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(令和5年10月3日)TOHOシネマズ株式会社から申請があった確約計画の認定について

(令和5年10月3日)TOHOシネマズ株式会社から申請があった確約計画の認定について

令和5年10月3日
公正取引委員会

 公正取引委員会は、TOHOシネマズ株式会社(以下「TOHOシネマズ」という。)に対し、独占禁止法の規定に基づき審査を行ってきたところ、同社の後記3の行為が独占禁止法第19条(不公正な取引方法第12項(拘束条件付取引))の規定に違反する疑いが認められた。公正取引委員会は、当該行為について、確約手続に付すことで、TOHOシネマズによって当該行為を排除するための措置が速やかに実施されることにより、競争の早期回復が図られると認め、令和5年6月28日、同法第48条の2の規定に基づき、同社に対し確約手続に係る通知を行った。
 今般、TOHOシネマズから、公正取引委員会に対し、同法第48条の3第1項の規定に基づき、後記3の行為を排除するために必要な措置の実施に関する確約計画の認定を求める申請があった。公正取引委員会は、当該確約計画は当該行為を排除するために十分なものであり、かつ、その内容が確実に実施されると見込まれるものであると認め、本日、同法第48条の3第3項の規定に基づき、当該確約計画を認定した(注1)(注2)
 なお、本認定は、公正取引委員会が、TOHOシネマズの後記3の行為が独占禁止法の規定に違反することを認定したものではない。

(注1)確約計画の認定は、確約手続に係る通知を受けた事業者から申請された確約計画を公正取引委員会が認定するという、独占禁止法に基づく行政処分である。

(注2)公正取引委員会は、認定した確約計画に従って確約計画が実施されていないなどの場合には、独占禁止法第48条の5第1項の規定により当該認定を取り消し、確約手続に係る通知を行う前の調査を再開することとなる。

1 申請者の概要

法人番号 8010001087623
名称 TOHOシネマズ株式会社
所在地 東京都千代田区有楽町一丁目2番2号
代表者 代表取締役 池田 隆之

2 映画作品に係る興行会社と配給会社との取引等

⑴ TOHOシネマズは、興行会社(注3)として、配給会社(注4)から映画作品の配給を受け、自社が運営する映画館で映画作品を上映している。
 TOHOシネマズは、国内において75の映画館(他の興行会社と共同で経営する4つの映画館を含む。)を運営している。また、TOHOシネマズは、当該他の興行会社以外の33の興行会社から委託を受けて、それらが運営する国内の47の映画館について、番組編成業務(上映する映画作品の選定、配給会社との交渉、配給会社との契約締結に関する業務等)を行っている。

⑵ 配給会社は、映画作品(日本国内の映画館で初めて劇場公開(注5)される予定のものに限る。)ごとに、興行会社に対してオファー(注6)を行い、興行会社との交渉を経て、上映する映画館を決定している。また、配給会社は、メイン館(注7)の候補とする映画館を選定した上で、当該映画館を運営する興行会社にオファーを行い、メイン館を決定することが一般的であり、メイン館の決定後に他の興行会社へのオファーを行っている。

⑶ 配給会社から興行会社に対するオファーは、上映する映画館の数を限定せずに行われる場合もあれば、配給会社が映画作品ごとに想定する目標興行収入等を踏まえ、上映する映画館の数を限定して行われる場合もある(以下、上映する映画館の数を限定する予定の映画作品を「限定作品」という。)。限定作品については、配給会社において、地域ごとに、上映を希望する映画館を指定した上で興行会社にオファーが行われており、また、メイン館を運営する興行会社以外の興行会社に対するオファーは、メイン館及びメイン館以外の当該限定作品を上映するメイン館系映画館(注8)が決まった後に行われている。

⑷ 映画作品の上映に際しては、映画館ごとに観客動員数の確保及び維持が必要なことから、興行会社及び配給会社は、限定作品では、同一地域内において同一の映画作品を上映する映画館の数を限定する傾向にある。

(注3)自ら運営する映画館において映画作品の興行を行う事業者をいう。

(注4)映画作品を興行会社に配給する事業者をいう。

(注5)制作当初から映画館で上映することを目的として制作された映画作品を映画館で上映すること(興行会社以外の第三者が主催する催しにおいて映画作品を上映する場合を除く。)をいう。

(注6)配給会社が、自ら配給する映画作品ごとに、興行会社に対して行う、当該興行会社が自ら運営する映画館(当該興行会社が他の興行会社の運営する映画館における番組編成業務を請け負っている場合は、当該映画館を含む。)における上映の申込みをいう。

(注7)映画作品ごとに、当該映画作品の配給会社と当該映画作品を上映するいずれかの興行会社との間で設定される映画館であって、出演者による舞台挨拶の実施など、当該映画作品の興行の中心とされるものをいう。

(注8)メイン館を運営する興行会社が自ら運営する映画館(当該興行会社が他の興行会社の運営する映画館における番組編成業務を請け負っている場合は、当該映画館を含む。)をいう。

3 違反被疑行為の概要

 TOHOシネマズは、遅くとも平成28年11月頃以降、自社に映画作品を配給する配給会社に対して、次のいずれか又は複数を求めることによって、自社を他の興行会社よりも有利に取り扱うよう要請するとともに、当該要請に従わない場合には今後当該配給会社に係る映画作品の上映に応じない旨などを伝えることにより、当該配給会社に対し、当該要請に従うようにさせている。

⑴ 配給会社が限定作品とする映画作品について、当該配給会社は

 ア 当該映画作品のメイン館を決定しようとする場合に行うオファーに関しては、原則として、興行会社の中でTOHOシネマズを最初のオファーの相手方とする

 イ 当該映画作品のメイン館を他の興行会社の運営する映画館とすることに決定しており、かつ、メイン館系映画館(当該メイン館を含み、TOHOシネマズ系映画館(注9)を除く。以下同じ。)に加えて、当該メイン館系映画館以外の映画館における上映も予定している場合に行うオファーに関しては、上映を予定している地域ごとに、当該地域に所在するメイン館系映画館を対象とするオファーの次に、TOHOシネマズに対して当該地域に所在するTOHOシネマズ系映画館を対象とするオファーを行うなどする

 こと。

⑵ TOHOシネマズ系映画館がメイン館となった映画作品について、TOHOシネマズが指定した他の興行会社の運営する映画館へのオファーを見合わせるなどすること。

(注9)TOHOシネマズが自ら運営している映画館又はTOHOシネマズが番組編成業務を請け負っている他の興行会社の運営する映画館をいう。

4 独占禁止法上の考え方

⑴ 市場における有力な事業者が、取引先事業者に対し、自己の競争者との取引等の制限をするなどの取引先事業者の事業活動を拘束する条件を付けて取引を行うことにより、新規参入者や既存の競争者が排除される又はこれらの取引機会が減少するような状態をもたらすおそれが生じる場合は、独占禁止法上問題となる(不公正な取引方法第12項(拘束条件付取引))。

⑵ 映画館の運営においては、観客動員数を維持及び増加させるために魅力的な映画作品を確保することが重要である。興行会社は、自社の映画館で上映する映画作品を確保するため、配給会社から映画作品の配給を受けることを巡り、互いに競争していると考えられる。
 前記3の行為は、TOHOシネマズ以外の興行会社が配給会社からのオファーを受ける機会を減少させ、その結果、映画作品の配給を受ける機会を減少させ得るものと考えられる。

5 確約計画の概要

⑴ 前記3の行為を取りやめること。

⑵ 前記⑴及び後記⑷の措置を採ることを取締役会で決議すること。

⑶ 前記⑵に基づいて採った措置及び前記⑴の措置を採る旨を、配給会社に通知し、かつ、自社の従業員に周知徹底すること。

⑷ 今後、前記3と同様の行為を行わないこととし、この措置を今後3年間実施すること。

⑸ 次の事項を行うために必要な措置を講じること。

ア 配給会社との取引に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の作成並びに自社の役員及び従業員に対する周知徹底。

イ 配給会社との取引に関する独占禁止法の遵守についての番組編成業務を担当する役員及び従業員に対する定期的な研修並びに法務担当者による定期的な監査。

⑹ 前記⑴から⑶まで及び前記⑸の措置の履行状況を公正取引委員会に報告すること。

⑺ 前記⑷の措置及び前記⑸イに基づいて講じた措置の履行状況を、今後3年間、毎年、公正取引委員会に報告すること。

6 確約計画の認定

 公正取引委員会は、次のとおり、前記5の確約計画が独占禁止法に規定する認定要件のいずれにも適合すると認め、当該確約計画を認定した。

⑴ 措置内容の十分性
 前記5の確約計画に記載の措置の内容は、違反被疑行為の取りやめ(前記5⑴)、違反被疑行為の取りやめ及び将来不作為についての取締役会決議(前記5⑵)、配給会社への通知及び自社従業員への周知徹底(前記5⑶)、将来不作為(前記5⑷)を備えており、前記3の行為を排除するために十分であると判断した。

⑵ 措置実施の確実性
 TOHOシネマズは、前記5の確約計画においてコンプライアンス体制の整備を措置に含めていること、措置の内容ごとに実施期限を設けていること、また、当該措置の履行状況の報告を行うこととしていることから、前記5の確約計画は確実に実施されると判断した。

関連ファイル

(印刷用)(令和5年10月3日)TOHOシネマズ株式会社から申請があった確約計画の認定についてpdfダウンロード(106 KB)

(令和5年10月3日)参考1-2(過去の事例及び参照条文) pdfダウンロード(99 KB)

(令和5年10月3日)本件の概要pdfダウンロード(419 KB)

問い合わせ先

公正取引委員会事務総局審査局第四審査上席
電話 03-3581-5487(直通)
ホームページ https://www.jftc.go.jp/

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