令和6年4月22日
公正取引委員会
公正取引委員会は、Google LLC(注1)に対し、検索エンジン及び検索連動型広告(注2)の技術の提供に係る取引に関して独占禁止法の規定に基づき審査を行ってきたところ、同社の後記3の行為が独占禁止法第3条(私的独占)又は同法第19条(不公正な取引方法第2項(その他の取引拒絶)又は第14項(競争者に対する取引妨害))の規定に違反する疑いが認められた。
公正取引委員会は、当該行為について、確約手続に付すことで、Google LLCによって当該行為が排除されたことを確保するために必要な措置が速やかに実施されることにより、競争の早期回復が図られると認め、令和6年3月22日、同法第48条の6の規定に基づき、同社に対し確約手続に係る通知を行った。
今般、Google LLCから、公正取引委員会に対し、同法第48条の7第1項の規定に基づき、後記3の行為が排除されたことを確保するために必要な措置の実施に関する確約計画の認定を求める申請があった。公正取引委員会は、当該確約計画は当該行為が排除されたことを確保するために十分なものであり、かつ、その内容が確実に実施されると見込まれるものであると認め、本日、同法第48条の7第3項の規定に基づき、当該確約計画を認定した(注3)(注4)。
なお、本認定は、公正取引委員会が、Google LLCの後記3の行為が独占禁止法の規定に違反することを認定したものではない。
(注1)平成29年9月30日の組織変更前はグーグル・インクをいう。
(注2)検索クエリ(ユーザーが入力する文字列をいう。)に対し、関連した広告を表示する広告をいう。
(注3)確約計画の認定は、確約手続に係る通知を受けた事業者から申請された確約計画を公正取引委員会が認定するという、独占禁止法に基づく行政処分である。
(注4)公正取引委員会は、認定した確約計画に従って確約計画が実施されていないなどの場合には、独占禁止法第48条の9第1項の規定により当該認定を取り消し、確約手続に係る通知を行う前の調査を再開することとなる。
1 申請者の概要
法人番号 | 3700150072195 |
名称 | Google LLC |
所在地 | アメリカ合衆国デラウェア州ウィルミントン、リトル・フォールズ・ドライブ251 (本社所在地)アメリカ合衆国カリフォルニア州マウンテンビュー、アンフィシアター・パークウェイ1600 |
代表者 | 代表社員 XXVIホールディングス・インク |
日本における代表者 グーグル・テクノロジー・ジャパン株式会社 | |
最高経営責任者 スンダー・ピチャイ |
2 Google LLCのヤフーに対する技術の提供及び公正取引委員会への相談に係る経緯等
⑴ ヤフー(注5)は、自社のウェブサイト等において用いる検索エンジン及び検索連動型広告の技術を有しておらず、平成22年頃までヤフー・インク(以下「米ヤフー社」という。)から当該技術の提供を受けていた。平成21年7月に米ヤフー社が当該技術に係る開発等の停止を決定したため、ヤフーは、米ヤフー社以外の当該技術の提供元を選択する必要に迫られ、Google LLCの当該技術の提供を受けることとした。
⑵ Google LLC及びヤフーは、両者の間で検索エンジン及び検索連動型広告の技術の提供に係る契約を締結するに先立ち、公正取引委員会に対して独占禁止法上の問題の有無に関する相談を行った。これに対し、公正取引委員会は、平成22年7月に、Google LLC及びヤフーが当該技術の提供の実施後も、インターネット検索サービス及び検索連動型広告の運営をそれぞれ独自に行い、広告主、広告主の入札価格等の情報を完全に分離して保持することで、引き続き競争関係を維持する等の両者からの説明を踏まえ、当該技術の提供は独占禁止法上問題となるものではない旨回答した。
⑶ Google LLCは、平成22年7月27日、自社の子会社であるグーグルアジアパシフィックプライベートリミテッド(以下「GAPAC」という。)を通じてヤフーとの間で「GOOGLE SERVICES AGREEMENT」と題する契約(以下「GSA」という。)を締結し、GSAに基づき、ヤフーに対し、検索エンジン及び検索連動型広告の技術を提供している。
⑷ 公正取引委員会は、平成22年12月2日、前記⑵の相談への回答の公表に当たって、当該技術の提供について引き続き注視すること及び独占禁止法に違反する疑いのある具体的事実に接した場合は必要な調査を行うなど厳正に対処することを明らかにした(以下「平成22年公表」という。)。
⑸ ヤフーは、Google LLCから提供された検索エンジン及び検索連動型広告の技術を用いて、モバイル端末向けのウェブサイトの運営又はアプリケーションを提供する事業者(以下「ウェブサイト運営者等」という。)との間でモバイル・シンジケーション取引(注6)を行っていた。また、Google LLCは、自社の技術を用いて、モバイル・シンジケーション取引を行っている。
(注5)ヤフー株式会社をいう(同社は、令和5年10月1日にZホールディングス株式会社との間で、自社を消滅会社、Zホールディングス株式会社を存続会社とする吸収合併をした。当該合併後の存続会社の商号は、「LINEヤフー株式会社」に変更されている。)。
(注6)検索連動型広告の配信を行う事業者が、ウェブサイト運営者等から広告枠の提供を受け、検索連動型広告を配信するとともに、当該広告枠に配信した検索連動型広告により生じた収益の一部を当該事業者に分配する取引をいう。
3 違反被疑行為の概要
Google LLCは、平成26年11月1日、GSAを、GAPAC及び自社の子会社であるグーグル合同会社を通じて変更し、変更後の契約に基づき、遅くとも平成27年9月2日から令和4年10月31日までの間、ヤフーに対し、モバイル・シンジケーション取引に必要な検索エンジン及び検索連動型広告に係る技術の提供を制限することで、ヤフーがモバイル・シンジケーション取引を行うことを困難にしていた。
4 独占禁止法上の考え方
Google LLCは、モバイル・シンジケーション取引に必要な検索エンジン及び検索連動型広告の技術をヤフーに提供しており、当該技術提供によりヤフーはモバイル・シンジケーション取引の分野でGoogle LLCと競争することが可能となっていたところ、Google LLCの前記3の行為により当該技術の提供を制限した。これにより、ヤフーは、Google LLCに代わり得る当該技術の供給者を見いだせず、モバイル・シンジケーション取引を継続することが困難になった。Google LLCの上記行為は、独占禁止法第3条(私的独占)又は同法第19条(不公正な取引方法第2項(その他の取引拒絶)又は第14項(競争者に対する取引妨害))として独占禁止法上問題となり得る。
5 確約計画の概要
⑴ 次の事項をマネージング・メンバー(注7)によって決議すること。
ア 前記3の行為を取りやめていることを確認すること。
イ ヤフーに対し、モバイル・シンジケーション取引に必要な検索エンジン及び検索連動型広告に係る本件契約(注8)に基づく技術の提供を制限しないこととし、この措置を今後3年間実施すること。ただし、合理的な理由があるとして、公正取引委員会が事前に承認した場合を除く
⑵ 前記⑴に基づいて採った措置をヤフーに対して通知するとともに、グーグルグループの関連従業員(注9)に周知徹底すること。
⑶ ヤフーに対し、モバイル・シンジケーション取引に必要な検索エンジン及び検索連動型広告に係る本件契約に基づく技術の提供を制限しないこととし、この措置を今後3年間実施すること。ただし、合理的な理由があるとして、公正取引委員会が事前に承認した場合を除く。
⑷ 本件契約に基づくモバイル・シンジケーション取引について、ヤフーとの間で、引き続き、独自性を確保する手段及び情報分離を確保する手段を講じることとし、この措置を今後3年間実施する。
⑸ 次の事項を行うために必要な措置を講じること。
ア 本件契約に基づくモバイル・シンジケーション取引に必要な検索エンジン及び検索連動型広告に係る技術の提供に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の作成及び関連従業員に対する周知徹底
イ 本件契約に基づくモバイル・シンジケーション取引に必要な検索エンジン及び検索連動型広告に係る技術の提供に関する独占禁止法遵守についての関連従業員に対する定期的な研修及び外部専門家の監督に基づく定期的な監査
⑹ 前記⑴、⑵及び⑸の措置の履行状況を公正取引委員会に報告すること。
⑺ 前記⑶及び⑷の措置並びに⑸イに基づいて講じた措置の履行状況を、今後3年間、毎年、公正取引委員会に報告すること。
(注7)Google LLCの最高意思決定機関である。
(注8)グーグルグループ(Google LLC並びにその完全子会社及び一部所有子会社をいう。以下同じ。)とヤフーとの間のGSA及びヤフーがGSAに基づき現在提供を受けている技術に関してGSAに置き換わる契約(GSAの変更若しくは更新又はその他の方法によるもの)をいう。
(注9)グーグルグループにおいて、①本件契約に従事する従業員、及び②当該契約の実質的変更を承認する立場にある意思決定権者をいう。
6 確約計画の認定
公正取引委員会は、次のとおり、前記5の確約計画が独占禁止法に規定する認定要件のいずれにも適合すると認め、当該確約計画を認定した。
⑴ 措置内容の十分性
前記5の確約計画に記載の措置の内容は、違反被疑行為を取りやめていることの確認及び将来不作為についての意思決定機関による決議(前記5⑴)、ヤフーへの通知及びグーグルグループの関連従業員への周知徹底(前記5⑵)、将来不作為(前記5⑶)を含んでおり、前記3の行為が排除されたことを確保するために十分な措置であると判断した。
なお、ヤフーとの間で、引き続き、独自性を確保する手段及び情報分離を確保する手段を講じるとする措置の内容(前記5⑷)は、平成22年公表の内容を継続するものであることから、独占禁止法違反行為の未然防止に資するものであり、有益な措置である。
⑵ 措置実施の確実性
Google LLCは、前記5の確約計画において、コンプライアンス体制の整備を措置に含めていること、措置の内容ごとに実施期限を設けていること、また、当該措置の履行状況の報告を行うこととしていることから、前記5の確約計画は確実に実施されると判断した。
関連ファイル
(印刷用)(令和6年4月22日)Google LLCから申請があった確約計画の認定について(112 KB)
(令和6年4月22日)参考1-2(過去の事例及び参照条文) (99 KB)
※令和6年4月22日、報道発表資料(報道発表文及び参考1-2(過去の事例及び参照条文))の表現に誤植がありましたので、それぞれ、次のとおり修正しました。
1 「報道発表文」の6⑴
修正前:前記3の行為を排除するために十分な措置
修正後:前記3の行為が排除されたことを確保するために十分な措置
2 「参考1-2(過去の事例及び参照条文)」の「2 参照条文」の第四十八条の七、第四十八条の八及び第四十八条の九の各見出し
修正前:排除措置計画
修正後:排除確保措置計画
問い合わせ先
IT・デジタルタスクフォース
公正取引委員会事務総局審査局第四審査上席(デジタルプラットフォーマー担当)
電話 03-3581-4009(直通)
ホームページ https://www.jftc.go.jp/