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(平成18年5月24日)企業におけるコンプライアンス体制について-独占禁止法を中心とした整備状況と課題-(概要)

(平成18年5月24日)企業におけるコンプライアンス体制について-独占禁止法を中心とした整備状況と課題-(概要)

平成18年5月24日
公正取引委員会

1 趣旨・目的

 最近,課徴金減免制度の導入等を内容とする独占禁止法(以下「独禁法」という。)の改正(平成18年1月施行)をはじめ,公益通報者保護制度の創設(同年4月施行),内部統制を法的に位置付けた会社法(同年5月施行)及び証券取引法の動向等企業コンプライアンスの向上を求める動きが強まっている。また,企業の不祥事が多発し,独禁法関係でも,入札談合事件の摘発が相次いでいるほか,コンプライアンス体制の整備が進んでいる大手企業においても違反事例がみられ,更には繰り返し違反行為が行われる事例も相当数みられるところである。
 こうした状況を受けて,企業コンプライアンスを取り巻く環境及びその実態について次のとおり取りまとめた。本報告書は,企業コンプライアンスについて,現在の状況とコンプライアンス向上のために採られるべき方策について整理を行い,企業のコンプライアンス整備について支援を行おうとするものである。

2 概要

(1) 企業コンプライアンスを取り巻く最近の環境の変化

 企業コンプライアンスを取り巻く最近の環境の変化を把握するため,最近の独禁法違反事件及び繰り返し違反行為が行われた事例等について調査を行った。
 ○ 独禁法関連では,大企業において繰り返し違反行為を行い法的措置を受けている事例が相当数みられるところ,違反行為の繰り返しを防止するために,企業コンプライアンスを向上させるとともに,排除措置の有効性を向上させることが重要。

 東証一部上場企業では,平成7年度から平成16年度の10年間で123社が課徴金納付命令を受け,そのうち17社(13.8%)が繰り返し違反行為を行っていた。また,日本道路公団入札談合事件において勧告の対象となった東証一部上場企業24社のうち,9社(37.5%)が過去に違反行為を行っていた。

 ○ 一方,最近の独禁法違反行為に対する排除措置において,独禁法の研修の実施,行動指針の策定等コンプライアンスの取組を命じる事例が増加している。

 (独禁法の研修及び監査を命じた審決の例)

 営業担当者に対する独占禁止法に関する研修,法務担当者による定期的な監査等を行うために必要な措置を講じ,当該措置の内容を自社の役員及び従業員に徹底させなければならない。(平成15年度)

 (行動指針の策定を命じた審決の例)

 独占禁止法の遵守に関しての行動指針を作成し,当該行動指針等に基づく仕入担当者に対する独占禁止法に関する研修,法務担当者による定期的な監査を行うために必要な措置を講じ,当該措置の内容を自社の役員及び従業員に周知徹底させなければならない。(平成16年度)

(2) 企業コンプライアンス体制の現状

 企業におけるコンプライアンスの取組の実態等を把握するため,平成18年1月に,東証一部上場企業約1700社に対してアンケート調査を行ったところ,そのポイントは以下のとおり(アンケート調査結果の詳細は別紙参照。)。

 コンプライアンス・マニュアルの策定等体制整備については,多くの企業で進んでいるが,その実効性の確保は今後の課題。

 コンプライアンスの徹底のために最も効果的なことは何か尋ねたところ,経営トップの意識を挙げる企業が最も多い。

  •  コンプライアンスの徹底のために最も効果的なことについて,企業は,経営トップの意識(55%),マニュアルの整備(15%),監視組織の設置(13%)が重要と考えている
  •  経営トップのコンプライアンスへの関与の方法について,7割の企業で経営トップ自らコンプライアンスの重要性を呼びかけているが,法令違反発見時の対応を経営トップ自ら行う企業は,約3割にとどまる

 独禁法関係の研修・監査について尋ねたところ,独禁法関係の研修・監査は十分行われていない。また,独禁法改正を受けて社内監査を実施した企業は極めて低率にとどまる。

  •  44%の企業が独禁法に関する研修を行っておらず56%が社内監査を行っていない
  •  独禁法改正を受けて社内監査を実施した企業は7%にとどまる
  •  23%の企業が課徴金減免制度の利用を考慮

(3) 企業における取組事例を踏まえた基本的考え方

 企業の取組事例を調査し,企業実務家及び有識者の意見を聴取したところ,この中で,今後各企業がコンプライアンスの向上を図る上で,有効と思われる基本的な考え方が示されたので,下記のとおり取りまとめた。

[1] 経営トップの関与

 企業コンプライアンスの実効性確保のためには,経営トップの関与が重要である。このためには,経営トップ自らにより企業コンプライアンスの重要性を,明確に,繰り返し,社内外に発信することが望ましい。

[2] 有効な監査体制の構築

 企業にとって法令に違反する行為が生じていないかどうか,各部門の実態を把握するため,監査(モニタリング)が有効に機能する体制を構築する必要がある。

[3] 企業倫理の向上

 監査だけでは限界があり,社員の倫理あるいは法令遵守意識の向上により,自発的に法令が守られるようにする必要がある。

[4] 効果的な内部統制システム

 企業コンプライアンスの実効性を確保するためには,効果的な内部統制システムを確立することが重要である。

[5] 違反行為発見後の対応

 法令に違反する行為が発見された場合の対応については,事前に方針を決定しておくとともに,経営トップに速やかに伝達され,判断される必要がある。

(4) 欧米における独占禁止法と企業コンプライアンス

 日本企業がコンプライアンス体制の整備を進める上で参考になるものとして,(1)欧米における制裁金・刑罰の水準,(2)欧米のリーニエンシー制度,(3)米国の企業改革法(サーベインズ=オクスリー法)の概要,(4)米国量刑ガイドラインについて調査し,紹介を行っている。

 以上,企業におけるコンプライアンス体制の実態調査等を踏まえ,公正取引委員会として今後とも改正独禁法の厳正な執行を行うとともに,企業コンプライアンスの実態の把握に努め,企業コンプライアンス向上のための取組に対する支援に努めてまいりたい。

【附属資料】

問い合わせ先

公正取引委員会事務総局経済取引局総務課
電話 03-3581-5476(直通)
ホームページ http://www.jftc.go.jp

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