。平成30年6月に閣議決定されました「未来投資戦略2018」において、プラットフォーマー型ビジネスの台頭に対応したルール整備のため基本原則を定め、これに沿った具体的措置を早急に進めると記述されて以降、ここに書かれている出来事がありまして、令和6年6月に「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律」、略して「スマホソフトウェア競争促進法」が成立し、今月12月18日に全面施行されます。
3ページを御覧いただきますと、なぜこの法律を制定したかという趣旨・目的が書かれております。スマートフォンは急速に普及しており、日本でもおそらく1億人ほどのユーザーの方がおられると思いますが、それほど国民生活、経済生活に極めて深く入り込んでおります。このスマートフォンの利用に必要な特定ソフトウェア、法律では、アプリストア、ブラウザ、検索エンジン、モバイルOSを総称して「特定ソフトウェア」と呼ぶこととしていますが、この特定ソフトウェアを提供する事業者は少数の有力な事業者による寡占状態になっておりまして、競争上の問題が生じる懸念があります。そのような状況ですと、新規参入等の市場機能による自発的な是正というのはなかなか困難ですし、また、独占禁止法による個別事案に即した対応というのも当然あり得ますが、その場合には違反行為の立証に長い時間を要するという課題もあります。そのような中で、いかにして公正かつ自由な競争を回復していくかということで、セキュリティ等の確保を図りつつ、競争を通じて多様な主体によるイノベーションを活性化させ、それによって生まれる多様なサービスを消費者が選択できるようになる、低廉で良質なサービスを選択できるようになるという形で競争環境を整備していこうということでこの法律が制定されたわけです。
この法律の眼目は4ページに書いてございますが、九つの禁止行為と五つの遵守義務、これらを事前に定めるという形になっております。例えば、禁止行為ですと、5ページに具体的な説明がございます「他のアプリストアの提供妨害の禁止」、こちらは、他の事業者が代替アプリストアを提供することを妨害してはならないというもので、第7条第1号に書かれています。次の6ページに説明がございます「モバイルOS機能の利用妨害の禁止」は、他の事業者のアプリについて、モバイルOSの一部機能を利用することを妨害するといったことをしてはならないというものでして、第7条第2号に書かれています。ほかに禁止行為としては、第8条第1号の「他の課金システムの利用妨害の禁止」、第8条第2号の「リンクアウト、ステアリングの制限等の禁止」などが定められております。また、遵守義務として、例えば、7ページにございますが、いわゆるポータビリティに関するもので、「取得データの利用者に対する移転に係る措置」というのが定められておりますし、8ページにございます「デフォルト設定の変更、選択画面の表示に係る措置」というものも定められています。これが消費者の方に一番関係する話だと思いますが、チョイススクリーンと呼ばれる選択画面を設けなくてはならないというもので、ともすればデフォルト設定のものをそのまま継続して使用しがちですが、チョイススクリーンには、「このブラウザにはこういう特徴がある」といった簡単なPRが書かれているはずですので、消費者の方も選択肢を見ながら自分に一番合ったものを選んでいただくように今後変わっていくことになります。チョイススクリーンについては、お手元にお配りしたリーフレットを作ったりしまして、現在、様々な機会を捉えて周知活動をしているところでございます。
他国におけるスマホ、あるいはデジタルに関係する法律の状況に関しては、例えば、欧州では昨年3月から「デジタル市場法(DMA)」が本格施行されましたし、英国では今年1月から「デジタル市場・競争・消費者法(DMCCA)」が施行されています。また、米国では御案内のとおり、いろいろなデジタル関係の訴訟が頻繁に起きております。スマホソフトウェア競争促進法は、日本での新しい法律でございますので、9ページにございますように、諸外国の動きというのを注視しつつ、指定事業者の方から提出いただく遵守報告書の内容を確認したり、関係事業者からも情報提供を受けたりと、関係者との継続的なコミュニケーションを図っていくことが、法律の運用に当たっては大事だと思っております。関係事業者との対話を続けていきながら、違反の疑いのある行為が出てきた場合には、最終的には、法律に勧告や命令といった措置が定められていますので、これによって対応することになりますが、まずは関係者、ステークホルダーとの継続的な対話によって競争状況の改善を図っていくことが重要かなと思っているところでございます。
最後にPRになりますが、13ページで御紹介しておりますように、今年1月31日にも開催しました「デジタル競争グローバルフォーラム」の第2回を来年早々に開く予定です。デジタル競争グローバルフォーラムでは、各国各地域の競争当局や研究者等の様々な関係者が集まって、国際的なデジタル競争についてのパネルディスカッション等を実施する予定でございます。
以上が、スマホ競争促進法についてでございます。
次に、いわゆる取適法、これについても資料に基づいて御説明いたします。皆様もよく御存じかと思いますが、今、日本経済の最大の課題の一つは、インフレ、物価上昇を上回る名目賃金の上昇を実現することでございます。要は実質賃金をプラスにしていくということですが、その実現のための一つの大きな柱がサプライチェーン全体での価格転嫁を推進して中小企業の賃上げ原資を確保していくことでございまして、これが非常に重要な課題となっております。この資料の4ページにございます「下請法改正の背景・趣旨等」には正にそのようなことが書かれておるわけですが、その実現のために、例えば、協議に応じないで一方的な価格決定を行うような、受注者に負担を押し付ける商慣習を一掃していくということが、下請法改正、取適法の施行の主な目的でございます。
具体的な改正ポイントは5ページにございますが、一つは今申し上げましたように「協議に応じない一方的な代金決定の禁止」です。物価が上がっていく中では、どのような水準、どのような価格が適正なのか、判断はなかなか難しいので、協議に応じないで一方的に代金を決定するというプロセスに着目して、それを禁止するという形で規制するものです。今後、発注者の皆様におかれては是非、協議の申出があった場合には、それを無視するとか、あるいは繰り返し先延ばしにするということは避けていただきたいですし、受注者の皆様におかれても積極的に協議を求めていくということが重要であると思っているところでございます。二つ目は「手形払等の禁止」でございます。これは、現行の下請法でも、給付の受領日から60日以内のできるだけ短い期間に支払期日を定めることとなっておりますが、その支払期日に手形が交付されると、手形のサイトだけ現金を受領する時期が延びるという問題があったものですから、手形払等を禁止したものです。手形と似た機能がある電子記録債権やファクタリング等についても、支払期日までに代金相当額を得ることが困難なものを禁止するという形で、60日以内にきちんと現金を受け取れるよう規定を改めています。また、いわゆる物流、運送関係では、発注側と受注側がともに運送事業者という場合は、現行下請法でも適用対象になっておりますが、発荷主から最初の運送業者への委託契約は現行下請法の対象外でして、独禁法の物流特殊指定で対応してきました。この部分にも多くの問題がある中、迅速に対応できるようにするため、発荷主から運送事業者へ委託する取引についても、今回、取適法の対象としたところでございます。
また、元々、下請法は独禁法を補完するものとして、簡易迅速に適用、対応できるようにと定められた法律ですので、形式的な基準である資本金でもって対象となる企業、取引を定めておりましたが、御案内のとおり、資本金は比較的簡易な手続で上げ下げできるということもありますので、新たに従業員基準を設けて、いわゆる下請法逃れのようなものを防ぐという改正を行っております。また、取適法の対象となる事業者は非常に広範囲にわたりますが、公正取引委員会あるいは中小企業庁だけではキャパシティに限りがあるものですから、事業所管省庁にも指導・助言機能を付与する規定や、相互情報提供に関する規定を新設しまして、連携して面的に執行していくことで、政府一丸となってこの法律を施行していくこととしております。
あわせまして、「下請」という前時代的な言葉を無くして、「中小受託取引適正化法」、略して「取適法」に改めているところでございます。
取適法の施行のために必要な規則や運用基準につきましては、10月1日に公表しました。
そして、7ページから8ページにございますが、法律の施行のときには、関係者の方によくよく内容を御理解いただくことが何より重要ですので、現在、全国47都道府県における事業者向け説明会、あるいは業界団体向け、業種別の説明会を行っております。あわせて、既に御覧になられた方もおられるかと思いますけれども、電車内での広告もしておりますし、地方のテレビでCMを流したりもしております。また、インターネット広告でもPR動画を流しておりまして、桃太郎を題材とした動画で短い15秒のものですと、再生回数が約950万回となり、おそらく、政府の広報としてはかなり視聴していただいているものと思いますが、引き続き、周知広報に努めていきたいと思います。
各省庁と連携した周知の取組では、10ページにあるように国土交通省と合同荷主パトロールという取組を行っておりまして、国交省の方等と一緒に発荷主の方のところにお伺いして取適法の趣旨を説明したり、あるいは、サービスエリア・パーキングエリアで実際にトラックドライバーの方から状況をヒアリングしたりといった周知活動も行っているところでございます。また、公正取引委員会が事件として取り上げる数には限りがございますので、11ページから12ページで実例も含めて御紹介しておりますように、特定の社で問題が認められた場合に、その社の属する業界団体に申入れするなど、効果的に我々の活動を広げていく取組も行っているところでございます。
ただ、取適法だけではなかなかカバーしきれない部分もありまして、先ほど、資本金基準に今後は従業員基準も加えて、取適法の適用対象を定めていると申し上げましたが、サプライチェーン全体で価格転嫁しようと思いますと、取適法の適用対象からどうしても漏れてくる取引がありまして、これをどうするかが問題となります。例えば、手形払いは全面的に禁止されているわけではないため、サプライチェーン全体の中で手形払いが禁止されている取引とそうでない取引が出てくる、この問題についてどうするか、あるいは、発荷主の方から物流事業者への委託取引は取適法の対象になりますが、いわゆる荷待ち、積込みや取り下ろしの問題は、着荷主と運送事業者との間にもあります。着荷主と運送事業者の間には契約関係はないのですが、ただ現実問題として、物流業界で問題とされているような事象というのは着荷主と運送事業者の間でも起こりますので、このような問題をどうするか、また、知的財産権は中小企業の成長の原動力になるものと思うのですが、これについて取引先から低廉あるいは無償で譲渡を迫られているようなこともあると聞きますので、そのような実態も踏まえてどうしていくかというようなことを、企業取引研究会という有識者会議を再開して現在議論しているところでございます。以上が取適法の説明でございます。
私からの冒頭説明は以上で終わらせていただいて、あとはこれから皆様との質疑応答の中でいろいろ話したいと思います。よろしくお願いいたします。
(2) 質疑応答
(問)何問か伺いたいのですけれども、スマホ法の運用に関して、現在、指定事業者であるグーグルやアップルと細かい調整をしているところだと思います。そのように指定事業者と調整を行うということ自体が、そもそも異例の立て付けだとは思うのですけれども、これだけ全面施行の直前になっても調整が続くことに対して、どのように受け止めていらっしゃるかを伺えればと思います。
(答)スマホ法は、日本にとって全く新しい法律ですので、ステークホルダーとのコミュニケーションが極めて重要だと考えています。当委員会としては、継続的なコミュニケーションは、別に施行前に限った話ではなくて、施行後もずっと必要だと思います。今現在も調整が続いていること自体は、お互いきちんと納得し合える関係を作っていく上で非常に重要なことだと思っているところでございます。
(問)ただ、スマホ法の影響を受けるアプリ事業者さんなどにしてみたら、「もうちょっと早くしてくれないか」とか、「施行ですぐに状況が変わるのだろうか」と思っている方も多いとは思うのですけれども、その辺りはいかがですか。
(答) 当委員会が考えるコミュニケーションの相手というのは指定事業者だけではなくて、いわゆるゲーム会社などのアプリ事業者さんなどとも鋭意継続的なコミュニケーションをとっているところでございます。関係者、ステークホルダー全体の御理解を得ながら、この法律の施行に臨んでいきたいと思っております。
(問)分かりました。もう一つ別の話をお伺いしますが、先日、経済産業省さん等々との連名で経済安全保障と独占禁止法に関する事例集を発表されました。普段だと、公正取引委員会といえば、違反の疑いのある事例というのを公表するのが常で、違反にならない事例を出すというのは珍しいと思うのですけれども、この辺りは時代の趨勢として仕方ないという受け止めなのでしょうか。
(答)違反にならない事例の公表は、例えば、2年ほど前に「グリーン社会の実現に向けた事業者等の活動に関する独占禁止法上の考え方(グリーンガイドライン)」を策定した際にも、生産設備の共同廃棄など、「このような場合には、独禁法上問題になりません」という事例を示しておりまして、それ自体は既に行っていることだと思います。古谷前委員長もエンフォースメントとアドボカシーの両立を掲げていましたが、アドボカシー、特に、政策的な取組事項につきましては、企業の方の予見可能性をきちんと確保することが非常に重要であり、それが日本経済が今後成長していくための一つの大きな要素になると思っております。そのため、予見可能性を高めるという意味において、「このような行為は懸念がある」とか、あるいは「このような行為は問題ありません」とお示しすることは、今後もいろいろな分野で行っていきたいと思っております。
(問)最近では、国土交通省さんの会議で、航空機の離発着に関する調整について独占禁止法上の考え方を示しておられましたけれども、経済がシュリンクしていく中での必要性から、かつての適用除外カルテルの再活用といったことは考え得るのでしょうか。
(答)予見可能性を高めていく上では、個々の事例に即して、公正取引委員会がどのように対応するかというのが、企業の方としても一番必要な情報でしょうし、我々も、御指摘の例のように一律に対応するというよりは、今回は経済安全保障の推進が契機となりましたが、そういった具体的な事例が生じたときに独占禁止法上どう考えられるのかをきめ細かく示すという手法が、予見可能性を高める上で今は一番効果的だろうと思っているところでございます。
(問)スマホ法について質問があります。スマホ法とDMAと比較すると、現時点でスマホ法の規制の対象となるのは3社ですが、DMAでは、例えばマイクロソフトだとかアマゾン、メタなども含まれています。今後の方針として、少し気が早いとは思いますが、更に規制対象を拡大していくというお考えはあるのでしょうか。
(答)スマホ法を制定したのは、スマートフォンが日本国民に特に深く浸透していることを踏まえております。事前規制型の法律というのは公正取引委員会にとっても新しいものですので、まずはスマホ法をきちんと施行し、運用していくことが大事かなと考えています。当面はスマホ法の運用に注力して、そこから先というのは、AIの問題も含めて、デジタル市場は非常に変化が激しいものですから、そういった動きをよく注視していくということに尽きると思っております。
(問)ありがとうございます。あともう1点なのですけれども、トランプ大統領は、デジタル市場への規制に強く反発しているということですけれども、今後の、例えば、追加関税などのリスクについてどのように考えられているのかをお願いします。
(答)通商交渉は私自身も全く権限の外ですし、スマホ法に関する政府間でのやり取りの詳細は差し控えますが、先ほど申し上げたように、公取委は、ステークホルダーの方と継続的なコミュニケーションを続けておりますし、また、いろいろな機会に、スマホ法は月間利用者が4000万人以上かどうかという客観的基準で指定事業者を定めていて、この基準に日本企業が当てはまれば、内外無差別で当然に指定事業者となるということや、セキュリティの確保と、公正かつ自由な競争の両立を図るものですよということを強く訴えているところでございます。先般、日米首脳会談の後に米国が単独でファクトシートという文書を公表しましたが、我々が主張していることが踏まえられた形で書かれていたものと受け止めております。
(問)スマホ法と取適法それぞれについて伺いたいのですけれども、まず、スマホ法に関連して、検索サービスについて、EUがグーグルの生成AIサービスの調査に踏み切ったところですが、日本の公取委としては、こういった動きをどう見ていらっしゃるのか、また、必要な対応について今どのようなことを検討していらっしゃるのかということについてお願いいたします。
(答)報道については承知しておりますし、EUのプレスリースも拝見しましたが、まだ調査が開始されたばかりなので、EUの動きについてのコメントは控えたいと思いますが、公取委としては2年余り前に、「ニュースコンテンツ配信分野に関する実態調査報告書」を公表して、その中でプラットフォーム事業者とニュースメディア事業者の許諾料を含む取引条件等について十分な協議を行うことが望ましく、プラットフォーム事業者が十分な協議に応じないまま取引条件を一方的に変更する場合には、独占禁止法上問題となることなどを指摘しております。我々としますと、今申し上げた考え方を踏まえつつ、当事者間の交渉を通じて課題の解消に向けた取組が進められるということが一番ですので、関係事業者からもよく話を聞きながら取組の進捗を注視してまいりたいと思っております。ただ、報告書を公表してからも、生成AIの状況は当時予想もしなかったぐらいに急速に進展しております。それによって、ニュースコンテンツ配信分野における競争環境やAIとの関係にも変化が見られることは事実ですので、今後、生成AIが競争にどのような影響を与えるのか、我々もしっかりと注視していきたいと思っているところでございます。
(問)先ほどもお話がありました、スマホ法で利便性が上がるという点ですが、利用者からすると、アップルやグーグルのシステムが開放されることになって、セキュリティの問題は大丈夫なのか不安もあるかと思います。先ほど、ステークホルダーとの対話とおっしゃっていましたけれども、例えば、アップルやグーグル、あるいはアプリを制作するメーカーとの対話など、具体的にこんなことに取り組んでいきたいというお考えがありましたら是非お願いいたします。
(答)指定事業者の方からすればセキュリティの確保はもとより非常に大きな関心事項でしょうし、他方、アプリ事業者の方などからすれば、手数料がどうなるかなどに関心を持っておられて、それぞれ関心分野は異なりますが、公正取引委員会としてはそのバランスをどう取っていくかというのを対話の中で常に考えております。他のアプリストアにシステムを開放するとしても、指定事業者は当然セキュリティ部分では一定程度チェックされるでしょうし、チェックには手数料がかかるという考え方はあろうかと思います。その辺りの諸々の要素を勘案しながら、この法律の趣旨をきちんと完遂するためにはどのようなルール作りが良いかということを考え続け、それぞれとコミュニケーションをとっているというところでございます。
(問)もう一点、取適法は1月1日に施行ということで、春闘の前に施行されますけれども、中小企業では賃上げ疲れが囁かれていたり、防衛的賃上げも依然として多いというところで、なかなか賃上げについては難しい課題が多いと思います。今回の春闘は非常に難しい状況での賃上げとなる局面かと思うのですけれども、今後に向けて、どういったところに焦点を当てて公取委として取り組んでいきたいかということについてお願いいたします。
(答)統計によって差異はあると思いますが、今、資本金10億円以上の大企業ですと労働分配率が30パーセント台、いわゆる中小企業は70パーセントぐらいで、中小企業の方々も賃上げを頑張っておられるという状況だと思います。ただ、公正取引委員会が現行の下請法あるいは独禁法の優越的地位の濫用を運用している中でも、様々な問題が至る所で見受けられるということは間違いございませんので、取適法が施行されましたら、今回、規制対象となる行為類型に加えられました協議に応じない一方的な価格決定等にも焦点を当てながら、しっかりとこの法律を執行してまいります。また、エンフォースメントはどうしても点になりますが、公取委のキャパシティにも限りがある中でも、いかに面的な効果に広げていくかということにも注力していきたいと思っております。
(問)委員長として、特に次の春闘を警戒されていたりですとか、難しい局面がずっと続いてきているので違反行為の懸念がより強まっているという感触ですとか、そういったものはございますか。
(答)次の春闘について予測やコメントをすることはなかなか難しいのですが、ただ、一定の経済環境の中で公取委としてもできるだけのことをしていきたいと思います。また、価格転嫁を進めていく上では、発注者の方が協議に応じるという姿勢も大事ですが、受注者の方も、例えば自社のバーゲニングパワーが最も強いタイミングで協議を申し込むとか、価格転嫁を実現するための工夫が求められると考えております。そのようなことを今後の周知活動でもよく訴えていきたいと思っております。
(問)私も取適法のところで、先ほどの質問と関連しますが、先ほどの委員長の御説明の中で、取適法で規制できない部分についての対応を研究会で検討していくということでした。恐らく300人以下の従業員を抱える企業が同じく300人以下の企業に発注するような場合のことを想定されているのだと思うのですけれども、そのような部分で行われる取引を取適法の適用対象に含めるよう、今後法改正を行うにしても時間がかかると思います。それまでにどうやって規制なり指導なりしていくのかを具体的に教えてもらえたらと思います。
(答)取適法の適用対象とならなくても、元々、一般法である独占禁止法の適用対象ではあるのですが、ただ、独占禁止法の優越的地位の濫用などは、どうしても取適法のように簡易迅速には対応できないものですから、取適法と独占禁止法の狭間をどう埋めていくか、例えば、何らかのルールなりガイドラインなりが必要であれば定めるといったことを今考えているところです。今後の企業取引研究会の中で有識者の皆様にも御議論いただきながら、最適解を見出していくという努力を積み重ねていきたいと思っております。
(問)取適法について2点ございます。まず1点目なのですけれども、面的執行の強化で事業所管省庁とともに活動する部分が増えてくるわけですけれども、とはいえ、公正取引委員会の人員のリソースには限りがあるわけで、今回の法改正を受けて公正取引委員会そのものの人員を増員するようなお考えはあるのでしょうか。
それから2点目ですけれども、先ほど取適法の動画が非常に好評ということで、今、私もYouTubeでチェックしてみたのですけれども、15秒バージョンが958万回再生、そのほかに五つ、取適法の主要な項目についての動画があるのですけれども、面的執行の強化に関しては75万回、手形払等の禁止、それから従業員基準の追加も62万回、それから特定運送委託の追加についても58万回、協議に応じない一方的な価格決定の禁止は56万回再生されています。恐らく中央省庁が作った動画で、これだけの再生回数は異例なことだと思うのですけれども、この数字についての受け止めや、再生回数が伸びたことについて、どのように分析されているかというところをお聞かせください。
(答)公正取引委員会の執行体制の強化は、下請法の改正時の衆議院・参議院の附帯決議にも記載されておりまして、公正取引委員会としては非常に大きな課題です。先般の参議院予算委員会でも野党の先生から御質問を受けたのですが、そのときにも、現在、取引適正化に係る法執行のために常勤、非常勤を合わせて137人の増員を要求しておりますが、公正取引委員会の定員は現在1,000人にも満たないですので、それと比較すると、非常勤も含めてではありますが、137名というのは大規模な定員要求ですと、答弁したところです。まだ予算編成過程ですので、そのうちどのくらいが査定当局に認められるかは分かりませんが、衆議院・参議院での附帯決議において、公正取引委員会の執行体制の強化という意思も示されていますので、我々としては大きく増員が図られることを期待しているところでございます。また、今回の定員要求に限らず、公正取引委員会は、業務の範囲が広がっている割には小さな所帯ですので、もちろん、極力効率的に業務に取り組んでいきますが、引き続き、人員と組織の在り方も含めて、体制の強化を常に考えていく必要があると思っております。
また、2点目にお尋ねいただいた広報についてですが、法律の施行という場面では関係者の方への周知が一番重要ですので、動画の視聴回数が増えることは、法律の御理解につながる入口の部分として非常に有り難い話です。ただ、取適法は発注者側、受注者側として多くの国民の皆様が関わる法律だと思いますので、今の数字に満足することなく、施行後も含めて引き続き周知活動を頑張りたいと思っております。
(問)ありがとうございました。すみません、追加で1問お願いいたします。取適法で協議を行わない一方的な価格決定を禁止しているわけですけれども、協議した後に、結果的に適正な価格で決まったかどうかというところは当事者同士の契約の話なので、恐らく公正取引委員会でも踏み込めないと思います。とは言え、お話にあったように、実質賃金のプラスを実現していくという部分からすると、やはり、あるべき水準というか、上げるべき数値というのがある程度出てくると思います。日本は自由主義経済なので、役所がそこまで踏み込まないということは重々承知しているのですけれども、協議を行った結果、例えば、運賃等が上がったのかとか、フォローアップ調査であるとか、そういった代金の上昇をサポートする策のようなものは何か具体的にお考えでしょうか。
(答)おっしゃるとおり、日本は自由主義経済なので、協議の最終的な結果にまで我々が介入することはできませんが、他方で、実質賃金をプラスにしていくことは非常に大きな課題です。まずは今回改正された取適法の施行に全面的に注力していきますが、その執行の中で様々な課題も浮かび上がってくると思います。これについては、毎年数十万社を対象とする大規模な書面調査を行っていますし、また、顕名あるいは匿名での情報提供をインターネットも含めて受け付けるという体制も敷いておりますので、それらから得られる情報等を注視しながら考えていきたいと思います。既にある程度把握されている課題については、企業取引研究会での議論と並行して、新たな課題に対して何ができるかということを公正取引委員会としても真剣に考えていきたいと思います。
(問)スマホソフトウェア競争促進法についてお聞きしたいのですけれども、全面施行が12月18日ということで、これまで7年くらいかけて諸々の議論等をされてきていると思うのですけれども、全面施行に至った御所感と、この法律の意義を改めて伺えればと思います。
(答)冒頭申し上げたように、スマートフォンというのは国民生活、経済生活にも必須のものとなっていますので、まず、来週の全面施行されるスマホ法の運用に注力していきたいと思います。他方、デジタルを取り巻く世界というのは、先ほども申し上げましたが、生成AIの登場で急速に変化しておりますので、その中で我々が何をすべきかというのは、なかなか見通しを立てにくいということもあります。そのため、事業者のグローバルな活動等、デジタル市場の状況をよくフォローした上で、EUあるいは米国等の諸外国の当局の取組もよく注視しながら、実態を見てアジャイルに対応していくことが必要だと考えております。
(問)スマホ法について、そもそもの話で恐縮なのですが、スマホソフトウェア市場におけるビッグテックの寡占の弊害というのがどこにあるのかを改めて伺えないでしょうか。また、ビッグテックは現時点では対応策を発表していませんが、彼らにどのような対応を求めるかということも伺えないでしょうか。よろしくお願いします。
(答)今、スマートフォンについてよく耳にするのは、アプリ事業者の方からの、手数料が30パーセントという高い水準であるという声や、あるいは、新しいものを提供したいけれども阻害されているという声がございます。スマホ法では、手数料は無償にしなければならないとはしておらず、必要な手数料を取ることは構わないが、それが新規参入を阻害するような水準としてはならないとしています。その水準とは具体的にはどれぐらいなのかという点についても、諸外国の状況も踏まえながら、指定事業者と話し合いつつ、検討している最中でございます。
(問)ビッグテック側にどのような対応を求めるかという点はいかがでしょうか。
(答)継続的なコミュニケーションにより、この法律の趣旨は指定事業者の方にも御理解いただいているところでございます。ただ、当然、指定事業者の方としてもそれぞれの経営方針があるわけですので、その方針とこのスマホ法の趣旨を整合していただくように我々としても理解を求めていますし、指定事業者の方も我々の声に耳を傾けてくれていると思っているところでございます。
(問)もう1点、スマホ法で利用者側にどのようなメリットが出てくるのかということがなかなか伝わりにくい部分があると思うので、その辺りの委員長のお考えを伺えますでしょうか。
(答)抽象的に言えば、多様な選択肢が用意されることと、良質なものがより低廉に提供されるということが一番実現してほしいところになります。現在は、ブラウザもアプリストアも、全てOSの系列のものがスマホに初期からインストールされていてデフォルトになっていますが、例えば、ブラウザであれば、よりセキュリティに配慮したブラウザや、あるいは、広告をシャットアウトするブラウザなど、消費者が自分に合ったブラウザなどをチョイススクリーンで選択できるようになれば、国民生活にもプラスでしょうし、結果として競争も生まれ、さらに良質なサービスがより低廉な価格で提供される可能性もございます。そのようなことが実現することを期待しています。
(問)取適法について、初歩的な質問ですけれども、規制の対象となる取引に、発荷主が運送事業者に対して物品の運送を委託する取引が追加されましたが、今後、その取引について違反行為があれば、公取委から勧告が行われる可能性もあると思っております。実際に勧告案件としてどのような事例が予想されるでしょうか。また、今後、荷主の企業がどのようなところに気を付けたらいいのか、今から準備すべきことはどのようなことなのかをお伺いしたいです。
(答)物流につきましては、先ほど申し上げたように、発荷主と運送事業者の間の取引というのは、現在でも独占禁止法の対象であるので、これまでにも独占禁止法に基づいて警告等は行っておりますが、よく問題にされる、荷待ち、あるいは積み込み、荷下ろしなどの行為、例えば、追加料金を払わずに何時間も待たせる、あるいはそもそも契約にないのに無償で積み込みをさせるということは、新しい取適法では、不当な経済上の利益の提供要請の禁止に抵触しますので、実際にそういった問題がないかを具体的案件に即して対応していきたいと思っております。
(問)すみません。荷主企業はどのようなことに気を付けるといいのでしょうか。
(答)今までは、運送事業者に何をやってもらうのかについて、契約上、明瞭に示されていないと思われる取引も多々あったと聞いておりますので、荷主の方には運送事業者の方にどこまで何を頼むか、その代金はいくらかというのをきちんと書面等にも明記していただいて、荷主の方と運送事業者の方がお互いに契約上もはっきりと分かる関係になることが取引の適正化の第一歩かと思います。
(問)スマホ新法の関係でお伺いしたいのですが、委員長からも先ほど言及がありましたけれども、10月下旬の日米首脳会談後に米国から発出されたファクトシートに、スマホ法について、米国企業を差別しないような運用がされるといった内容が書かれました。日本がスマホ法の全面施行を控えたタイミングで、米国側が米国企業を差別しないことなどに言及したのは、牽制や釘を刺すような意図があるのかと思っていたのですけれども、日本がスマホ法の全面施行を控えたタイミングで、米国側が米国企業を差別しないことなどに言及したファクトシートを発出したことをどう捉えているかを改めて伺ってもよろしいですか。
(答)お尋ねのファクトシートは米国から単独で発信されたものですので、そのことについて我々からはコメントし難いですが、日本のスマホ法への米国内での関心の高まりからスマホ法に関して記述されたファクトシートを出されたのだろうと思います。ただ、ファクトシートでスマホ法について書かれた内容自体は、当委員会が常に申し上げていることと整合的であり、それが全てでございます。
(問)では、米国のファクトシートが出されたことを踏まえて何か公正取引委員会の姿勢に変更があるとか、そういったことはないということでしょうか。
(答)当初から一貫して、指定事業者の方や、あるいはアプリ事業者の方等との継続的なコミュニケーションを続けていくという姿勢に何ら変わりはございません。
(問)フリーランス法が11月で施行から丸1年を迎えますが、摘発案件の違反事業者の中には、フリーランス法を遵守していたつもりだったけれども、違反を認定されて、公正取引委員会から勧告を受けたという話もありました。私自身も、知人から、フリーランス法への対応はどうしたらよいのかと聞かれたこともあったのですが、そういった話が日常に聞かれるような状況にあるということで、フリーランス法の周知などは十分だったのかについて、お伺いします。
(答)フリーランス法についても、イラストレーター兼漫画ブロガーのBUSON(ブソン)氏のオリジナルキャラクター「しきぶちゃん」とタイアップした広報活動等を実施しており、多くの方に御覧いただいたものと思っております。他方、フリーランス法を執行する中で比較的多いケースが、本社の方、あるいは法務部門の方はフリーランス法を理解しているけれども、現場の担当者の方がフリーランス法を認識・理解してなかったため、違反とされるような行為が改善されてこなかったという例が多々あります。これは会社内のコンプライアンスの問題でもありますので、今後、公取委側でフリーランス法そのものの周知活動を行っていくとともに、事業者さんの方でも、コンプライアンス体制を会社内で整えていくことをお願いしていきたいと考えています。社内でのコンプライアンス体制の確立というのは、フリーランス法に限らず競争法全体について重要ですので、この点については、引き続きいろいろな場面で申し上げていきたいと思っています。
(問)先ほどの質問の中で、いわゆる荷待ち、あるいは荷受けについて書面にきちんと明記する、契約で締結することが望ましいというお話だったと思うのですけれども、改正物流法では荷待ち・荷受け等の役務については書面交付が義務付けられた形になっていると思います。これは結果的に、この取適法と改正物流法の二つの法律が組み合わされることによって、より改正物流法の実効性を高めていくためのサポートを公正取引委員会にもしていただけるという理解でよろしいのでしょうか。
(事務方)御指摘のとおりでございまして、改正物流法等に基づいて運賃や附帯役務の対価等について記載した書面の交付を義務付けていると国土交通省から聞いております。そして、改正物流法の考え方は、今回の取適法の考え方でも同様でございまして、運用基準等で明らかにしているところでございますので、今後、国土交通省と公正取引委員会とで連携しながら対応していきたいと考えております。
(答)物流は日本経済の肝だと思うので、我々も力を入れて対応していきたいと思っております。
以上