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(平成31年2月22日)株式会社山陽マルナカに対する審決について(食品,日用雑貨品,衣料品等の小売業者による優越的地位の濫用事件)

平成31年2月22日
公正取引委員会

 公正取引委員会は,被審人株式会社山陽マルナカ(以下「被審人」という。)に対し,平成23年10月19日,審判手続を開始し,以後,審判官をして審判手続を行わせてきたところ,平成31年2月20日,被審人に対し,独占禁止法の一部を改正する法律(平成25年法律第100号)による改正前の独占禁止法(以下「独占禁止法」という。)第66条第2項及び第3項の規定に基づき,平成23年6月22日付けの排除措置命令(平成23年(措)第5号)を変更するとともに,同日付けの課徴金納付命令(平成23年(納)第87号)の一部を取り消す旨の審決を行った(本件平成23年(判)第82号及び第83号審決書については,当委員会ホームページの「報道発表資料」参照。なお,公表する審決書においては,納入業者に係る事業上の秘密に配慮し,マスキングの措置を施している。)。

1 被審人の概要

事業者名 本店所在地

株式会社山陽マルナカ
法人番号8260001002730

岡山市南区平福一丁目305番地の2

2 被審人の審判請求の趣旨

(1) 平成23年(判)第82号審判事件
 平成23年(措)第5号排除措置命令の全部の取消しを求める。
(2) 平成23年(判)第83号審判事件
 平成23年(納)第87号課徴金納付命令の全部の取消しを求める。

3 主文の内容

(1) 平成23年6月22日付けの排除措置命令(平成23年(措)第5号)を審決別紙1のとおり変更する。
(2) 平成23年6月22日付けの課徴金納付命令(平成23年(納)第87号)のうち,1億7839万円を超えて納付を命じた部分を取り消す。
(3) 被審人のその余の審判請求をいずれも棄却する。

4 本件の経緯

平成23年
6月22日 排除措置命令及び課徴金納付命令
8月17日 被審人から排除措置命令及び課徴金納付命令に対して審判請求 
10月19日 審判手続開始
11月30日 第1回審判

平成28年
2月16日 第14回審判(審判手続終結)
平成30年
1月23日 審決案送達
2月5日 被審人から審決案に対する異議の申立て及び委員会に対する直接陳述の申出
4月17日 直接陳述の聴取
平成31年
2月20日 審決

5 原処分の原因となる事実

 被審人は,遅くとも平成19年1月から平成22年5月18日までの間,自己の取引上の地位が「特定納入業者」(注1)に優越していることを利用して,特定納入業者に対し,正常な商慣習に照らして不当に,[1]新規開店,全面改装,棚替え等に際し,特定納入業者の従業員等を派遣させ,[2]新規開店又は自社が主催する催事等の実施に際し,金銭を提供させ,[3]食品課商品(注2)のうち,被審人が独自に定めた販売期限を経過したものを返品し,[4]食品課商品のうち季節商品の販売時期の終了等に伴う商品の入替えを理由として割引販売を行うこととしたもの及び食品課商品又は日配品課商品(注3)のうち全面改装に伴う在庫整理を理由として割引販売を行うこととしたものについて,取引の対価の額を減じ,[5]クリスマスケーキ等のクリスマス関連商品を購入させていたものであって,以上の行為(以下「本件各行為」という。)は独占禁止法第2条第9項第5号(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律〔平成21年法律第51号。以下「改正法」という。〕の施行日である平成22年1月1日前においては平成21年公正取引委員会告示第18号による改正前の不公正な取引方法〔昭和57年公正取引委員会告示第15号〕〔以下「旧一般指定」という。〕第14項)に該当し,独占禁止法第19条に違反するものである(以下,原処分で認定された違反行為を「本件違反行為」という。)。独占禁止法第20条の6の規定により,本件違反行為期間は平成19年5月19日から平成22年5月18日までの3年間であり,本件違反行為のうち改正法の施行日である同年1月1日以後に係るものについて,被審人の特定納入業者165社それぞれからの購入額(合計額は222億1605万4358円)を前提に算出された課徴金の額は2億2216万円である。
 (注1) 「特定納入業者」とは,納入業者(被審人が自ら販売する商品を,被審人に直接販売して納入する事業者のうち,被審人と継続的な取引関係にある者をいう。以下同じ。)のうち取引上の地位が被審人に対して劣っている者をいう。
 (注2) 「食品課商品」とは,被審人の食品課が取り扱っている調味料等の商品をいう。
 (注3) 「日配品課商品」とは,被審人の日配品課が取り扱っている牛乳等の商品をいう。

6 審決の概要

(1) 本件の争点

ア 本件各行為は,被審人が,自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して,正常な商慣習に照らして不当に行ったものか(争点1)
イ 本件各行為は,独占禁止法上一つの優越的地位の濫用に該当するか(争点2)
ウ 本件における違反行為期間(独占禁止法第20条の6にいう「当該行為をした日から当該行為がなくなる日までの期間」をいう。以下同じ。)(争点3)
エ 本件各命令(注4)の適法性(争点4)
 (注4) 「本件各命令」とは,平成23年6月22日付け排除措置命令(平成23年(措)第5号。以下「本件排除措置命令」という。)及び同日付け課徴金納付命令(平成23年(納)第87号。以下「本件課徴金納付命令」という。)をいう。

(2) 争点に対する判断の概要

ア 争点1について
(ア) 優越的地位の濫用規制の趣旨
 独占禁止法第19条において,自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して,正常な商慣習に照らして不当に同法第2条第9項第5号(改正法施行日前においては旧一般指定第14項〔第1号ないし第4号〕)に該当する行為をすることが不公正な取引方法の一つとして規制されているのは,自己の取引上の地位が相手方に優越している一方の当事者(以下「甲」という。)が,相手方(以下「乙」という。)に対し,その地位を利用して,正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることは,相手方の自由かつ自主的な判断による取引を阻害するとともに,相手方はその競争者との関係において競争上不利となる一方で,行為者はその競争者との関係において競争上有利となるおそれがあり,このような行為は公正な競争を阻害するおそれ(公正競争阻害性)があるといえるからである。  

(イ) 優越的地位の濫用の判断基準
 優越的地位の濫用規制の趣旨に照らせば,甲が乙に対し,取引上の地位が優越しているというためには,甲が市場支配的な地位又はそれに準ずる絶対的に優越した地位にある必要はなく,乙との関係で相対的に優越した地位にあれば足りると解される。また,甲が乙に対して優越した地位にあるとは,乙にとって甲との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すため,甲が乙にとって著しく不利益な要請等を行っても,乙がこれを受け入れざるを得ないような場合をいうと解される。
 この判断に当たって,乙の甲に対する取引依存度が大きい場合,甲の市場におけるシェアが大きい場合又はその順位が高い場合,乙が他の事業者との取引を開始若しくは拡大することが困難である場合又は甲との取引に関連して多額の投資を行っている場合,また,甲との取引の額が大きい,甲の事業規模が拡大している,甲と取引することで乙の取り扱う商品又は役務の信用が向上する,又は甲の事業規模が乙のそれよりも著しく大きい場合には,乙は甲と取引を行う必要性が高くなるため,乙にとって甲との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すことになりやすいものといえる。
 また,「不利益行為」(注5)を甲が行い,乙がこれを受け入れている事実が認められる場合,これを受け入れるに至った経緯や態様によっては,それ自体,甲が乙にとって著しく不利益な要請等を行っても,乙がこれを受け入れざるを得ないような場合にあったことをうかがわせる重要な要素となり得るものというべきである。なぜなら,取引関係にある当事者間の取引を巡る具体的な経緯や態様には,当事者間の相対的な力関係が如実に反映されるからである。
 したがって,甲が乙に対して優越した地位にあるといえるか否かについては,[1]乙の甲に対する取引依存度,[2]甲の市場における地位,[3]乙にとっての取引先変更の可能性,[4]その他甲と取引することの必要性,重要性を示す具体的事実のほか,乙が甲による不利益行為を受け入れている事実が認められる場合,これを受け入れるに至った経緯や態様等を総合的に考慮して,乙にとって甲との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すため,甲が乙にとって著しく不利益な要請等を行っても,乙がこれを受け入れざるを得ないような場合であるかを判断するのが相当である。
 そして,甲が乙に対して優越的な地位にあると認められる場合には,甲が乙に不利益行為を行えば,通常は,甲は自己の取引上の地位が乙に対して優越していることを利用してこれを行ったものと認められ,このような場合,乙は自由かつ自主的な判断に基づいて不利益行為を受け入れたとはいえず,甲は正常な商慣習に照らして不当に独占禁止法第2条第9項第5号所定の行為を行っていたものと認めるのが相当である。
 (注5) 「不利益行為」とは,独占禁止法第2条第9項第5号イないしハが規定する行為をいう。

(ウ) 被審人の取引上の地位が165社に対して優越しているか否か
a 被審人の市場における地位
 被審人は,岡山県の区域内において食料品等の小売業を営む事業者として有力な地位にあったと認められる。
b 被審人と165社の関係
(a) 165社のうち32社については,前記aの事実に加え,32社の被審人に対する取引依存度が大きいこと等の事実を考慮すれば,32社にとって,被審人との取引の継続が困難になることは事業経営上大きな支障を来すものとうかがわれる。
 また,32社は,公正取引委員会からの報告命令における「被審人との取引を継続できず,被審人に代わる取引先を見つける必要が生じた場合の状況」についての設問(以下「取引先変更可能性の設問」という。)に対し,「被審人に代わる取引先を見つけること又は他の取引先との取引を増やすことで被審人との取引停止に伴う損失を補うことは困難である」との回答(以下「取引先変更困難との回答」という。)をし,被審人との取引を継続することの必要性についての設問(以下「取引継続必要性の設問」という。)に対し,これを肯定する回答等をしている。この点,上記に考慮した事実からすれば,32社には被審人との取引の維持・継続を重要視するに足りる客観的状況が認められるものといえ,上記の回答内容等はこれら客観的状況に沿うものといえる。
 そして,32社については,後記(エ)aないしdに認定する被審人による不利益行為を受け入れていた事実が認められる。同(オ)に詳述するとおり,32社がこれら不利益行為を受け入れるに至った経緯や態様は,それ自体,被審人が32社に対してその意に反するような要請等を行っても,これが甘受され得る力関係にあったことを示すものである。このことからすれば,32社は,被審人が著しく不利益な要請等を行っても,これを受け入れざるを得ないような場合にあったことがうかがわれる。
 以上を総合的に考慮すれば,32社は,被審人との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すため,被審人が著しく不利益な要請等を行っても,これを受け入れざるを得ないような場合にあり,被審人の取引上の地位は32社に対して優越していたものと認められる。
(b) 165社のうち28社については,前記aの事実に加え,28社の取引先に対する取引依存度における被審人の順位が高いこと等の事実を考慮すれば,28社にとって,被審人との取引の継続が困難になることは事業経営上大きな支障を来すものとうかがわれる。
 また,28社は,公正取引委員会からの報告命令における取引先変更可能性の設問に対し,取引先変更困難との回答をし,取引継続必要性の設問に対し,これを肯定する回答等をしている。この点,上記に考慮した事実からすれば,28社には被審人との取引の維持・継続を重要視するに足りる客観的状況が認められるものといえ,上記の回答内容等はこれら客観的状況に沿うものといえる。
 そして,28社についても,後記(エ)aないしdに認定する被審人による不利益行為を受け入れていた事実が認められるところ,同(オ)のとおり,28社がこれら不利益行為を受け入れるに至った経緯や態様からすれば,28社は,被審人が著しく不利益な要請等を行っても,これを受け入れざるを得ないような場合にあったことがうかがわれる。
 以上を総合的に考慮すれば,28社は,被審人との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すため,被審人が著しく不利益な要請等を行っても,これを受け入れざるを得ないような場合にあり,被審人の取引上の地位は28社に対して優越していたものと認められる。
(c) 165社のうち51社については,前記(a)又は(b)と同等の状況にはないとしても,前記aの事実に加え,51社において被審人との取引を主に担当している営業拠点の被審人に対する取引依存度が大きいこと,あるいは,同営業拠点の取引先に対する取引依存度における被審人の順位が高いこと等の事実を考慮すれば,51社にとっては,被審人との取引の継続が困難となれば,当該営業拠点の収益の大幅な落込みが予想され,岡山県の区域内における事業方針の修正を余儀なくされるなど,全社的にみてもその後の事業経営に大きな支障を来すことが看取できる。
 また,51社は,公正取引委員会からの報告命令における取引先変更可能性の設問に対し,取引先変更困難との回答をし,取引継続必要性の設問に対し,これを肯定する回答等をしている。この点,被審人との取引の継続や被審人からの各種要請等の受入れを判断するのは,通常,被審人との取引を主に担当している営業拠点において,日常的に被審人と密接な関係を築いている当該取引の担当者であるところ,上記に考慮した各事実からすれば,51社には,当該営業拠点や当該担当者が被審人との取引の維持・継続を重要視するに足りる客観的状況が認められるものといえ,上記の回答内容等はこれら客観的状況に沿うものといえる。
 そして,51社についても,後記(エ)aないしdに認定する被審人による不利益行為を受け入れていた事実が認められるところ,同(オ)のとおり,51社がこれら不利益行為を受け入れるに至った経緯や態様からすれば,51社は,被審人が著しく不利益な要請等を行っても,これを受け入れざるを得ないような場合にあったことがうかがわれる。
 以上を総合的に考慮すれば,51社は,被審人との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すため,被審人が著しく不利益な要請等を行っても,これを受け入れざるを得ないような場合にあり,被審人の取引上の地位は51社に対して優越していたものと認められる。
(d) 165社のうち16社については,前記(a)ないし(c)と同等の状況にはないとしても,前記aの事実に加え,資本金額,年間総売上高,従業員数などに照らして16社の事業規模が極めて小さいと認められること等の事実を考慮すれば,被審人に対する取引依存度が小さいことを勘案しても,なお16社にとって,被審人との取引の継続が困難になることは事業経営上大きな支障を来すものとうかがわれる。
 また,被審人との取引に係る取引先変更可能性や取引の必要性,重要性に関する16社の公正取引委員会からの報告命令に対する回答内容等は,上記に考慮した客観的状況に沿うものといえる。
 そして,16社についても,後記(エ)aないしdに認定する被審人による不利益行為を受け入れていた事実が認められるところ,同(オ)のとおり,16社がこれら不利益行為を受け入れるに至った経緯や態様からすれば,16社は,被審人が著しく不利益な要請等を行っても,これを受け入れざるを得ないような場合にあったことがうかがわれる。
 以上を総合的に考慮すれば,16社は,被審人との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すため,被審人が著しく不利益な要請等を行っても,これを受け入れざるを得ないような場合にあり,被審人の取引上の地位は16社に対して優越していたものと認められる。
(e) 165社のうち38社については,審決別紙5に認定した事実をみても,前記(a)ないし(d)と同等の状況にあるとは認められない。
 これらの事情を総合的に考慮すれば,前記aの事実を勘案しても,38社にとって,被審人との取引の継続が困難になることが直ちに事業経営上大きな支障を来すものとは認められない。
 また,後記(オ)のような被審人による不利益行為を受け入れるに至った経緯や態様を勘案しても,38社については,被審人との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すために,被審人が著しく不利益な要請等を行ってもこれを受け入れざるを得ないような場合にあったとまではなお断ずることはできない。
 その他,被審人が38社に対して優越的な地位にあったと認めるに足りる的確な証拠はない。

(エ) 本件各行為は不利益行為に当たるか
a 本件従業員等派遣
(a) 従業員等の派遣を受ける行為が不利益行為となる場合
 被審人と納入業者との間の取引は買取取引であるが,このような取引についてみれば,売主は,買主に商品を引き渡すことにより取引契約上の義務を履行したこととなるところ,買主が小売業者である場合に,買主の新規店舗の開設,既存店舗の改装及びこれらの店舗での開店セール等の際に,買取取引で仕入れた商品を他の陳列棚から移動させる作業や,接客するという作業などは,本来買主が行うべき役務であって,売主が自社の従業員等を派遣して上記のような作業に当たらせること(以下「新規店舗開設等作業のための従業員等派遣」という。)は,売主にとって通常は何ら合理性のないことであり,そのような行為は,原則として不利益行為に当たることになる。
 もっとも,新規店舗開設等作業のための従業員等派遣については,例外的に,[1]従業員等の業務内容,労働時間及び派遣期間等の派遣の条件について,あらかじめ相手方と合意し,かつ,派遣される従業員等の人件費,交通費及び宿泊費等の派遣のために通常必要な費用を買主が負担する場合,[2]従業員等が自社の納入商品のみの販売業務に従事するものなどであって,従業員等の派遣による相手方の負担が従業員等の派遣を通じて相手方が得ることとなる直接の利益等を勘案して合理的な範囲内のものであり,相手方の同意の上で行われる場合は,不利益行為には当たらないと解される(以下「従業員等派遣例外事由」という。)。
(b) 本件に係る判断
 本件従業員等派遣に応じた従業員等の作業内容によれば,本件従業員等派遣は,新規店舗開設等作業のための従業員等派遣であると認められる。
 また,被審人は,従業員等の業務内容等の派遣の条件について,あらかじめ146社(注6)と合意しておらず,かつ,派遣される従業員等の人件費等の派遣のために通常必要な費用を負担していなかったものであり,従業員等派遣例外事由の[1]には該当しない。
 さらに,被審人の要請により派遣された納入業者の従業員等が行う作業は,接客を含め当該納入業者が被審人に納入する商品と他の納入業者が被審人に納入する商品とで区別なく行われたものであって,被審人は,納入業者から本件従業員等派遣を受けるに当たり,当該納入業者から購入する商品を増やす等の見返りを約束するものではなかったものであり,従業員等派遣例外事由の[2]には該当しない。
 以上のとおり,従業員等派遣例外事由には該当せず,その他の特段の事情も認められないことから,本件従業員等派遣は,不利益行為に当たると認められる。
 (注6) 従業員派遣等を行った納入業者
b 本件金銭の提供
(a) 金銭の提供を受ける行為が不利益行為となる場合
 被審人と納入業者との間の取引は買取取引であるが,このような取引についてみれば,売主は,買主に商品を引き渡すことにより取引契約上の義務を履行したこととなるところ,契約等に別段の定めがなく,協賛金等の名目で売主が買主のために本来提供する必要のない金銭を提供することは,提供した金銭がそのまま売主の損失となることから,売主にとって通常は何ら合理性のないことであり,そのような行為は,原則として不利益行為に当たる。
 もっとも,例外的に,協賛金等の名目で提供した金銭について,その負担額,算出根拠及び使途等について,あらかじめ事業者が相手方に対して明らかにし,かつ,当該金銭の提供による相手方の負担が,その提供を通じて相手方が得ることとなる直接の利益等を勘案して合理的な範囲内のものであり,相手方の同意の上で行われる場合は,不利益行為には当たらないと解される(以下「金銭提供例外事由」という。)。
(b) 本件に係る判断
 本件金銭の提供について,被審人と131社(注7)との間における契約等に別段の定めはなく,本件金銭の提供は,被審人の仕入担当者が,各自の担当する131社の担当者に対し,新規開店の際のアドバルーン代等の費用に当てるために金銭の提供を要請し,金銭の提供を受けていたものであり,131社にとっては,本来提供する必要のないものである。
 そして,被審人は,本件金銭の算出根拠及び使途等について,あらかじめ131社に対して明らかにしておらず,かつ,納入する商品の販売促進につながるなど,本件金銭の提供を通じて131社が得ることとなる直接の利益も認められないことから,金銭提供例外事由に該当するとは認められない。
 以上のとおり,金銭提供例外事由には該当せず,その他の特段の事情も認められないことから,本件金銭の提供は,不利益行為に当たると認められる。
 (注7) 金銭の提供を行った納入業者
c 本件返品及び本件減額
(a) 返品及び減額が不利益行為に当たる場合
 被審人と納入業者との間の取引は買取取引であるが,このような取引についてみれば,売主の責めに帰すべき事由がない場合の商品の返品及び代金の減額は,一旦締結した売買契約を反故にしたり,売主に対して,売れ残りリスクや値引き販売による売上額の減少など買主が負うべき不利益を転嫁したりする行為であることから,売主にとって通常は何ら合理性のないことであり,そのような行為は,原則として不利益行為に当たると解される。
 もっとも,返品に関しては,例外的に,[1]商品の購入に当たって,相手方との合意により返品の条件を明確に定め,その条件に従って返品する場合,[2]あらかじめ相手方の同意を得て,かつ,商品の返品によって相手方に通常生ずべき損失を自己が負担する場合,[3]相手方から商品の返品を受けたい旨の申出があり,かつ,相手方が当該商品を処分することが相手方の直接の利益となる場合は,不利益行為には当たらないと解される(ただし,上記[1]については,返品が相手方の得ることとなる直接の利益等を勘案して合理的であると認められる範囲を超えた負担となり,相手方に不利益を与えることとなる場合には,不利益行為に当たる。以下「返品例外事由」という。)。
 また,減額に関しても,例外的に,[1]対価を減額するための要請が対価に係る交渉の一環として行われ,その額が需給関係を反映したものであると認められる場合,[2]相手方から値引き販売の原資とするための減額の申出があり,かつ,当該値引き販売を実施して当該商品が処分されることが相手方の直接の利益となる場合は,不利益行為には当たらないと解される(以下「減額例外事由」という。)。
(b) 本件に係る判断
ⅰ 本件返品について
 (ⅰ) 10社(注8)中1社を除く9社に対する返品
 本件返品のうち9社に対する返品は,被審人の定めた販売期限を経過したことを理由とするものであって,売主の責めに帰すべき事由のない返品である。
 そして,9社に対する返品については,返品例外事由には該当せず,その他の特段の事情も認められないことから,9社に対する返品は,不利益行為に当たると認められる。
  (ⅱ) 前記1社に対する返品
 本件返品のうち前記1社に対する返品については,賞味期限切れの商品が消費者に販売されることを防ぐために,同社において返品を受け入れたものであって,被審人の定めた販売期限の経過を理由とするものであると認めることはできず,他にこれを認めるに足りる証拠はないから,不利益行為に当たるとは認められない。
 (注8) 審査官により本件返品を受けたと主張されている納入業者
ⅱ 本件減額について
 23社(注9)に対する本件減額のうち,半額処分に伴う減額は,被審人が,買取取引で仕入れた食品課商品の入替えを行う際に半額処分を行った場合,又は売り尽くしセールに伴う減額は,被審人が,同セールの際に買取取引で仕入れた食品課商品又は日配品課商品を割引販売した場合に行われたものであって,いずれも売主である納入業者の責めに帰すべき事由のないものである。
 そして,本件減額については,減額例外事由に該当せず,その他の特段の事情も認められないことから,本件減額は,不利益行為に当たると認められる。
 (注9) 本件減額を受け入れた納入業者
d 本件商品の購入
(a) 取引に係る商品又は役務以外の商品の購入要請が不利益行為に当たる場合
 ある事業者と継続的な取引関係にある相手方が,自己の事業遂行上必要としない,又は,その購入を希望していないにもかかわらず,当該取引に係る商品又は役務以外の商品又は役務(以下「不必要商品等」という。)をその事業者から購入することは,当該相手方にとって通常は何ら合理性のないことであり,原則として不利益行為に当たることとなる。
 もっとも,例外的に,相手方に対し特定の仕様を指示して商品の製造又は役務の提供を発注する際に,当該商品又は役務の内容を均質にするため又はその改善を図るため必要があるなど合理的な必要性から,当該相手方に対して当該商品の製造に必要な原材料や当該役務の提供に必要な設備を購入させる場合は,不利益行為には当たらないと解される(以下「商品購入要請例外事由」という。)。
(b) 本件に係る判断
 本件商品は,一般消費者向けに販売されるものであり,被審人と17社(注10)との取引に係る商品ではなく,17社の事業遂行上必要としないものであることは明らかであり,また,被審人は,販売ノルマを設定するなど組織的かつ計画的に17社に対し,繰り返し本件商品の購入を要請するなどした結果,17社が本件商品を購入したことからすれば,17社は自発的に本件商品の購入を希望していたものとは認められず,本件商品は,17社にとって不必要商品等であった。
 そして,被審人が本件商品を17社に販売する行為については,商品購入要請例外事由には該当せず,その他の特段の事情も認められないことから,不利益行為に該当するものと認められる。
 (注10) 本件商品を購入した納入業者
e 小括
 以上のとおり,本件各行為(前記1社に対する返品を除く。)は,いずれも不利益行為に該当するものと認められる。

(オ) 165社が不利益行為を受け入れるに至った経緯や態様等
 被審人は,消費者に販売するために商品を納入業者から購入する大規模な小売業者であり,他方で165社は,自ら製造しあるいは自ら仕入れた商品を,被審人に販売する納入業者であって,165社に対する前記(エ)認定の不利益行為は,このような被審人によるいわゆるバイイングパワーが発揮されやすい取引上の関係を背景としたものである。
 このような背景の下,前記(エ)認定の不利益行為は,165社という多数の取引の相手方に対して,遅くとも平成19年1月から平成22年5月18日までの長期間にわたり,被審人の利益を確保することなどを目的として,役員等の指示の下,組織的かつ計画的に一連のものとして行われたものである。
 以上のような不利益行為を165社が受け入れるに至った経緯や態様は,それ自体,被審人が納入業者一般に対してその意に反するような要請等を行っても,一般的に甘受され得る力関係にあったことを示すものであるから,前記(ウ)において被審人の165社に対する取引上の地位を判断する際に考慮したとおり,前記(エ)認定の不利益行為を受け入れていた納入業者については,被審人が著しく不利益な要請等を行ってもこれを受け入れざるを得ないような場合にあったことをうかがうことができる。

(カ) 優越的地位の濫用に該当するか
 前記(ウ)のとおり,被審人の取引上の地位は127社に対して優越していたことが認められ,また,前記(エ)のとおり,被審人は127社を含む165社に対して不利益行為を行っていたことが認められる。
 そうだとすれば,これら被審人による不利益行為のうち,被審人の取引上の地位が優越していた127社に対する行為は,優越的地位を利用して行われたものと認められ,127社の自由かつ自主的な判断による取引を阻害したものであり,正常な商慣習に照らして不当に行われたものと認めるのが相当である。
 したがって,被審人は,審査官の主張する違反行為期間中,自己の取引上の地位が127社に優越していることを利用して,正常な商慣習に照らして不当に独占禁止法第2条第9項第5号のイ,ロ及びハ(改正法の施行日前については,旧一般指定第14項第1号,第2号及び第3号)に該当する行為を行っていたものであり,当該行為は,優越的地位の濫用に該当すると認められる。
 他方,38社については,被審人が38社に対して優越的地位を有していたことを認めるに足りる証拠はないから,38社に対する行為は,優越的地位の濫用に該当すると認めることはできない。

イ 争点2について
 優越的地位の濫用行為の規制趣旨に照らせば,独占禁止法第2条第9項第5号又は旧一般指定第14項第1号ないし第4号に該当する行為は,これが複数みられるとしても,また,複数の取引先に対して行われたものであるとしても,それが組織的,計画的に一連のものとして実行されているなど,それらの行為を行為者の優越的地位の濫用として一体として評価できる場合には,独占禁止法上一つの優越的地位の濫用として規制されると解するのが相当である。
 これを本件についてみるに,被審人による不利益行為がなされた経緯等については,前記ア(オ)のとおりであり,被審人は,自己の取引上の地位が優越していると認められる127社を含む多数の取引の相手方に対して,遅くとも平成19年1月から平成22年5月18日までの長期間にわたり,自社の利益を確保することなどを目的として,役員等の指示の下,組織的かつ計画的に一連のものとして,上記の不利益行為を行ったものである。
 したがって,127社に対する不利益行為は,優越的地位の濫用として一体として評価することができ,独占禁止法上一つの優越的地位の濫用として規制される。

ウ 争点3について
 優越的地位の濫用の規制趣旨(前記ア(ア))に照らせば,独占禁止法第2条第9項第5号又は旧一般指定第14項第1号ないし第4号に該当する行為を行為者の優越的地位の濫用として一体として評価できる場合には,独占禁止法上一つの優越的地位の濫用として規制されることになり,課徴金算定の基礎となる違反行為期間についても,それを前提にして,不利益行為が最初に行われた日を独占禁止法第20条の6にいう「当該行為をした日」とし,不利益行為がなくなったと認められる日を同条にいう「当該行為がなくなる日」とするのが相当である。
 これを本件についてみると,127社に対する不利益行為は独占禁止法上一つの優越的地位の濫用に該当するものであることから(前記イ),本件の違反行為期間は,本件排除措置命令による違反行為の認定を基に本件課徴金納付命令が認定したとおり,平成19年5月19日から平成22年5月18日までということになる。

エ 争点4について
(ア) 本件排除措置命令書における理由の記載に不備はないか
 独占禁止法第49条第1項が,排除措置命令書に「公正取引委員会の認定した事実及びこれに対する法令の適用」を示さなければならないとしているのは,排除措置命令が,その名宛人に対して当該命令の主文に従った排除措置の履行義務を課すなど名宛人の事業活動の自由等を制限するものであることに鑑み,公正取引委員会の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,排除措置命令の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与えるためのものと解される。
 このような排除措置命令の性質及び排除措置命令書に上記の記載が必要とされる趣旨・目的に鑑みれば,排除措置命令書に記載すべき理由とは,違反行為に関する認定事実のほか,いかなる事実関係に基づき排除措置が命じられたのかを,名宛人においてその記載自体から了知し得るものでなければならない。
 これを本件についてみると,本件排除措置命令書には,特定納入業者に該当するかの考慮要素及び被審人が特定納入業者に対して具体的にいかなる態様の行為をどの程度行ったのかという,命令の原因となる事実と,上記の行為は,独占禁止法第2条第9項第5号(改正法の施行前においては旧一般指定第14項)に該当し,独占禁止法第19条の規定に違反するなどという,命令の根拠法条は示されているが,上記の行為の相手方である特定納入業者については,具体的には特定されていない。
 そうすると,本件排除措置命令書のみからは,被審人において,いずれの相手方に対する自己の行為が優越的地位の濫用との評価を受けたかを具体的に知ることはできず,いずれの相手方に対する行為を違反行為として甘受し,いずれの相手方に対する行為を争うべきかを,的確に判断することが困難であって,被審人の不服申立ての便宜には適わないものともいえる。このことからすれば,本件排除措置命令書のみをみる限り,その理由の記載には不備があったものと考えられる。
 しかし,本件において,公正取引委員会は,被審人に対し,独占禁止法第49条第5項等の規定に基づいて,「予定される排除措置命令の内容」等を記載した文書を送達する際に,被審人による本件違反行為の相手方とされた165社が記載された一覧表を同封しており,その後,独占禁止法第49条第2項等の規定に基づいて本件排除措置命令書の謄本を被審人に送達する際にも,上記と同内容の一覧表を同封している。
 このように,被審人は,本件排除措置命令に先立ち,本件違反行為の相手方を了知し得る状態で,意見の陳述及び証拠の提出の機会である事前手続を経ていたことが明らかであり,本件排除措置命令書の謄本送達時には,本件違反行為の相手方を当然に知り得る状態にあったといえる。そうだとすれば,被審人は,本件排除措置命令において,いずれの相手方に対する自己のいかなる行為が独占禁止法第2条第9項第5号又は旧一般指定第14項に該当する優越的地位の濫用との評価を受け,排除措置を命じられたのかを了知し得るものでなかったとはいえない。
 したがって,前記のとおり本件排除措置命令書自体には,本件違反行為の相手方を具体的に特定していないという不備はあったものの,理由の付記に取消しを免れないような不備があったとまではいえない。

(イ) 本件課徴金納付命令書における理由の記載に不備はないか
 前記(ア)と同旨。

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