令和5年10月23日
公正取引委員会
第1 事後検証の趣旨
公正取引委員会は、これまで、学校制服の取引に関して、以下のような、アドボカシー活動及びエンフォースメント活動を行ってきている。
①【アドボカシー活動】平成29年11月に、「公立中学校における制服の取引実態に関する調査報告書」(以下「平成29年報告書」という。)を公表し、競争政策の観点から学校制服の取引に関して学校等に対して期待する取組を提言。
②【エンフォースメント活動】令和2年7月に、愛知県豊田市において同市に所在する県立高校6校(以下「豊田6校」という。)の制服を生徒に販売する販売業者に対して、独占禁止法第3条に違反する行為を行っていたとして排除措置命令等(以下「令和2年命令」という。)。
本報告書は、上記の取組の趣旨を踏まえ、全国の公立中学校及び公立高校並びに豊田6校へのアンケート調査及びそのデータ分析の方法を用いて、学校における対応状況や学校制服価格の変化を確認することにより、上記の取組に係る状況を事後検証したものである。
第2 事後検証の結果等
1 事後検証の結果
⑴ 平成29年報告書の事後検証の結果ア 平成29年報告書の提言事項(「コンペ、入札、見積り合わせといった方法で制服メーカーや指定販売店等を選ぶこと」、「制服の仕様が学校独自であることを理由に制服メーカーを指定している場合においてその指定の必要性を見直すこと」等)について、学校における実施が一定程度進展。
イ こうした提言事項の実施が学校制服価格を低減させる効果(何らかの提言を実施した場合、実施から3年後には6.9%の価格低減効果)。(注)
ウ 全国の学校制服価格は、平成29年報告書公表以降、他の服製品(背広服及び婦人用スーツ)の価格と比べ下落傾向(平成29年報告書の公表翌年から4年後には5.8%の価格低減効果)。(注)
注:上記イ及びウの効果検証(報告書第3の3⑵の経済分析)に当たっては、東京大学エコノミックコンサルティング株式会社に経済分析業務を委託した。詳細は別紙2参照。
⑵ 令和2年命令の事後検証の結果
ア 豊田6校において制服販売店の情報交換の契機とならないよう行動が変容(「指定販売店各社の制服の販売価格等を掲載した共通チラシを作成するよう指定販売店に依頼すること」、「制服に関する自校の要望等を特定の指定販売店を通じて他の指定販売店に伝達すること」等が現在は行われていないことを確認)。
イ 学校制服の販売店における価格カルテルに係る合意の消滅後に、販売店において違反行為の合意(制服の販売価格を共同して引き上げる旨の合意)と相反する価格設定の動き。
ウ 学校制服の販売店における価格カルテルに係る合意の消滅後に、豊田各校における学校制服価格が全国の平均価格と比較して相対的に下落。
2 学校関係者に対する期待
○ 近年は物価上昇の影響により家計の負担が大きくなる傾向にあり、学校制服価格全般も上昇している中で、下記取組が保護者負担の軽減につながる。
○ 制服メーカー間及び販売店間の競争が有効に機能するよう、平成29年報告書における提言事項の実施を引き続き進めていくことが有効である(ブレザー(上下)一着の購入当たり、おおむね2,000円程度の価格低減効果)。また、販売店による価格カルテルを誘発しないため、指定販売店への依頼等が指定販売店による制服の販売価格についての情報交換の契機とならないようにすることが重要である。
○ 提言に係る学校の取組はここ近年で総じて進展していることが確認できたものの、取組を実施した学校の割合に鑑みれば、取組の実施は更に広がり得るものと思われる。
○ 本報告書の分析で特に焦点を当てたブレザーや詰め襟以外の学校制服品目についても同様の指摘ができ、また学校制服以外の学用品についても販売店やメーカー等を指定する慣行がある場合は、同様の取組によって価格低下が期待できる。
3 事後検証の示唆と今後の取組
○ 前記1に係る学校の対応や制服価格の低下は、公正取引委員会による報告書の周知、排除措置命令、学校関係者に対する通知・要請といった、事案に応じた多様な取組が組み合わさって発現したと示唆される。
○ こうした学校に対する周知等に当たり、文部科学省及び各教育委員会の自発的又は公正取引委員会による要請を踏まえた取組によってその周知に係る取組が拡充されており、関係行政機関が果たした役割が大きい。
○ 公正取引委員会としては、関係行政機関とも連携しつつ、学校関係者に対して積極的に本事後検証の結果やこれまでの提言等の周知を図ることによって、学校制服価格の低減を通じた保護者負担の軽減に向けた取組を今後も進めていく。
(詳細は概要、報告書本体及び別紙を参照。)
関連ファイル
(印刷用)(令和5年10月23日) 学校制服の取引実態に関する事後検証報告書について(109 KB)
(報告書概要) 学校制服の取引実態に関する事後検証報告書概要(949 KB)
(報告書本体) 学校制服の取引実態に関する事後検証報告書(2,275 KB)
(報告書別紙2) 全国の学校制服価格の変化状況に係る効果検証(1,477 KB)
(報告書別紙3) 豊田各校の学校制服価格の変化状況に関する計量経済分析(410 KB)
(説明用資料) 学校制服の取引実態に関する事後検証報告書説明用資料(1,958 KB)
問い合わせ先
公正取引委員会事務総局官房総務課政策立案担当
電話 03-3581-5480(直通)
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