令和元年11月22日
公正取引委員会
公正取引委員会は,特定活性炭(注1)又は特定粒状活性炭(注2)の販売業者に対し,本日,独占禁止法の規定に基づき排除措置命令及び課徴金納付命令を行った。
本件は,特定活性炭又は特定粒状活性炭の販売業者が,独占禁止法第3条(不当な取引制限の禁止)の規定に違反する行為を行っていたものである。
(注1)「特定活性炭」とは,東日本地区に所在する地方公共団体(55団体。以下同じ。)が入札等の方法により発注する,東日本地区の特定浄水場等(126施設。以下同じ。)向けの活性炭をいう。
(注2)「特定粒状活性炭」とは,近畿地区に所在する地方公共団体(6団体。以下同じ。)が入札の方法により発注する,近畿地区の特定高度浄水処理施設(11施設。以下同じ。)向けの粒状活性炭をいう。
1 違反事業者数,排除措置命令及び課徴金納付命令の対象事業者数並びに課徴金額(違反事業者名,各違反事業者の課徴金額等については別表1及び2のとおり。)
違反事業者数 |
排除措置命令 |
課徴金納付命令 |
課徴金額 |
|
特定活性炭 |
16社 |
12社 |
11社 |
3億2927万円 |
特定粒状活性炭 |
11社 |
8社 |
8社 |
1億 533万円 |
合計 |
延べ27社 |
延べ20社 |
延べ19社 |
4億3460万円 |
2 違反行為の概要(詳細は別添排除措置命令書参照)
⑴ 特定活性炭(東日本地区)
本町化学工業株式会社(以下「本町化学工業」という。)は,かねてから,特定活性炭について,入札等に係る物件,自社の活性炭(注3)を供給した者,受注者となった窓口業者(注4),契約数量,落札金額等の情報を管理していたところ(以下,当該情報を記載した年度ごとの一覧表を「入札結果表」という。),別表1記載の16社は,遅くとも平成25年10月24日以降(注5),特定活性炭について,各社の利益を確保するため
ア(ア) 供給予定者(自社の活性炭を供給すべき者をいう。以下,特定活性炭に係る箇所について同じ。)を決定し,供給予定者は本町化学工業を介して供給する
(イ) 供給予定者以外の者は,供給予定者が供給できるように協力する
旨の合意の下に
イ(ア)a 本町化学工業は,特定活性炭の入札等に先立ち,16社のうち本町化学工業を除く15社(以下「15社」という。)と個別に面談し,15社に対して,本町化学工業が作成した入札結果表を配付する
b 15社は,本町化学工業に対し,前記aの配付された入札結果表に記載の物件の中から,自社が供給予定者となることを希望するものを伝える
c 本町化学工業は,東日本地区に所在する地方公共団体が入札等に当たり示した特定活性炭の仕様,15社の前記bの希望,入札結果表に記載の特定活性炭の供給実績等を勘案して,15社のいずれかを供給予定者として物件を割り振る
(イ) 窓口業者が提示する入札価格又は見積価格(以下「入札価格等」という。)のうち
a 供給予定者の窓口業者が提示する入札価格等は,供給予定者若しくは本町化学工業が単独で,又は両者の協議によるなどして決定する
b 供給予定者以外の者の窓口業者が提示する入札価格等は,供給予定者の窓口業者が提示する入札価格等よりも高くなるようにする
(ウ) 入札等において前記(イ)の入札価格等を窓口業者に提示させる
(エ) 本町化学工業は,特定活性炭の各入札等が実施された後,入札結果表を随時更新し,当該入札結果表を,更新日以降に実施される前記(ア)の行為に用いる
などして,供給予定者を決定し,供給予定者が本町化学工業を介して供給できるようにしていた。
これにより,16社は,公共の利益に反して,特定活性炭の取引分野における競争を実質的に制限していた。
(注3)「自社の活性炭」とは,15社のそれぞれが,自社の名称,銘柄,品番,商標等を付した活性炭(幸商事株式会社にあっては,キャボット・ノリット・ジャパン株式会社の名称,銘柄,品番,商標等を付した活性炭)をいう。
(注4)本項における「窓口業者」とは,16社がそれぞれ特定活性炭の入札等に参加させる者をいう。
(注5)大阪ガスケミカル株式会社にあっては平成27年4月1日以降,株式会社クラレにあっては平成29年1月1日以降である。
⑵ 特定粒状活性炭(近畿地区)
別表2記載の11社は,遅くとも平成25年3月22日以降(注6),特定粒状活性炭について,各社の利益を確保するため
ア(ア) 供給予定者(自社の粒状活性炭(注7)を供給すべき者をいう。以下,特定粒状活性炭に係る箇所について同じ。)を決定し,供給予定者は本町化学工業を介して供給する
(イ) 供給予定者以外の者は,供給予定者が供給できるように協力する
旨の合意の下に
イ(ア) 入札物件ごとに,11社から本町化学工業を除いた10社(以下「10社」という。)の中から
a 納入先施設ごとに供給予定者となる順番をあらかじめ定め,当該順番に該当する者を供給予定者とする
b 特定の納入先施設については特定の者を供給予定者とする
ことを原則としつつ,本町化学工業と10社のうち一部の者が必要に応じて調整して,10社のうちいずれかの者を当該物件の供給予定者とする
(イ) 窓口業者(注8)が提示する入札価格のうち
a 供給予定者の窓口業者が提示する入札価格は,供給予定者が単独で,又は供給予定者と本町化学工業との協議によるなどして決定する
b 供給予定者以外の者の窓口業者が提示する入札価格は,供給予定者の窓口業者が提示する入札価格よりも高くなるようにする
(ウ) 入札において前記(イ)の入札価格を窓口業者に提示させる
などして,供給予定者を決定し,供給予定者が本町化学工業を介して供給できるようにしていた。
これにより,11社は,公共の利益に反して,特定粒状活性炭の取引分野における競争を実質的に制限していた。
(注6)株式会社クラレにあっては平成29年1月1日以降,大阪ガスケミカル株式会社にあっては平成27年4月1日以降,株式会社サンワにあっては遅くとも平成26年4月8日以降である。
(注7)「自社の粒状活性炭」とは,10社のそれぞれが,自社の名称,銘柄,品番,商標等を付した粒状活性炭(幸商事株式会社にあっては,キャボット・ノリット・ジャパン株式会社の名称,銘柄,品番,商標等を付した粒状活性炭)をいう。
(注8)本項における「窓口業者」とは,11社がそれぞれ特定粒状活性炭の入札に参加させる者をいう。
3 排除措置命令の概要
公正取引委員会は,前記2の違反行為ごとに,次のとおり排除措置命令を行った。
⑴ 排除措置命令の対象事業者(以下「名宛人」という。)は,それぞれ,次の事項を取締役会(株式会社サンワにあっては株主総会)において決議しなければならない。
ア 前記2の行為を取りやめていることを確認すること。
イ 今後,相互の間において,又は他の事業者と共同して,
(ア) 特定活性炭については東日本地区の特定浄水場等向けの活性炭
(イ) 特定粒状活性炭については近畿地区の特定高度浄水処理施設向けの粒状活性炭
について,供給予定者を決定せず,自主的に供給すること。
⑵ 名宛人は,それぞれ,前記⑴に基づいて採った措置を,自社を除く名宛人のほか,
ア 特定活性炭については
(ア) 東日本地区に所在する地方公共団体
(イ) 自社の取引先である特定活性炭の販売業者等
(ウ) 遅くとも平成25年10月24日以降(注9)に,特定活性炭の入札等に参加していた販売業者等のうち自社が供給する活性炭を取り扱う者
イ 特定粒状活性炭については
(ア) 近畿地区に所在する地方公共団体
(イ) 自社の取引先である特定粒状活性炭の販売業者等
(ウ) 遅くとも平成25年3月22日以降(注10)に,特定粒状活性炭の入札に参加していた販売業者等のうち自社が供給する粒状活性炭を取り扱う者に通知し,かつ,自社の従業員に周知徹底しなければならない。
⑶ 名宛人は,今後,それぞれ,相互の間において,又は他の事業者と共同して,前記⑴イのそれぞれの活性炭について,供給予定者を決定してはならない。
(注9)前記注5に同じ。
(注10)前記注6に同じ。
4 課徴金納付命令の概要
課徴金納付命令の対象事業者は,令和2年6月23日までに,それぞれ別表1及び2の「課徴金額」欄記載の額(総額4億3460万円)を支払わなければならない。
なお,本町化学工業は,単独で,継続的に,特定活性炭について,15社からなされたそれぞれの供給の希望を受けて,当該15社の供給の希望,東日本地区に所在する地方公共団体が入札等に当たり示した特定活性炭の仕様,供給実績等を勘案して,15社のいずれかを供給予定者として物件を割り振ることにより,15社の取引の相手方を指定していたことが認められたため,独占禁止法第7条の2第8項第2号に該当する者であることから,同項の規定に基づき,5割加算した算定率を適用している。
関連ファイル
(印刷用)(令和元年11月22日)東日本地区又は近畿地区に所在する地方公共団体が発注する活性炭の販売業者に対する排除措置命令及び課徴金納付命令について
(令和元年11月22日)別表1(違反事業者及び課徴金額一覧(特定活性炭〔東日本地区〕))
(令和元年11月22日)別表2(違反事業者及び課徴金額一覧(特定活性炭〔近畿地区〕)
(令和元年11月22日)参考2(最近の受注調整(官公需)事件)
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