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(令和2年9月2日)三和シヤッター工業株式会社ほか3名に対する審決について(シャッターの製造業者らによる全国における価格カルテル及び近畿地区における受注調整事件)

令和2年9月2日
公正取引委員会

 公正取引委員会は,三和シヤッター工業株式会社ほか3名(以下「被審人ら」という。)に対し,平成22年10月4日,審判手続を開始し,以後,審判官をして審判手続を行わせてきたところ,令和2年8月31日,被審人らに対し,独占禁止法の一部を改正する法律(平成25年法律第100号)による改正前の独占禁止法(以下「独占禁止法」という。)第66条第2項及び第3項の規定に基づき,被審人三和シヤッター工業株式会社,被審人文化シヤッター株式会社及び被審人東洋シヤッター株式会社に対する課徴金納付命令の一部をそれぞれ取り消し,その余の審判請求を棄却する旨の審決を行った(本件平成22年(判)第17号ないし第28号審決書については,当委員会ホームページの「報道発表資料」及び「審決等データベース」参照。なお,公表する審決書においては,個人情報等に配慮し,マスキングの措置を施している。)。

1 被審人らの概要

事業者名 本店所在地
三和シヤッター工業株式会社
法人番号7011401012519
東京都板橋区新河岸二丁目3番5号
文化シヤッター株式会社
法人番号3010001088907
東京都文京区西片一丁目17番3号
東洋シヤッター株式会社
法人番号4120001085479
大阪市中央区南船場二丁目3番2号
三和ホールディングス株式会社
法人番号3011101010289
東京都新宿区西新宿二丁目1番1号

2 被審人らの審判請求の趣旨

※ 表中,括弧書きのあるものは,以下,括弧内の名称を用いることとする。

⑴ 全国カルテル事件

被審人 排除措置命令
(全国排除措置命令)
課徴金納付命令
(全国各課徴金納付命令)
審判請求の趣旨 事件番号 審判請求の趣旨 事件番号
三和シヤッター工業株式会社
(被審人三和S)
平成22年(措)第15号の全部取消し (判)第17号 平成22年(納)第94号の全部取消し (判)第22号
文化シヤッター株式会社
(被審人文化)
(判)第18号 平成22年(納)第95号の全部取消し (判)第23号
東洋シヤッター株式会社
(被審人東洋)
(判)第19号 平成22年(納)第96号の全部取消し (判)第24号

(2) 近畿受注調整事件

被審人 排除措置命令
(近畿排除措置命令)
課徴金納付命令
(近畿各課徴金納付命令)
審判請求の趣旨 事件番号 審判請求の趣旨 事件番号
被審人三和S 平成22年(納第97号の全部取消し (判)第25号
被審人文化 平成22年(措)第16号の全部取消し (判)第20号 平成22年(納)第98号の全部取消し (判)第26号
被審人東洋 (判)第21号 平成22年(納)第99号の全部取消し (判)第27号
三和ホールディングス株式会社
(被審人三和H)
平成22年(納)第100号の全部取消し (判)第28号

3 主文の内容

⑴ 被審人三和Sに対する平成22年6月9日付けの課徴金納付命令(平成22年(納)第94号)のうち,24億5686万円を超えて納付を命じた部分を取り消す。
⑵ 被審人文化に対する平成22年6月9日付けの課徴金納付命令(平成22年(納)第95号)のうち,17億3831万円を超えて納付を命じた部分を取り消す。
⑶ 被審人東洋に対する平成22年6月9日付けの課徴金納付命令(平成22年(納)第96号)のうち,4億8404万円を超えて納付を命じた部分を取り消す。
⑷ 被審人文化に対する平成22年6月9日付けの課徴金納付命令(平成22年(納)第98号)のうち,2億4291万円を超えて納付を命じた部分を取り消す。
⑸ 被審人三和S,被審人文化及び被審人東洋のその余の審判請求並びに被審人三和Hの審判請求をいずれも棄却する。

4 本件の経緯

平成22年
6月9日 排除措置命令及び課徴金納付命令
7月23日 被審人らから排除措置命令及び課徴金納付命令に対して審判請求
~8月4日 
10月4日 審判手続開始
11月10日 第1回審判

平成30年
8月6日 第39回審判(審判手続終結)
令和2年
1月29日 審決案送達
2月12日 被審人らから異議の申立て及び直接陳述の申出
3月26日 直接陳述の聴取
8月31日 審決

5 原処分の原因となる事実

(1) 全国カルテル事件

 3社(注1)は,共同して,平成20年3月5日頃,各社の役員級の者による会合(以下,「3月5日会合」という。)において,特定シャッター(注2)の需要者向け販売価格について,同年4月1日見積分から,現行価格より10パーセントを目途に引き上げることを合意することにより(以下,この合意を「全国合意」という。),公共の利益に反して,我が国における特定シャッターの販売分野における競争を実質的に制限していた。
 被審人らの全国排除措置命令に係る違反行為の実行期間は,独占禁止法第7条の2第1項の規定により,別表⑴の各被審人に係る「実行期間」欄記載のとおりであり,独占禁止法第7条の2の規定により算出された課徴金の額は,同表の各被審人に係る「課徴金額」欄記載のとおりである。

 (注1)被審人三和S,被審人文化及び被審人東洋の3社。ただし,被審人三和Hの吸収分割(平成19年10月1日)前は,被審人三和H,被審人文化及び被審人東洋の3社をいう。
 (注2)軽量シャッター及び重量シャッター(いずれもグリルシャッターを含み,これらのシャッターの取付工事等の役務が併せて発注される場合には当該役務を含む。)

(2) 近畿受注調整事件

 3社は,受注価格の低落防止を図るため,共同して,遅くとも平成19年5月16日以降,近畿地区における特定シャッター等(注3)について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにするとともに,受注予定者以外の者も受注することとなった場合には受注予定者が建設業者に対して提示していた見積価格と同じ水準の価格で受注するようにする(以下,3社間でのかかる内容の合意を「近畿合意」という。)ことにより,公共の利益に反して,近畿地区における特定シャッター等の取引分野における競争を実質的に制限していた。
 被審人らの近畿排除措置命令に係る違反行為の実行期間は,独占禁止法第7条の2第1項の規定により,別表⑵の各被審人に係る「実行期間」欄記載のとおりであり,独占禁止法第7条の2の規定により算出された課徴金の額は,同表の各被審人に係る「課徴金額」欄記載のとおりである。

 (注3)建設業者が発注する,近畿地区における建築物その他の工作物に取り付けられる重量シャッター,軽量シャッター,オーバーヘッドドア,シートシャッターその他のシャッター及び危害防止装置等のシャッターの関連製品(ドア等の物品又は取付工事等の役務が併せて発注される場合には当該物品又は当該役務を含む。)であって,被審人三和S,被審人文化,被審人東洋及び被審人三和Hのいずれかにおいて積算価格の額(ドア等の物品及び当該物品に係る取付工事等の役務の積算価格の額を除く。)が5000万円以上となるもの

6 審決の概要

(1) 本件の争点

ア 全国排除措置命令の適法性(争点1)
イ 全国各課徴金納付命令の適法性(争点2)
ウ 近畿排除措置命令の適法性(争点3)
エ 近畿各課徴金納付命令の適法性(争点4)
オ 全国各課徴金納付命令と近畿各課徴金納付命令において,同一の物件について,その売上額に対して重複して課徴金を課したことは適法か。(争点5)
カ 被審人文化の課徴金減免申請における報告又は提出した資料に「虚偽の内容が含まれていた」(独占禁止法第7条の2第17項第1号)か。(争点6)

(2) 争点に対する判断の概要

ア 争点1について

(ア) 全国合意を内容とする意思の連絡があるか(「共同して」といえるか)

a 全国合意の合理性について
 まず,3社の営業担当者が,積算価格を基に,過去の取引を踏まえ,一定の割引率を乗ずることにより算出される見積価格や平米単価を指標として,値上げの基準となる取引価格(現行価格)を想定しながら,これに対する一定割合の値上げを実施することが可能である。
 次に,現に3社は,販売価格を引き上げるため,積算価格の引上げという手段を用いており,3社の従業員等も,販売価格を引き上げる手段として,積算価格の引上げが有効である旨を供述していることから,シャッター取引において,積算価格の引上げを販売価格引上げの手段とすることが不合理であるとは認められない。また,特定シャッターの取引分野において90パーセントを上回るシェアを有する3社が同時期に同程度の引上げ幅で見積価格を提示すれば,単独で値上げ活動を行う場合に比して顧客を失う可能性は低減し,従前よりも高い価格水準で交渉することが可能になるのであり,このように競争を回避する効果があることは否定できないのであるから,結果的に,需要者との力関係や経済状況等により,合意どおりに販売価格が上がらないことがあったとしても,こうした合意自体が不合理なものであるとはいえない。
 さらに,個別交渉によって価格が決まるという取引の性質上,値上げ率に幅が生じることは自明であり,また,個別の価格については各営業所ないし営業担当者が決定するものであるとしても,その前提として,本社の営業方針があるのであるから,本社に個別の価格について決定する権限がないからといって,本社において各営業所等に対して示した方針に従って値上げ活動を行うべきことを指示する方法によって当該合意に基づいて値上げを実現することが不可能であるとはいえない。

b 意思の連絡(「共同して」)
 独占禁止法第2条第6項の「共同して」に該当するというためには,複数事業者が対価を引き上げるに当たって,相互の間に意思の連絡があったと認められることが必要であると解されるが,ここでいう意思の連絡とは,複数事業者間で相互に同内容又は同種の対価の引上げを実施することを認識ないし予測し,これと歩調をそろえる意思があることを意味し,一方の対価引上げを他方が単に認識,認容するのみでは足りないが,事業者間相互で拘束し合うことを明示して合意することまでは必要でなく,相互に他の事業者の対価の引上げ行為を認識して,暗黙のうちに認容することで足りると解するのが相当である。
 そして,その判断に当たっては,対価の引上げがされるに至った前後の諸事情を勘案して事業者の認識及び意思がどのようなものであったかを検討し,事業者相互間に共同の認識,認容があるかどうかを判断すべきであるところ,特定の事業者が,①他の事業者との間で対価引上げ行為に関する情報交換をして,②同一又はこれに準ずる行動に出たような場合には,③その行動が他の事業者の行動と無関係に,取引市場における対価の競争に耐え得るとの独自の判断によって行われたことを示す特段の事情が認められない限り,これらの事業者の間に,協調的行動をとることを期待し合う関係があり,意思の連絡があるものと推認されるというべきである。

(a) 対価引上げ行為に関する情報交換
 3月5日会合では,単なる世間話にとどまらず,相互にシャッター等の対価引上げを実施することに関する情報交換がされたものと認められる。

(b) 事後の行動の一致
 3社は,いずれも,3月5日会合以前は特定シャッターの販売価格の引上げ目標を10パーセントと設定していなかったにもかかわらず,3月5日会合後に,特定シャッターについての販売価格の引上げ目標を10パーセントと定め,それぞれ上記目標を各支店,営業所に示して販売価格引上げの指示をしたのであるから,3社は,特定シャッターの販売価格について,現行価格より10パーセントを目途として引き上げるとの同一の行動に出たものと認められる。

(c) 3社の値上げ行動が独自の判断によって行われたことを示す特段の事情の有無について
 前記(a),(b)によれば,3社において値上げに向けた各社の行動が他の事業者の行動と無関係に,取引市場における対価の競争に耐え得るとの独自の判断によって行われたことを示す特段の事情が認められない限り,意思の連絡があるものと推認されるところ,3社の独自の判断によって行われたものであると認めることはできない。

c 全国合意の推認
 ①3社間で,シャッター等の販売価格について10パーセントを目途として引き上げる等の対価の引上げ行為に関する情報交換が行われ,②3社は,それぞれ本社において平成20年4月1日以降の特定シャッターの販売価格の引上げ目標を10パーセントと定め,販売価格の引上げに向けた営業活動をするという同一の行動をとったものと認められるところ,3月5日会合以前においては,3社とも,引き上げ幅についての検討内容は異なっていたにもかかわらず,3月5日会合の後,3月5日会合で情報交換がされた内容と同じ「10パーセント」を目標としていたことは,不自然な一致というべきであり,③3社について,このような値上げに向けた行動が3月5日会合で情報交換がされた他の2社の行動とは無関係に,取引市場における対価の競争に耐え得るとの独自の判断によって行われたことを示す特段の事情も認められないから,3社の間には,相互に特定シャッターの販売価格につき,現行価格より10パーセントを目途として引き上げることを予測し,これと歩調をそろえる意思があるものと推認される。
 値上げの時期に関しては,3月5日会合においては明言されていなかったが,当該合意は,平成20年4月1日以降に原材料である鋼材の値上げに伴い,シャッター製品の値上げを行うことを内容とするものであるところ,シャッター製品の値上げに当たっては,原則として,シャッター業者が提示した見積価格を前提として需要者との間で価格交渉を経るものであることから,3社においては,少なくとも同日見積分から値上げを行うとの合意があったものと推認される。
 したがって,3社間には,全国合意を内容とする意思の連絡があったと推認される。

(イ) 相互拘束について

 全国合意の成立により,本来各社において自由に決定されるべき3社の特定シャッターの販売価格の値上げ幅が,これに制約されて決定されることになり,上記認定のとおり,3社は値上げ幅の目標を10パーセントと定めていることからしても,同合意は各社の事業活動を拘束するものであることが認められる。

(ウ) 一定の取引分野における競争の実質的制限について

a 意義
 「一定の取引分野における競争を実質的に制限すること」とは,当該取引に係る市場が有する競争機能を損なうことをいい,一定の取引分野における競争を完全に排除し,価格等を完全に支配することまでは必要なく,一定の取引分野における競争自体を減少させ,特定の事業者又は事業者集団がその意思で,ある程度自由に,価格,品質,数量,その他各般の条件を左右することによって,市場を支配することができる状態をもたらすことで足り,このような趣旨における市場支配的状態を形成・維持・強化することをいう 。
 このような競争の実質的制限が生じているのか否かを判断するに当たっては,一定の取引分野の範囲が問題となるところ,不当な取引制限については,取引の対象・地域・態様等に応じて,違反者のした共同行為が対象としている取引及びそれにより影響を受ける範囲を検討し,その競争が実質的に制限される範囲を画定して一定の取引分野を決定するのが相当である。

b 一定の取引分野について
 全国合意は,特定シャッターの取引を対象としてその販売価格を引き上げるものであり,それにより影響を受ける範囲も同取引であるから,本件における一定の取引分野は,特定シャッターの販売分野であると認められる。

c 競争の実質的制限について
 平成19年4月から平成20年3月までの間における我が国の特定シャッターの出荷数量に占める3社のシェアは約92.8パーセントと極めて高いことからすれば,3社の意思で,特定シャッターの価格をある程度自由に左右することができる状態がもたらされていたといえ,我が国における特定シャッターの販売分野の競争機能が損なわれ,その競争が実質的に制限されていたと認められる。

d 小括
 以上より,3社は,全国合意により,我が国の特定シャッターの販売分野における競争を実質的に制限したものと認められる。

(エ) 「公共の利益に反して」について

 全国合意は,前記(ウ)のとおり,我が国における特定シャッターの取引分野における競争を実質的に制限するものであるところ,仮に建設業者に建設業法ないし独占禁止法違反となり得る行為があったとしても,3社が価格カルテルである全国合意をすることが,「一般消費者の利益を確保するとともに,国民経済の民主的で健全な発達を促進する」(独占禁止法第1条)とは認められない。

(オ) 小括

 3社間には,平成20年3月5日頃,全国合意を内容とする意思の連絡があったものと認められ,これは,独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当するといえる。

イ 争点2について

(ア) 「商品」の対価に係るものについて

 全国各課徴金納付命令にいう「商品」とは「特定シャッター」を指すところ,需要者の注文に応じて製作し,供給する物を「商品」と認めることは可能であるし,同命令別紙において,「特定シャッター」について,「取付工事等の役務が併せて発注される場合には当該役務を含む」と定義されていることから,同命令にいう「商品」には,取付工事等の役務が含まれることは明らかである。
 したがって,全国各課徴金納付命令が,全国合意は取付工事等の役務を含めて「商品」の対価に係るものであるとしたことが違法であるとはいえない。
 また,全国合意の内容から,特定シャッターの対価そのものに関するものであることは明らかであり,「対価に係るもの・・・をしたとき」に当たる。

(イ) 「当該商品」の認定について

 全国合意には,「平成20年4月1日見積分から」という取決め部分があるものの,これは,値上げの実施の契機としての時期及び態様に関する取決めであって,商品の特性や取引の属性などに応じて値上げの対象商品自体を限定したものではない。したがって,かかる取決めにかかわらず,全国合意の対象商品の範ちゅうに属する商品は,あくまで特定シャッターである。

(ウ) 引渡基準により課徴金の計算の基礎となる売上額を算定したことの適法性

 独占禁止法施行令第6条が設けられた趣旨や,この契約基準によるべき場合は,「著しい差異があるとき」ではなく,「著しい差異を生ずる事情があると認められるとき」であるとしている同条の規定の文言,規定の仕方に照らせば,同条にいう「著しい差異が生ずる事情がある」かどうかの判断は,独占禁止法施行令第5条の定める引渡基準によった場合の対価の合計額と契約により定められた対価の額の合計額との間に著しい差異が生ずる蓋然性が類型的又は定性的に認められるかどうかを判断して決すれば足りるものと解せられる 。
 第94号課徴金納付命令については,引渡基準によった場合の対価の合計額と契約により定められた対価の額の合計額との間に著しい差異が生ずる蓋然性が類型的又は定性的に認められるとはいえないから,被審人三和Sの主張は採用することができず,第94号課徴金納付命令が引渡基準によって課徴金の計算の基礎となる売上額を算定したことは適法である。

ウ 争点3について

(ア) 近畿合意の成立について

 3社は,建設業者の価格交渉による受注価格の低落を防止するために,各社の近畿地区の建設業者担当支店長において,平成19年5月9日に開催した会合で取り決めた内容に従って,同月16日以後,支店長級会合等(注4)において,近畿地区における特定シャッター等について,受注を希望する物件を持ち寄り,営業上優位な業者を確認するとともに,発注者に提示予定の見積価格に関する情報交換をするなどした上で,営業上の優位性が確認されなかった業者は営業活動を自粛し,当該物件の建設業者から引き合いを受けても,営業上優位とされた業者よりも高い見積価格を提示するなどして営業上優位とされた業者がその提示した見積価格で受注できるよう対応していたことが認められる。
 これらによると,3社の当該行為は,近畿地区における特定シャッター等に係る取引において,受注価格の低落を防止するため,3社の中であらかじめ受注予定者を決定し,当該受注予定者が建設業者に対して提示する見積価格で受注できるように協力することにほかならないのであり,同月9日に開催された会合で取り決められた内容は,こうした受注調整に係る基本合意に当たるものと認められる。
 以上によれば,近畿合意が存在したと認められる。

 (注4)平成19年5月16日から平成20年7月23日までの間に,3社の支店長級の者が毎月1回程度行っていた会合(支店長級会合)と電話連絡を併せたものをいう。

(イ) 「共同して…相互にその事業活動を拘束し」に当たるか

 近畿合意は,3社が,近畿地区における特定シャッター等につき,受注予定者を決定し,受注予定者が受注することができるように協力するという内容の取決めであり,3社が近畿合意に基づく行動を認識,認容して歩調をそろえるという意思の連絡があることは明らかである。また,3社が,本来的には自由に見積価格を決め,発注者に対して受注に向けた営業活動を行えるはずのところを,近畿合意に制約されて意思決定を行うことになるから,近畿合意は,3社の事業活動を相互に拘束するものである。
 したがって,近畿合意は「共同して…相互にその事業活動を拘束し」(独占禁止法第2条第6項)に該当する。

(ウ) 「一定の取引分野における競争を実質的に制限する」ものか

 「一定の取引分野」は,原則として,違反行為者のした共同行為が対象としている取引及びそれにより影響を受ける範囲を検討して画定すれば足りるものと解されるところ,近畿合意は,近畿地区における特定シャッター等の取引を対象としており,近畿合意による影響の範囲も同取引となる。
 近畿地区においては,大規模なシャッター工事を受注することができるシャッター業者は限られており,近畿地区における特定シャッター等について建設業者が見積りを依頼するのは3社及びこれに次ぐ《事業者A》が中心であること,3社は,平成19年5月16日から平成20年11月18日までの間に発注された近畿地区における特定シャッター等の大部分を受注しており,《事業者A》は有力ではあるが,そのシェアは3社に比して小さいといえること,期間内の発注物件において近畿合意に基づいて受注調整が行われた物件は,189物件中139物件(分割発注物件は合わせて1物件とする。)に上ることからすれば,近畿合意により,3社がその意思で近畿地区における特定シャッター等の取引分野における受注者及び受注価格をある程度自由に左右することができる状態をもたらしたと認められる。

(エ) 「公共の利益に反して」について

 略(前記ア(エ)に同旨)

(オ) 小括

 3社間には近畿合意を内容とする意思の連絡があったものと認められ,これは,独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当するといえる。

エ 争点4について

(ア) 「商品」の対価に係るものについて

 略(前記イ(ア)に同旨)

(イ) 実行期間の始期

 近畿合意の内容は,3社間で受注予定者を決定し,受注予定者以外の者は,受注予定者が受注できるように協力することであり,協力の内容としては,建設業者に対する営業活動を自粛することが含まれる。
 そうすると,支店長級会合等において受注予定者が決まった時点から,受注予定者以外の者は近畿合意に拘束され,建設業者に対する営業活動を自粛することになるのであるから,被審人三和H,被審人文化,被審人東洋についての近畿合意に基づく実行期間の始期は,最初の受注予定者の決定が行われた平成19年5月16日であると認められる。
 一方,被審人三和Sについては,同年10月1日,被審人三和Hのシャッター事業を承継し,被審人三和らの担当者は,事業承継の前後にわたり,継続して支店長級会合に出席していたのであるから,被審人三和Sの近畿合意に基づく実行期間の始期は,同年10月1日である。

(ウ) 「当該商品」該当性

 基本合意と個別の受注調整行為を経たのであれば,当該商品については,競争が事実上全くなかったという事情だけでなく,価格面での利益も全くなく,基本合意と個別の受注調整行為の各対象に含めたことが不合理であるなど特段の事情が認められない限り,具体的な競争制限効果が生じるというべきである。
 審決案別表1-1ないし審決案別表1-4記載の課徴金対象物件のうち,審決案別表1-2物件番号16については,近畿合意に基づく受注調整が行われたとは認められず,当該商品に該当するとは認められないが,それ以外の物件については,近畿合意の対象とされた近畿地区における特定シャッター等であって,近畿合意に基づく受注調整の結果,具体的な競争制限効果が発生するに至ったものと認められるから,当該商品に該当する。

(エ) 課徴金の対象となる対価の額について

 課徴金の対象となる対価の額(独占禁止法施行令第6条第1項)は,実行期間における商品の契約金額であり,審決案別表1-1ないし審決案別表1―4記載の課徴金対象物件については,当該商品に該当するとは認められない審決案別表1-2物件番号16を除き,各表「最終契約金額」記載の金額であると認められる。

オ 争点5について

 課徴金制度は,課徴金の算定方法を具体的な法違反による現実的な経済的不当利得そのものとは切り離し,売上額に一定の比率を乗じて一律かつ画一的に算出することとして,カルテル禁止の実効性確保のための行政上の措置として機動的に発動できることを図ったものであり,単なる不当な利得の剥奪にとどまらない目的を持つものである。こうした課徴金制度における違反行為の抑止の趣旨からすれば,複数の違反行為に対してそれぞれ課徴金を課すべき場合において,課徴金の計算の基礎に特定の商品又は役務の売上額が重複する部分が含まれていたとしても,その違反行為が別個に実施されたと認められる限り,当該重複部分をいずれかの違反行為に係る課徴金の計算の基礎から除外すべき理由はないのであり,その結果として,同一の物件について重複して課徴金を課すべきことになるのはやむを得ないと解する。
 しかしながら,本件においては,近畿受注調整事件に関して,証拠によれば,平成20年3月に開催された支店長級会合において,シャッターの原材料である鋼材価格の値上がりに対応するために,近畿地区における特定シャッター等の販売価格を引き上げることが確認され,それ以降,近畿合意に基づき,近畿地区における特定シャッター等に係る個別の物件の受注予定者を決定するに当たっては,受注予定者の決定とともにその販売価格の引上げも図られていたと認められる。しかも,これらの販売価格の引上げは,全国合意に基づく特定シャッターの販売価格の引上げに関する本社からの指示によるものであることが推認される。
 これらの事実関係を踏まえると,前記平成20年3月の支店長級会合以降の近畿合意に基づく受注調整は,受注予定者の決定のみならず,全国合意に基づく特定シャッターの販売価格の引上げを具体的に実現するために行われたものと評価することができるのであり,その限度において,全国合意の実施と全く別個のものと解するのは相当ではない。
 したがって,全国各課徴金納付命令と近畿各課徴金納付命令において重複して課徴金を課したことは,課徴金制度の趣旨に照らしても正当化することはできない。そして,かねてから近畿合意に基づく受注調整が継続的に行われる中で,上記重複部分について,全国合意に基づく販売価格の引上げが併せて行われたという実態に照らすと,その売上げは,全国合意に係る課徴金の計算の基礎から除外するのが相当である。

カ 争点6について

(ア) 当初報告書の内容を後に訂正する報告は「報告」(独占禁止法第7条の2第17項第1号)に当たるかについて

 課徴金減免制度の趣旨は,公正取引委員会の調査に協力して報告等を行った違反事業者に対し,その報告等の順番に応じて課徴金の減免を認めることにより,密室で行われて発見,解明が困難なカルテル,入札談合等の取引制限行為の摘発や事案の真相究明,違法状態の解消及び違反行為の防止を図ることにあるところ,当初の報告後に虚偽の内容が含まれる報告をし,それにより,当初の報告が虚偽の内容に変更された場合は,このような課徴金減免制度の趣旨に反することから,後の報告により変更された内容のものを,独占禁止法第7条の2第17項第1号の「報告」とするべきである。

(イ) 訂正後の報告書の内容が虚偽であるかについて

 被審人文化は,当初報告書においては,自ら前記ウ及びエの認定と一致する不利益な事実を申告していたにもかかわらず,その後これと相反する内容の報告書を提出して自社の責任を否認するに至ったものであり,その提出に当たり,十分な調査を行った形跡も見当たらないことも踏まえると,上記訂正後の報告書は,自社の責任を回避するため,虚偽の事実を報告したものと認められる。

(ウ) 手続保障について

 本件において,公正取引委員会は,被審人文化に対し,事前通知 ,事前説明を経て,被審人文化から書面による意見申述を受けて,第98号課徴金納付命令を行ったものであり,これ以上に,被審人文化の意見に対し,回答し,虚偽報告が問題となっていることを告知するなどの手続をとる義務があるとは解されない。また,課徴金減免の不適用は,虚偽の事実の報告に対してされたものであり,意見表明に対してされたものではない。

(エ) 小括

 被審人文化は,不当な取引制限の摘発や事案の真相究明,違法状態の解消及び違反行為の防止という課徴金減免制度の目的に反して,当初の報告後に虚偽の内容が含まれる報告をしたものであるところ,被審人文化自身が,当初の報告を後の報告で補足又は訂正することを明確にしていることからすると,後の報告により訂正されたものが独占禁止法第7条の2第17項第1号所定の「報告」に当たることから,同号の規定により,課徴金減免規定は適用されない。

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電話 03-3581-5478(直通)
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