令和7年3月13日
公正取引委員会
公正取引委員会は、山形県が発注する豚熱ワクチン (注1) 及び公益社団法人山形県畜産協会(以下「山形県畜産協会」という。)が発注する動物用ワクチン (注2) の入札等の参加業者に対し、本日、独占禁止法の規定に基づき排除措置命令及び課徴金納付命令を行った。
本件の違反行為の概要は後記第1の3に記載のとおりであり、本件は、豚熱ワクチン及び動物用ワクチンの入札等の参加業者が、独占禁止法第3条(不当な取引制限の禁止)の規定に違反する行為を行っていたものである。
また、一般社団法人全国動物薬品器材協会(以下「全国動薬協」という。)に対し、本日、後記第2のとおり、要請を行った。
(注1)「豚熱ワクチン」とは、家畜伝染病予防法(昭和26年法律第166号)第2条第1項の表20の項に規定する豚熱の発生を予防するために豚に接種するワクチンをいう。
(注2)「動物用ワクチン」とは、家畜の伝染性疾病の発生を予防するために家畜に接種するワクチンをいう。
第1 排除措置命令及び課徴金納付命令
1 違反事業者の概要

(注3)違反事業者名については、以下「株式会社」の記載を省略する。
2 排除措置命令及び課徴金納付命令の対象事業者、課徴金額等

(注4)表中「排除措置命令」欄の「○」は、その事業者が排除措置命令の対象であることを示している。
(注5)表中「排除措置命令」欄及び「課徴金額」欄の「-」は、その事業者が排除措置命令又は課徴金納付命令の対象でないことを示している。
なお、番号1の事業者は、山形県畜産協会が発注する動物用ワクチンについて、 算出された課徴金の額が100万円未満であったため、独占禁止法第7条の2第1項ただし書により課徴金納付命令の対象とはなっていない。
(注6)表中「課徴金減免制度の適用」欄及び「申請順位に応じた減免率」欄の「-」は、その事業者が課徴金減免制度の適用事業者でないことを示している。
(注7)表中「事件の真相の解明に資する程度に応じた減算率」欄の「-」は、その事業者が調査協力減算制度の適用事業者でないことを示している。
3 違反行為の概要
⑴ 山形県が発注する豚熱ワクチンに係る違反行為(詳細は別添1令和7年(措)第1号排除措置命令書参照)
アグロジャパン及び小田島商事の2社(以下「名宛人2社」という。)並びにMPアグロの3社(以下「3社」という。)は、 遅くとも令和2年9月18日頃以降、山形県が発注する豚熱ワクチンについて、受注価格の低落防止を図るため
ア(ア) 受注予定者を決定する
(イ) 受注予定者以外の者は、受注予定者が受注できるように協力する
旨の合意の下に
イ(ア) 令和2年度に調達される豚熱ワクチンについては、3社のうち小田島商事及びMPアグロの2社(以下「特定2社」という。)を受注予定者とした上で、 特定2社それぞれが各総合支庁(山形県の村山総合支庁、最上総合支庁、置賜総合支庁及び庄内総合支庁をいう。以下同じ。)に提示する見積価格を同じ価格として、 かつ、アグロジャパンが各総合支庁に提示する見積価格を特定2社よりも高くすることによって、各総合支庁において実施されるくじ引き (予定価格の制限の範囲内で最も低い見積価格を提示した者が複数の場合に、当該者を対象に実施されるもの)において、受注予定者のうちいずれか1社が受注できるようにする
(イ) 令和3年度に調達される豚熱ワクチンについては小田島商事を、令和4年度に調達される豚熱ワクチンについてはアグロジャパンを、 令和5年度に調達される豚熱ワクチンについてはMPアグロを、それぞれ受注予定者とし、受注予定者が提示する入札価格は、受注予定者が定め、 受注予定者以外の者は、受注予定者が定めた入札価格より高い入札価格を提示する
ことにより、受注予定者を決定し、受注予定者が受注できるようにしていた。
これにより、3社は、公共の利益に反して、山形県が発注する豚熱ワクチンの取引分野における競争を実質的に制限していた。
⑵ 山形県畜産協会が発注する動物用ワクチンに係る違反行為(詳細は別添2令和7年(措)第2号排除措置命令書参照)
3社は、遅くとも令和2年3月27日頃以降、山形県畜産協会が指名競争入札の方法により発注する別添2令和7年(措)第2号排除措置命令書別紙1の表記載の動物用ワクチン (以下「特定動物用ワクチン」という。)について、受注価格の低落防止を図るため
ア(ア) 品目ごとに受注予定者を決定する
(イ) 受注予定者以外の者は、受注予定者が受注できるように協力する
旨の合意の下に
イ 品目ごとに、毎年度、入札が実施される3月時点で山形県畜産協会との間で単価契約を締結している者を翌年度における当該品目の受注予定者とすることを基本としつつ
(ア) 令和2年度及び令和3年度に調達される特定動物用ワクチンについては、それぞれ、特定動物用ワクチンの発注見込総額に占める3社それぞれの受注見込額の割合等を勘案して受注予定者を決定し、 受注予定者が提示する入札価格は、受注予定者が定め、受注予定者以外の者は、受注予定者が定めた入札価格より高い入札価格を提示する
(イ) 令和4年度及び令和5年度に調達される特定動物用ワクチンについては、それぞれ、前年度に山形県が調達した豚熱ワクチンを受注した者の当該受注に係る売上高等を勘案して受注予定者を決定し、 受注予定者が提示する入札価格は、受注予定者が定め、受注予定者以外の者は、受注予定者が定めた入札価格より高い入札価格を提示する
ことにより、受注予定者を決定し、受注予定者が受注できるようにしていた。
これにより、3社は、公共の利益に反して、特定動物用ワクチンの取引分野における競争を実質的に制限していた。
4 排除措置命令の概要
前記3の違反行為(以下「本件違反行為」という。)ごとに、次のとおり排除措置命令を行った。
⑴ 名宛人2社は、それぞれ、次の事項を、取締役会において決議しなければならない。
ア 本件違反行為を取りやめていることを確認すること。
イ 今後、相互の間において、又は他の事業者と共同して
(ア) 山形県が発注する豚熱ワクチン
(イ) 特定動物用ワクチン
について、受注予定者を決定せず、自主的に受注活動を行うこと。
⑵ 名宛人2社は、それぞれ、前記⑴に基づいて採った措置を、相互に通知するとともに、発注者に通知し、かつ、自社の従業員に周知徹底しなければならない。
⑶ 名宛人2社は、今後、それぞれ、相互の間において、又は他の事業者と共同して、前記⑴イの動物用ワクチンについて、受注予定者を決定してはならない。
⑷ 名宛人2社のうちアグロジャパンは、次のアの事項を行うために必要な措置を、小田島商事は、次のア及びイの事項を行うために必要な措置を、それぞれ、講じなければならない。
ア 官公需又は特定動物用ワクチンの受注に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の作成並びに自社の役員及び従業員に対する周知徹底 (アグロジャパンにあっては当該行動指針の自社の役員及び従業員に対する周知徹底)
イ 官公需又は特定動物用ワクチンの受注に関する独占禁止法の遵守についての、自社の役員及び従業員に対する定期的な研修
5 課徴金納付命令の概要
名宛人2社は、令和7年10月14日までに、それぞれ前記2の「課徴金額」欄記載の額(総額567万円)を支払わなければならない。
第2 全国動薬協に対する要請
本件違反行為の審査の過程において、3社が、全国動薬協の会員となっている山形県動物薬品器材協会の会合という名目で本件違反行為に係る話合いを行っていた事実等が認められた。
よって、公正取引委員会は、豚熱ワクチン及び動物用ワクチンを含む動物用医薬品の卸売業に関連する全国団体である全国動薬協に対し、 動物用医薬品の卸売業者によって本件違反行為と同様の行為が行われることを未然に防止する観点から、本件違反行為の概要及び独占禁止法の遵守について、 会員である各都道府県の動物薬品器材協会を通じて、動物用医薬品の卸売業者に周知徹底するよう要請した。
関連ファイル
(印刷用)(令和7年3月13日)山形県等が発注する豚熱ワクチン及び公益社団法人山形県畜産協会が発注する動物用ワクチンの入札等の参加業者に対する排除措置命令及び課徴金納付命令等について(91 KB)
(令和7年3月13日)参考1-3(最近の入札談合・受注調整事件、参照条文、課徴金制度の概要)(126 KB)
(令和7年3月13日)調査協力減算制度の概要(1,339 KB)
問い合わせ先
公正取引委員会事務総局東北事務所第一審査課
電話 022-225-8421(直通)
公正取引委員会事務総局審査局第二審査
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