令和7年3月24日
公正取引委員会
公正取引委員会は、機械式駐車装置メーカー (注1) らに対し、本日、後記第1のとおり、独占禁止法の規定に基づき排除措置命令及び課徴金納付命令を行った。
機械式駐車装置メーカーらによる違反行為の概要は後記第1の2に記載のとおりであり、各件は、機械式駐車装置メーカーらが、 独占禁止法第3条(不当な取引制限の禁止)の規定に違反する行為を行っていたものである。
また、公益社団法人立体駐車場工業会(以下「立体駐車場工業会」という。)に対し、本日、後記第2のとおり、要請を行った。
(注1)「機械式駐車装置メーカー」とは、水平循環方式分離式又はエレベーター方式パレット型の機械式駐車装置を製造する者をいう。
「水平循環方式分離式」とは、複数の搬器を平面状に配置し、これらを循環運動させることにより駐車を行う方式のうち、搬器が個別に移動する方式をいう。
「エレベーター方式パレット型」とは、複数の駐車室を立体的に配置し、搬器(パレットを用いるものに限る。)を搬送装置によって駐車室へ搬送することにより駐車を行う方式をいう。
第1 排除措置命令及び課徴金納付命令
1 違反事業者、排除措置命令及び課徴金納付命令の対象事業者、課徴金額等
⑴ 特定地下式PS設置工事 (注2)

⑵ 特定エレベーター方式PS設置工事 (注2)

(注2)「特定地下式PS設置工事」とは、建設業者 (注3) が確認申請図 (注4) に基づく見積り合わせの方法により発注する水平循環方式分離式の機械式駐車装置の設置工事(機械式駐車装置の入替工事を除く。)をいう。
「特定エレベーター方式PS設置工事」とは、 建設業者が確認申請図に基づく見積り合わせの方法により発注するエレベーター方式パレット型の機械式駐車装置の設置工事(機械式駐車装置の入替工事を除く。)をいう。
(注3)「建設業者」とは、特定地下式PS設置工事又は特定エレベーター方式PS設置工事をそれぞれ対象とする各排除措置命令書別表記載の事業者をいう。
(注4)「確認申請図」とは、建築基準法(昭和25年法律第201号)第6条第1項又は第6条の2第1項に基づく申請の際に、 建築主事又は指定確認検査機関の確認を受ける各種図書及び書類のうち、機械式駐車装置に係る図面及び当該図面に準ずるもの (当該申請に用いられるものに限られず、実施設計図、詳細設計図などとも呼ばれる機械式駐車装置に係る図面であって、消火設備、配管等の建物に付随する設備関係の配置がおおむね固まっているもの)をいう。
(注5)日本コンベヤ株式会社は、平成30年7月1日にエヌエイチパーキングシステムズ株式会社を吸収合併した者である。
(注6)違反事業者名については、以下「株式会社」の記載を省略する。
(注7)表中「排除措置命令」欄の「○」は、その事業者が排除措置命令の対象事業者であることを示している。
(注8)表中「排除措置命令」欄及び「課徴金額」欄の「-」は、その事業者が排除措置命令又は課徴金納付命令の対象事業者でないことを示している。
(注9)表中「課徴金減免制度の適用」欄及び「申請順位に応じた減免率」欄の「-」は、その事業者が課徴金減免制度の適用事業者でないことを示している。
(注10)表中「事件の真相の解明に資する程度に応じた減算率」欄の「-」は、その事業者が調査協力減算制度の適用事業者でないことを示している。
2 違反行為の概要(詳細は別添排除措置命令書参照)
⑴ 特定地下式PS設置工事
日精、住友重機械搬送システム、フジパスク (注11) 及びIHI運搬機械の4社は、かねてから、水平循環方式分離式の機械式駐車装置の設置工事について情報交換を行い、当該工事の供給に関する調整を行ってきたところ、 遅くとも平成29年7月13日以降、特定地下式PS設置工事について、供給価格の低落防止等を図るため
ア(ア) 日精、住友重機械搬送システム及びIHI運搬機械(以下「メーカー3社」という。)の中から供給すべき者(以下「供給予定者」という。)を決定する
(イ) 供給予定者以外の者は、供給予定者が供給できるように協力する
旨の合意の下に
イ(ア) 建設業者から、確認申請図に基づく特定地下式PS設置工事の見積依頼があった場合には、 それぞれ、当該確認申請図の記載内容から、確認申請図採用メーカー (注12) がメーカー3社のうちいずれの者であるかを確認した上で互いに連絡を取り合い、確認申請図採用メーカー以外の者から供給意欲が示されない限り、同確認申請図採用メーカーを供給予定者とする
(イ)a 供給予定者が提示する見積価格は、供給予定者が定め、供給予定者以外の者は、供給予定者から連絡のあった価格以上の見積価格を提示する
b 住友重機械搬送システムが供給予定者となりフジパスクの下請として特定地下式PS設置工事を請け負う予定の場合にあっては、 フジパスクが提示する見積価格は、住友重機械搬送システムがフジパスクに提示する価格を踏まえてフジパスクが定め、 メーカー3社のうち供給予定者以外の者は、フジパスクから連絡のあった価格以上の見積価格を提示する
(ウ) 前記(ア)及び(イ)について、住友重機械搬送システムは、フジパスクを通じて日精及びIHI運搬機械と連絡を行う
などにより、供給予定者を決定し、供給予定者が供給できるようにしていた。
(注11)機械式駐車装置メーカーの代理店であるフジパスクは、住友重機械搬送システムの代理店として、 住友重機械搬送システムが製造した水平循環方式分離式の機械式駐車装置に係る営業活動を行うとともに、当該機械式駐車装置の設置工事を請け負う者であり、 建設業者が発注する特定地下式PS設置工事を自ら請け負った場合には、住友重機械搬送システムに対し当該工事を下請に出していた。
(注12)「確認申請図採用メーカー」とは、特定地下式PS設置工事又は特定エレベーター方式PS設置工事の見積依頼に採用された確認申請図を作成した者をいう。
⑵ 特定エレベーター方式PS設置工事
新明和工業、IHI運搬機械及びエヌエイチパーキングシステムズの3社は、かねてから、エレベーター方式パレット型の機械式駐車装置の設置工事について情報交換を行い、 当該工事の供給に関する調整を行ってきたところ、新明和工業、IHI運搬機械、エヌエイチパーキングシステムズ及び日本コンベヤの4社は、 遅くとも平成29年6月29日以降(エヌエイチパーキングシステムズにあっては平成30年6月30日までの間、日本コンベヤにあっては同年7月1日以降)、 特定エレベーター方式PS設置工事について、供給価格の低落防止等を図るため
ア(ア) 供給予定者を決定する
(イ) 供給予定者以外の者は、供給予定者が供給できるように協力する
旨の合意の下に
イ(ア) 建設業者から確認申請図に基づく特定エレベーター方式PS設置工事の見積依頼があった場合には、それぞれ、当該確認申請図の記載内容から、 確認申請図採用メーカーが4社のうちいずれの者であるかを確認した上で互いに連絡を取り合い、 確認申請図採用メーカー以外の者から供給意欲が示されない限り、同確認申請図採用メーカーを供給予定者とする
(イ) 供給予定者が提示する見積価格は、供給予定者が定め、供給予定者以外の者は、供給予定者から連絡のあった価格以上の見積価格を提示する
などにより、供給予定者を決定し、供給予定者が供給できるようにしていた。
3 排除措置命令の概要
⑴ 特定地下式PS設置工事
ア 日精、住友重機械搬送システム及びフジパスクの3社(以下「名宛人3社」という。)は、それぞれ、次の事項を、取締役会において決議(フジパスクにあっては、取締役による決定)をしなければならない。
(ア) 特定地下式PS設置工事について、名宛人3社及びIHI運搬機械の4社が、遅くとも平成29年7月13日以降共同して行っていた、供給予定者を決定し、供給予定者が供給できるようにする行為を既に取りやめていることを確認すること。
(イ) 今後、相互の間において、又は他の事業者と共同して、見積り合わせの方法により発注される水平循環方式分離式の機械式駐車装置の設置工事について、供給予定者を決定せず、自主的に供給すること。
イ 名宛人3社は、それぞれ、前記アに基づいて採った措置を、自社を除く2社及び建設業者に通知し、かつ、自社の従業員に周知徹底しなければならない。 これらの通知及び周知徹底の方法については、あらかじめ、公正取引委員会の承認を受けなければならない。
ウ 名宛人3社は、今後、それぞれ、相互の間において、又は他の事業者と共同して、見積り合わせの方法により発注される水平循環方式分離式の機械式駐車装置の設置工事について、供給予定者を決定してはならない。
エ 名宛人3社のうち日精及び住友重機械搬送システムは次の(ア)及び(イ)の事項を行うために必要な措置を、フジパスクは次の(ア)の事項を行うために必要な措置を、それぞれ、講じなければならない。 この措置の内容については、前記ウで命じた措置が遵守されるために十分なものでなければならず、かつ、あらかじめ、公正取引委員会の承認を受けなければならない。
(ア) 自社の工事の供給に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の作成並びに自社の役員及び従業員に対する周知徹底(日精及び住友重機械搬送システムにあっては当該行動指針の自社の役員及び従業員に対する周知徹底)
(イ) 自社の工事の供給に関する独占禁止法の遵守についての、水平循環方式分離式の機械式駐車装置の設置工事の営業に関わる役員及び従業員に対する定期的な研修の実施並びに法務担当者等による定期的な監査
オ 名宛人3社は、それぞれ、前記ア、イ及びエに基づいて採った措置を、速やかに公正取引委員会に報告しなければならない。
⑵ 特定エレベーター方式PS設置工事
ア 新明和工業及び日本コンベヤの2社(以下「名宛人2社」という。)は、それぞれ、次の事項を、取締役会において決議しなければならない。
(ア) 特定エレベーター方式PS設置工事について、名宛人2社、IHI運搬機械及びエヌエイチパーキングシステムズの4社が、 遅くとも平成29年6月29日以降(エヌエイチパーキングシステムズにあっては平成30年6月30日までの間、日本コンベヤにあっては同年7月1日以降)共同して行っていた、 供給予定者を決定し、供給予定者が供給できるようにする行為を既に取りやめていることを確認すること。
(イ) 今後、相互の間において、又は他の事業者と共同して、見積り合わせの方法により発注されるエレベーター方式パレット型の機械式駐車装置の設置工事について、供給予定者を決定せず、自主的に供給すること。
イ 名宛人2社は、それぞれ、前記アに基づいて採った措置を、相互に通知するとともに、建設業者に通知し、かつ、自社の従業員に周知徹底しなければならない。
ウ 名宛人2社は、今後、それぞれ、相互の間において、又は他の事業者と共同して、見積り合わせの方法により発注されるエレベーター方式パレット型の機械式駐車装置の設置工事について、供給予定者を決定してはならない。
エ 名宛人2社は、それぞれ、次の事項を行うために必要な措置を講じなければならない。 この措置の内容については、前記ウで命じた措置が遵守されるために十分なものでなければならず、かつ、あらかじめ、公正取引委員会の承認を受けなければならない。
(ア) 自社の工事の供給に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の作成並びに自社の役員及び従業員に対する周知徹底(新明和工業にあっては、当該行動指針の自社の役員及び従業員に対する周知徹底)
(イ) 自社の工事の供給に関する独占禁止法の遵守についての、エレベーター方式パレット型の機械式駐車装置の設置工事の営業に関わる役員及び従業員に対する定期的な研修の実施並びに法務担当者等による定期的な監査
オ 名宛人2社は、それぞれ、前記ア、イ及びエに基づいて採った措置を、速やかに公正取引委員会に報告しなければならない。
4 課徴金納付命令の概要
日精、住友重機械搬送システム、フジパスク及び新明和工業は、令和7年10月27日までに、それぞれ前記1の「課徴金額」欄記載の額(総額5億2613万円)を支払わなければならない。
第2 立体駐車場工業会に対する要請
本件では、立体駐車場工業会の会員である日精、住友重機械搬送システム、新明和工業及び日本コンベヤ並びに同工業会の会員であったIHI運搬機械及びエヌエイチパーキングシステムズの6社を含む違反事業者により前記第1の2の違反行為が行われた。 また、本件審査の過程において、同6社のうち複数の会社の営業担当者が、同工業会の広報委員会の委員を務めることで他社の営業担当者と関係を築き、互いに連絡を取り合うなどして、前記第1の2の違反行為に関与していた事実が認められた。
以上のことから、公正取引委員会は、今後、立体駐車場工業会の会員が営む機械式駐車装置に関する事業において、前記第1の2と同様の行為が行われることがないように、 同工業会に対し、独占禁止法の遵守について会員事業者に周知徹底するとともに、同工業会の広報委員会等の組織において会員各社の営業担当者が構成員になることなどによって、 これらの者の間で営業情報について連絡を取りやすい関係が生じ得ることにも留意して、組織運営において適切に対応するよう要請した。
関連ファイル
(印刷用)(令和7年3月24日)機械式駐車装置メーカーらに対する排除措置命令及び課徴金納付命令等について(186 KB)
(令和7年3月24日)参考1(最近の入札談合・受注調整事件)(79 KB)
(令和7年3月24日)参考2-3(参照条文、課徴金制度の概要)(165 KB)
問い合わせ先
公正取引委員会事務総局審査局第三審査
電話 03-3581-3383(直通)
ホームページ https://www.jftc.go.jp/