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(平成31年3月15日)クアルコム・インコーポレイテッドに対する審決について(CDMA携帯電話端末等に係るライセンス契約に伴う拘束条件付取引)

平成31年3月15日
公正取引委員会

 公正取引委員会は,被審人クアルコム・インコーポレイテッド(以下「被審人」という。)に対し,平成22年1月5日,審判手続を開始し,以後,審判官をして審判手続を行わせてきたところ,平成31年3月13日,被審人に対し,独占禁止法の一部を改正する法律(平成25年法律第100号)による改正前の独占禁止法(以下「独占禁止法」という。)第66条第3項の規定に基づき,平成21年9月28日付けの排除措置命令(平成21年(措)第22号)を取り消す旨の審決を行った(本件平成22年(判)第1号審決書については,当委員会ホームページの「報道発表資料」参照。公表する審決書においては,ライセンス契約の相手方に係る事業上の秘密に配慮し,マスキングの措置を施している。)。

1 被審人の概要

事業者名 本店所在地

クアルコム・インコーポレイテッド

アメリカ合衆国カリフォルニア州サンディエゴ市モアハウス・ドライヴ5775番地

2 被審人の審判請求の趣旨

 被審人に対する平成21年(措)第22号排除措置命令の全部の取消しを求める。

3 主文の内容

 平成21年9月28日付けの排除措置命令(平成21年(措)第22号)を取り消す。

4 本件の経緯

平成21年
9月28日 排除措置命令
11月24日 被審人から上記命令に対して審判請求
平成22年
1月5日 審判手続開始
2月17日 第1回審判

平成29年
9月5日 第31回審判(終結)
平成30年
12月5日 審決案送達
平成31年
3月13日 審決

5 原処分の原因となる事実

 被審人が,被審人等が保有し又は保有することとなるCDMA携帯無線通信(注1)に係る知的財産権について,国内端末等製造販売業者(注2)に対してその実施権等を一括して許諾する契約を締結するに当たり,国内端末等製造販売業者等(注3)が保有し又は保有することとなる知的財産権について実施権等を無償で許諾することを余儀なくさせ,かつ,国内端末等製造販売業者等がその保有し又は保有することとなる知的財産権に基づく権利主張を行わない旨を約することを余儀なくさせており,これは,国内端末等製造販売業者の事業活動を不当に拘束する条件を付けて,国内端末等製造販売業者と取引しているものであって,平成21年改正法(平成21年法律第51号)による改正前の独占禁止法第2条第9項第4号(旧一般指定(注4)第13項)に該当し,独占禁止法第19条の規定に違反するものである(以下「本件違反行為」という。)。
 (注1) 「CDMA携帯無線通信」とは,携帯無線通信のうち,第三世代携帯無線通信規格(標準化機関において,我が国における第三世代の携帯無線通信の標準規格として承認されたもの)に適合するもの等をいう。なお,第三世代携帯無線通信の接続方式である符号分割多元接続方式を「CDMA」という。
 (注2) 「国内端末等製造販売業者」とは,我が国の携帯電話端末又は携帯電話基地局の製造販売業者をいう。
 (注3) 「国内端末等製造販売業者等」とは,国内端末等製造販売業者,その親会社及び関連会社を含むものをいう。
 (注4) 「旧一般指定」とは,平成21年公正取引委員会告示第18号による改正前の不公正な取引方法(昭和57年公正取引委員会告示第15号)をいう。
 

6 審決の概要

(1) 本件の争点

ア 本件無償許諾条項等(注5)を規定した本件ライセンス契約の締結が,国内端末等製造販売業者の事業活動を拘束するものとして,公正な競争を阻害するおそれ(公正競争阻害性)を有し,旧一般指定第13項に該当するか(争点1)
イ 本件排除措置命令の対象範囲が,規律管轄権及び国際礼譲に関する国際法に違反するか(争点2)
ウ 本件排除措置命令が,独占禁止法第20条,同法第21条及び憲法第31条に違反するか(争点3)
 (注5) 「本件無償許諾条項等」とは,「本件無償許諾条項」(国内端末等製造販売業者が,被審人に対し,被審人等によるCDMA携帯電話端末(注6)及びCDMA部品(注7)の製造,販売等のために,本件ライセンス契約において対象として特定された国内端末等製造販売業者等が保有し又は保有することとなる知的財産権の一身専属的〔譲渡禁止〕,全世界的及び非排他的な実施権を許諾する条項),「被審人等に対する非係争条項」(国内端末等製造販売業者が,被審人等によるCDMA部品の製造,販売等又はこれに加えて被審人の顧客が被審人のCDMA部品を自社の製品に組み込んだことについて,本件ライセンス契約において対象として特定された国内端末等製造販売業者等が保有し又は保有することとなる知的財産権に基づいて権利主張を行わないことを約束する条項)及び「被審人のライセンシーに対する非係争条項」(国内端末等製造販売業者が,被審人のライセンシーに対し,当該被審人のライセンシーによるCDMA携帯電話端末等(注8)の製造,販売等について,本件ライセンス契約において対象として特定された国内端末等製造販売業者等が保有し又は保有することとなる知的財産権に基づいて権利主張を行わないことを約束する条項)の総称をいう。
 (注6) 「CDMA携帯電話端末」とは,CDMA携帯無線通信を行う携帯電話端末をいう。
 (注7) 「CDMA部品」とは,CDMA携帯電話端末及びCDMA基地局(注9)に利用される半導体集積回路(チップ)その他のCDMA携帯電話基地局用部品をいう。
 (注8) 「CDMA携帯電話端末等」とは,CDMA携帯電話端末,CDMA基地局及びCDMA部品を併せたものをいう。
 (注9) 「CDMA基地局」とは,CDMA携帯無線通信を行うための基地局をいう。
 

(2) 審決における判断の概要

ア 争点1について
(ア) 不当な拘束条件付取引に該当する場合
 本件違反行為が旧一般指定第13項に該当するかどうかを判断するに当たっては,被審人が国内端末等製造販売業者との間で締結した本件ライセンス契約において本件無償許諾条項等を規定することにより国内端末等製造販売業者の事業活動を拘束することが,公正な競争を阻害するおそれがあるということができるかどうかを判断する必要がある。
 本件無償許諾条項等が規定された本件ライセンス契約は,基本的な契約の構造としては,被審人が保有する知的財産権の実施権を許諾するのに対し,国内端末等製造販売業者も保有する知的財産権の非独占的な実施権を許諾するというクロスライセンス契約としての性質を有し(被審人のライセンシーに対する非係争条項も,国内端末等製造販売業者と同様の条項を規定した他の被審人のライセンシーが,相互に保有する知的財産権の使用を可能とするものとして,クロスライセンス契約に類似した性質を有するものと認めるのが相当である。),クロスライセンス契約を締結すること自体は原則として公正競争阻害性を有するものとは認められないことからすると,公正な競争秩序に悪影響を及ぼす可能性があると認められるためには,本件ライセンス契約について,国内端末等製造販売業者の研究開発意欲を阻害するなどしている点についての証拠等に基づくある程度具体的な立証等が必要になる。

(イ) 審査官は,〔1〕本件無償許諾条項等の適用範囲が広範であること,〔2〕本件無償許諾条項等が無償ライセンスとしての性質を有すること,〔3〕本件無償許諾条項等が不均衡であることから,本件無償許諾条項等の制約の程度,内容が国内端末等製造販売業者の研究開発意欲を阻害するおそれがあると推認できる程度に不合理であると主張するが,後記aないしcのとおり,いずれもその根拠を欠くものといえる。
a 本件無償許諾条項等の適用範囲が広範であるという点について
(a) 知的財産権の範囲
 実施権の許諾等の対象となる知的財産権の範囲は,通常のものとは異なり,特に広範なものであると認めるに足りる証拠はない。
 また,国内端末等製造販売業者は,一方で,被審人等に対し,国内端末等製造販売業者等が保有する知的財産権について,本件無償許諾条項等により実施権を許諾し,又は,権利主張を行わないと約束するものの,他方で,被審人から,被審人等が保有するCDMA携帯無線通信に係る技術的必須知的財産権(注10)及び商業的必須知的財産権(注11)の実施権の許諾を受けたり,他の被審人のライセンシーから,保有する技術的必須知的財産権についての権利主張をされなかったりすることを考慮すると,これが広範なものであるとは認められない。
 (注10) 「技術的必須知的財産権」とは,当該知的財産権を侵害することなく,標準規格を満足する装置,機器,システム又はソフトウェアの製造,販売又は使用が技術的に不可能な工業所有権をいう。
 (注11) 「商業的必須知的財産権」とは,技術的必須知的財産権には該当しないものの,装置,機器,システム又はソフトウェアに競争上の優位性を与えたり,市場で合理的に要求される可能性のある機能その他の特徴を与えたりする知的財産権をいう。
(b) 知的財産権の取得時期(改良期間(注12))
 国内端末等製造販売業者14社のうちの9社との本件ライセンス契約では,技術的必須知的財産権の改良期間が無期限と定められているが,そもそも技術的必須知的財産権は,標準規格を構成するものであり,CDMA携帯電話端末等の製品の差別化要素となるものではなく,しかも,被審人も,(本件ライセンス契約が存続する限り)国内端末等製造販売業者に対し,本件ライセンス契約の発効日から無期限の期間に開発又は取得することとなる知的財産権の実施権の許諾等をすることになることから,広範なものであるとは認められない。
 また,国内端末等製造販売業者14社のうちの5社との本件ライセンス契約では,技術的必須知的財産権の改良期間は,契約発効日から一定の期間内と定められており,他の事業者の製品との差別化の要素となる商業的必須知的財産権については,上記の国内端末等製造販売業者14社全てとの間の本件ライセンス契約において,いずれも本件ライセンス契約の発効日から一定の期間内と定められている上,この改良期間は,被審人が国内端末等製造販売業者に対して実施権を許諾する技術的必須知的財産権及び商業的必須知的財産権の実施権と共通のものであることからすると,本件ライセンス契約の発効日以前に開発又は取得したもののみならず,本件ライセンス契約で定められた改良期間に開発又は取得することとなるものも含まれるということをもって,その範囲が広範なものであるとは認められない。
 (注12) 「改良期間」とは,本件無償許諾条項等において実施権の許諾や権利主張をしないことの約束の対象となる権利の取得時期をいう。
(c) 相手方の範囲
 本件無償許諾条項に基づいて国内端末等製造販売業者が被審人に対して知的財産権の実施権を許諾することによって権利行使が制限される相手方の範囲は,被審人等のほか,被審人等からCDMA部品を購入した者(被審人の顧客)であるが,実際に国内端末等製造販売業者が被審人の顧客に対して権利行使をすることができなくなるのは,当該被審人の顧客が被審人等のCDMA部品に使用された知的財産権によって国内端末等製造販売業者の知的財産権を侵害する場合に限られ,被審人等のCDMA部品を組み込まない顧客の製品の部分又は機能によって知的財産権を侵害された場合には,権利行使をすることを妨げられない。
 また,被審人等に対する非係争条項は,国内端末等製造販売業者等が開発若しくは取得し,又は開発若しくは取得することとなる知的財産権の一部について,本件無償許諾条項の対象とすることを避け,国内端末等製造販売業者が権利行使を制限される範囲を具体的に定めるために規定されたものであり,本件無償許諾条項よりも権利行使が制限される相手方の範囲が狭くなるように定められている。
 さらに,被審人のライセンシーに対する非係争条項については,これによって権利行使が制限される相手方の範囲が,同様の条項を規定した他の被審人のライセンシーに限られる。
 よって,権利行使が制限される相手方の範囲について,これが広範なものとは認められない。
(d) 本件ライセンス契約の期間
 本件ライセンス契約の契約期間にかかわらず,国内端末等製造販売業者は,改良期間終了後に開発又は取得することとなる知的財産権を別途行使できるから,本件ライセンス契約の契約期間が無期限あるいは長期間であるということをもって,国内端末等製造販売業者が行使できなくなる知的財産権の範囲が広範であるとは認められない。
b 無償ライセンスとしての性質を有するという点について
(a) 本件無償許諾条項及び被審人等に対する非係争条項については,本件ライセンス契約において,国内端末等製造販売業者は,一方で,本件無償許諾条項等に基づき,被審人に対し,国内端末等製造販売業者等が保有し又は保有することとなる知的財産権について,実施権を許諾し,又は,一定の範囲の相手方に対してその権利主張をしないことを約束するほか,一時金(注13)とロイヤルティ(注14)という金員を支払うものとされているものの,他方で,被審人等が保有し又は保有することとなる知的財産権の実施権の許諾を得ていることからすると,本件無償許諾条項等だけを取り出して,国内端末等製造販売業者が何らの対価も得られないままに義務付けられたものと解釈することは,クロスライセンスとしての性質を有する本件ライセンス契約の解釈として相当ではなく,これをもって本件無償許諾条項等が対価のない無償のものであると評価することはできない。
 また,本件ライセンス契約の契約書には,本件無償許諾条項について,金員の支払を定めない「royalty free」という文言がある一方で,「fully-paid」という文言があるほか,一部の国内端末等製造販売業者の本件ライセンス契約の契約書の前文には,本件無償許諾条項等を含む規定が,全体として,被審人からの知的財産権の実施権の許諾についての対価の一部を構成していることを示す記載もされていることからすると,本件ライセンス契約の契約書の文言から,本件無償許諾条項や被審人等に対する非係争条項が,対価を有しない無償のものであると認めることはできない。
 (注13) 「一時金」とは,契約締結時及び契約改定時に支払われる一定額の金員をいう。
 (注14) 「ロイヤルティ」とは,暦四半期ごとに,同期間中に国内端末等製造販売業者が販売した契約製品の数に,契約製品1台当たりの正味販売価格の所定割合(以下「ロイヤルティ料率」という。)を乗じた金員をいう。
(b) 審査官は,被審人と国内端末等製造販売業者の交渉の経緯(被審人が本件無償許諾条項の対象となるライセンシーの知的財産権の価値に応じたロイヤルティ料率又はその他の契約条件の調整のプロセスを拒絶したこと)から,本件無償許諾条項及び被審人等に対する非係争条項が実質的に無償と評価することができると主張するが,本件ライセンス契約は,双方が一定の義務を負担するクロスライセンス契約としての性質を有するものであり,仮に被審人の交渉態度に問題があるといえたとしても,実質的に無償であると評価するのは困難である。
 また,上記の点を措くとしても,一部の国内端末等製造販売業者は,CDMAに係る技術的必須知的財産権を保有していなかった。そして,本件ライセンス契約の交渉において,一部の国内端末等製造販売業者は,被審人に対し,保有する知的財産権を具体的に示して,その検討,評価,調整を行うことを要求していないことからすると,被審人において,ロイヤルティ料率及びその他の契約条件を調整したりしていなかったとしても,何ら不合理なものではない。他方,一部の国内端末等製造販売業者は,自社が保有する具体的な知的財産権を示して被審人との交渉を行っているところ,被審人は,ロイヤルティ料率の調整は行わなかったものの,被審人等に対する非係争条項において権利主張をしないと約束する範囲を定める「部品」等の定義を限定する等契約条件の調整を行っていることからすると,少なくとも,このような調整がされていないことを理由として本件無償許諾条項及び被審人等に対する非係争条項が無償ライセンスとしての性質を有するという審査官の主張はその前提を欠く。
(c) 被審人のライセンシーに対する非係争条項は,被審人とのライセンス契約に同様の条項を規定した被審人のライセンシー同士が,自らが保有し又は保有することとなる知的財産権に係る権利主張を相互にしないことを被審人に対して約束するというものであり,実質的にみると,被審人のライセンシーが保有し又は保有することとなる知的財産権を相互に利用することができるようにすることを目的とした条項といえ,国内端末等製造販売業者にとっては,当該条項と同様の条項を規定した他の被審人のライセンシーの知的財産権を利用できるという対価があることになるから,無償ライセンスとしての性質を有するとはいえない。
c 不均衡であるという点について
 審査官は,国内端末等製造販売業者が,莫大な費用及び労力を投じて開発する広範な知的財産ポートフォリオについて,被審人に対し,無償で実施権を許諾し,又は,これに加えて被審人等や被審人の顧客及びライセンシーに対して権利主張をしないことを約束するとともに,被審人が一方的に決定したロイヤルティ料率に基づくロイヤルティを支払うことを義務付けられる一方で,被審人は,国内端末等製造販売業者等が保有し又は保有することとなるCDMA携帯電話端末等に関する極めて広範な知的財産権を,何らの対価を支払うことなく使用して,特許権侵害訴訟の提起等によって差し止められるなどといった権利行使を受けることのない安定性を有するCDMA部品を顧客に提供することが可能となることから,国内端末等製造販売業者と被審人との間で均衡を欠くと主張するが,本件ライセンス契約は,基本的に,クロスライセンス契約としての性質を有するものであるところ,審査官の主張は,本件無償許諾条項等を含む本件ライセンス契約の特定の条項についての国内端末等製造販売業者が負う義務と被審人が得られる権利だけを考慮し,国内端末等製造販売業者が得られる権利や被審人が負う義務を考慮しないものであり,本件ライセンス契約における本件無償許諾条項等の不均衡性の検討方法としては適切なものとはいえない。また,上記の点を措くとしても,前記bのとおり,本件無償許諾条項等が無償ライセンスとしての性質を有するとは認められないことからすると,審査官の主張は,その前提を欠く。
 国内端末等製造販売業者がそれぞれ保有する知的財産権について,その価値に存在する差異が本件無償許諾条項等の規定された本件ライセンス契約の内容に何らかの差異を設けるべきほどのものであるのかは,証拠上明らかでなく,国内端末等製造販売業者の間で契約内容の差異を設けなかったことが,本件無償許諾条項等の制約の程度,内容が一部の国内端末等製造販売業者の研究開発意欲を阻害するおそれがあると推認できる程度に不合理であることを示すものであるとはいえない。

(ウ) 国内端末等製造販売業者は本件無償許諾条項等により被るおそれのある不利益を填補又は回避できなかったという審査官の主張について
 審査官は,国内端末等製造販売業者は,本件無償許諾条項等が規定された本件ライセンス契約の締結を「余儀なく」されており,本件無償許諾条項等により被るおそれのある不利益を填補又は回避することができなかったと主張するが,拘束条件が付された取引を「余儀なく」させたか否かは,拘束条件付取引に該当するための直接の要件となるものではない。

(エ) 本件無償許諾条項等の具体的な効果が認められ,国内端末等製造販売業者の研究開発意欲阻害のおそれが具体的に立証されるという審査官の主張について
 審査官の主張は,実際に本件無償許諾条項等による国内端末等製造販売業者の研究開発意欲が阻害されていることを主張立証することによって,本件無償許諾条項等による研究開発意欲阻害のおそれを間接的に立証しようとするものと考えられるが,後記a及びbのとおり採用できない。
a 審査官は,新たな技術のための研究開発活動への再投資を妨げられたとする事由(ロイヤルティ料率の調整を受けたりすることができなかったこと,製品の差別化が実際に困難となったこと,権利行使ができなかった事例が存在すること等)を主張するが,いずれも認められない。
b 本件無償許諾条項等による制約が広範かつ長期にわたり,また,不均衡な内容であることを認識して研究開発を行わざるを得ないという審査官の主張についても,国内端末等製造販売業者の研究開発意欲を阻害するおそれがあると推認できる程度に広範,無償,不均衡で不合理なものと認めるに足りる証拠がない。

(オ) 被審人の有力な地位が強化されるおそれ
 本件ライセンス契約は基本的にクロスライセンス契約としての性質を有するものであり,均衡のとれていないものであると認めるに足りる証拠がないことからすると,本件ライセンス契約ないし本件無償許諾条項等が,保有する知的財産権の範囲を超えて,被審人の地位を一方的に強化するものであると認めることはできない。

(カ) 公正な競争秩序への悪影響
 被審人に有力な技術が集積することで,ライセンス交渉における被審人の優位性が高まり,被審人による恣意的なライセンス条件の設定が可能となると主張するが,それらは単なる可能性にとどまり,競争秩序に悪影響を及ぼすことを裏付ける証拠等がない。

イ 争点2及び3について
 前記アのとおり,本件無償許諾条項等により公正競争阻害性が認められるとはいえないことからすれば,その余の点について判断するまでもない。

ウ まとめ
 第三世代携帯無線通信規格に必須である工業所有権の被審人の保有状況等からすれば,被審人は,CDMA携帯電話端末等に関する技術に係る市場(本件検討対象市場)において有力な地位を有していたものと推認されるところ,このような被審人による国内端末等製造販売業者との間の本件ライセンス契約の締結に至る過程において,独占禁止法による何らかの規制を受けるべき行為が認定される余地があったとも考えられるが,前記アのとおり,被審人が本件無償許諾条項等を規定した本件ライセンス契約を国内端末等製造販売業者との間で締結したことについて,本件排除措置命令が摘示する拘束条件付取引に該当するものとして公正競争阻害性を有すると認めるに足りる証拠はなく,上記の点を根拠として,被審人に対して排除措置命令を発することはできない。

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電話 03-3581-5478(直通)
ホームページ https://www.jftc.go.jp/

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