令和2年12月17日
公正取引委員会
公正取引委員会は,株式会社電通(以下「電通」という。)に対し,本日,次のとおり,電通の行為が,独占禁止法第19条(不公正な取引方法第14項〔競争者に対する取引妨害〕)の規定の違反につながるおそれがあるものとして注意を行った。
1 関係人
法人番号 | 5010401143788 |
名称 | 株式会社電通 |
所在地 | 東京都港区東新橋一丁目8番1号 |
代表者 | 代表取締役 五十嵐 博 |
事業の概要 | 広告業 |
2 本件の概要等
(1) 本件行為の概要
ア(ア) 電通は,一般社団法人サービスデザイン推進協議会が中小企業庁から受託した令和2年度補正持続化給付金事務事業(以下「持続化給付金事業」という。)(注1)の一部の業務を,同協議会から受託している。
(イ) 持続化給付金事業では,事業者からの給付申請について,ウェブサイトを通じた電子申請を基本とし,自身で電子申請を行うことができない事業者のために,電子申請の入力サポートを行う「申請サポート会場」を全国に設置していた。
電通は,持続化給付金事業の申請サポート会場運営業務(注2)の一部を電通と同一の親会社が株式を所有している会社を通じて,複数の事業者に委託していた。また,これらの受託事業者は,受託した業務の一部を更に他の事業者に委託していた(以下では,持続化給付金事業の申請サポート会場運営業務を受託した事業者を「委託先事業者」という。)。
イ(ア) 中小企業庁は,持続化給付金事業と同様の事務手続を採ることが見込まれた令和2年度家賃支援給付金事務事業(以下「家賃支援給付金事業」という。)(注3)の発注を予定していた。中小企業庁の家賃支援給付金事業の担当者は,入札公告前に実施された関係事業者に対するヒアリングにおいて同事業に対応することが困難であると回答していた電通に対し,令和2年5月中旬以降,家賃支援給付金事業の参考とするため,持続化給付金事業の実施方法等を問い合わせていた。
(イ)a 電通は,前記(ア)の問い合わせを受けて,持続化給付金事業の運営に関する同社のノウハウが持続化給付金事業と関係しない事業者に流出することを危惧するなどした。そして,電通は,令和2年5月23日,東京都に所在する持続化給付金事業の事務局において,委託先事業者のうち,当該事業の申請サポート会場運営業務の取りまとめを担当する2社(以下「取りまとめ2社」という。)に対し,特定の事業者(以下「特定事業者」という。)が家賃支援給付金事業を受注した場合,委託先事業者が特定事業者から家賃支援給付金事業の申請サポート会場運営業務を受託すれば,「出入禁止」,つまり,今後電通は当該委託先事業者と取引をしない旨を発言するとともに,当該発言の内容を他の委託先事業者に伝達するように指示した。
b 上記指示を受けて,取りまとめ2社は,同月24日,他の委託先事業者に対し,メール等により当該発言の内容をそれぞれ伝達した。また,取りまとめ2社から伝達された委託先事業者の中には,更に自らが持続化給付金事業の申請サポート会場運営業務の一部を委託している事業者に対し当該発言の内容を伝達した者もいた。
c 当該発言の内容を伝達された委託先事業者の多くは,家賃支援給付金事業の申請サポート会場運営業務を受託する余力がない状況等であった。
他方,当該発言の内容を伝達された委託先事業者の一部には,家賃支援給付金事業の申請サポート会場運営業務を受託する意欲及び能力を有している者がいたが,これらの者に対しては,家賃支援給付金事業の入札参加事業者から家賃支援給付金事業の申請サポート会場運営業務の委託の打診はなかった。
また,委託先事業者と同種の事業を営む事業者が我が国において多数存在していた。
したがって,家賃支援給付金事業の入札参加事業者と委託先事業者との取引において,結果的に,前記aの行為によって特段の支障が生じたとは認められなかった。
(注1) 持続化給付金事業は,新型コロナウイルス感染症拡大により,特に大きな影響を受けている中小企業等の事業継続を支援するため,事業全般に幅広く使える給付金を支給するものである。同事業は,中小企業庁が一般競争入札の方法により発注し(公告日:令和2年4月8日,開札日:同月14日),受託した事業者は,事務局を設置し,当該事務局において,事業者からの給付申請の受付,給付申請の内容の審査,事業者への給付金の支給等を行う。
(注2) 申請サポート会場運営業務とは,給付金事業において,申請サポート会場の確保及び設営,スタッフの手配,各種マニュアルの作成等の会場運営に係る業務をいう。
(注3) 家賃支援給付金事業は,新型コロナウイルス感染症拡大により,特に大きな影響を受けている中小企業等の事業継続を支援するため,固定費の中で大きな負担となっている家賃の負担を軽減する給付金を支給するものである。同事業は,中小企業庁が一般競争入札の方法により発注し(公告日:令和2年5月28日,開札日:同年6月2日),受託した事業者は,事務局を設置し,当該事務局において,事業者からの給付申請の受付,給付申請の内容の審査,事業者への給付金の支給等を行う。
(2) 注意の概要
公正取引委員会は,前記(1)イ(イ)aの行為は,独占禁止法第19条(不公正な取引方法第14項〔競争者に対する取引妨害〕)の規定の違反につながるおそれがあるものとして,電通に対し,注意を行った。
関連ファイル
(印刷用)(令和2年12月17日)株式会社電通に対する独占禁止法違反被疑事件の処理について(PDF:58KB)
(令和2年12月17日)参考1(事案の概要)(PDF:158KB)
(令和2年12月17日)参考2・3(過去事例等)(PDF:100KB)
問い合わせ先
公正取引委員会事務総局審査局第三審査
電話 03-3581-3383(直通)
ホームページ https://www.jftc.go.jp/