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(平成18年5月12日)黒酢及びもろみ酢の表示に関する実態調査について

(平成18年5月12日)黒酢及びもろみ酢の表示に関する実態調査について

平成18年5月12日
公正取引委員会

1 黒酢・もろみ酢について

 食酢は,近年の健康ブームを反映し,希釈して直接飲用する利用が増えており,このような需要に対応して,特に黒酢を中心に,調味料としてではなく直接飲用するタイプの商品も開発されている。また,食酢ではないが,「もろみ酢」と呼ばれている泡盛等のもろみ粕を利用した比較的新しい商品も登場し,消費者の人気が高い。これらの商品には,○○県産等の地域に関する表示,健康,ダイエット等に関する表示等が多くみられるほか,黒酢であるのかもろみ酢であるのかが紛らわしく,一般消費者が両者を混同するおそれのある表示も見受けられることから,消費者のこれらの商品の適正な選択に資する観点から,黒酢及びもろみ酢の表示に関する実態調査を行い,不当景品類及び不当表示防止法(以下「景品表示法」という。)上の考え方を示すことを目的として調査を実施した。詳細は,別添のとおりである。
 (参考)
 「もろみ酢」とは,もろみ粕を原材料として製造した液状の食品で,主に飲料として利用されているもので,いわゆる食酢ではない。

2 調査方法

(1) 消費者モニター1,077名に強調表示から受ける認識についてアンケート調査
(2) 黒酢商品439点及びもろみ酢商品158点の強調表示の態様を分析
(3) 黒酢商品及びもろみ酢商品を生産・販売する事業者の団体等からヒアリング調査

3 表示例

(1) 表示状況

 本件調査において収集した黒酢商品439点及びもろみ酢商品158点に記載された主な強調表示については,[1]「○○県産」等の地域に関する表示,[2]「健康」,「ダイエット」,「ストレス」等に関する表示,[3]「天然発酵飲料」,「自然発酵」等の天然,自然である旨の表示,[4]「特選」,「本造り」,「本醸造」等製造方法に関する表示に分類することができる。
 これら表示の態様別の商品数と比率は,以下のとおりである。

表示の態様 商品数(比率%)
黒酢 もろみ酢
1 「○○産」,「特産」等の地域に関する表示 128(29.2) 116(73.4)
2 「健康」,「ダイエット」,「美容」等に関する表示 123(28.0) 80(50.6)
3 「天然」,「自然」等の表示 46(10.5) 52(32.9)
4 「特選」,「本造り」,「本醸造」等の表示 41(9.3) 8(5.1)

(2) 一般消費者に誤認されるおそれのある表示

 以下のような表示は,一般消費者に対し,実際のものよりも著しく優良であると示すものであるおそれがある。

[1] 地域に関する表示

 ○ 黒酢商品
 黒酢商品については,醸造工程が行われた地域が重要であると認められることから次のような表示
 ・ 主要な原材料である玄米(大麦)の産地と醸造した地域が異なる黒酢についての「○○の黒酢」等の表示(○○は玄米の産地名)
 ○ もろみ酢商品
 もろみ酢商品については,主たる原材料であるもろみ粕が生産された地域が重要であると認められることから次のような表示
 ・ 沖縄県以外で生産されたもろみ粕を使ったもろみ酢についての「沖縄もろみ酢」等の表示

 なお,単に「○○の黒酢」又は「○○もろみ酢」のような表示(○○は地名等)については,「○○」が商品の主要な原材料の産地を意味するのか,当該商品の製造された地を意味するのかが明確ではないので,特にこれらが異なる場合は,「○○」が何を意味するか分かるように表示することが,一般消費者に対する適正な情報提供の観点から望ましい。

[2] 「健康」,「ダイエット」,「美容」等に関する表示

 ○ 黒酢商品・もろみ酢商品
 ・ 合理的な根拠がないにもかかわらず,「ストレスを解消します」,「タバコ,飲酒の過ぎる方の健康を回復します」等医薬効果があるかのような表示
 ・ 合理的な根拠がないにもかかわらず,「肥満予防効果があります」,「飲むだけですっきり簡単にダイエットできます」等痩身効果があるかのような表示

[3]「天然」,「自然」等の表示

 ○ 黒酢商品
 ・ 合成酢であるにもかかわらず,「天然醸造」,「自然発酵」等の表示
 ○ もろみ酢商品
 ・ 使用されているクエン酸は添加物として添加されたものであるにもかかわらず,「天然発酵クエン酸飲料」等の表示

[4] 「特選」,「本造り」,「本醸造」等の表示

 ○ 黒酢商品・もろみ酢商品
 ・ 原材料,製造方法等について,自己の他の商品又は他の事業者の製品と比べて,特に優れたものではないにもかかわらず,「特選」,「最上級」など品質等が特に優れているとする表示
 ・ つぼ等を使用して糖化,アルコール発酵(黒酢の場合は,酢酸発酵・醸造まで)の工程を行っていない場合の「つぼ(かめ)造り」等の表示(つぼ等の写真等の表示を含む。)

(3) その他(商品名等の表示)

 本件調査において収集した表示サンプルの中には,商品名等について黒酢であるのかもろみ酢であるのかが紛らわしく,一般消費者が両者を混同するおそれのある表示がみられた。また,消費者モニターアンケートの自由意見としても,「商品名からは食酢なのか分かりにくい商品がある」,「食酢でないもろみ酢が調味料売場にあると,食酢と間違える」などといった意見がみられた。
 以下のような表示は,一般消費者に商品の内容を誤認されるおそれがある。

 ○ 黒酢商品
 ・ 調理用食酢製品と同様の容器包装である飲用タイプの商品について,飲用であることが明りょうでない表示
 ○ もろみ酢商品
 ・ 「○○黒酢」,「もろみ黒酢」等商品名に「黒酢」を含んだ表示

 なお,黒酢について,容器包装が調理用と類似した飲用商品の場合,一括表示欄に清涼飲料水等の表示があったとしても,一般消費者にとって飲用タイプの商品であることが判別しにくく,調理用と誤認するおそれがあるので,一般消費者に対する適正な情報提供の観点からは,商品名と同一視野に飲用タイプである旨を明りょうに表示することが望ましい。また,もろみ酢について黒酢との表示を行うことは,一般消費者に食酢である黒酢であると誤認されるおそれがあるので,黒酢ではなく,もろみ酢であることが一般消費者に認識されるように明りょうに表示することが望ましい。

4 まとめ

 今回調査を行った黒酢商品439点及びもろみ酢商品158点では,地理的表示や,一般消費者の健康志向,本物志向等に訴求する様々な表示が行われていた。こうした表示の中には,表示の根拠や表示が意味しているものについて,一般消費者に分かりにくいものや品質等について一般消費者に誤認されるおそれのあるものもみられる。
 したがって,一般消費者の適正な商品選択を確保する観点から,黒酢商品及びもろみ酢商品を製造・販売する事業者は,黒酢商品及びもろみ酢商品について,合理的な根拠に基づき適切な表示を行う必要があり,さらに,当該表示の意味や根拠が一般消費者に容易に認識されるよう明りょうに表示することが望ましい。

5 今後の対応

(1) 事業者の自主的な表示適正化の取組への要望及び支援

 黒酢については,食酢の表示に関する公正競争規約や食酢品質表示基準で表示のルールが定められており,引き続き,これらに基づき,表示の適正化が図られていくことが重要である。公正取引委員会としては,今後とも,全国食酢公正取引協議会等による食酢の表示の適正化への取組を支援していくこととしたい。
 もろみ酢については,黒酢に比べ各種の強調表示が多くみられ,その一部には適正表示の観点から問題がある表示もみられた。また,黒酢に比較して消費者への認知度も高くないことも明らかとなり,もろみ酢を食酢であると誤解している消費者が相当に存在する中で,もろみ酢が黒酢であるかのような表示がみられるなど,適正表示の実現のために取り組むべき課題は多い。
 もろみ酢の表示の適正化に関しては,沖縄県産のもろみ酢が市場の中心であることから,沖縄県の事業者がもろみ酢の表示の適正化に取り組むことが業界全体の表示適正化に大きな効果があるものと期待される。
 現在,沖縄県酒造組合連合会のもろみ酢協議会等において,表示の適正化に向けた取組が行われていることから,当該適正化への取組をより実効性をもって進めていくため,今回示した景品表示法上の考え方を踏まえ,もろみ酢業界において,公正競争規約の設定を含め表示適正化への取組を強化することが重要である。当委員会としては,今後,もろみ酢業界における自主的な取組について,必要な情報提供を行うなど積極的に支援していくこととしたい。

(2) 不当表示への厳正な対処

 公正取引委員会としては,黒酢商品及びもろみ酢商品について,景品表示法に違反する事案に接した場合には,本実態調査で示された考え方に基づき,厳正に対処することとする。

【附属資料】

問い合わせ先

公正取引委員会事務総局 経済取引局取引部 消費者取引課
電話03-3581-3376(直通)
内閣府沖縄総合事務局 総務部 公正取引室
電話098-863-2243(直通)
ホームページ http://www.jftc.go.jp

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