令和8年1月21日
公正取引委員会
公正取引委員会は、毎年度、全国の主要都市において、主要経済団体、消費者団体、弁護士会、学識経験者、報道関係者等の有識者と当委員会の委員等との懇談会を開催することで、各地域の実情や幅広い意見・要望を把握し、独占禁止法等の運用にいかしています。
令和7年度においては別紙1のとおり開催したところ、有識者(別紙2)から示された主な意見の概要は以下のとおりです(地区別の主な意見は別紙3のとおりです。)。
公正取引委員会としては、これらの意見を踏まえて、今後とも独占禁止法等の的確な運用に努めてまいります。
1 中小事業者等の取引適正化について
(1) 適正な価格転嫁の実現に向けた取組について
- 価格転嫁の問題については、取引先が上場企業や大企業の場合は、コンプライアンス上の問題やレピュテーションリスクの問題から、割と話を聞いてくれるようになったと聞く。しかし、取引先が非上場企業や中小企業の場合、零細企業の経営者には、価格交渉を求めると契約が一発で切られてしまわないかという危機感が常にあるため、労務費転嫁指針は知っていてもなかなか交渉ができないとのことであった。(札幌地区)
- 地方の小規模事業者においても価格転嫁できるような仕組みについては、やはりサプライチェーン全体での慣習づくりが重要なのではないかという声が非常によく聞かれる。サプライチェーンの中で頂点に位置するメーカー等が、末端に位置する企業までの適切な価格転嫁を管理する仕組みが必要である。公正取引委員会の指導の中でも、各業界におけるサプライチェーンとしての価格転嫁の必要性を提示していただいているので、こうした取組を更に強化していただきたい。(山形地区)
- 中小企業が受注者の立場になる価格転嫁について、価格転嫁が上手く進んでいると答える中小企業の割合が半分を超えている感触はあるものの、発注者との長年の慣習又は惰性もあり、残り半分はなかなか進んでいないと聞いている。発注者においても賃上げの必要性は実感しているものの、賃上げの原資が不足していることも事実である。公正取引委員会が発表した労務費転嫁指針を会員に対し、きめ細やかに周知するとともに、価格転嫁が進みつつある現在を好機として価格交渉に臨んでいく姿勢が重要だと考えている。(長野地区)
- 現在のインフレや円安は、その動きが早く、幅も大きいため、事業者は頻繁に取引価格の交渉をしなければならず、交渉疲れが出てきている。日本商工会議所が作成した価格転嫁のレポートにおいても、直近6か月間では価格転嫁状況に改善が見られないとされている。このような問題に対応するため、今後は定期的に交渉を行うことが重要になってくると考えている。(富山地区)
- 会員事業者に対して実施した価格転嫁に関するアンケートにおいて、「発注者に値上げ交渉を求めたが、交渉自体に応じてくれない」とか「交渉したが値上げを断られた」という回答があったことを踏まえ、公正取引委員会に対し、公正取引委員会が各業界の価格転嫁に関する実情を把握し、サプライチェーン全体の価格転嫁が円滑に行われるよう取り組むことを要望する。(福井地区)
- 小規模事業者の価格転嫁に課題がある。大規模事業者同士であれば、人件費の高騰分をすんなり要求し、受け入れてもらえるところ、小規模事業者の中には原価計算をしていないところがある。原価計算をしていないと、人件費の具体的な上昇分が把握できず、価格転嫁の交渉ができない。(松江地区)
- トラック運送業者のほとんどは小規模運送業者であり、独占禁止法等違反被疑行為があったとしても、荷主から取引を切られてしまうことを恐れて、公正取引委員会に相談することは難しい。公正取引委員会の方から積極的に動いて、荷主に対する調査を行ってほしい。(高松地区)
- 価格転嫁に関する課題や改善強化を求める点として、行政が介入することで事業者間の信頼関係に支障が出ることへの懸念、年間契約における期中の価格見直しが困難との意見が寄せられた。また、トラックの荷待ち・荷積みの問題に係る荷主側への監視強化、中小企業が報復を恐れずに相談できる体制の確保を求める声もあった。(大分地区)
(2) 取適法(改正下請法)の規制について
- 取適法が念頭に置いているのは、規模が大きい事業者と規模の小さい事業者が取引するサプライチェーンだと思われるが、大手であっても従業員数十人、末端の事業者だと一人で事業を行っているという業界が少なくない。こういった、サプライチェーン全体として取適法の対象とならない小規模事業者の業界における、長期手形の振出といった商慣行の適正化が、他業界も含めた取引全体の健全化に寄与するのではないか。(山形地区)
- 取適法では、協議に応じない一方的な代金決定の禁止が定められていることから、今まで以上には価格転嫁の協議の申出は行いやすくなるだろうが、協議の申出を行った結果、中小受託事業者に不利益が及ぶような事態が蔓延しないよう、周知を行っていくことが重要である。今後は、ガイドライン等の周知を徹底していただくということ、そして適切な法執行が重要だと思っており、そのために公正取引委員会が重要な役割を担っていただくことになる。(長野地区)
- 支払サイトについて、大企業と中小企業の間の取引であれば、下請法の改正に伴い、令和8年から手形払の禁止ということになるが、大企業同士、中小企業同士だと手形払のような習慣が残るのではないか。(富山地区)
- 取適法の対象となる取引においては手形払が禁止されることについて、経理担当は分かっていても、意外と経営者には伝わっていないことが多い。中小受託事業者が振込手数料を負担することが禁止となるなど、細かい点も含めて経営者に理解させていくことが重要になってくる。(富山地区)
- 事業者が取適法について相談したいと思った場合に、どこに相談すればよいのか分からないのではないかと懸念する。受託者は、委託事業者から不当な行為を受けても、「文句を言うと発注量が減るのではないか」という不安を抱いて公正取引委員会に違反事実の情報提供を行うことを躊躇している。このような懸念や不安を解消するために、公正取引委員会は、取適法に関する広報を強化するとともに、受託者が相談をしやすい体制を構築してほしい。(福井地区)
- 県内に所在する事業者は中小企業が多く、そのような中小企業同士の取引では下請法の対象となる取引でもないため価格転嫁が難しいという声が多い。また、取引段階が何段階もあるような取引では、価格転嫁の交渉が長引いたり、取引段階の途中で価格転嫁を受け入れない事業者がいると最後まで価格転嫁が進まずに止まってしまったりすることもある。(松江地区)
- 知的財産権やノウハウは全て発注者に譲渡する旨の条項が約款に入っていることが多々あるが、承諾しないと取引してもらえないので、そのまま取り交わしているというのが実態である。中小企業等が厳しい状況に置かれていることがあることを認識し、下請法の運用基準の見直しにつなげていただきたい。(高松地区)
(3) 事業者とフリーランスとの取引の適正化について
- 受託者であるフリーランスにこそ、きちんとした法の理解が必要だと思う。そのため、啓発活動では、委託者側だけではなく、フリーランスが正しく法を理解し活用できるように、フリーランスに対する講習会などを行ってほしい。(札幌地区)
- フリーランス・事業者間取引適正化等法について、受注者のみならず、発注者のリテラシーも重要であると感じている。発注者と受注者の双方が同法に関する知識を学べる場を設けるので、公正取引委員会の職員に来ていただき、双方に情報発信していただきたい。(高松地区)
2 独占禁止法の運用について
- 公正取引委員会は、欧州の競争当局に比べて独占禁止法違反行為に対するペナルティが軽い。悪質な入札談合やカルテルに対しては、更に重いペナルティを科すことで抑止力を高めるべきである。(高松地区)
- ホテルの運営事業者に対する警告事案について、具体的にこういった情報を共有するとカルテルに該当し、独占禁止法に違反するおそれがあるというルールのようなものを示したという点で非常に意味のあるものであった。(高松地区)
3 スマホソフトウェア競争促進法の運用について
- スマホの契約内容の中には、消費者の選ぶ権利を侵害している規定も見受けられるところ、スマホソフトウェア競争促進法が施行されれば消費者にも大きな影響があるかと思うが、消費者団体の立ち位置、期待される役割があれば教えてほしい。同法に関する情報を頂ければ消費者団体として関わり方を検討していきたい。(松江地区)
- スマホソフトウェア競争促進法の運用に当たっては、海外の競争当局との連携が重要である。各国のルールがある程度統一されていれば、事業者は、そのルールに従って適切に対応するものと思われる。しかし、仮に日本だけ特殊なルールになっていると、個別に対応するのは面倒なので、日本でサービスを提供するのは止めようということになりかねない。(高松地区)
4 競争環境の整備のための取組について
- 悪意のあるウェブサイトにおいて、消費者のデジタルに関する知識不足、焦りや誤解を利用して本人が意図しないような選択に誘導したりするなど、いわゆるダークパターン問題が広がっている。(札幌地区)
- デジタル関係の取組については引き続き注目されるものと推察するが、その背景には、日本のデジタル赤字がかなりの額に上っていることが挙げられる。アメリカ政府が貿易赤字に注目する一方で、日本はデジタル赤字が非常に大きな問題となっていると思うので、それに関連する公正取引委員会の取組に期待したい。(山形地区)
5 地域経済の実情と競争政策上の課題について
- ガソリンスタンドの経営者からは、人口減少や高齢化によるガソリンの需要過疎地域における持続的な経営が困難な実態を深刻に懸念する声があることは事実であるが、縮小傾向にある多くの産業において、環境変化に適応した業態転換や、価格・品質・サービス面での競争が消費者余剰の増加につながる。(長野地区)
- バス事業及びタクシー事業においては、従来、運賃を引き上げることによって顧客が離反する懸念があり、国土交通省地方運輸局の厳格な審査を経る必要があったことから、安易に値上げすることが困難な状況にあった。しかしながら、近時、状況が変化してきており、令和6年に両事業とも値上げを実施したが、値上げ後も顧客減少はみられず、また、国土交通省地方運輸局の審査も迅速化しており、値上げしやすい環境になってきた。(大分地区)
6 景品表示法について
- 公正取引委員会には、消費者庁と連携いただいて、景品表示法に違反する不当表示に対する措置等、最終的には消費者の利益の実現に向け取り組んでほしい。(長野地区)
- 公正取引委員会の地方事務所等では景品表示法の調査を担当していることから、もっと消費者団体や中小企業との連携を強化してパイプを太くしていけば、独占禁止法や景品表示法の端緒につながる情報を更に吸い上げることができるのではないか。今以上に公正取引委員会が独占禁止法の執行を強化していくためには、独占禁止法が消費者にとって重要な法律であることをもっと消費者にアピールすることが大事ではないか。(松江地区)
- 景品表示法について、各地域の事件調査においては、いまなお公正取引委員会が担っているところが大きい。消費生活センターで受理した苦情は全て消費者庁へ情報提供しているため、調査が必要な事案、特にSNSにおけるステルスマーケティングの問題に接した際には、しっかりとした対応をお願いしたい。(大分地区))
7 広報・広聴活動について
- 「独占禁止法教室」では、学生に対して市場経済の仕組みや競争の機能について説明をしているとのことであったが、この取組は、市場経済では適正な価格転嫁が物価の上昇を伴うことの理解につながると思うため、是非継続してほしい。「消費者セミナー」でも、適正な価格転嫁について説明していれば継続してほしいし、説明していなければ、モノの値段が上がることが全て悪いことではないという適正な価格転嫁の意味を理解してもらえるよう取り組んでもらいたい。(札幌地区)
- 公正取引委員会のPR活動の中で、桃太郎を使った取適法の動画は非常に親しみやすくて良いと感じた。YouTube動画もそうだが、デジタルコンテンツが多くの人から見られている。特に、若い世代は、新聞をあまり見ないため、多数のメディア媒体での展開が欠かせないと思う。(札幌地区)
- 公正取引委員会のホームページに豊富に掲載されているQ&Aや指導事例の具体例、下請法のテキスト等をとても参考にしている。そのため、下請法が改正され取適法になったとしても、また、新しい法律であるフリーランス・事業者間取引適正化等法についても、引き続き、Q&A等を充実させていただければと思う。(山形地区)
- 公正取引委員会のYouTube公式チャンネルにおけるフリーランス・事業者間取引適正化等法の動画は、行政機関ならぬ作風で作られており、このようなサービスを利用した広報活動への努力が感じられるものであった。引き続き、新聞などの媒体も含め、様々なメディアも上手に使って広報活動をしていただければと思う。(富山地区)
関連ファイル
(印刷用)(令和8年1月21日)有識者と公正取引委員会との懇談会で出された主な意見について
(463 KB)
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