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(令和元年10月4日)株式会社エディオンに対する審決について(優越的地位の濫用事件)

令和元年10月4日
公正取引委員会

 公正取引委員会は,被審人株式会社エディオン(以下「被審人」という。)に対し,平成24年4月24日,審判手続を開始し,以後,審判官をして審判手続を行わせてきたところ,令和元年10月2日,被審人に対し,独占禁止法の一部を改正する法律(平成25年法律第100号)による改正前の独占禁止法(以下「独占禁止法」という。)第66条第2項及び第3項の規定に基づき,平成24年2月16日付けの排除措置命令(平成24年(措)第6号)を変更するとともに,同日付けの課徴金納付命令(平成24年(納)第10号)の一部を取り消す旨の審決を行った(本件平成24年(判)第40号及び第41号審決書については,当委員会ホームページの「報道発表資料」及び「審決等データベース」参照。なお,公表する審決書においては,納入業者に係る事業上の秘密等に配慮し,マスキングの措置を施している。)。

1 被審人の概要

事業者名 本店所在地

株式会社エディオン
法人番号3240001041231

広島市中区紙屋町二丁目1番18号

2 被審人の審判請求の趣旨

⑴ 平成24年(判)第40号審判事件
 平成24年(措)第6号排除措置命令の全部の取消しを求める。
⑵ 平成24年(判)第41号審判事件
 平成24年(納)第10号課徴金納付命令の全部の取消しを求める。

3 主文の内容

⑴ 平成24年2月16日付けの排除措置命令(平成24年(措)第6号)を別紙審決案別紙2のとおり変更する。ただし,第1項⑴中,「本審決案別表1」とあるのは「別紙審決案別表1」と読み替えるものとする。
⑵ 平成24年2月16日付けの課徴金納付命令(平成24年(納)第10号)のうち,30億3228万円を超えて納付を命じた部分を取り消す。
⑶ 被審人のその余の審判請求をいずれも棄却する。

4 本件の経緯

平成24年
2月16日 排除措置命令及び課徴金納付命令
3月15日 被審人から排除措置命令及び課徴金納付命令に対して審判請求
4月24日 審判手続開始
6月14日 第1回審判

平成30年
3月20日 第29回審判(審判手続終結)
平成31年
3月28日 審決案送達
4月11日 異議の申立て及び直接陳述の申出
令和元年
7月17日 直接陳述の聴取
10月2日 審決

5 原処分の原因となる事実

 被審人は,遅くとも平成20年9月6日から平成22年11月29日までの間(以下「本件対象期間」という。),自己の取引上の地位が127社に優越していることを利用して,正常な商慣習に照らして不当に,継続して取引をする相手方である127社に対し,新規開店又は改装開店のための商品の搬出,商品の搬入及び店作りに通常必要な費用を負担することなく127社の従業員等を派遣させていたものであって,この行為は,独占禁止法第2条第9項第5号(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律〔平成21年法律第51号。以下「改正法」という。〕の施行日である平成22年1月1日前においては平成21年公正取引委員会告示第18号による改正前の不公正な取引方法〔昭和57年公正取引委員会告示第15号〕〔以下「旧一般指定」という。〕第14項)に該当し,独占禁止法第19条の規定に違反するものであり,かつ,特に排除措置を命ずる必要があるとして,被審人に対し,平成24年2月16日,排除措置を命じた(平成24年(措)第6号。以下,この処分を「本件排除措置命令」といい,同命令において認定された違反行為を「本件違反行為」という。)。独占禁止法第20条の6の規定により,本件違反行為期間は,平成20年9月6日から平成22年11月29日までであり,本件違反行為のうち改正法の施行日である同年1月1日以後に係るものについて,被審人と127社それぞれとの間における購入額(合計額は4047億9678万3282円)を前提に,40億4796万円の課徴金の納付を命じた(平成24年(納)第10号。以下,この処分を「本件課徴金納付命令」という。)。

6 審決の概要

⑴ 本件の争点
ア 本件従業員等派遣(注1)をさせたことは被審人が127社に対して自己の取引上の地位が優越していることを利用して正常な商慣習に照らして不当に行ったものか(争点1)
イ 改正法施行前の行為に旧一般指定第14項を適用することができるか(争点2)
ウ 被審人に対し本件排除措置命令をすることについて特に必要があるか(争点3)
エ 本件排除措置命令において127社以外の納入業者に対する通知を命じること(本件排除措置命令の主文第2項)ができるか(争点4)
オ 本件課徴金納付命令における課徴金算定の基礎となった違反行為期間(独占禁止法第20条の6にいう「当該行為をした日から当該行為がなくなる日までの期間」をいう。以下同じ。)における購入額の算定方法は適法か(争点5)
カ マル特経費負担(注2)を独占禁止法施行令第30条第2項第3号又は第1号に該当するものとして違反行為期間における購入額から控除すべきか(争点6)
  (注1)127社による新規開店又は改装開店のための商品の搬出,商品の搬入又は店作りのための従業員等の派遣をいう。
  (注2)「マル特経費負担」とは,被審人と納入業者との間で締結されている商品取引基本契約書の仕入価格の約定等を定める条項に規定された「機種・品番ごとにあらかじめ単価を決め難い割戻し金」に該当する割戻金をいう。

⑵ 争点に対する判断の概要
ア 争点1について
(ア) 優越的地位の濫用規制の趣旨
 
独占禁止法第19条において,自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して,正常な商慣習に照らして不当に同法第2条第9項第5号(改正法施行日前においては旧一般指定第14項〔第1号ないし第4号〕)に該当する行為をすることが不公正な取引方法の一つとして規制されているのは,自己の取引上の地位が相手方に優越している一方の当事者(以下「甲」という。)が,相手方(以下「乙」という。)に対し,その地位を利用して,正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることは,乙の自由かつ自主的な判断による取引を阻害するとともに,乙はその競争者との関係において競争上不利となる一方で,甲はその競争者との関係において競争上有利となるおそれがあり,このような行為は公正な競争を阻害するおそれ(公正競争阻害性)があるといえるからである。

(イ) 優越的地位の濫用の判断基準
  
甲が乙に対して優越した地位にあるとは,乙にとって甲との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すため,甲が乙にとって著しく不利益な要請等を行っても,乙がこれを受け入れざるを得ないような場合をいうと解される。
 この判断に当たって,乙の甲に対する取引依存度が大きい場合,甲の市場におけるシェアが大きい場合又はその順位が高い場合,乙が他の事業者との取引を開始若しくは拡大することが困難である場合又は甲との取引に関連して多額の投資を行っている場合,また,甲との取引の額が大きい,甲の事業規模が拡大している,甲と取引することで乙の取り扱う商品又は役務の信用が向上する,又は甲の事業規模が乙のそれよりも著しく大きい場合には,乙は甲と取引を行う必要性が高くなるため,乙にとって甲との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すことになりやすいものといえる。
   また,「不利益行為」(注3)を甲が行い,乙がこれを受け入れている事実が認められる場合,これを受け入れるに至った経緯や態様によっては,それ自体,甲が乙にとって著しく不利益な要請等を行っても,乙がこれを受け入れざるを得ないような場合にあったことをうかがわせる重要な要素となり得るものというべきである。なぜなら,取引関係にある当事者間の取引を巡る具体的な経緯や態様には,当事者間の相対的な力関係が如実に反映されるからである。
 したがって,甲が乙に対して優越した地位にあるといえるか否かについては,[1]乙の甲に対する取引依存度,[2]甲の市場における地位,[3]乙にとっての取引先変更の可能性,[4]その他甲と取引することの必要性,重要性を示す具体的事実のほか,乙が甲による不利益行為を受け入れている事実が認められる場合,これを受け入れるに至った経緯や態様等を総合的に考慮して,乙にとって甲との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すため,甲が乙にとって著しく不利益な要請等を行っても,乙がこれを受け入れざるを得ないような場合であるかを判断するのが相当である。
  (注3)「不利益行為」とは,独占禁止法第2条第9項第5号イないしハが規定する行為をいう。

(ウ) 被審人の取引上の地位が127社に対して優越しているか否か
a 被審人の市場における地位
  
被審人は,家電量販店として有数の規模を誇り,しかも,その事業規模は年々拡大していたことからすると,本件対象期間において,家電製品等の小売業を営む家電量販店として有力な地位にあったものと認められる。
 そうすると,家電製品等の製造業者及び卸売業者は,被審人と継続的に取引を行うことで,被審人を通じて,家電製品等の自社の取扱商品を消費者に幅広く供給することができ,多額かつ安定した売上高を見込むことができることになるから,一般的にいえば,被審人と取引することの必要性及び重要性は高いと評価することができる。
b 被審人と127社との関係
(a) 127社のうち,27社については,前記aの事実に加え,27社の被審人に対する取引依存度が大きいこと等の事実を考慮すれば,27社にとって,被審人との取引の継続が困難になることは事業経営上大きな支障を来すものとうかがわれる。
 また,公正取引委員会からの報告命令に対する27社の回答内容等はこれら客観的状況に沿うものといえる。
 そして,後記(オ)に詳述するとおり,27社が被審人による不利益行為を受け入れるに至った経緯や態様は,それ自体,被審人が27社に対してその意に反するような要請等を行っても,これが甘受され得る力関係にあったことを示すものである。
 以上を総合的に考慮すれば,27社は,被審人との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すため,被審人が著しく不利益な要請等を行っても,これを受け入れざるを得ないような場合にあり,被審人の取引上の地位は27社に対して優越していたものと認められる。
(b) 127社のうち,59社については,前記aの事実に加え,59社の取引先に対する取引依存度における被審人の順位が高いこと等の事実を考慮すれば,59社にとって,被審人との取引の継続が困難になることは事業経営上大きな支障を来すものとうかがわれる。
   また,報告命令に対する59社の回答内容等はこれら客観的状況に沿うものといえる。
そして,後記(オ)のとおり,59社が被審人による不利益行為を受け入れるに至った経緯や態様からすれば,59社は,被審人が著しく不利益な要請等を行っても,これを受け入れざるを得ないような場合にあったことがうかがわれる。
 以上を総合的に考慮すれば,59社は,被審人との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すため,被審人が著しく不利益な要請等を行っても,これを受け入れざるを得ないような場合にあり,被審人の取引上の地位は59社に対して優越していたものと認められる。
(c) 127社のうち,6社については,前記(a)及び(b)と同等の状況にはないとしても,前記aの事実に加え,資本金額,年間総売上高,従業員数などに照らして6社の事業規模が極めて小さいと認められること等の事実を考慮すれば,被審人に対する取引依存度が小さいことを勘案しても,なお6社にとって,被審人との取引の継続が困難になることは事業経営上大きな支障を来すものとうかがわれる。
  また,報告命令に対する6社の回答内容等は上記に考慮した客観的状況に沿うものといえる。
 そして,後記(オ)のとおり,6社が被審人による不利益行為を受け入れるに至った経緯や態様からすれば,6社は,被審人が著しく不利益な要請等を行っても,これを受け入れざるを得ないような場合にあったことがうかがわれる。
  以上を総合的に考慮すれば,6社は,被審人との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すため,被審人が著しく不利益な要請等を行っても,これを受け入れざるを得ないような場合にあり,被審人の取引上の地位は6社に対して優越していたものと認められる。
(d) 127社のうち,35社については,前記(a)ないし(c)と同等の状況にあるとは認められず,前記aの事実を勘案しても,35社にとって,被審人との取引の継続が困難になることが直ちに事業経営上大きな支障を来すものとは認められない。
 また,後記(オ)のような被審人による不利益行為を受け入れるに至った経緯や態様を勘案しても,35社については,被審人との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すために,被審人が著しく不利益な要請等を行ってもこれを受け入れざるを得ないような場合にあったとまではなお断ずることはできない。
  その他,被審人の取引上の地位が35社に対して優越していたとまで認めるに足りる的確な証拠はない。
(エ) 被審人が127社に本件従業員等派遣をさせたことは不利益行為に当たるか
a 被審人が127社に対して従業員等の派遣を依頼し,127社がこの依頼に応じて従業員等を派遣したこと
  
被審人は,本件対象期間において,被審人運営店舗の新規開店又は改装開店に際し,127社に対して,店舗開設準備作業の日程等を連絡するなどして従業員等の派遣を依頼し,被審人運営店舗の新規開店又は改装開店の際の店舗開設準備作業(商品の搬出,商品の搬入又は店作り)のため,127社から本件従業員等派遣という役務の提供を受けたものと認められる。
b 被審人が127社に本件従業員等派遣をさせたことは不利益行為に該当するか
(a) 従業員等の派遣を受ける行為が不利益行為となる場合
  
被審人と納入業者との間の取引は買取取引であるが,このような取引についてみれば,売主は,買主に商品を引き渡すことにより取引契約上の義務を履行したこととなるところ,買主が小売業者である場合に,買主の新規店舗の開設,既存店舗の改装及びこれらの店舗での開店セール等の際に,買取取引で仕入れた商品を他の陳列棚から移動させる作業や,接客するという作業などは,本来買主が行うべき役務であって,売主が自社の従業員等を派遣して上記のような作業に当たらせること(以下「新規店舗開設等作業のための従業員等派遣」という。)は,売主にとって通常は何ら合理性のないことであり,そのような行為は,原則として不利益行為に当たることになる。
   もっとも,新規店舗開設等作業のための従業員等派遣については,例外的に,[1]従業員等の業務内容,労働時間及び派遣期間等の派遣の条件について,あらかじめ相手方と合意し,かつ,派遣される従業員等の人件費,交通費及び宿泊費等の派遣のために通常必要な費用を買主が負担する場合(以下「従業員等派遣例外事由[1]」という。),[2]従業員等が自社の納入商品のみの販売業務に従事するものなどであって,従業員等の派遣による相手方の負担が従業員等の派遣を通じて相手方が得ることとなる直接の利益等を勘案して合理的な範囲内のものであり,相手方の同意の上で行われる場合(以下「従業員等派遣例外事由[2]」という。)は,不利益行為には当たらないと解される。
(b) 本件従業員等派遣をさせた行為が原則として不利益行為に当たること
  
本件従業員等派遣は,前記(a)の新規店舗開設等作業のための従業員等派遣に該当するものと認められる。次に,被審人と127社との間でされた取引は,そのほぼ全てが買取取引であり,取引基本契約書等では,納入業者は物流センターにおいて商品を引き渡すものとされていた。そうすると,被審人が127社に本件従業員等派遣をさせた行為は,例外事由に当たるなどの特段の事情がない限り,不利益行為に当たるということとなる。
(c) 本件従業員等派遣をさせた行為が従業員等派遣例外事由[1]に当たらないこと
  
被審人と127社との間で,本件従業員等派遣について,従業員等の業務内容,労働時間及び派遣期間等の派遣の条件があらかじめ合意がされていたものとは認められない。また,被審人は,127社による本件従業員等派遣に係る従業員等の人件費,交通費及び宿泊費等の派遣のために要した費用を負担していなかったものと認められる。以上によれば,被審人が127社に本件従業員等派遣をさせたことは,従業員等派遣例外事由[1]には当たらないことになる。
(d) 本件従業員等派遣をさせたことについて従業員等派遣例外事由[2]に当たるなどの特段の事情があるか
ⅰ 従業員等派遣例外事由[2]に当たるなどの特段の事情の有無の判断について
(i) 自社商品の適切な展示による販売促進について
   
127社の派遣した従業員等が行った作業のうちの商品の搬出については,改装を行う売場にある商品を梱包材で梱包し,又は,折り畳み式のコンテナに収納して,売場から当該店舗の倉庫等の被審人が指定する場所まで当該商品を運搬するというものであって,その作業内容からして,自社商品の適切な展示と関係を有するものとは認められないから,自社商品の適切な展示による販売促進に直接結び付くものとは認められない。
  127社の派遣した従業員等が行った作業のうちの商品の搬入は,当該店舗の搬入口若しくは倉庫から被審人が指定する売場まで,又は当該店舗の搬入口から被審人が指定する当該店舗の倉庫まで商品を運搬し,設置された什器に沿って並べるというものであって,商品の搬入とともに店作りを行い,かつ,仮に当該店作りが127社の商品の販売促進に直接結び付くものであったとしても,商品の搬入自体は,自社商品の適切な展示による販売促進に直接結び付くものとは認められない。
   127社が本件従業員等派遣によって派遣した従業員等が行った店作りのうち,在庫商品の配置,陳列は,棚割表(注4)の記載に従って行われる単純な作業であって,被審人の従業員において実施することが可能なものと認められるなど,これを被審人の従業員が実施した場合との比較において,当該商品についての格別の販売促進の効果を生じさせるものとは認められないから,127社は,これを通じて,自社商品の適切な展示による販売促進により,直接の利益を得ることができると認めることはできない。
127社が本件従業員等派遣によって派遣する従業員等が行った店作りのうち,商品の展示,装飾は,棚割表に基づいて行うことが徹底されていたことなどからすると,基本的に,被審人の従業員がこれを実施する場合との比較において,127社の商品についての格別の販売促進の効果を生じさせるものであるとまでは認められないというべきである。
  その一方で,特に,商品について熟知している納入業者の派遣する従業員等が,その技術や知識等を活用して当該商品の展示,装飾を行うことを通じて,当該商品の特有の魅力が発揮され,被審人の従業員においてこれを行う場合との比較において,明らかに差異を生じるような特性を有する商品について,納入業者の派遣する従業員等による当該商品の展示,装飾が,その商品特有の魅力を演出するために行われるものであり,かつ,被審人の従業員において,そのような商品の展示,装飾をすることができないという場合(以下「商品の特性上格別の販売促進の効果を生じさせる場合」という。)には,127社の派遣する従業員等による当該商品の展示,装飾は,当該商品についての販売促進に直接結び付くものと認められ,127社は,本件従業員等派遣を通じて,自社商品の適切な展示による販売促進により,直接の利益を得ることができるものと認められる。
  (注4)被審人運営店舗の新規開店又は全面改装による改装開店が行われる場合に,店舗の売場のレイアウト等に左右されない基本的な棚割りを記載した文書に基づき,個別の店舗の新規開店又は改装開店の際に用いる具体的な棚割りを記載した表
(ⅱ) 自社商品の展示スペースの確保による販売促進について
  
127社は,本件従業員等派遣をすることにより,自社商品の展示スペースの確保(拡張)ができると認めることはできず,また,これができるとしても,それが自社商品の適切な展示のように,127社の商品についての販売促進に直接結び付くものであると認めることはできない。
(ⅲ) 情報収集の機会及び店舗従業員等との良好な人間関係の構築による自社商品の販売促進について
  
127社は,本件従業員等派遣を通じて,情報収集の機会及び店舗従業員等との良好な人間関係の構築による自社商品の販売促進により,直接の利益を得ることはできないものと認められる。
(iv) 新規開店又は改装開店の際の自社商品の販売促進について
  
前記(i)で説示したとおり,127社は,商品の特性上格別の販売促進の効果を生じさせる場合には,本件従業員等派遣を通じて,自社商品の適切な展示による販売促進により,直接の利益を得ることができるものと認められる。
   一方,被審人は,新規開店又は改装開店の際の店舗開設準備作業のために本件従業員等派遣を受けるに当たり,納入業者に対して見返りを約束していたわけではなく,納入業者の納入する製品を勧めるかは被審人の店員次第であり,被審人と納入業者との商談の際,当該納入業者が従業員等派遣を行っていたことを考慮した交渉がされていたわけでもなかったことからすると,127社が本件従業員等派遣を実施すること自体が,当該納入業者の商品の販売促進に直接結び付くものとは認められない。また,被審人運営店舗の新規開店又は改装開店の際に127社の商品の売上げが拡大する可能性があるとしても,それは被審人運営店舗の新規開店又は改装開店自体やそれらに伴うセールに集客効果があるためであり,127社が本件従業員等派遣に応じたことによるものではないから,本件従業員等派遣によって得られる直接の利益には当たらない。
ii  被審人が127社に本件従業員等派遣をさせたことについての従業員等派遣例外事由[2]に当たるなどの特段の事情の有無について
  
127社に本件従業員等派遣をさせたことについては,一部の納入業者(3社)に対する行為については,商品の特性上格別の販売促進効果を生じさせる場合に当たり,自社商品の適切な展示による販売促進により直接の利益を得ることができるものとして,従業員等派遣例外事由[2]に該当すると認めることができるが,その余については,上記3社に対して上記以外の店舗開設準備作業をさせたことを含めて,いずれも従業員等派遣例外事由[2]に当たるなどの特段の事情を認めることはできず,不利益行為に該当するものと認められる。
(オ) 127社が不利益行為を受け入れるに至った経緯や態様等
  
まず,被審人は,消費者に販売するために商品を納入業者から購入する大規模な小売業者であり,他方で127社は,自ら製造しあるいは自ら仕入れた商品を,被審人に販売する納入業者であって,127社に対する前記(エ)で認定した不利益行為は,このような被審人によるいわゆるバイイングパワーが発揮されやすい取引上の関係を背景としたものである。
  このような背景の下,前記(エ)で認定した不利益行為は,127社という多数の取引の相手方に対して,約2年3か月という長期間にわたり,133回に上る被審人運営店舗の新規開店又は改装開店に際し,被審人の利益を確保することなどを目的として,被審人運営店舗の店舗開設準備作業に関係する被審人の従業員の連携の下,組織的かつ計画的に一連のものとして行われたものである。
  また,納入業者の側においても,被審人から従業員等の派遣の依頼を受けた納入業者の従業員は,被審人の従業員に対して従業員等の派遣の可否や人数について返答することが少なくなく,商品の搬出,商品の搬入又は店作りに従業員等を派遣できない場合には,事前に,被審人にその旨と謝罪の連絡をしたり,代わりの者を派遣したりしており,一部の納入業者は,同種の商品を納入する他の納入業者と調整をした上で,被審人の担当者に対し,店作りに係る日程及び店作りに派遣する従業員等の分担を連絡するなどしていた。
  以上のような不利益行為を127社が受け入れるに至った経緯や態様は,それ自体,被審人が納入業者一般に対してその意に反するような要請等を行っても,一般的に甘受され得る力関係にあったことを示すものであるから,前記(ウ)において被審人の127社に対する取引上の地位を判断する際に考慮したとおり,前記(エ)で認定した不利益行為を受け入れていた納入業者については,被審人が著しく不利益な要請等を行ってもこれを受け入れざるを得ないような場合にあったことをうかがうことができる。
(カ) 被審人が本件従業員等派遣をさせたことが優越的地位の濫用に該当するか
a 被審人の行為が独占禁止法第2条第9項第5号柱書の「利用して」行われたものであること
   甲が乙に対して優越的な地位にあると認められる場合には,甲が乙に不利益行為を行えば,通常は,甲は自己の取引上の地位が乙に対して優越していることを「利用して」これを行ったものと認められる。被審人は,前記(ウ)のとおり,その取引上の地位が92社に対して優越するものと認められるところ,被審人が92社に対して従業員等派遣を要請し,92社がこれに応じて本件従業員等派遣を行ったことは前記(エ)aのとおりである。また,被審人が92社に本件従業員等派遣をさせたことが,92社のいずれに対する関係においても,独占禁止法第2条第9項第5号ロが規定する不利益行為に該当するものと認められることも,前記(エ)bのとおりである。
  そうすると,被審人が92社に本件従業員等派遣をさせた行為は,通常,自己の取引上の地位が92社に対して優越していることを「利用して」行われたものであると認められる。
b 被審人が本件従業員等派遣をさせたことが公正な競争を阻害するおそれがあるものであること
 
独占禁止法第19条において,自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して,正常な商慣習に照らして不当に同法第2条第9項第5号(改正法施行日前においては旧一般指定第14項〔第1号ないし第4号〕)に該当する行為をすることが不公正な取引方法の一つとして規制されているのは,甲が,乙に対し,その地位を利用して,正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることは,相手方の自由かつ自主的な判断による取引を阻害するとともに,相手方はその競争者との関係において競争上不利となる一方で,行為者はその競争者との関係において競争上有利となるおそれがあり,このような行為は公正な競争を阻害するおそれ(公正競争阻害性)があるといえるからである。
  また,上記の独占禁止法第19条において優越的地位の濫用が不公正な取引方法の一つとして規制されている趣旨に照らせば,同法第2条第9項第5号又は旧一般指定第14項(第1号ないし第4号)に該当する行為は,これが複数みられるとしても,また,複数の取引先に対して行われたものであるとしても,それが,被審人運営店舗の店舗開設準備作業に関係する被審人の従業員の連携の下,組織的かつ計画的に一連のものとして実行されているなど,それらの行為を行為者の優越的地位の濫用として一体として評価できる場合には,独占禁止法上一つの優越的地位の濫用として規制されると解するのが相当である。
  被審人は,前記aのとおり,その取引上の地位が対象納入業者に対して優越していることを利用し,前記(オ)のとおり,被審人の利益を確保することなどを目的として,被審人運営店舗の店舗開設準備作業に関係する被審人の従業員の連携の下,組織的かつ計画的に一連のものとして,対象納入業者に本件従業員等派遣をさせていることからすると,これらの行為は,行為者の優越的地位の濫用として一体として評価できる場合に該当し,独占禁止法上一つの優越的地位の濫用として規制されることになる。
   また,被審人の上記の行為により,約2年3か月もの長期間にわたり,92社という多数の納入業者に対し,合計133回に及ぶ被審人運営店舗の新規開店又は改装開店に際し,延べ3,165回という多数回にわたって従業員等を派遣することを余儀なくさせていたのであって,これは,納入業者である対象納入業者の自由かつ自主的な判断による取引を阻害するものといえる。
  さらに,対象納入業者は,上記のような本件従業員等派遣を余儀なくされたことによって生じる人件費等の負担により,その競争者との関係において競争上不利となる一方で,被審人は,人件費等の負担を納入業者に転嫁することにより,被審人がその競争者との関係において競争上有利となるおそれがあったものと認められる。
   そうすると,被審人が,その優越的地位を利用して,対象納入業者に本件従業員等派遣をさせたことは,正常な商慣習に照らして不当に行われたものであって,公正な競争を阻害するおそれ(公正競争阻害性)があるものと認められる。
c 結論
 
以上によれば,被審人は,審査官の主張する本件対象期間中,自己の取引上の地位が対象納入業者に優越していることを利用して,正常な商慣習に照らして不当に独占禁止法第2条第9項第5号ロ(改正法の施行日前については,旧一般指定第14項第2号)に該当する行為を行っていたものであり,当該行為は,優越的地位の濫用に該当すると認められる。
  他方,35社については,被審人が35社に対して優越的地位を有していたことを認めるに足りる証拠はないから,被審人の35社に対する行為は,優越的地位の濫用に該当すると認めることはできない。
 
イ 争点2について
    
旧一般指定は,あらゆる事業分野にわたる不公正な取引方法に一般的に適用しようとするものであることや,旧一般指定と大規模小売業告示(注5)はいずれも不公正な取引方法を指定するものであり,いずれの適用による法律効果も同じであることなどに照らすと,大規模小売業告示が定めている特定の事業分野について,旧一般指定の適用は排除されないと解するのが相当である。
  したがって,大規模小売業告示と旧一般指定第14項のいずれの要件をも満たし得る,本件違反行為のうちの改正法施行前の行為に対し,大規模小売業告示ではなく旧一般指定第14項を適用したとしても,法令の適用に誤りはない。
  (注5)大規模小売業者による納入業者との取引における特定の不公正な取引方法(平成17年公正取引委員会告示第11号)
 
ウ 争点3について
  
被審人は,平成22年11月30日に本件違反行為を取りやめているものの,本件違反行為が行われた期間が長かったこと,被審人が本件違反行為を取りやめたのは,同月16日の本件立入検査を契機とするものであって,被審人の自発的意思に基づくものではなかったことからすると,被審人がヤマダ電機事件を踏まえて本件従業員等派遣につき社内検討や一定の対応を行っていたことを考慮しても,被審人によって,本件違反行為と同様の違反行為が繰り返されるおそれがあったと認められる。これに加えて,本件排除措置命令の時点における被審人の家電製品等の小売業を営む家電量販店としての地位は第2位であり,被審人の連結売上高は増加していて,被審人と取引する納入業者にとって被審人は優越的地位に立ちやすい状況にあったことからすると,被審人に対して本件違反行為が排除されたことを確保するために必要な措置を命ずることが,「特に必要があると認めるとき」に該当するものと認められる。
  したがって,公正取引委員会が被審人に対して本件排除措置命令をしたことは相当である。
 
エ 争点4について
  
被審人は,2年以上にわたり,多数の納入業者に対し,自己の取引上の地位が対象納入業者に優越していることを利用して,被審人運営店舗の店舗開設準備作業に関係する被審人の従業員の連携の下,組織的かつ計画的に一連のものとして本件違反行為を行っていたところ,これらの行為の相手方を特定の納入業者に限定していた様子はうかがえない。また,本件排除措置命令の効力が生じた時点においても被審人が家電量販店として有力な地位にあり,対象納入業者以外の納入業者との関係でも優越的地位にある可能性が十分にあったことからすれば,対象納入業者以外の納入業者に対しても本件違反行為と同種又は類似の違反行為の行われるおそれがあると認められる。
   したがって,被審人による将来の違反行為を防止するためには,対象納入業者だけではなく,被審人と取引関係にある全ての納入業者に対して,本件排除措置命令の主文第1項に基づいて採った措置の通知を命じることが,必要かつ相当であると認められる。これに加えて,対象納入業者以外に対しても対象納入業者に対する通知文と同旨の文書を送付することによる被審人の負担も,被審人の事業規模等からすると大きいとはいえないことに鑑みれば,本件排除措置命令の主文第1項に基づいて採った措置の通知を命じることについて,公正取引委員会が裁量権の範囲を逸脱又は濫用したとは認められず,また,不相当なものとは認められない。
 
オ 争点5について
(ア) 被審人は,独占禁止法第20条の6にいう「継続してするもの」に該当するかについては,独占禁止法第20条の6が適用されるのは改正法が施行された平成22年1月1日以後に係るものであるから(改正法附則第5条),本件違反行為が独占禁止法上一つの優越的地位の濫用であるとして判断することはできず,違反行為の相手方ごとに判断されなければならないとした上で,独占禁止法第20条の6にいう「継続してするもの」について,同日以後において継続性が認められることが必要であるとして,本件において課徴金の算定の基礎となるのは,平成22年1月1日以後において違反行為が「継続してするもの」と認められる納入業者からの商品の購入額に限られると主張する。
  しかしながら,優越的地位の濫用規制の趣旨に照らせば,同法第2条第9項第5号又は旧一般指定第14項(第1号ないし第4号)に該当する行為は,これが複数みられるとしても,また,複数の取引先に対して行われたものであるとしても,それが,被審人運営店舗の店舗開設準備作業に関係する被審人の従業員の連携の下,組織的かつ計画的に一連のものとして実行されているなど,それらの行為を行為者の優越的地位の濫用として一体として評価できる場合には,独占禁止法上一つの優越的地位の濫用として規制されると解するのが相当である。
  そうすると,被審人による上記行為は,改正法が施行された平成22年1月1日の前後を通じて「継続してするもの」に該当することは明らかである。
(イ) また,被審人は,独占禁止法第20条の6にいう「当該行為をした日から当該行為がなくなる日までの期間」や「購入額」も,違反行為の相手方ごとに判断されるべきであると主張する。
  しかしながら,条文上「当該行為」とは,その直前の「第19条の規定に違反する行為」を意味することは明らかであり,本件違反行為が独占禁止法上一つの優越的地位の濫用として規制される以上,「当該行為をした日から当該行為がなくなる日までの期間」や「購入額」も本件違反行為が独占禁止法上一つの優越的地位の濫用であることを前提として認定されるべきで,被審人の主張を採用することはできない。
 
カ 争点6について
  
マル特経費負担は,形式的には被審人の販売実績に応じて支払われるものであったとしても,実質的には被審人の仕入実績に応じて支払われるものと変わらないものと認められる。そして,マル特経費負担は,被審人と対象納入業者を含む納入業者との間で締結されている商品取引基本契約書の仕入価格の約定等を定める条項に規定された「機種・品番ごとにあらかじめ単価を決め難い割戻し金」に該当する割戻金であり,証拠によれば,上記契約書の第8条2項に記載されており,割戻金の対象となる期間,機種,品番,割戻金単価,実績(仕入実績又は販売実績のいずれか)については,算定対象期間の開始前に合意されて,納入業者が起票発行する「経費負担通知書」に記載されているものと認められることからすると,商品の引渡しの実績に応じて支払われる割戻金として,独占禁止法施行令第30条第2項第3号の規定する割戻金に該当するものと認めるのが相当である。
  以上によれば,被審人の販売実績に基づき納入業者から被審人に支払われたマル特経費負担は,独占禁止法施行令第30条第2項第3号に該当するものとして,本件対象期間中の被審人の対象納入業者からの購入額から控除すべきものと認めるのが相当である。

関連ファイル

※令和元年10月8日,「審決書」のPDFファイルの1ページ目に,「読替え」の注意書を挿入しました。

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公正取引委員会事務総局官房総務課(審判・訟務係)
電話 03-3581-5478(直通)
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