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(令和4年2月9日)有識者と公正取引委員会との懇談会で出された主な意見について

(令和4年2月9日)有識者と公正取引委員会との懇談会で出された主な意見について

令和4年2月9日
公正取引委員会

 公正取引委員会は,毎年度,全国各地区において経済団体代表,消費者団体代表,学識経験者,報道関係者等の有識者と当委員会の委員等との懇談会を開催することで,各地区の実情や幅広い意見・要望を把握し,独占禁止法等の運用にいかしています。
 例年の懇談会は,当委員会の委員等が各地区に赴いて開催しておりますが,令和3年度においては,新型コロナウイルス感染症対策として,ウェブ会議により開催しました。
 開催地区や有識者は別紙1のとおりです。また,有識者から示された主な意見の概要は以下のとおりです(地区別の主な意見は別紙2のとおりです。)。
 公正取引委員会としては,これらの意見を踏まえて,今後とも独占禁止法等の的確な運用に努めてまいります。

1 中小事業者等の取引公正化について

(1) 労務費,原材料費,エネルギーコストの上昇分の適切な価格転嫁

  •  現在,原油価格が非常に高騰していることから,材料価格の上昇を非常に懸念している。地元の中小企業の生産性向上のためにも,公正取引委員会には地域経済の実態を把握し,中小企業がコスト上昇分を価格に転嫁できないという問題への対応の徹底など,適正な取引関係の構築に向けて尽力してほしい。(帯広地区)
  •  最低賃金の引上げに伴いコストが大幅に増加する発注にもかかわらず,親事業者が十分に協議することなく,一方的に通常発注と同じ単価で据え置くなどといった行為をしないよう,公正取引委員会には十分な指導を期待する。親事業者に海外コストを基準にされ,下請事業者にとっては,材料高や燃料高といったような事情がどれだけ認めてもらえるか,心配が尽きない。(名古屋地区)
  •  サプライチェーン全体で適正に生産性の向上を実現するという観点から,知的財産やノウハウの保護,燃料や原材料価格の適正な転嫁,支払条件の改善などへの対処が必要である。また,発注者による一方的な納期の短縮やコスト削減要求等の優越的地位の濫用と見られる取引を根絶するため,独占禁止法及び下請法の厳正な運用が必要である。(高松地区)

(2) 相談しやすい環境の整備

  •  優越的地位の濫用では,小規模事業者が公正取引委員会に情報提供することは大変難しいのではないか。小規模事業者は取引先から取引を停止されたりでもしたら経営が困難になるので,ほとんどの小規模事業者が泣き寝入りをしているというのが実態である。(帯広地区)
  •  中小零細企業が,いきなり公正取引委員会に相談するというのは,少々ハードルが高い面があるのではないかと思う。日頃,事業者からの相談に応じている地元の商工会議所や商工会,中小企業団体中央会,又は地域の弁護士会といった地域の各団体,機関等との連携をより深め,これら各団体,機関等を通じて,下請法の効果的な周知を図ってほしい。(松本地区)
  •  公正取引委員会において,事業者への調査等により実態を把握して,下請事業者への不当なしわ寄せや不利益を与える行為が生じないよう監視指導を徹底するとともに,下請法に関する基礎知識の浸透,下請事業者が相談しやすい環境作りをお願いしたい。(那覇地区)

(3) 新型コロナウイルス感染症に伴うしわ寄せ防止

  •  下請事業者の従業員に感染症の患者が出た場合,下請事業者に責任がないのに受領拒否や商品返品を行えば,それらの行為は下請法上問題となるということを,公正取引委員会から改めて周知するとともに,下請法違反行為に対するより厳正な対処を是非お願いしたい。(松本地区)
  •  感染症の収束後,新型コロナ関連の補助金打切りや融資金の返済が始まると,事業者にとっては手元資金が減少していくため,それを補うために不公正な取引条件を取引先に押しつける事案が増えるおそれがある。(高松地区)
  •  新型コロナウイルス感染症の影響により観光業界は非常に深刻な状況が続いているため,公正取引委員会において,沖縄県内の観光関連の小規模な事業者と海外又は県外大手企業との取引の透明性を確保し,優越的地位の濫用行為が行われないような取組をお願いしたい。(那覇地区)

(4) インボイス制度の導入に伴うしわ寄せ防止

  •  令和5年10月に予定されている適格請求書等保存方式(インボイス方式)の導入により,取引先事業者よる適格請求書発行事業者への登録の強要や,免税事業者が取引から排除されることがないよう,監視・指導等の強化をお願いしたい。(大津地区)

(5) その他

  •  現下の下請事業者が置かれた状況について,公正取引委員会には現場視察を行うなどして必要な情報を収集し,実態を踏まえた有効な施策を打ってもらいたい。(宮崎地区)

2 フリーランスに関する取組について

  •  フリーランスとして働く人たちには法的な知識や弁護士等との接点がない場合があり,知的財産権やノウハウに関して生じる取引先の優越的地位の濫用行為について,泣き寝入りしている事案やそもそも問題が生じていることにすら気付いていない事案もあるのではないか。(高松地区)
  •  コロナ禍で多くのフリーランスの女性が経済的に立ち行かなくなった可能性がある。フリーランスガイドラインの作成は評価できるが,個別の業界に対する指導が,経済的貧困にある女性の救済という観点からも重要であると考える。(大津地区)

3 スタートアップ企業との取引適正化について

  •  スタートアップの取引慣行に関する実態調査報告書で述べられているとおり,スタートアップが公正かつ自由に競争できる環境を確保することが日本の経済の今後の発展に向けて極めて重要だと思う。公正取引委員会には,今後も中小企業,スタートアップの発展のために注力してほしい。(松本地区)
  •  スタートアップの取引慣行に関する実態調査報告書では,法務担当者がいるかどうかでスタートアップ間で違いが出ていることが報告されているが,産業構造が変化し,様々な企業が新しい分野に取り組んでいる中で,法務担当者がいないことが格差を生じさせていることが気掛かりである。(名古屋地区)

4 デジタル・プラットフォーム関係について

  •  当社のデジタルコンテンツアプリについて,公正取引委員会の調査により,アップル・インクを通さずに課金を徴収できるような仕組みになった。海外の大手IT企業の行為に対して当社のような地方の小規模事業者が交渉を申し立てても,今まではなかなか応じてもらえなかったものが,公正取引委員会の調査が一つの大きなきっかけになって改善されたということを感じている。(帯広地区)
  •  海外のデジタル・プラットフォーム事業者と日本の地方事業者の間で交わされる契約書では,取引上の紛争も他国の裁判で解決する内容となっているため,日本の地方事業者がそれに従って紛争解決することは困難である。取引における交渉力の非対称性を是正するのは公正取引委員会等でなければ難しく,アップル・インクに対するような措置を積極的に行ってほしい。(高松地区)
  •  現在のインターネット取引では,事業者が取引相手である一般消費者の情報を様々な形で保有しているが,一般消費者個人の取引履歴等を特定の事業者が専有するというのは,必ずしも望ましいことではない。(帯広地区)
  •  コロナ禍により地方経済においてもネット販売が進展しているが,公正な競争環境を維持するため,大手ECサイトの運営業者による顧客データの収集方法や利用方法について,適切かつ必要以上に集積されていないかどうか監視をお願いしたい。(宮崎地区)
  •  無料のニュースアプリ・コンテンツの発信元は90パーセント以上が新聞社であるところ,新聞社が作成した記事に対して正当な対価が支払われていない。公正取引委員会においても,新聞業界等のニュースメディアとデジタル・プラットフォーム事業者との関係性を重大な問題として捉えてほしい。(仙台地区)
  •  特産品等についてECサイトを利用して販売する経営者や農家が,巨大IT企業に簡単に利益を吸い上げられてしまわないか,また,生活物資を扱うような地元のお店が,巨大IT企業に飲み込まれてしまい,地域になくなってしまうのではないか,気掛かりである。(岡山地区)

5 独占禁止法の運用について

(1) 効果的な対応

  •  審査活動等の端緒において,違反行為に関する一般からの情報提供がかなりのウエートを占めているとのことだが,これでは対応が後手になる嫌いがある。業界に対する監査,あるいは事前の指導等を含めて,違反行為に至る前の対策を強化していかなければ,違反行為は減らない。(仙台地区)
  •  令和元年改正法で導入された課徴金の調査協力減算制度下で公正取引委員会に証拠がたくさん集まるようになるのか,事業者の協力するインセンティブについて経済理論の観点からの検証を行うことによって,経済学的な裏付けのある制度になると思う。(名古屋地区)

(2) 確約手続等の透明性の確保

  •  確約手続等の事案処理や審査終了の際,できるだけ詳細な事案の内容の公表を要望したい。これは,個別事案の検証,それから将来に向けた判例形成,そして独占禁止法の究極目的である一般消費者の保護に係る国民への説明責任を果たす意味でも重要である。(仙台地区)

(3) 個別分野等に関する意見

  •  特許ライセンス契約における独占禁止法の問題点を検討するに当たり,相談事例集は非常に役立つ。ライセンサー,ライセンシーの法的予測可能性をより高めるためにも,特許分野に関する事例をより多く掲載してほしい。(松本地区)
  •  コロナ禍により電子決済を導入した小売店も多いが,地方では高齢者が多いため電子決済の利用がなかなか進んでいない中で,クレジットカード会社や決済事業者が,利用者が少ないという理由により手数料を値上げする動きがあるが,電子決済の過度な手数料負担により中小企業の経営環境が悪化しないよう監視をお願いしたい。(宮崎地区)

6 広報・広聴活動について

  •  中学生,高校生,大学生向けの独占禁止法教室について,小さい頃から理念や概念を学習してもらうというのは,非常に意味のあることだと思っている。学生が法的主体,経済的主体,政治的主体として今後社会に出ていくために自由で公正な経済を学生に伝えるという目的で,どんどん学校に出ていく活動を行ってほしい。(岡山地区)
  •  デジタル広告分野の取引実態に関する報告書では,巨大IT企業によるユーザーの個人情報の適切な取扱い等を巡る問題点を指摘しているが,消費者は,自身のデータが利用されている意識が希薄であると思う。独占禁止法は,消費者にも無縁でないということを周知するために,消費者を対象とした研修会の開催を充実させていくべきではないか。(宮崎地区)
  •  公正取引委員会には,何か困ったことがあった際にすぐに連絡できるような身近な存在になってほしい。他の機関では,子供に作文を書いてもらったり,標語を募集したりしており,いろいろな人に関心を持ってもらえるように広報をしているところもある。(大津地区)

7 その他

  •  公正取引委員会は,専門的な経済学を学んだ人間を採用すべきというニュースを見たが,経済学の分野や競争政策の分野に係る専門的知識を有する大学生,大学院生が公正取引委員会で働けるよう,活躍できる場所を広げていってほしい。(松本地区)
  •  中小企業等の会社関係の仕事をしている弁護士から聞いたところ,消費税の転嫁拒否については,依然として問題があって,相談が来ているということだった。公正取引委員会でも引き続き問題意識を持ってほしい。(岡山地区)

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問い合わせ先

公正取引委員会事務総局官房総務課
電話 03-3581-3574(直通)
ホームページ https://www.jftc.go.jp

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