令和7年12月19日
公正取引委員会
公正取引委員会は、特定地方公共団体等(注1)が競争入札等(注2)の方法により発注する特定跨線橋点検等業務(注3)(注4)の入札等の参加業者らに対し、本日、独占禁止法の規定に基づき排除措置命令及び課徴金納付命令を行った。
本件は、特定跨線橋点検等業務の入札等の参加業者及び東海旅客鉄道株式会社が、独占禁止法第3条(不当な取引制限の禁止)の規定に違反する行為を行っていたものである。
(注1)「特定地方公共団体等」とは、別添排除措置命令書別表記載の地方公共団体、地方公営企業、地方道路公社及び営利法人をいう。
(注2)「競争入札等」とは、一般競争入札、指名競争入札又は見積り合わせをいう。
(注3)「跨線橋(こせんきょう)」とは、線路を跨いで架けられた橋をいう。
(注4)「特定跨線橋点検等業務」とは、特定地方公共団体等が競争入札等の方法により発注する、東海旅客鉄道株式会社の東海鉄道事業本部(静岡支社管内を除く。)が管理する線路を跨いで架けられた橋の点検業務及び当該業務と併せて発注される業務をいう。
1 違反事業者、排除措置命令及び課徴金納付命令の対象事業者、課徴金額等

(注5)表中の番号1から番号5の違反事業者名については、以下「株式会社」の記載を省略する。また、表中の番号6の違反事業者名については、以下「JR東海」という。
(注6)表中の番号2のジェイアール東海コンサルタンツは、表中の番号6のJR東海の完全子会社である。
(注7)表中「排除措置命令」欄の「○」は、その事業者が排除措置命令の対象であることを示している。
(注8)表中「課徴金額」欄の「―」は、その事業者が課徴金納付命令の対象でないことを示している。
なお、番号6のJR東海は、特定跨線橋点検等業務を受注しておらず、本件違反行為に係る実行期間における売上額がないため、課徴金納付命令の対象とはなっていない。
(注9)表中「課徴金減免制度の適用」欄及び「申請順位に応じた減免率」欄の「―」は、その事業者が課徴金減免制度の適用事業者でないことを示している。
(注10)表中「事件の真相の解明に資する程度に応じた減算率」欄の「―」は、その事業者が調査協力減算制度の適用事業者でないことを示している。
2 違反行為の概要(詳細は別添排除措置命令書参照)
日本交通技術、ジェイアール東海コンサルタンツ、大日コンサルタント、トーニチコンサルタント及び丸栄調査設計の5社(以下「5社」という。)並びにJR東海の6社(以下「名宛人6社」という。)は、遅くとも令和3年2月19日以降、特定跨線橋点検等業務について
⑴ア 5社の中から受注予定者を決定する
イ 5社のうち受注予定者以外の者は、受注予定者が受注できるように協力する
旨の合意の下に、
⑵ア JR東海が、5社に、点検リスト(注11)を提供する
イ 5社は、前記アの点検リストに記載された各跨線橋に対応する欄に自社のイニシャルを記載して返送するなどして、自社が受注を希望する特定跨線橋点検等業務に係る跨線橋をJR東海に伝える
ウ JR東海は、前記イで5社から伝えられた受注希望を取りまとめ、当該希望を 反映した点検リストを5社に提供する
ことなどにより、受注予定者を決定し、
エ 受注予定者が提示する入札価格等は受注予定者が定める
オ 5社のうち受注予定者以外の者は、競争入札等に参加しない若しくは競争入札等を辞退する又は受注予定者が定めた入札価格等よりも高い入札価格等を提示する
ことにより、受注予定者が受注できるようにしていた。
これにより名宛人6社は、公共の利益に反して、特定跨線橋点検等業務の取引分野における競争を実質的に制限していた。
(注11)「点検リスト」とは、点検業務が予定されている、JR東海の東海鉄道事業本部(静岡支社管内を除く。)が管理する線路を跨いで架けられた橋の名称、特定跨線橋点検等業務を発注する地方公共団体等の名称等を記載したリストをいう。
3 排除措置命令の概要
⑴ 名宛人6社は、それぞれ、次の事項を、取締役会において決議しなければならない(丸栄調査設計にあっては、取締役による決定をしなければならない。)。
ア 特定跨線橋点検等業務について、名宛人6社が、遅くとも令和3年2月19日以降共同して行っていた、受注すべきもの(以下「受注予定者」という。)を決定し、受注予定者が受注できるようにする行為を既に取りやめていることを確認すること。
イ 今後、相互の間(ジェイアール東海コンサルタンツとJR東海の間を除く。)において、又は他の事業者と共同して、特定跨線橋点検等業務について、受注予定者を決定しないこと。
⑵ 名宛人6社は、それぞれ、前記⑴に基づいて採った措置を、名宛人6社のうち自社を除く5社(ジェイアール東海コンサルタンツ及びJR東海にあっては、日本交通技術、大日コンサルタント、トーニチコンサルタント及び丸栄調査設計)及び特定地方公共団体等に通知し、かつ、自社の従業員に周知徹底しなければならない。これらの通知及び周知徹底の方法については、あらかじめ、公正取引委員会の承認を受けなければならない。
⑶ 名宛人6社は、今後、それぞれ、相互の間(ジェイアール東海コンサルタンツとJR東海の間を除く。)において、又は他の事業者と共同して、特定跨線橋点検等業務について、受注予定者を決定してはならない。
⑷ 5社は、それぞれ、次の事項を行うために必要な措置を講じなければならない。この措置の内容については、前記⑶で命じた措置が遵守されるために十分なものでなければならず、かつ、あらかじめ、公正取引委員会の承認を受けなければならない。
ア 跨線橋の点検業務の受注に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の作成又は改定並びに自社の役員及び従業員に対する周知徹底
イ 跨線橋の点検業務の受注に関する独占禁止法の遵守についての、当該業務又は当該業務の営業に関わる役員及び従業員に対する定期的な研修の実施並びに法務担当者等による定期的な監査
⑸ JR東海は、次の事項を行うために必要な措置を講じなければならない。この措置の内容については、前記⑶で命じた措置が遵守されるために十分なものでなければならず、かつ、あらかじめ、公正取引委員会の承認を受けなければならない。
ア 点検関連業務(注12)に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の作成並びに点検関連業務に従事する自社の役員及び従業員に対する周知徹底
イ 点検関連業務に関する独占禁止法の遵守についての、点検関連業務に従事する役員及び従業員に対する定期的な研修の実施並びに法務担当者等による定期的な監査
⑹ 5社は、それぞれ、前記⑴、⑵及び⑷に基づいて採った措置を、JR東海は、前記⑴、⑵及び⑸に基づいて採った措置を、速やかに公正取引委員会に報告しなければならない。
(注12)「点検関連業務」とは、JR東海の東海鉄道事業本部(静岡支社管内を除く。)が管理する線路を跨いで架けられた橋の点検業務に関わる事務及び設計協議に関する業務をいう。
4 課徴金納付命令の概要
5社は、令和8年7月21日までに、それぞれ前記1の「課徴金額」欄記載の額(総額1億225万円)を支払わなければならない。
関連ファイル
(印刷用)(令和7年12月19日)地方公共団体等が発注する東海旅客鉄道株式会社が管理する線路の跨線橋点検業務における入札等の参加業者らに対する排除措置命令及び課徴金納付命令について
(250 KB)
(令和7年12月19日)参考1(最近の受注調整事件)
(129 KB)
(令和7年12月19日)参考2-3(参照条文及び課徴金制度の概要)
(195 KB)
(令和7年12月19日)別添(排除措置命令書)
(32 KB)
問い合わせ先
公正取引委員会事務総局中部事務所第二審査課、第三審査課
電話 052-961-9467(直通)
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