平成22年3月31日
公正取引委員会
1 我が国は,京都議定書に基づき,平成2年を基準年として,平成20年から平成24年までの間に温室効果ガスを6%削減しなければならないこととされている。また,我が国は,平成21年9月,我が国の中期目標として,すべての主要国の参加による意欲的な目標の合意を前提に,平成32年までに平成2年比で温室効果ガスの25%削減を目指すことを表明している。さらに,国際的にも,平成21年12月,国連の気候変動枠組条約第15回締約国会議(COP15)が開催され,京都議定書の次期枠組は合意されなかったものの,次期枠組に関する議論が継続されることになった。
こうした状況の下,地球温暖化対策の施策の1つとして,諸外国で既に導入されている国内排出量取引制度について,我が国においても制度の本格的な導入に向けた議論の進展が予想される。同制度は事業者間の競争に影響を与えると考えられることから,公正取引委員会は,導入が想定される同制度の内容及びそれに関する民間商取引について,競争政策上の観点から論点等の検討を行った。
この過程においては,平成21年9月以降,政府規制等と競争政策に関する研究会(座長代理 井手秀樹 慶応義塾大学商学部教授)を開催して,検討結果を報告し,競争政策上の論点等について,会員の意見を聴取してきたところである。今般,同研究会の議論を踏まえ,検討結果を取りまとめたので,中間報告書「地球温暖化対策における経済的手法を用いた施策に係る競争政策上の課題について~国内排出量取引制度における論点~」を公表することとした(別添1報告書本体及び別添2報告書参考資料)。
2 報告書では,地球温暖化対策に関する事実関係とともに,導入が想定される排出量規制に関する競争政策上の論点ごとに,競争への影響等を取りまとめている。また,事業者等による独占禁止法違反行為の未然防止と事業者等の適切な活動の展開に資するため,排出量規制に伴う事業者等の行為のうち独占禁止法上問題となり得る行為について明らかにした。報告書において取り上げた具体的な項目は,以下のとおりである。
(1)排出量規制に係る競争政策上の論点
ア 排出枠の割当方式が競争に与える影響
イ 費用緩和措置が競争に与える影響
ウ 排出枠及び外部クレジットの取引が競争に与える影響
エ 中小規模の事業者への規制等が競争に与える影響
(2)排出量規制に伴う事業者等の行為のうち独占禁止法上問題となり得る行為
ア 排出量削減の実施に伴う共同行為
イ 排出量削減に伴う費用負担の増加に対応するための共同行為
ウ 排出量の削減に関する共同研究開発
エ 排出量の算定に関する基準等の策定
オ 外部クレジット制度の実施に関する行為
カ 融資事業等に関する行為
3 公正取引委員会は,今後とも,国内排出量取引制度に係る制度設計の動向を把握し,必要に応じて,競争政策の観点から調査等を行っていくこととする。
また,排出量規制に伴う事業者等の行為について,公正かつ自由な競争が着実に行われていくよう状況を注視していくとともに,独占禁止法違反が明らかになった場合には,厳正かつ迅速に対応していくこととする。
関連ファイル
(印刷用)(平成22年3月31日)地球温暖化対策における経済的手法を用いた施策に係る競争政策上の課題について~国内排出量取引制度における論点~(中間報告)(PDF:1,473KB)
問い合わせ先
公正取引委員会事務総局経済取引局調整課
電話 03-3581-5483(直通)
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