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(令和7年2月13日)シスメックス株式会社から申請があった確約計画の認定について

(令和7年2月13日)シスメックス株式会社から申請があった確約計画の認定について

令和7年2月13日

 公正取引委員会

  公正取引委員会は、シスメックス株式会社(以下「シスメックス」という。)に対し、独占禁止法の規定に基づき審査を行ってきたところ、同社の後記3の行為が独占禁止法第19条(不公正な取引方法第10項(抱き合わせ販売等))の規定に違反する疑いが認められた。
 公正取引委員会は、当該行為について、確約手続に付すことで、シスメックスによって当該行為が排除されたことを確保するために必要な措置が速やかに実施されることにより、競争の早期回復が図られると認め、令和7年1月16日、同法第48条 の6の規定に基づき、同社に対し確約手続に係る通知を行った。
 今般、シスメックスから、公正取引委員会に対し、同法第48条の7第1項の規定に基づき、後記3の行為が排除されたことを確保するために必要な措置の実施に関する確約計画の認定を求める申請があった。公正取引委員会は、当該確約計画は当該行為が排除されたことを確保するために十分なものであり、かつ、その内容が確実に実施されると見込まれるものであると認め、本日、同法第48条の7第3項の規定に基づき、当該確約計画を認定した (注1)(注2)。
  また、本確約計画には、後記5のとおり、確約措置の履行期間を5年間とすること及び確約措置全体の履行についての監視を第三者に委託することが含まれている (注3)。
 なお、本認定は、公正取引委員会が、シスメックスの後記3の行為が独占禁止法の規定に違反することを認定したものではない。

(注1)確約計画の認定は、確約手続に係る通知を受けた事業者から申請された確約計画を公正取引委員会が認定するという、独占禁止法に基づく行政処分である。

(注2)公正取引委員会は、認定した確約計画に従って確約計画が実施されていないなどの場合には、独占禁止法第48条の9第1項の規定により当該認定を取り消し、確約手続に係る通知を行う前の調査を再開することとなる。

(注3)令和6年7月3日の事務総長定例会見において、より効果的かつ実効的な確約手続の運用のための対応を明らかにしている。

1 申請者の概要

法人番号9140001009530
名称シスメックス株式会社
所在地神戸市中央区脇浜海岸通一丁目5番1号
代表者代表取締役 浅野 薫

2  シスメックスが製造販売する血液凝固測定装置及び試薬の概要等

⑴  シスメックスは、神戸市に本店を置き、医療機器等の製造販売業を営む事業者であり、昭和59年以降、血液凝固測定装置(注4)を製造販売している。

⑵  シスメックスは、血液凝固測定装置により血栓を溶かす機能等を測定する際に用いられる試薬(以下「凝固試薬」という。)のうち、平成16年以降、「Dダイマー」(注5)(注7)を測定する際に用いる「リアスオート・Dダイマーネオ」と称する自社製の試薬を販売している。

  また、同社は、平成26年以降、血液凝固測定装置で「FDP」(注6)(注7)を測定する際に用いる「リアスオートP-FDP」と称する自社製の試薬を販売している(以下、リアスオート・Dダイマーネオ及びリアスオートP-FDPのことを「指定試薬」という。)。

⑶  シスメックスは、平成30年12月以降、プロダクト名にCNが付く「CNシリーズ」(注8)と称する血液凝固測定装置(以下「特定血液凝固測定装置」という。)を製造販売している。

⑷  シスメックスは、特定血液凝固測定装置及び指定試薬について、病院等(注9)に対して自ら営業活動を行い、卸売業者を通じて販売している。

⑸  シスメックスの血液凝固測定装置のシェアは、販売台数及び販売金額ともに、全国第1位である。

⑹  我が国において製造販売されている血液凝固測定装置は、通常、当該装置の製造業者が製造する凝固試薬に限らず、当該装置の製造業者以外の事業者が製造する凝固試薬も使用することが可能である。

  また、凝固試薬の製造業者の中には、血液凝固測定装置を製造せず、凝固試薬のみを製造販売する事業者も存在する。

(注4)「血液凝固測定装置」とは、血液凝固測定の際に使用される医療機器をいう。

(注5)Dダイマーは、血栓の主成分であるフィブリンとその原料(フィブリノゲン)を分解したフィブリン・フィブリノゲン分解産物(FDP)の中でも、フィブリンから分解された最終分解産物の1つである。検出される値が低い場合に、血栓が無いことの指標として使用する。

(注6)FDPは、血栓の主成分であるフィブリンとその原料(フィブリノゲン)を分解したフィブリン・フィブリノゲン分解産物である。血栓の分解が促進されると、検出される値が上昇する。

(注7)Dダイマー及びFDPは、事故等により血管が破れ、出血した際、血管の破れを塞ぐ血栓が形成され、血管の修復がなされた後、血栓が溶解する過程で生成される物質である。これらの物質の測定結果は、各種の血栓症、動脈瘤、心筋梗塞、脳梗塞等の診断に用いられる。

(注8)「CNシリーズ」とは、シスメックスが製造販売する血液凝固測定装置であって、プロダクト名が「CN-6500」、「CN-3500」、「CN-6000」又は「CN-3000」であるものをいう。

(注9)「病院等」とは、血液凝固測定を行う国内の病院、診療所、衛生検査所及び検診センターをいう。

3 違反被疑行為の概要

  シスメックスは、遅くとも令和元年8月頃以降、令和6年7月頃までの間、特定血液凝固測定装置により「Dダイマー」又は「FDP」を測定する際に用いる試薬に関して、他社製の試薬を使用できるにもかかわらず、特定血液凝固測定装置では自社が製造販売する指定試薬のみを使用させるものとすることを基本方針として定めて、病院等に対して、特定血液凝固測定装置を供給するに当たり、自社が製造販売する指定試薬のみを使用することを条件として、特定血液凝固測定装置の供給に併せて当該指定試薬を購入するようにさせていた。  

4 独占禁止法上の考え方

⑴ ある商品(主たる商品)の市場における有力な事業者が、取引の相手方に対し、 当該商品の供給に併せて他の商品(従たる商品)を購入させることによって、従たる商品の市場において新規参入者や既存の競争者が排除される又はこれらの取引機会が減少するような状態をもたらすおそれが生じる場合は、独占禁止法上問題となる(不公正な取引方法第10項(抱き合わせ販売等))。

  ある商品の供給に併せて他の商品を「購入させること」に当たるか否かは、ある商品の供給を受けるに際し客観的にみて少なからぬ顧客が他の商品の購入を余儀なくされるか否かによって判断される。

  また、抱き合わせ販売等は、顧客の選択の自由を妨げるおそれがあり、価格、品質、サービスを中心とする能率競争の観点から、競争手段として不当である場合にも、不公正な取引方法に該当し、違法となる。

⑵ シスメックスが前記3の行為を行うことにより、病院等の中には、「Dダイマー」又は「FDP」を測定する際に用いる試薬について、これまで使用していたシスメックス製以外の試薬の購入を取りやめるなど、シスメックスが製造販売する指定試薬を購入することを余儀なくされたものもあると考えられる。

  シスメックスが血液凝固測定装置の販売市場において有力な事業者であることを踏まえると、前記3の行為の結果、「Dダイマー」又は「FDP」を測定する際に用いる試薬の取引において、シスメックス製以外の試薬を販売する事業者が病院等との取引から排除される又はシスメックス製以外の試薬を販売する事業者と病院等との取引機会が減少するような状態をもたらすおそれが生じ得るものと考えられる。

5 確約計画の概要

 ⑴ 次の事項を取締役会で決議すること。

 ア 前記3の行為を取りやめていることを確認すること。

 イ 自社の血液凝固測定装置及び凝固試薬に関して、前記3の行為と同様の行為を行わないこととし、この措置を今後5年間実施すること。

 ⑵ 前記⑴に基づいて採った措置を、病院等のうち特定血液凝固測定装置の使用先(以下「使用先病院等」という。)及び同装置を販売する卸売業者に対して通知し、かつ、特定血液凝固測定装置及び指定試薬の販売事業に係る役員及び従業員に周知徹底すること。

 ⑶ 自社の血液凝固測定装置及び凝固試薬に関して、前記3の行為と同様の行為を行わないこととし、この措置を今後5年間実施すること。

 ⑷ 次の事項を行うために必要な措置を講じること。

 ア 自社の血液凝固測定装置及び凝固試薬の販売事業に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の作成並びに自社の血液凝固測定装置及び凝固試薬の販売事業に係る役員及び従業員に対する周知徹底

 イ 自社の血液凝固測定装置及び凝固試薬の販売事業に関する独占禁止法の遵守についての自社の血液凝固測定装置及び凝固試薬の販売事業に係る役員及び従業員に対する定期的な研修並びに法務担当者による定期的な監査

 ウ 独占禁止法に違反する可能性がある行為について、病院等のうち自社の血液凝固測定装置及び凝固試薬の購入先(以下「購入先病院等」という。)からの相談を受け付ける窓口の設置

 ⑸ 前記⑴から⑷までの措置の履行についての監視を、第三者(公正取引委員会が承認した者に限る。)に委託すること。

 ⑹ 前記⑴、⑵及び前記⑷の措置の履行状況を、公正取引委員会に対し、前記⑸で委託した第三者に報告させること。

 ⑺ 前記⑶の措置及び前記⑷イに基づいて講じた措置の履行状況を、今後5年間、毎年、公正取引委員会に対し、前記⑸で委託した第三者に報告させること。

6 確約計画の認定 

    公正取引委員会は、次のとおり、前記5の確約計画が独占禁止法に規定する認定要件のいずれにも適合すると認め、当該確約計画を認定した。

  ⑴ 措置内容の十分性

    前記5の確約計画に記載の措置の内容は、違反被疑行為の取りやめの確認及び将来不作為についての取締役会決議(前記5⑴)、使用先病院等及び卸売業者への通知並びに自社の役員及び従業員への周知徹底(前記5⑵)、自社の全ての血液凝固測定装置及び凝固試薬を対象とした将来不作為(前記5⑶)、購入先病院等から相談を受け付ける窓口を設置すること(前記5⑷ウ)を含んでおり、前記3の行為が排除されたことを確保するために十分な措置であると判断した。

  ⑵ 措置実施の確実性

    シスメックスは、前記5の確約計画において、独占禁止法のコンプライアンス体制の整備を措置に含めていること、措置の履行についての監視を第三者(公正取引委員会が承認した者)に委託し、措置の履行状況に関する公正取引委員会に対する報告を当該第三者に行わせるとしていること及び措置の内容ごとに実施期限を設けていることから、前記5の確約計画は確実に実施されると判断した。

(令和7年2月13日)参考1-2(過去の事例及び参照条文)(127KB)

問い合わせ先

公正取引委員会事務総局審査局第四審査
電話 03-3581-3345(直通)
ホームページ  https://www.jftc.go.jp/

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