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(令和6年7月29日)令和5年度における近畿地区の独占禁止法の運用状況等について

(令和6年7月29日)令和5年度における近畿地区の独占禁止法の運用状況等について

令和6年7月29日
公正取引委員会事務総局
近畿中国四国事務所

第1 独占禁止法違反事件等の処理状況

1 

 公正取引委員会は、迅速かつ実効性のある事件審査を行うとの基本方針の下、国民生活に影響の大きい価格カルテル・入札談合・受注調整、中小事業者等に不当に不利益をもたらす優越的地位の濫用や不当廉売などに厳正かつ積極的に対処することとしている。また、IT・デジタル関連分野や農業・漁業分野における独占禁止法違反被疑行為など、社会的ニーズに的確に対応した多様な事件に取り組んでいる。
 そして、公正取引委員会は、一般から提供された情報(申告)、自ら探知した事実等を検討し、必要な審査を行い、審査の結果、違反行為が認められたときは、違反行為をした事業者等に対し、違反行為を排除するために必要な措置等を命じている。違反行為のうち、価格カルテル・入札談合・受注調整、優越的地位の濫用等については、違反行為をした事業者に対して課徴金の納付を命じている。また、違反被疑行為について公正かつ自由な競争の促進を図る上で必要があると認められるときは、確約手続を適用し、事業者と協調的な問題解決を図っている。

2 最近の独占禁止法違反事件等の処理状況(不当廉売事案で迅速処理したもの及び優越的地位の濫用事案で注意したものを除く。)

 最近の5年間における近畿地区の独占禁止法違反事件等の処理状況は、次のとおりである。

独占禁止法違反事件等の処理件数 (単位:件)
処理内容\年度

令和元年度

令和2年度

令和3年度

令和4年度

令和5年度

審査件数

前年度からの繰越し






年度内新規着手





合計

10





処理件数 法的措置(注1) 排除措置命令等



その他 警告(注2) 0

0 0
注意(注3)




打切り(注4)

0 0 0
小計




合計




次年度への繰越し




(注1)「法的措置」とは、排除措置命令、課徴金納付命令及び確約計画の認定であり、一つの事件について、排除措置命令と課徴金納付命令が共になされている場合には、法的措置件数を1件としている。
(注2)「警告」とは、排除措置命令を採るに足る証拠が得られないが、違反の疑いがある場合に行う措置である。
(注3)「注意」とは、違反行為の存在を疑うに足る証拠が得られないが、将来違反につながるおそれがある場合に行う措置である。
(注4)「打切り」とは、違反行為が認められない等により、審査を打ち切る場合をいう。

3 独占禁止法違反事件等の概要

(1) 価格カルテル

木工用ドリルの製造販売業者に対する件(令和6年3月28日 排除措置命令及び課徴金納付命令)

ア 株式会社スターエム及び大西工業株式会社の2社(以下「2社」という。また、違反事業者名については、「株式会社」の記載を省略する。)は、木工用ドリル(注1)の原材料である鋼材等の価格が上昇していたことから、自社の利益の確保を図るため、遅くとも令和元年9月26日までに、2社の役員級及び営業責任者級の者による会合を開催するなどして、スターエムにあっては令和2年4月1日受注分から、大西工業にあっては同年6月1日受注分から、特定木工用ドリル(注2)の仕切価格(注3)を現行価格から12パーセントを目途に引き上げることを合意した。

イ 2社は、その後も木工用ドリルの原材料である鋼材等の価格が引き続き上昇していたことから、自社の利益の確保を図るため、遅くとも令和4年10月7日までに、2社の役員級及び営業責任者級の者による会合を開催するなどして、スターエムにあっては令和5年4月1日受注分から、大西工業にあっては遅くとも同年6月1日受注分から、特定木工用ドリルの仕切価格を現行価格から10パーセントを目途に引き上げることを合意した。

ウ 前記ア及びイのとおり、2社は、共同して、特定木工用ドリルの仕切価格を引き上げる旨を合意することにより、公共の利益に反して、特定木工用ドリル及びその同等品の販売分野における競争を実質的に制限していた。(課徴金総額:9396万円)

(注1)「木工用ドリル」とは、主として木材に穴を開けるために使用される鋼製の錐(きり)をいう。
(注2)「特定木工用ドリル」とは、木工用ドリルのうち、スターエムが製造販売する23商品及び大西工業が製造販売する18商品であって、2社のそれぞれの価格表(2社がそれぞれ特定木工用ドリルの販売業者向けに作成する、木工用ドリルの仕切価格を掲載する表をいう。)において仕切価格が掲載されているもの(複数の商品を組み合わせて販売されているものを除く。)をいう。
(注3)「仕切価格」とは、2社がそれぞれ定める、木工用ドリルの種類及びサイズごとの特定木工用ドリルの販売業者向けの販売価格をいう。

(2) 入札談合

 高知県が発注する地質調査業務の入札参加業者に対する件(令和5年9月28日 排除措置命令及び課徴金納付命令)
 高知県発注の特定地質調査業務(注1)の入札参加業者14名(以下「14名」という。)は、遅くとも平成29年4月3日以降、高知県発注の特定地質調査業務について、受注価格の低落防止等を図るため

 ア(ア) 指名業者(注2)のうち、指名を受けた旨の連絡を幹事会社(注3)に行った者の中から受注予定者を決定する

  (イ) 受注予定者以外の者は、受注予定者が受注できるように協力する。

旨の合意の下に  

 イ(ア) 発注された業務の予定価格(注4)を、予定価格等に応じてあらかじめ定めた区分に当てはめ、指名業者のうち、当該区分において指名を受けた回数を基にあらかじめ定めた一定の算定方式により算出した点数が最も多い者を受注予定者とする

  (イ) 予定価格が一定の金額に満たないなど前記(ア)であらかじめ定めた区分に該当しない業務にあっては、受注を希望する者(以下「受注希望者」という。)が1名のときはその者を受注予定者とし、受注希望者が複数名のときは受注希望者間の話合いにより受注予定者を決定する

  (ウ)a 高知県に対し、提案書・見積書等を提出して設計協力を行い、協力した内 容が業務の設計書において採用された者(以下「設計協力者」という。)がいる場合は、前記(ア)及び(イ)によらず、設計協力者が1名のときはその者を受注予定者とし、設計協力者が複数名のときは設計協力者間の話合いにより受注予定者を決定する

   b 過去に発注された業務との継続性があり、当該過去に発注された業務を受注した者がいる場合は、前記(ア)及び(イ)によらず、その者を受注予定者とする

  (エ)受注すべき価格は、受注予定者が定め、受注予定者以外の者は、受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力する

 などにより、受注予定者を決定し、受注予定者が受注できるようにしていた。

 これにより、14名は、公共の利益に反して、高知県発注の特定地質調査業務の取引分野における競争を実質的に制限していた。(課徴金総額:8626万円)

(注1)「高知県発注の特定地質調査業務」とは、高知県が指名競争入札の方法により業種を地質調査業務として発注する業務をいう。
(注2)「指名業者」とは、14名のうち、高知県から指名競争入札の参加者として指名を受けた者をいう。
(注3)「幹事会社」とは、発注業務を行う土木事務所等の高知県の出先機関ごとに設けられ、高知県発注の特定地質調査業務に関して、14名のうち、自らを含む14名についての指名状況を取りまとめるなどしていた会社をいう。
(注4)予定価格が事前に公表されていない場合は、幹事会社等が推測して算出した価格をいう。

(3) 優越的地位の濫用

 公正取引委員会は、優越的地位の濫用に係る情報に接した場合には、効率的かつ効果的な調査を行い、独占禁止法違反につながるおそれのある行為が認められた場合には、未然防止の観点から注意するほか、独占禁止法違反が認められた場合は厳正に対処することとしている。 令和5年度においては、近畿地区で5件の注意を行ったところ、その主な事例は以下のとおりである(注)。
(注) 次の各事例は、独占禁止法違反につながるおそれがあったものである。

 ア スーパーマーケットを営むAは、バイヤーから、納入業者に対し、恵方巻き、うなぎ、ワイン、クリスマスケーキ等の季節商品の購入を要請し、購入する意思を示さなかった納入業者に重ねて購入を要請していた。

 イ 食料品製造業を営むBは、運送業務を委託する物流事業者に対し、積込みの際に待機時間が発生しているにもかかわらず、待機に伴う費用の支払について物流事業者と取り決めておらず、待機料を支払っていなかった。

 ウ 織物卸売業を営むCは、取引先の中小事業者からのコストの上昇による取引価格の引上げ要請に対して、一部の品目の引上げにしか応じない、交渉に応じず従来どおりに取引価格を据え置くなど、一方的に取引条件を設定している疑いがあった。

(4) 不当廉売

 公正取引委員会は、申告のあった小売業に係る不当廉売事案については、迅速に処理するとの方針の下で対処しているほか、大規模な事業者による不当廉売事案又は繰り返し行われている不当廉売事案であって、周辺の販売事業者に対する影響が大きいと考えられるものについて、周辺の販売事業者の事業活動への影響等について個別に調査を行い、問題のみられる事案については厳正に対処することとしている。

 迅速に処理するとの上記方針の下、令和5年度においては、酒類及び石油製品の小売業について、不当廉売につながるおそれがあるとして近畿地区で57件の注意を行った。

(5) その他

 次の事例は、記載された行為が行われていた疑いがあり、独占禁止法違反につながるおそれがあったため、注意を行った。


 ペットフード等の卸売業を営むDは、自社が販売するペットフードについて、小売業者に対し、小売業者が購入者に付与するポイントの付与を制限していた。(拘束条件付取引)

第2 企業結合関係届出及び協同組合届出の状況

1 企業結合関係届出

 独占禁止法では第4章において、事業支配力が過度に集中することとなる会社の設立等の禁止(第9条)及び銀行業又は保険業を営む会社の議決権取得・保有の制限(第11条)について規定しているほか、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合及び不公正な取引方法による場合の会社等の株式取得・所有、役員兼任、合併、分割、共同株式移転及び事業譲受け等の禁止並びに一定の条件を満たす企業結合についての届出義務(第10条及び第13条から第16条まで)を規定している。
 公正取引委員会は、これらの規定に従い、企業結合審査を行っているところ、最近5年間における近畿地区の企業結合関係届出の状況は、次のとおりである。

企業結合関係届出受理件数 (単位:件)
  令和元年度 令和2年度 令和3年度 令和4年度 令和5年度
株式取得届出受理 19
15
12


10

合併届出受理

分割届出受理



共同株式移転届出受理
事業譲受け等届出受理




合計 26 21
14

10
   このほか、令和5年度において審査を終了した案件のうち、届出を要しない企業結合計画(当事会社からの相談があったもの又は公正取引委員会が審査を開始したもの)に関するものが2案件あった。

2 協同組合届出

 中小企業等協同組合法は、同法に基づき設立された事業協同組合及び信用協同組合に対し、同法第7条第1項第1号に規定する小規模事業者以外の事業者が加入したとき又は組合員が同小規模事業者でなくなったときには、その旨を公正取引委員会に届け出ることを義務付けている(同法第7条第3項)。
 最近5年間における近畿地区の協同組合届出件数は、次のとおりである。

中小企業等協同組合法第7条第3項に基づく届出件数 (単位:件)
令和元年度 令和2年度 令和3年度 令和4年度 令和5年度
50
35
31
35
40

第3 広報・広聴活動

 公正取引委員会は、独占禁止法等の普及・啓発及び競争政策の運営に資するため、次のような広報・広聴活動を行っている。

1 独占禁止政策協力委員制度

 競争政策への理解の促進と地域の経済社会の実情に即した政策運営に資するため、独占禁止政策協力委員制度を設置しており、公正取引委員会が行う広報活動等に御協力いただくとともに、独占禁止法等の運用や競争政策の運営等について意見聴取を行っている。
 令和5年度においては、(1)中小企業の取引適正化/優越的地位の濫用規制・下請法の規制、(2)競争環境の整備に係る調査・提言、(3)広報・広聴活動、(4)地域経済の実情と競争政策上の課題、(5)公正取引委員会に対する期待等についての意見聴取をそれぞれ行った(注)。

 (注) 聴取した意見の概要は、他の地区のものと合わせて令和6年5月24日に公表されている。

2 有識者との懇談会等

 各地の有識者と公正取引委員会の委員等との懇談会及び講演会を通して、競争政策についてより一層の理解を求めるとともに、幅広く意見及び要望を把握し、今後の競争政策の有効かつ適切な推進を図るため、毎年、全国各地において有識者との懇談会を開催している。
 近畿地区では、令和5年度は神戸市において、一般社団法人神戸経済同友会、兵庫県経営者協会、兵庫県商工会議所連合会、兵庫県商工会連合会及び兵庫県中小企業団体中央会の経済団体並びに報道機関と公正取引委員会委員との懇談会を開催するとともに「成長と分配の好循環の実現と公正取引委員会の役割」をテーマに講演会を開催した。
 このほか、近畿中国四国事務所長等と各地の有識者との懇談会を開催しており、令和5年度は福井市、福井県大野市、大津市、京都市、大阪市(5か所)、大阪府東大阪市、神戸市、兵庫県姫路市、兵庫県加西市、奈良市(2か所)及び和歌山市(2か所)の計17か所において開催した。また、福井県、大阪府及び兵庫県の弁護士会との懇談会を開催した。さらに、公正取引委員会委員長又は委員が、大阪府東大阪市、大阪府八尾市及び兵庫県加古川市の事業者の工場等を訪問し、事業実態の説明を受けるとともに、労務費、原材料価格、エネルギーコストの転嫁状況等について意見交換を行った。

3 独占禁止法説明会等

 公正取引委員会は、独占禁止法等の違反行為の未然防止を図るため、説明会・講習会等を自ら主催しているほか、各種業界団体等から要請を受けて講習会等へ講師を派遣している。
 近畿地区では、令和5年度は独占禁止法に関する説明会等を26回実施した。また、入札談合等関与行為防止法に関する研修会等を33回実施した。

4 独占禁止法教室(出前授業)

 将来を担う中学生、高校生、大学生等を対象に、市場経済の仕組みや競争の機能について説明するなどし、競争の必要性・重要性、独占禁止法の役割等について理解してもらうことを目的として、公正取引委員会の職員による「独占禁止法教室」を開催している。
 近畿地区では、令和5年度は中学生向け独占禁止法教室を3回、高校生向け独占禁止法教室を4回、大学生等向け独占禁止法教室を18回それぞれ開催した。

5 消費者セミナー

 一般消費者に独占禁止法の内容や公正取引委員会の活動について、より一層理解を深めてもらうことを目的として、地域の一般消費者を対象としたセミナーを開催しているほか、公正取引委員会の職員を消費者団体等の勉強会等に派遣している。
 近畿地区では、令和5年度は滋賀県草津市、大阪府東大阪市(3か所)、神戸市(2か所)、兵庫県伊丹市、兵庫県赤穂郡上郡町及び奈良市の計6か所(計9回)において、消費者セミナーを開催した。

6 一日公正取引委員会

 本局及び地方事務所等の所在地以外の都市において、独占禁止法及び下請法の普及啓発活動や相談対応の一層の充実を図るため、独占禁止法講演会、下請法基礎講習会、入札談合等関与行為防止法研修会、消費者セミナー、報道機関との懇談会、相談コーナーなどを1か所の会場で開催する「一日公正取引委員会」を開催している。

 近畿地区では、近畿地区では、令和5年度は神戸市において、12月6日に一日公正取引委員会を開催した

7 相談業務

 公正取引委員会は、法運用に対する理解を深め、違反行為の未然防止を図るため、相談を受け付けている。
 最近5年間における近畿地区の相談受付件数は次のとおりである。

相談受付件数 (単位:件)
  令和元年度 令和2年度 令和3年度 令和4年度 令和5年度
独占禁止法 1,104
878
944
1,189
1,319
下請法 1,151
1,189
1,172
1,328
1,821
合計 2,255
2,067
2,116

2,517

3,140

関連ファイル

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問い合わせ先

第1に関する問い合わせ先 公正取引委員会事務総局近畿中国四国事務所第一審査課

 電話 06ー6941ー2193(直通)

第2に関する問い合わせ先 公正取引委員会事務総局近畿中国四国事務所経済取引指導官

 電話 06ー6941ー2174(直通)

第3に関する問い合わせ先 公正取引委員会事務総局近畿中国四国事務所総務課

 電話 06ー6941ー2173(直通)

ホ-ムペ-ジ https://www.jftc.go.jp/regional_office/kinki/index.html

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