平成21年1月23日
公正取引委員会
第1 調査目的・調査方法(1ページ)
- アニメ作品の企画,制作は,転々と再委託が行われる多層構造にあり,小規模な事業者が多く,仮に取引上の問題があっても顕在化しにくいと考えられることから,独占禁止法(優越的地位の濫用等)及び下請法の観点から取引実態,取引慣行等について実態調査を実施。
- 制作会社533社に対しアンケート調査票を発送(有効回答114通)。
- 制作会社,テレビ局,広告代理店,DVD販売会社,関連団体等の,44社4団体に対するヒアリングを実施。
第2 調査報告書のポイント
1 アニメ産業の概要
- アンケート回答制作会社の6割超が資本金1000万円以下の小規模事業者(10ページ)。
- 元請制作会社は,作品の制作を下請制作会社に再委託しており,アンケート回答制作会社の3分の2が,アニメ作品の制作を他の制作会社から再受託(11ページ)。
2 取引上の問題点と課題
- 4割超の制作会社が,発注者から十分に協議することなく低い制作費を押し付けられた経験がある旨回答(22ページ)。
- 取引条件について十分な協議を行ったかどうかについての発注者と受託制作会社の認識の差は大きい(23ページ)。
⇒ 発注者にあっては,取引条件改善のために,発注に際して取引条件について十分な協議が行われるように一層努めることが必要(49ページ)。
- 制作会社からの再受託において,発注書面等を必ず受領しているとの回答は2割未満(16ページ)。
- 制作会社の8割超が発注書面等が必要である又はあったほうが良い旨回答(17ページ)。
- 発注書面等の交付を必ず受けている制作会社に比べ,そうでない制作会社は発注取消し,発注内容の変更,やり直し,代金減額により不利益を受けたことがあると回答する割合が高くなる傾向(25・28・30・33ページ)。
⇒ 制作会社の大半が発注書面の交付を望んでおり,また,受託制作会社に不当に不利益を与える行為の未然防止のためには発注書面を確実に交付・受領することが重要(50ページ)。
- 製作委員会に出資しない限り,著作権が制作会社に帰属しないことがほとんど。テレビ局が制作会社に発注する従来の方式でも2分の1がテレビ局の単独所有(36ページ)。
- このような著作権の帰属実態や二次利用収益の配分方法に対する元請制作会社の不満が目立った(37・41ページ)。
⇒ 著作権法上の著作権の帰属が具体的な事例において必ずしも明確ではない現状において,発注者は,受託制作会社に対し,(1)権利をどちらに帰属させ,(2)権利移転を伴う場合にはその対価をどのようにするのかについて,十分な話合いを行うことが必要不可欠。
なお,著作権を含む知的財産制度は,知的財産の創出や利用の競争を促進する効果をもたらすものであることが期待されるものであり,著作権の発生や帰属を協議するに当たっては,アニメ制作者のアニメ作品に対する創作意欲を刺激し,質の高い新たなアニメ作品を生み出すインセンティブがもたらされるとともに,二次利用が活発に行われるようになるかどうかという視点が重要(53ページ)。
3 公正取引委員会は,今回の調査結果を踏まえ,関係業界に対して,独占禁止法・下請法の問題がないか点検することや,発注時における取引条件の十分な協議や書面交付を徹底することを求めるとともに,引き続きその取引実態を注視。また,独占禁止法又は下請法に違反する疑いのある具体的な事実に接した場合には調査を行い,法令に違反する事実が認められた場合には厳正に対処(57ページ)。
関連ファイル
(印刷用)(平成21年1月23日)アニメーション産業に関する実態調査報告書(概要)(PDF:82KB)
問い合わせ先
公正取引委員会事務総局経済取引局取引部取引調査室
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