令和2年9月10日
公正取引委員会
公正取引委員会は,アマゾンジャパン合同会社(以下「アマゾンジャパン」という。)に対し,アマゾンジャパンの後記2の行為が独占禁止法第19条(同法第2条第9項第5号〔優越的地位の濫用〕)の規定に違反する疑いがあるものとして,独占禁止法の規定に基づき,令和2年7月10日に確約手続通知を行ったところ,アマゾンジャパンから確約計画の認定申請があった。公正取引委員会は,当該計画が独占禁止法に規定する認定要件のいずれにも適合すると認め,本日,当該計画を認定した。
なお,本認定は,アマゾンジャパンの当該行為が独占禁止法の規定に違反することを認定したものではない。
1 申請者の概要
法人番号 | 3040001028447 |
名称 | アマゾンジャパン合同会社 |
所在地 | 東京都目黒区下目黒一丁目8番1号 |
代表社員 職務執行者 |
アマゾン・オーバーシーズ・ホールディングス・インク ジャスパー・チャン,ジェフリー・ハヤシダ |
2 違反被疑行為の概要
アマゾンジャパンは,平成28年5月以降,本件対象事業部(注1)において,取引上の地位が自社に対して劣っている納入業者(注2)(以下「本件納入業者」という。)に対して,次の行為を行っている。
⑴ 本件納入業者に対して,自社の収益性の向上を図るため,当該本件納入業者の責めに帰すべき事由がなく,かつ,対価を減額するための要請を対価に係る交渉の一環として行うことなく,かつ,当該本件納入業者から値引き販売の原資とするための減額の申出がない又は当該申出に基づき値引き販売を実施して当該商品が処分されることが当該本件納入業者の直接の利益とならないにもかかわらず,在庫補償契約(注3)を締結することにより,当該契約で定めた額を,当該本件納入業者に支払うべき代金の額から減じている。
⑵ 本件納入業者に対して,当該本件納入業者から仕入れた商品の販売において自社の目標とする利益を得られないことを理由に,自社の収益性の向上を図るため,あらかじめ負担額の算出根拠等を明らかにせず,又は,当該金銭の提供が,その提供を通じて当該本件納入業者が得ることとなる直接の利益等を勘案して合理的な範囲を超えた負担となるにもかかわらず,金銭を提供させている。
⑶ 本件納入業者に対して,自社の収益性の向上を図るため,本件共同マーケティングプログラム契約(注4)に基づき支払を受けた金銭の全部又は一部について,当該契約に基づくサービスの提供を行うことなく,金銭を提供させている。
⑷ 本件納入業者に対して,自社の収益性の向上を図るため,自社のシステムへの投資に対する協賛金等の名目で,あらかじめ負担額の算出根拠等を明らかにせず,又は,当該金銭の提供が,その提供を通じて当該本件納入業者が得ることとなる直接の利益等を勘案して合理的な範囲を超えた負担となるにもかかわらず,当該本件納入業者からの毎月の仕入金額にあらかじめ定めた一定の料率を乗じるなどして算出した額の金銭を提供させている。
⑸ 本件納入業者に対して,過剰な在庫であると自社が判断した商品について,当該本件納入業者の責めに帰すべき事由がなく,かつ,以下のいずれにも該当しないにもかかわらず,返品している。
ア 当該商品の購入に当たり当該本件納入業者との合意により返品の条件を明確に定め,当該条件に従って返品する場合(当該返品が当該本件納入業者の得ることとなる直接の利益等を勘案して合理的な範囲を超えた負担とならない場合に限る。)
イ あらかじめ当該本件納入業者の同意を得て,かつ,当該商品の返品によって当該本件納入業者に通常生ずべき損失を自社が負担する場合
ウ 当該本件納入業者から当該商品の返品を受けたい旨の申出があり,かつ,当該本件納入業者が当該商品を処分することが当該本件納入業者の直接の利益となる場合
(注1)本件対象事業部は,アマゾンジャパンの小売部門に設置されたホーム,カー&バイク用品,おもちゃ&ホビー,DIY・工具・ガーデン,スポーツ&アウトドア,ホームアプライアンス,家事・季節・空調家電,調理・美容・健康家電,ベビー及びペット用品の各事業部である。
(注2)納入業者とは,アマゾンジャパンが自ら販売するために買取りの方法により仕入れる商品を,アマゾンジャパンに自ら販売する事業者又はアマゾンジャパンに取引先卸売業者を通じて販売する事業者(アマゾンジャパンと実質的に取引関係が認められるものに限る。)のうち,アマゾンジャパンと継続的な取引関係にあるものをいう。
(注3)在庫補償契約とは,アマゾンジャパンが納入業者から仕入れている商品の仕入価格が引き下げられた際にアマゾンジャパンと当該納入業者との間で締結される契約であって,当該商品のアマゾンジャパンにおける在庫数量に仕入価格の変更前後の差額を乗じるなどして算出された額を,当該納入業者がアマゾンジャパンに支払うことを内容とするものをいう。
(注4)共同マーケティングプログラム契約とは,アマゾンジャパンが納入業者との間で締結する「共同マーケティングプログラム契約」と題する契約のうち,アマゾンジャパンが当該納入業者に対して,「Amazon.co.jp」と称する自社のウェブサイト上の特定の箇所に当該納入業者から仕入れた商品に係る情報を掲載するサービスを提供し,当該納入業者は,その利用に係る対価として,アマゾンジャパンに対する毎月の販売金額にあらかじめ定めた一定の料率を乗じるなどして算出された額をアマゾンジャパンに支払うことを内容とするものをいう。
3 確約計画の概要
⑴ 前記2の行為を取りやめること。
⑵ 前記2の行為の対象となった本件納入業者に対し,それぞれ,金銭的価値の回復を行うこと。
⑶ 前記⑴及び前記⑵並びに後記⑸の各措置を採る旨を業務執行の決定機関である代表社員の職務執行者において決定すること。
⑷ 前記⑶に基づいて採った措置並びに前記⑴及び前記⑵の措置を採る旨を,納入業者に通知し,かつ,自社の従業員に周知徹底すること。
⑸ 前記2と同様の行為を行わないこととし,この措置を今後3年間実施すること。
⑹ 次の事項を行うために必要な措置を講じること。
ア 納入業者との取引に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の作成及び自社の従業員への周知徹底
イ 納入業者との取引に関する独占禁止法の遵守についての自社の小売事業に係る従業員に対する定期的な研修及び法務担当者による定期的な監査
⑺ 前記⑴から⑷まで及び前記⑹に基づいて採った措置の履行状況を公正取引委員会に報告すること。
⑻ 前記⑸の措置及び前記⑹イに基づいて講じた措置の履行状況を,今後3年間,毎年,公正取引委員会に報告すること。
4 確約計画の認定等
公正取引委員会は,前記3の計画が独占禁止法に規定する認定要件のいずれにも適合するものと認め,当該計画を認定した。
なお,当該計画が実施されることにより,前記3⑵の金銭的価値の回復については,現時点において,本件納入業者のうち約1,400社に対し,総額約20億円と見込まれる。
関連ファイル
(印刷用)(令和2年9月10日)アマゾンジャパン合同会社から申請があった確約計画の認定について(160KB)
(令和2年9月10日)参考2・3(過去事例等)(195KB)
問い合わせ先
公正取引委員会事務総局審査局第三審査
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