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(令和7年1月15日)有識者と公正取引委員会との懇談会で出された主な意見について

(令和7年1月15日)有識者と公正取引委員会との懇談会で出された主な意見について

令和7年1月15日
公正取引委員会

 公正取引委員会は、毎年度、全国の主要都市において、主要経済団体、消費者団体、弁護士会、学識経験者、報道関係者等の有識者と当委員会の委員等との懇談会を開催することで、各地域の実情や幅広い意見・要望を把握し、独占禁止法等の運用にいかしています。
 令和6年度においては別紙1のとおり開催したところ、有識者(別紙2)から示された主な意見の概要は以下のとおりです(地区別の主な意見は別紙3のとおりです。)。
 公正取引委員会としては、これらの意見を踏まえて、今後とも独占禁止法等の的確な運用に努めてまいります。

1 中小事業者等の取引適正化について

(1) 適正な価格転嫁の実現に向けた取組について

  •  公正取引委員会によって、手形のサイトが最長でも60日とされ、また、具体的な買いたたき事案を取り上げていただき、その考え方も明確化していただいた。そのおかげで、ここ3、4年で大手企業の態度はがらりと変わり、取引条件が改善していると実感している。ただし、法律的な面で整備されたとしても、価格転嫁に取り組む我々中小企業がしっかり法律を勉強し、価格の交渉術につなげていかないと意味がないので、商工会議所としても公正取引委員会と連携しながら、会員に情報を発信していかないといけないと考えているところである。(北海道函館地区)
  •  適正な価格転嫁は正常な商慣習であり、良いものには適正な価格がつくこと、そして、良いものを作るためにはコストが掛かるということを一般消費者も含めた共通理解としていきたい。公正取引委員会の活動は、このような価格転嫁に対する考え方の後押しにも一役買っていると思うので、非常に感謝している。特に、最近の公正取引委員会の活動の中に下請法における買いたたきの基準の明確化があったかと思うが、これは中小事業者にとっては非常に有り難いことだと感じている。(盛岡地区)
  •  意思決定権者である社長が価格転嫁に合意しても、調達部長がコストダウンを求めてくるという実態がある。大手メーカーから「他社は半値で請けるが御社はどうだ」と交渉され、返事ができないといつの間にか仕事がなくなっているということがあると聞いている。(群馬県高崎地区)
  •  価格転嫁の前提となる価格交渉について、徐々に浸透はしているものの、業種別に見るとまだ十分に進んでいないところもある。公正取引委員会にあっては、新たな商慣習として、サプライチェーン全体で適切な価格転嫁が実現できるよう、関係省庁と連携して取組を進めてほしい。(津地区) 
  •  持続的な賃上げを進めるためには、中小・小規模事業者の取引環境の整備が不可欠である。価格交渉の過程で、労務費の上昇に関する詳細な説明や資料提出を求められたとの話も聞いたことがあるため、「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」が浸透するよう、その普及に努めてほしい。(津地区) 
  •  経営幹部と販売担当者では、価格転嫁の必要性についての理解に差がある場合があるという声も多い。企業全体で価格転嫁の重要性に関するコンセンサスが図られていないことが原因として考えられる。公正取引委員会には、価格転嫁が円滑に進むよう支援を行ってほしい。(京都地区) 
  •  非製造業については、価格転嫁の交渉に時間がかかる場合が多く、また、難航しているようである。小売業や修理業では、値上げすると販売量や取引量の減少につながるといわれている。公正取引委員会には、今後も価格転嫁などの政府方針の周知に尽力してもらいたい。具体的には、価格転嫁に応じない事業者には何らかの指導やペナルティを与えるなど、制度面から中小企業の価格転嫁を支援してほしい。(京都地区) 
  •  昨今の大幅な賃上げは大手企業が主導する形で進んでいるが、多くの中小事業者による賃上げは、最低賃金制度への対応や人材の流出を防ぐためなど主に防衛的な理由によるものである。今の日本には、中小企業の賃上げ財源確保のために価格転嫁を適正に行い、賃金の上昇と物価上昇の好循環を生み出すことが必要不可欠である。公正取引委員会には、これができるような環境の整備を行っていただきたい。(京都地区) 
  •  全国的に中小企業は人手不足に悩まされているところ、地方、特に郡部においては人手不足が非常に深刻化しており、事業継続が極めて困難な状況になっている。中小企業が持続可能な事業運営を行っていくためには、待遇改善を含めた働き手の環境整備への取組が必要不可欠であり、労務費、原材料価格、エネルギーコスト等の上昇分について価格転嫁しなければ、中小企業は生き残ることができない。(高知地区) 
  •  官公庁が入札を行う際には、一円でも安い企業へ落札させる場合が非常に多い。官公庁は、一部の建設工事の入札にあっては価格以外の要素も評価対象となる総合評価落札方式を採用しているが、その他の多くの入札にあっては一般競争入札方式のような価格のみが評価対象となる入札方式を採用している。官公庁においては、自らの入札方式によって価格転嫁が阻害される可能性がある点を認識し、価格だけが評価対象とならないような方式で入札を実施していただきたい。(鹿児島地区)

(2) 下請法の規制について

  •  下請法に関しては、現状、適用範囲を資本金の額で区別しているが、資本金の額と企業規模が一致しないことも多いので、売上高など資本金の額以外の基準でも判断できないか。(北海道函館地区)
  •  下請取引において、本年11月に約束手形等による下請代金の支払サイトが60日以内とされたと聞いているところ、その反射的な効果として、下請法が適用されない事業者間の支払サイトが長期化する問題が発生していると聞いている。下請法の適用がない事業者間であっても、支払サイトの長期化は企業経営にとってはリスクが大きくなるので、問題意識をお持ちいただきたい。(群馬県高崎地区)

(3) 事業者と個人事業者との取引の適正化について

  •  フリーランス・事業者間取引適正化等法の規制対象は全事業者に及ぶところ、この法律について、中小事業者を含め、ほとんどの事業者がその内容を十分に認識していないのが現状である。そのため、同法の周知徹底を図り、認知度の向上を目指すための工夫が必要である。また、フリーランス取引は学生が行っている可能性も考えられるため、学生を含め、幅広く周知を行うことも重要である。(鹿児島地区)
  •  公正取引委員会には、フリーランスと発注者間の取引について調査をするに当たっては、調査によって取引に支障が出ないよう丁寧に対応してほしい。また、発注者側に対して、フリーランス・事業者間取引適正化等法の趣旨を理解させ、弱い立場であるフリーランスに寄り添うような対応をさせてほしい。(那覇地区)

2 独占禁止法の運用について

  •  日清食品が行っていたカップヌードルの再販売価格の拘束事件のように、大手事業者による価格拘束は庶民感情からしても許されるものではない。そのため、公正取引委員会には、悪質な事件に対しては厳正に対処していただければと思うし、措置を採った事業者に対するフォローアップにも力を入れていただきたい。(盛岡地区)
  •  スタートアップ企業の新規参入を促進するためにも、行き過ぎた寡占・独占や優越的地位の濫用などの不当な行為には、厳正に対処していただきたい。(津地区)
  •  確約計画の認定後のフォローアップが適切に行われているか不透明な部分もあると考える。確約計画の認定の取消しも制度としては存在するとは承知しているが、適切に対応してもらいたい。(那覇地区)

3 競争環境の整備のための取組について

  •  スマートフォンのソフトウェアに係る競争の促進に関して、新規参入の促進により競争事業者を増加させ、競争を生み出すことによってイノベーションが発展し、それが消費者への利便性にもつながるということはよく理解できる。一方で、様々な事業者が新規参入すると良い面も悪い面もある。新規参入者が参入後に不正行為を行った場合は、その行為の発見や今後の未然防止のために後から規制をする必要が出てきてしまう。(盛岡地区)
  •  ウェブ上で用語を調べるために検索すると、ウェブ上に掲載されている新聞社の記事に似た内容の解説が検索結果として表示されることがある。これは新聞記事の無断使用に該当すると考えており、懸念している。生成AIサービスが新聞記事を無断利用して提供されるようなことがあれば、市場の公正性を侵すものと考えられるため、公正取引委員会には生成AI事業者の動向を監視するなどの適切な対応を採っていただきたい。(鳥取地区)
  •  コンテンツ産業については、例えば、電子コミック、アニメーション、脚本家といった幅広い分野の実態調査を行ってもらいたい。また、難しいかもしれないが、コンテンツ産業は非常に変化が激しいことから、過去に行った実態調査のフォローアップ調査をしていただきたい。(高知地区)

4 地域経済の実情と競争政策上の課題について

  •  電力について、自由化に伴い一時的に価格は安くなったが、燃料費の高騰等の理由から新規参入者が撤退してしまい、引き続き寡占状態にある。様々な要因で電力価格が若干上がることは理解できるが、一番安いときに比べて5割は上昇しており、非常に厳しい状況にある。(北海道函館地区)
  •  県内の最低賃金を決定していくに当たり、使用者側である事業者から、価格転嫁が厳しく、年々深刻さを増しており、このような状況の中で毎年賃上げを実施していくと、経営はひっ迫するとの声が上がっている。公正取引委員会には、引き続き、事業者が賃上げの原資を確保できるような環境を整えていただきたい。(鳥取地区)
  •  製造業においても、賃金上昇によって経営状況が厳しくなり、最終的には雇い止めを行わざるを得ないケースが出てきている。このような現状を御承知置きいただきたい。小規模小売業者や製造業の現場の厳しい実態を理解し、改善につながる具体的な対策を検討していただけることを切に願っている。(鹿児島地区)

5 広報・広聴活動について

  •  事業者間で不公正な取引などがあった場合には、そのしわ寄せが消費者に行く。しかし、消費者は公正取引の重要性について明るくないというのが実情かと思う。消費者に対するセミナー等を恒常的に実施していただければ、子供や学生のうちから学べる機会になると思うので、そのような活動を積極的に取り組んでいただきたい。(群馬県高崎地区)
  •  中央の行政機関の方が現地に来て、中小企業団体等から地域の状況や課題を直接聴き取る懇談の場を設けた経験はない。このような直接の懇談の場は大事である。(高知地区)

関連ファイル

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問い合わせ先

公正取引委員会事務総局官房総務課
電話 03-3581-3574(直通)
ホームページ https://www.jftc.go.jp

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