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(平成31年3月28日)株式会社ラルズに対する審決について(食料品,日用雑貨品,衣料品等の小売業者による優越的地位の濫用事件)

平成31年3月28日
公正取引委員会

 公正取引委員会は,被審人株式会社ラルズ(以下「被審人」という。)に対し,平成25年10月17日,審判手続を開始し,以後,審判官をして審判手続を行わせてきたところ,平成31年3月25日,被審人に対し,独占禁止法の一部を改正する法律(平成25年法律第100号)による改正前の独占禁止法(以下「独占禁止法」という。)第66条第2項の規定に基づき,被審人の各審判請求を棄却する旨の審決を行った(本件平成25年(判)第28号及び第29号審決書については,当委員会ホームページの「報道発表資料」参照。なお,公表する審決書においては,納入業者に係る事業上の秘密に配慮し,マスキングの措置を施している。)。

1 被審人の概要

事業者名 本店所在地

株式会社ラルズ
法人番号2430001028268

札幌市中央区南十三条西十一丁目2番32号

2 被審人の審判請求の趣旨

⑴ 平成25年(判)第28号審判事件
 平成25年(措)第9号排除措置命令の全部の取消しを求める。
⑵ 平成25年(判)第29号審判事件
 平成25年(納)第31号課徴金納付命令の全部の取消しを求める。

3 主文の内容

 被審人の各審判請求をいずれも棄却する。

4 本件の経緯

平成25年
7月3日 排除措置命令及び課徴金納付命令
7月25日 被審人から排除措置命令及び課徴金納付命令に対して審判請求
10月17日 審判手続開始
11月19日 第1回審判

平成28年
10月17日 第12回審判(審判手続終結)
平成30年
3月28日 審決案送達
4月11日 被審人から審決案に対する異議の申立て及び委員会に対する直接陳述の申出
6月14日 直接陳述の聴取
平成31年
3月25日 審決

5 原処分の原因となる事実

 被審人は,遅くとも平成21年4月20日から平成24年3月13日までの間(以下「本件対象期間」という。),自己の取引上の地位が納入業者のうち88社(以下「88社」という。)に優越していることを利用して,正常な商慣習に照らして不当に,当該取引に係る商品以外の商品を購入させ,自己のために金銭,役務その他の経済上の利益を提供させていたものであり,この行為(以下「本件各行為」という。)は独占禁止法第2条第9項第5号イ及びロ(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律〔平成21年法律第51号。以下「改正法」という。〕の施行日である平成22年1月1日前においては平成21年公正取引委員会告示第18号による改正前の不公正な取引方法〔昭和57年公正取引委員会告示第15号〕の第14項〔以下「旧一般指定第14項」という。〕第1号及び第2号)に該当し,独占禁止法第19条の規定に違反するものである(以下「本件違反行為」という。)。独占禁止法第20条の6の規定により,本件違反行為期間は平成21年4月20日から平成24年3月13日までであり,本件違反行為のうち改正法の施行日である平成22年1月1日以後に係るものについて,被審人と88社それぞれとの間における購入額(合計額は1287億1385万942円)を前提に算出された課徴金の額は,12億8713万円である。

6 審決の概要

(1) 本件の争点

ア 本件各行為は,被審人が自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して,正常な商慣習に照らして不当に行ったものか(争点1)
イ 本件における違反行為期間(争点2)

(2) 争点に対する判断の概要

ア 争点1について
(ア) 優越的地位の濫用規制の趣旨
 独占禁止法第19条において,自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して,正常な商慣習に照らして不当に同法第2条第9項第5号(改正法施行日前においては旧一般指定第14項第1号ないし第4号)に該当する行為をすることが不公正な取引方法の一つとして規制されているのは,自己の取引上の地位が相手方に優越している一方の当事者(以下「甲」という。)が,相手方(以下「乙」という。)に対し,その地位を利用して,正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることは,相手方の自由かつ自主的な判断による取引を阻害するとともに,相手方はその競争者との関係において競争上不利となる一方で,行為者はその競争者との関係において競争上有利となるおそれがあり,このような行為は公正な競争を阻害するおそれ(公正競争阻害性)があるといえるからである。
(イ) 優越的地位の濫用の判断基準
 優越的地位の濫用規制の趣旨に照らせば,甲が乙に対し,取引上の地位が優越しているというためには,甲が市場支配的な地位又はそれに準ずる絶対的に優越した地位にある必要はなく,乙との関係で相対的に優越した地位にあれば足りると解される。また,甲が乙に対して優越した地位にあるとは,乙にとって甲との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すため,甲が乙にとって著しく不利益な要請等を行っても,乙がこれを受け入れざるを得ないような場合をいうと解される。
 この判断に当たって,乙の甲に対する取引依存度が大きい場合,甲の市場におけるシェアが大きい場合又はその順位が高い場合,乙が他の事業者との取引を開始若しくは拡大することが困難である場合又は甲との取引に関連して多額の投資を行っている場合,また,甲との取引の額が大きい,甲の事業規模が拡大している,甲と取引することで乙の取り扱う商品又は役務の信用が向上する,又は甲の事業規模が乙のそれよりも著しく大きい場合には,乙は甲と取引を行う必要性が高くなるため,乙にとって甲との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すことになりやすいものといえる。
 また,「不利益行為」(注1)を甲が行い,乙がこれを受け入れている事実が認められる場合,これを受け入れるに至った経緯や態様によっては,それ自体,甲が乙にとって著しく不利益な要請等を行っても,乙がこれを受け入れざるを得ないような場合にあったことをうかがわせる重要な要素となり得るものというべきである。
 したがって,甲が乙に対して優越した地位にあるといえるか否かについては,[1]乙の甲に対する取引依存度,[2]甲の市場における地位,[3]乙にとっての取引先変更の可能性,[4]その他甲と取引することの必要性,重要性を示す具体的事実のほか,乙が甲による不利益行為を受け入れている事実が認められる場合,これを受け入れるに至った経緯や態様等を総合的に考慮して,乙にとって甲との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すため,甲が乙にとって著しく不利益な要請等を行っても,乙がこれを受け入れざるを得ないような場合であるかを判断するのが相当である。
 そして,甲が乙に対して優越的な地位にあると認められる場合には,甲が乙に不利益行為を行えば,通常は,甲は自己の取引上の地位が乙に対して優越していることを利用してこれを行ったものと認められ,このような場合,乙は自由かつ自主的な判断に基づいて不利益行為を受け入れたとはいえず,甲は正常な商慣習に照らして不当に独占禁止法第2条第9項第5号所定の行為を行っていたものと認めるのが相当である。
 (注1) 「不利益行為」とは,独占禁止法第2条第9項第5号イないしハが規定する行為をいう。
(ウ) 被審人の取引上の地位が88社に対して優越しているか否か
 a 被審人の市場における地位
 被審人は,北海道の区域内において食料品等の小売業を営む事業者として,殊に食品スーパーの分野において有力な地位にあったと認められる。
 b 被審人と88社の関係
(a) 88社のうち27社については,前記aの事実に加え,27社の被審人に対する取引依存度が大きい(高い)こと等の事実を考慮すれば,27社にとって,被審人との取引の継続が困難になることは事業経営上大きな支障を来すものとうかがわれる。
 また,審査官からの報告命令に対する27社の回答内容等はこれら客観的状況に沿うものといえる。
(b) 88社のうち34社については,前記aの事実に加え,34社の取引先に対する取引依存度における被審人の順位が高いこと等の事実を考慮すれば,34社にとって,被審人との取引の継続が困難になることは事業経営上大きな支障を来すものとうかがわれる。
 また,報告命令に対する34社の回答内容等はこれら客観的状況に沿うものといえる。
(c) 88社のうち22社については,前記(a)又は(b)と同等の状況にはないとしても,前記aの事実に加え,22社において被審人との取引を主に担当している営業拠点の被審人に対する取引依存度が大きいこと,あるいは,同営業拠点の取引先に対する取引依存度における被審人の順位が高いこと等の事実を考慮すれば,22社にとっては,被審人との取引の継続が困難となれば,当該営業拠点の収益の大幅な落込みが予想され,北海道の区域内における事業方針の修正を余儀なくされるなど,全社的にみてもその後の事業経営に大きな支障を来すことが看取できる。
 また,報告命令に対する22社の回答内容等はこれら客観的状況に沿うものといえる。
(d) 88社のうち5社については,前記(a)ないし(c)と同等の状況にはないとしても,前記aの事実に加え,資本金額,年間総売上高,従業員数などに照らして5社の事業規模が極めて小さいと認められること等の事実を考慮すれば,被審人に対する取引依存度が小さいことを勘案しても,なお5社にとって,被審人との取引の継続が困難になることは事業経営上大きな支障を来すものとうかがわれる。
 また,報告命令に対する5社の回答内容等はこれら客観的状況に沿うものといえる。
 c 不利益行為を受け入れるに至った経緯や態様等
 88社については,後記(エ)に認定する被審人による不利益行為を受け入れていた事実が認められる。
 これら不利益行為は,後記(オ)に詳述するとおり,被審人によるいわゆるバイイングパワーが発揮されやすい取引上の関係を背景とし,不特定多数の納入業者に対して,長期間にわたり,被審人の利益を確保することなどを目的として,役員等の指示の下,組織的かつ計画的に一連のものとして行われたものであるところ,88社がこれら不利益行為を受け入れるに至った上記のような経緯や態様は,それ自体,被審人が88社に対してその意に反するような要請等を行っても,これが甘受され得る力関係にあったことを示すものである。
 これらのことからすれば,88社は,被審人が著しく不利益な要請等を行っても,これを受け入れざるを得ないような場合にあったことがうかがわれる。
 d 小括
 前記aないしcの事実を総合的に考慮すれば,88社は,被審人との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すため,被審人が著しく不利益な要請等を行っても,これを受け入れざるを得ないような場合にあり,被審人の取引上の地位は88社に対して優越していたものと認められる。
(エ) 本件各行為は不利益行為に当たるか
 a 本件従業員等派遣
(a) 従業員等の派遣を受ける行為が不利益行為となる場合
 被審人と納入業者との間の取引は買取取引であり,同取引において,売主は,買主に商品を引き渡すことにより取引契約上の義務を履行したこととなるところ,買主が小売業者である場合に,買主の新規店舗の開設,既存店舗の改装及びこれらの店舗での開店セール等の際に,買取取引で仕入れた商品を他の陳列棚から移動させ,又は新たに若しくは補充として店舗の陳列棚に並べ,又は接客するなどといった作業は,本来買主が行うべき役務であることから,売主が自社の従業員等を派遣して上記のような作業に当たらせること(以下「新規店舗開設等作業のための従業員等派遣」という。)は,売主にとって通常は何ら合理性のないことであり,そのような行為は原則として不利益行為に当たることになる。
 もっとも,例外的に,[1]従業員等の業務内容,労働時間及び派遣期間等の派遣の条件について,あらかじめ相手方と合意し,かつ,派遣される従業員等の人件費,交通費及び宿泊費等の派遣のために通常必要な費用を買主が負担する場合,[2]従業員等が自社の納入商品のみの販売業務に従事するものなどであって,従業員等の派遣による相手方の負担が従業員等の派遣を通じて相手方が得ることとなる直接の利益等を勘案して合理的な範囲内のものであり,相手方の同意の上で行われる場合(以下「従業員等派遣例外事由」という。)は,不利益行為には当たらないと解される。
(b) 本件に係る判断
 本件従業員等派遣に応じた従業員等の作業内容によれば,本件従業員等派遣は,新規店舗開設等作業のための従業員等派遣であると認められる。
 また,被審人は,従業員等の業務内容等の派遣の条件について,あらかじめ53社(注2)と合意しておらず,かつ,派遣される従業員等の人件費等の派遣のために通常必要な費用を負担していなかったものであり,前記従業員等派遣例外事由[1]に該当する事実は認められない。
 さらに,納入業者の従業員等が行う本件開店準備作業等は,自社商品と他社商品とで区別なく行われたものであって,被審人は当該納入業者から購入する商品を増やす等の見返りを約束するものではなかったものであり,前記従業員等派遣例外事由[2]に該当する事実は認められない。
 以上のとおり,本件従業員等派遣は不利益行為に該当すると認められる。
 (注2) 本件従業員等派遣を行った納入業者
 b 本件協賛金の提供
(a) 金銭の提供を受ける行為が不利益行為となる場合
 被審人と納入業者との間の取引は買取取引であり,同取引において,売主は,買主に商品を引き渡すことにより取引契約上の義務を履行したこととなるところ,契約等に別段の定めがなく,協賛金等の名目で売主が買主のために本来提供する必要のないものである金銭を提供することは,提供した金銭がそのまま売主の損失となるものであり,売主にとって通常は何ら合理性のないことであり,原則として不利益行為に当たる。
 もっとも,例外的に,協賛金等の名目で売主が提供する金銭について,その負担額,算出根拠及び使途等について,あらかじめ買主が売主に対して明らかにし,かつ,当該金銭の提供による売主の負担が,その提供を通じて売主が得ることとなる直接の利益等を勘案して合理的な範囲内のものであり,売主の同意の上で行われる場合(以下「金銭提供例外事由」という。)は,不利益行為には当たらないと解される。
(b) 本件に係る判断
 本件協賛金のうち,オープンセール協賛金について,被審人と54社(注3)との間での契約等では別段の定めはなく,また,創業祭協賛金については,被審人と86社(注4)との間で契約等での別段の定めがあったものとは認められず,本件協賛金の提供は,各商品部の仕入担当者が,その算出根拠や使途について具体的に説明することなく各自の担当する納入業者の担当者に対して要請し,金銭の提供を受けていたものであること,さらに,その使途については,これを提供した納入業者が納入する商品の販売に結び付けて使用しておらず,納入業者に対する見返りもなかったものであることから,54社又は86社にとっては,本来提供する必要のないものである。
 そして,被審人は,あらかじめ使途,算出根拠を明らかにしておらず,納入業者が納入する商品の販売促進につながるなど,本件協賛金の提供を通じて54社又は86社が得ることとなる直接の利益もないことからすると,金銭提供例外事由は認められない。
 以上によれば,本件協賛金の提供を受ける行為は不利益行為に該当すると認められる。
 (注3) オープンセール協賛金の提供を行った納入業者
 (注4) 創業祭協賛金の提供を行った納入業者
 c 本件商品の購入
(a) 取引に係る商品又は役務以外の商品又は役務を販売する行為が不利益行為に当たる場合
 ある事業者と継続的な取引関係にある相手方が,自己の事業遂行上必要としない,又は,その購入を希望していないにもかかわらず,当該取引に係る商品又は役務以外の商品又は役務(以下「不必要商品等」という。)をその事業者から購入することは,当該相手方にとって通常は何ら合理性のないことである。
 したがって,事業者が,継続的な取引関係にある相手方に対し,不必要商品等の購入を要請し,これを相手方に販売する行為は,原則として,不利益行為に当たると解される。
 もっとも,例外的に,相手方に対し特定の仕様を指示して商品の製造又は役務の提供を発注する際に,当該商品又は役務の内容を均質にするため又はその改善を図るため必要があるなど合理的な必要性から,当該相手方に対して当該商品の製造に必要な原材料や当該役務の提供に必要な設備を購入させる場合(以下「商品購入要請例外事由」という。)は,不利益行為には当たらないと解される。
(b) 本件に係る判断
 本件商品(紳士用スーツ等)は,一般消費者向けに販売されるものであり,被審人と18社(注5)との取引に係る商品ではなく,18社の事業遂行上必要としないものであり,また,被審人は,販売目標を設定し,販売目標の達成状況を管理するなど組織的かつ計画的に18社に対し,繰り返し本件商品の購入を要請するなどした結果,18社が本件商品を購入したことからすれば,18社は自発的に本件商品の購入を希望していたものとは認められず,本件商品は,18社にとって不必要商品等であった。
 そして,被審人が本件商品を18社に販売する行為については,商品購入要請例外事由には該当せず,不利益行為に該当するものと認められる。
 (注5) 本件商品を購入した納入業者
 d 小括
 以上のとおり,本件各行為は,いずれも不利益行為に該当するものと認められる。
(オ) 88社が不利益行為を受け入れるに至った経緯や態様等
 被審人は,消費者に販売するために商品を納入業者から購入する大規模な小売業者であり,他方で88社は,自ら製造しあるいは自ら仕入れた商品を,被審人に販売する納入業者であって,88社に対する前記(エ)認定の不利益行為は,このような被審人によるいわゆるバイイングパワーが発揮されやすい取引上の関係を背景として,88社という多数の取引の相手方に対して,遅くとも平成21年4月20日から平成24年3月13日までの長期間にわたり,被審人の利益を確保することなどを目的として,役員等の指示の下,組織的かつ計画的に一連のものとして行われたものである。
 以上のような不利益行為を88社が受け入れるに至った経緯や態様は,それ自体,被審人が納入業者一般に対してその意に反するような要請等を行っても,一般的に甘受され得る力関係にあったことを示すものであるから,前記(ウ)cにおいて被審人の88社に対する取引上の地位を判断する際に考慮したとおり,前記(エ)認定の不利益行為を受け入れていた納入業者については,被審人が著しく不利益な要請等を行ってもこれを受け入れざるを得ないような場合にあったことをうかがうことができる。
(カ) 優越的地位の濫用に該当するか
 前記(ウ)のとおり,被審人の取引上の地位は88社に対して優越していたことが認められ,また,前記(エ)のとおり,被審人は88社に対して不利益行為を行っていたことが認められる。
 したがって,被審人は,本件対象期間中,自己の取引上の地位が88社に優越していることを利用して,正常な商慣習に照らして不当に独占禁止法第2条第9項第5号イ及びロ(改正法の施行日前については,旧一般指定第14項第1号及び第2号)に該当する行為を行っていたものであり,当該行為は,優越的地位の濫用に該当すると認められる。

イ 争点2について
(ア) 違反行為期間の捉え方について
本件各行為は,独占禁止法上一つの優越的地位の濫用として規制されるものといえるから,違反行為期間についても,本件各行為が最初に行われた日を「当該行為をした日」(独占禁止法第20条の6),本件各行為がなくなったと認められる日を「当該行為がなくなる日」(前同)とすることになる。
(イ) 当該行為をした日
 本件各行為のうち最も古いものは,平成21年4月20日に納入業者の従業員等に商品の陳列等の作業を行わせたことであり,当該行為をした日は,遅くとも,被審人が上記役務を提供させた日である平成21年4月20日である。
(ウ) 当該行為がなくなる日
 組織的かつ計画的に一連のものとして行われた違反行為について,[1]違反行為者の代表者のようにしかるべき地位にある者が,継続して行われていた違反行為に該当する行為を今後禁止する旨の意思決定を行い,かつ,役員及び従業員等に周知した場合,又は,[2]違反行為者の事業活動上の意思決定機関が同様の意思決定を行い,かつ,従業員等に周知した場合に該当する事情があれば,通常は,違反行為はなくなったと判断される。
 ただし,優越的地位の濫用行為は,違反行為者が取引の相手方に対して不利益な要請を行い,これに応じさせる態様を含む違反行為であるから,既に違反行為者が取引の相手方に対して不利益な要請を行っており,当該取引の相手方においてこれに応じる可能性があるような場合には,上記[1]又は[2]として違反行為がなくなったと判断されるためには,単に違反行為者の内部において不利益な要請を今後行わない旨の意思決定をし,これを違反行為者の内部に周知するだけでは足りず,さらに,既に違反行為者が行った不利益な要請に対して,当該要請の相手方においてこれに応じることがないような対策(例えば,[a]当該要請の相手方に対して,当該要請に応じる必要がない旨を周知することや,[b]自社の従業員等に対し,当該相手方が要請に応じてきた場合にはこれを受け入れてはならないことを徹底することなど)を伴う必要がある。
 これを本件についてみるに,被審人の平成24年1月28日までの一連の取組からは,既に被審人が行った不利益な要請に対して,相手方である納入業者がこれに応じることがないような対策を講じていたとはうかがえない。
 他方,被審人は,同年3月14日の取締役会において,被疑事実に係る行為の取りやめ及び再発防止に関する決意表明並びにその文書を取引先へ送付することに関する本件取締役会決議を行っており,同日,取引先である納入業者に対し,上記決議に係る文書を送付したことがうかがわれる。そうだとすれば,被審人としては,取締役会決議と上記文書の送付をもって,既に被審人が行った不利益な要請に対して,納入業者がこれに応じることがないような対策を講じたということができるから,取締役会決議(及びその社内周知)と納入業者に対する上記文書の送付は,上記[2]の事情に該当するものといえる。
 したがって,本件違反行為は平成24年3月14日以降,取りやめられており,本件における独占禁止法第20条の6の「当該行為がなくなる日」は,平成24年3月13日と認めることができる。
 

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公正取引委員会事務総局官房総務課審決訟務室
電話 03-3581-5478(直通)
ホームページ https://www.jftc.go.jp/

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