令和2年6月25日
公正取引委員会事務総局
近畿中国四国事務所中国支所
はじめに
公正取引委員会は,消費税の円滑かつ適正な転嫁を確保する観点から,消費税の転嫁拒否等の行為(以下「転嫁拒否行為」という。)の未然防止のための取組と,転嫁拒否行為に対する迅速かつ厳正な対処のための取組を進めてきたところである。
近畿中国四国事務所中国支所(以下「中国支所」という。)においても,転嫁拒否行為に対して迅速かつ厳正に対処することを目的として,「消費税転嫁対策調査室」を設置し,中国支所管内(鳥取県,島根県,岡山県,広島県及び山口県)において消費税転嫁対策に係る取組を実施してきたところ,令和元年度における管内の取組状況は以下のとおりである。
第1 転嫁拒否行為に対する迅速かつ厳正な対処のための取組
1 措置件数
管内においては,令和元年度は,転嫁拒否行為に対して,47件の指導を行っている(表1参照。消費税転嫁対策特別措置法施行後の措置件数の推移については,参考参照)。主な指導の概要は別紙のとおりである。
表1:措置件数 [単位:件]
(注1) 平成25年10月から令和2年3月までの累計。また,全国の件数には,中国地区の件数を含む(以下同じ)。
(注2) 《 》内の件数は,大規模小売事業者に対する勧告又は指導を行った事件の件数(措置件数)で内数である。
2 措置件数の業種別内訳
令和元年度の措置件数(勧告又は指導を行った事件の件数をいう。以下同じ。)について措置の対象となった特定事業者(注1)の業種別で分類すると,管内においては,小売業が8件(17.0%)と最も多く,以下,製造業が7件(14.9%)とこれに続いている(表2参照)。
(注1) 特定事業者とは,①大規模小売事業者,②特定供給事業者(注2)から継続して商品又は役務の供給を受ける法人事業者である。
(注2) 特定供給事業者とは,①大規模小売事業者に継続して商品又は役務を供給する事業者,②資本金等の額が3億円以下である事業者,個人事業者等である。
表2:措置件数の内訳(業種別) [単位:件(%)]
(注1) 平成25年10月から令和2年3月までの累計。
(注2) 複数の業種にわたる事業者が勧告又は指導の対象となった場合は,当該事業者の主たる業種により分類している。「その他」は娯楽業,金融・保険業,医療福祉等である。
(注3) ( )内の数値は合計値に占める割合であり,小数点以下第2位を四捨五入しているため,合計は必ずしも100とならない。
3 措置件数の行為類型別内訳
令和元年度の措置件数について行為類型別で分類すると,管内においては,買いたたき(消費税転嫁対策特別措置法第3条第1号後段)が42件(71.2%)と最も多い(表3参照)。
表3:措置件数の内訳(行為類型別) [単位:件(%)]
(注1) 平成25年10月から令和2年3月までの累計。
(注2) 事業者の中には,複数の行為を行っている場合があり,「合計」の件数は,表1及び表2に記載の件数とは必ずしも一致しない。
(注3) ( )内の数値は合計値に占める割合であり,小数点以下第2位を四捨五入しているため,合計は必ずしも100とならない。
4 特定供給事業者が被った不利益の原状回復の状況
令和元年度は,転嫁拒否行為によって特定供給事業者が被った不利益について,管内において,特定事業者18名から,特定供給事業者105名に対し,総額1433万円の原状回復が行われた(表4参照。消費税転嫁対策特別措置法施行後の原状回復額の推移については,参考参照)。
表4:特定供給事業者が被った不利益額の原状回復の状況
(注1) 平成26年4月から令和2年3月までの累計。
(注2) 原状回復額は1万円未満を切り捨てている。
5 転嫁拒否行為等に関する相談件数
転嫁拒否行為等に関する事業者からの相談や情報提供を一元的に受け付けるための相談窓口を設置しており,当該相談窓口において,令和元年度は64件の相談に対応した(表5参照)。
表5:転嫁拒否行為等に関する相談件数 [単位:件]
(注1) 平成25年4月から令和2年3月までの累計。
(注2) 転嫁カルテル及び表示カルテルの届出に関する相談並びに情報提供を含む。
6 事業者及び事業者団体に対するヒアリング調査
様々な業界における転嫁拒否行為に関する情報や取引実態を把握するため,管内においては,令和元年度は245名の事業者及び11の事業者団体に対してヒアリング調査を実施した(表6参照)。
表6:事業者及び事業者団体に対するヒアリング調査の実施件数 [単位:件]
(注) 平成25年10月から令和2年3月までの累計。
7 移動相談会
事業者にとって,より一層相談しやすい環境を整備するため,管内においては,令和元年度は移動相談会を6回実施した(表7参照)。
表7:移動相談会の実施回数 [単位:回]
(注) 平成25年度から令和元年度までの累計。
第2 転嫁拒否行為の未然防止のための取組
1 公正取引委員会主催説明会
消費税転嫁対策特別措置法の内容を広く周知するため,事業者及び事業者団体を対象として,公正取引委員会主催の説明会を実施しており,管内においては,令和元年度は6回実施した(表8参照)。
表8:公正取引委員会主催説明会の実施回数 [単位:回]
(注) 平成25年度から令和元年度までの累計。
2 講師派遣
管内で開催された,商工会議所,商工会及び事業者団体等が開催する説明会等に,令和元年度は,公正取引委員会の職員を講師として1回派遣した(表9参照)。
表9:講師の派遣回数 [単位:回]
(注) 平成25年度から令和元年度までの累計。
第3 転嫁カルテル及び表示カルテルの届出
消費税の転嫁の方法の決定に係る共同行為(転嫁カルテル)及び消費税についての表示の方法の決定に係る共同行為(表示カルテル)の届出並びに届出書の記載方法等に関する相談を受け付けているところ,管内においては,令和元年度はいずれもなかった。
なお,令和2年3月末までに,管内において,転嫁カルテル2件の届出を受理し,このほか届出書の記載方法等に関して,8件の相談に対応した。
参考
中国地区における消費税転嫁対策特別措置法施行後の措置件数(勧告又は指導の件数)及び原状回復額の推移
※ 原状回復額は1万円未満を切り捨てている。
※ 平成25年度は平成25年10月から平成26年3月までの措置件数。
別紙
主な指導事例
(平成31年4月~令和2年3月)
買いたたき(第3条第1号後段)
① 建設コンサルタント業を営むA社は,メンタルヘルスサポート業務を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後の消費税込みの委託代金について,消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,据え置いていた。また,同社は事務所及び駐車場の賃貸人(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日又は令和元年10月1日以後の消費税込みの賃料について,消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,据え置いていた。
② 衣料品・寝装品等の製造販売業を営むB社は,生地の裁断業務を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後の消費税込みの委託代金について,消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,据え置いていた。
③ 食品小売業を営むC社は,食品の納入業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後の消費税込みの仕入代金について,消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,据え置いていた。
④ 清掃,警備,各種設備点検及び保守管理業を営むD社は,産業医顧問業務を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日又は令和元年10月1日以後の消費税込みの委託代金について,消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,据え置いていた。
⑤ 人材派遣業を営むE社は,人材紹介業務を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後の消費税込みの委託代金について,消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,据え置いていた。
関連ファイル
(印刷用)(令和2年6月25日)令和元年度における中国地区の消費税転嫁対策の取組について(PDF:99KB)
問い合わせ先
問い合わせ先 公正取引委員会事務総局 近畿中国四国事務所中国支所 消費税転嫁対策調査室
電話082-228-1520(直通)
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