令和6年3月28日
公正取引委員会
公正取引委員会は、木工用ドリル(注1)の製造販売業者に対し、本日、独占禁止法の規定に基づき排除措置命令及び課徴金納付命令を行った。
本件は、木工用ドリルの製造販売業者が、独占禁止法第3条(不当な取引制限の禁止)の規定に違反する行為を行っていたものである。
(注1)「木工用ドリル」とは、主として木材に穴を開けるために使用される鋼製の錐(きり)をいう。
1 違反事業者、排除措置命令及び課徴金納付命令の対象事業者数並びに課徴金額等
(注2)違反事業者名については、以下「株式会社」の記載を省略する。
(注3)表中の「○」は、その事業者が排除措置命令の対象であることを示している。
2 違反行為の概要(詳細は別添排除措置命令書参照)
⑴ スターエム及び大西工業の2社(以下「2社」という。)は、木工用ドリルの原材料である鋼材等の価格が上昇していたことから、自社の利益の確保を図るため、遅くとも令和元年9月26日までに、2社の役員級及び営業責任者級の者による会合を開催するなどして、スターエムにあっては令和2年4月1日受注分から、大西工業にあっては同年6月1日受注分から、特定木工用ドリル(注4)の仕切価格(注5)を現行価格から12パーセントを目途に引き上げることを合意した。
⑵ 2社は、その後も木工用ドリルの原材料である鋼材等の価格が引き続き上昇していたことから、自社の利益の確保を図るため、遅くとも令和4年10月7日までに、2社の役員級及び営業責任者級の者による会合を開催するなどして、スターエムにあっては令和5年4月1日受注分から、大西工業にあっては遅くとも同年6月1日受注分から、特定木工用ドリルの仕切価格を現行価格から10パーセントを目途に引き上げることを合意した。
⑶ 前記⑴及び⑵のとおり、2社は、共同して、特定木工用ドリルの仕切価格を引き上げる旨を合意することにより、公共の利益に反して、特定木工用ドリル及びその同等品の販売分野における競争を実質的に制限していた。
(注4)「特定木工用ドリル」とは、木工用ドリルのうち、スターエムが製造販売する23商品及び大西工業が製造販売する18商品であって、2社のそれぞれの価格表(2社がそれぞれ特定木工用ドリルの販売業者向けに作成する、木工用ドリルの仕切価格を掲載する表をいう。)において仕切価格が掲載されているもの(複数の商品を組み合わせて販売されているものを除く。)をいう。
(注5)「仕切価格」とは、2社がそれぞれ定める、木工用ドリルの種類及びサイズごとの特定木工用ドリルの販売業者(以下単に「販売業者」という。)向けの販売価格をいう。
3 違反行為の実施状況(詳細は別添排除措置命令書参照)
⑴ 2社は、前記2の合意に基づき、それぞれ、新たな仕切価格を設定した上で、販売業者に対し、新たな仕切価格を掲載した価格表等を配布するなどして仕切価格の引上げを通知し、特定木工用ドリルの仕切価格を引き上げた。
⑵ 2社は、前記2の合意の実効を確保するため、特定木工用ドリルの仕切価格の引上げを販売業者に通知する時期等について、情報交換を行うなどしていた。
4 排除措置命令の概要
⑴ 2社は、それぞれ、次の事項を、取締役会において決議しなければならない。
ア 前記2の各合意が消滅していることを確認すること。
イ 今後、相互の間において、又は他の事業者と共同して、自社が製造販売する特定木工用ドリル及びその同等品の販売価格を決定せず、自主的に決めること。
ウ 今後、相互に、又は他の事業者と、自社が製造販売する特定木工用ドリル及びその同等品の販売価格に関する情報交換を行わないこと。
⑵ 2社は、それぞれ、前記⑴に基づいて採った措置を、相互に通知するとともに、自社の取引先である販売業者に通知し、かつ、自社の従業員に周知徹底しなければならない。これらの通知及び周知徹底の方法については、あらかじめ、公正取引委員会の承認を受けなければならない。
⑶ 2社は、今後、それぞれ、相互の間において、又は他の事業者と共同して、自社が製造販売する特定木工用ドリル及びその同等品の販売価格を決定してはならない。
⑷ 2社は、今後、それぞれ、相互に、又は他の事業者と、自社が製造販売する特定木工用ドリル及びその同等品の販売価格に関する情報交換を行ってはならない。
⑸ 2社は、それぞれ、次の事項を行うために必要な措置を講じなければならない。この措置の内容については、前記⑶及び⑷で命じた措置が遵守されるために十分なものでなければならず、かつ、あらかじめ、公正取引委員会の承認を受けなければならない。
ア 木工用ドリルの販売活動に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の作成並びに自社の役員及び従業員に対する周知徹底
イ 木工用ドリルの販売活動に関する独占禁止法の遵守についての、当該販売活動に従事する自社の役員及び従業員に対する定期的な研修
⑹ 2社は、それぞれ、前記⑴、⑵及び⑸に基づいて採った措置を速やかに公正取引委員会に報告しなければならない。
5 課徴金納付命令の概要
2社は、令和6年10月29日までに、それぞれ前記1の「課徴金額」欄記載の額(総額9396万円)を支払わなければならない。
関連ファイル
(印刷用)(令和6年3月28日)木工用ドリルの製造販売業者に対する排除措置命令及び課徴金納付命令について(118 KB)
(令和6年3月28日)参考1(最近の価格カルテル事件)(57 KB)
(令和6年3月28日)参考2-3(参照条文及び課徴金制度の概要)(168 KB)
問い合わせ先
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