平成27年6月3日
公正取引委員会事務総局
近畿中国四国事務所
第1 独占禁止法違反事件の処理状況
1 公正取引委員会は,迅速かつ実効性のある事件審査を行うとの基本方針の下,国民生活に影響の大きい価格カルテル・入札談合・受注調整,中小事業者等に不当に不利益をもたらす優越的地位の濫用や不当廉売など,社会的ニーズに的確に対応した多様な事件に厳正かつ積極的に対処することとしている。
そして,公正取引委員会は,一般から提供された情報(申告),自ら探知した事実等を検討し,必要な審査を行い,審査の結果,違反行為が認められたときは,当該行為をした事業者等に対し,違反行為を排除するために必要な措置等を命じている。違反行為のうち,価格カルテル・入札談合・受注調整,優越的地位の濫用等については,違反行為をした事業者に対して課徴金の納付を命じている。
2 最近の独占禁止法違反事件の処理状況(不当廉売事案で迅速処理したもの及び優越的地位の濫用事案で注意したものを除く。)
最近の5年間における近畿地区の独占禁止法違反事件の処理状況は,次のとおりである。
(注)近畿地区とは,福井県,滋賀県,京都府,大阪府,兵庫県,奈良県及び和歌山県の2府5県である。以下同じ。
処理内容/年度 | 22年度 | 23年度 | 24年度 | 25年度 | 26年度 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
審査件数 | 前年度からの繰越し | 2件 | 1件 | 1件 | 2件 | 1件 | |
年度内新規着手 | 17件 | 8件 | 81件 | 14件 | 8件 | ||
合計 | 19件 | 9件 | 82件 | 16件 | 9件 | ||
処理件数 | 法的措置(注1) | 1件 | 1件 | 0件 | 2件 | 1件 | |
その他 | 警告(注2) | 0件 | 1件 | 2件 | 0件 | 0件 | |
注意(注3) | 13件 | 6件 | 68件 | 13件 | 6件 | ||
打切り(注4) | 4件 | 0件 | 10件 | 0件 | 1件 | ||
小計 | 17件 | 7件 | 80件 | 13件 | 7件 | ||
合計 | 18件 | 8件 | 80件 | 15件 | 8件 | ||
次年度への繰越し | 1件 | 1件 | 2件 | 1件 | 1件 |
(注1)「法的措置」とは,排除措置命令及び課徴金納付命令であり,1つの事件について,排除措置命令と課徴金納付命令がともになされている場合には,法的措置件数を1件としている。
(注2)「警告」とは,排除措置命令等の法的措置を採るに足る証拠が得られないが,違反の疑いがある場合に行う措置である。
(注3)「注意」とは,違反行為の存在を疑うに足る証拠が得られないが,将来違反につながるおそれがある場合に行う措置である。
(注4)「打切り」とは,違反行為が認められない等により,審査を打ち切る場合をいう。
(注5)件数は,当事務所が審査を行ったものを計上している。
3 独占禁止法違反事件の概要
(1) 価格カルテル
平成26年度においては,鋼球(鋼材を原材料とする玉〔遊戯玉を除く。〕をいう。以下同じ。)の製造業者による価格カルテル事件について1件の法的措置を採った。
ア 違反行為の概要
株式会社ツバキ・ナカシマ(以下「ツバキ・ナカシマ」という。)及び株式会社天辻鋼球製作所の2社は,遅くとも平成22年10月7日以降,鋼球の販売価格の低落を防止し自社の利益の確保を図るため,共同して販売価格を引き上げ又は維持する旨の合意の下に
(ア) 鋼材の仕入価格の変動状況について情報交換を行い,鋼球の販売価格の改定方針を決定した上,需要者等に提示する現行の鋼球の販売価格からの改定率等を決定する
(イ) 主要な需要者等からのコストダウン要請の状況について情報交換を行い,当該需要者等に提示する現行の鋼球の販売価格からの改定率等を決定する
ことにより,公共の利益に反して,我が国における鋼球の販売分野における競争を実質的に制限していた。
イ 排除措置命令及び課徴金納付命令
平成26年9月9日,ツバキ・ナカシマに対し,今後,他の事業者と共同して,鋼球の販売価格を決定してはならないことのほか,他の事業者と,鋼球の原材料である鋼材の仕入価格の変動状況に関する情報交換を行ってはならないことなどを内容とする排除措置命令を行うとともに,ツバキ・ナカシマに対し,13億2471万円の課徴金納付命令を行った。
(2) 優越的地位の濫用
公正取引委員会は,優越的地位の濫用に係る情報に接した場合には,効率的かつ効果的な調査を行い,独占禁止法違反につながるおそれのある行為が認められた場合には,未然防止の観点から注意するほか,独占禁止法違反が認められた場合は厳正に対処することとしている。
平成26年度においては,近畿地区の事業者に対し,本局において,独占禁止法違反につながるおそれがあるとして6件の注意を行ったところ,その主な事例は以下のとおりである。
ア ホームセンター業を営むAは,購買担当者から取引先納入業者に対し,Aが販売するうなぎ,恵方巻き等の季節商品の購入を要請していた。
イ 食品スーパーマーケット業を営むBは,改装オープンに際し,取引先納入業者に対し,当該納入業者が納入した商品であるか否かを問わず,商品陳列作業を行わせるため,納入業者が従業員を派遣するために通常必要となる費用を負担することなく,従業員等の派遣を要請していた。
ウ 食料品の卸売業を営むCは,配送業務の委託代金の決定に当たり,原油高等を考慮して物流事業者との間で十分な協議を行うことなく,委託代金を定めていた。
(3) 不当廉売
不当廉売は,総販売原価を著しく下回る価格で継続して販売するほか,不当に低い価格で販売することにより,他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれのある行為であり,独占禁止法第19条で禁止されるものである。申告のあった小売業に係る不当廉売事案については,迅速に処理するとの方針の下で対処しているほか,大規模事業者による不当廉売等周辺の中小事業者に対する影響が大きいと考えられる事案については厳正に対処することとしている。
なお,迅速に処理するとの上記方針の下,平成26年度においては,酒類,石油製品等の小売業について,不当廉売につながるおそれがあるとして230件の事案について注意を行った。
(4) その他の不公正な取引方法
自転車用部品の製造販売業者が,取引先卸売業者をして小売業者に対し,自社が設定した希望小売価格から具体的な割引率を示すことにより自転車用部品の販売価格の自由な決定を拘束した疑いのある行為について,不公正な取引方法(再販売価格維持)につながるおそれがあるとして注意を行った。
第2 企業結合関係届出及び協同組合届出の状況
1 企業結合関係届出
独占禁止法では第4章において,事業支配力が過度に集中することとなる会社の設立等の禁止(第9条)及び銀行業又は保険業を営む会社の議決権取得・保有の制限(第11条)について規定しているほか,一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合及び不公正な取引方法による場合の会社等の株式取得・所有,役員兼任,合併,分割,共同株式移転及び事業譲受け等の禁止並びに一定の条件を満たす企業結合についての届出義務(第10条及び第13条から第16条まで)を規定している。
公正取引委員会では,これら株式取得・所有,合併等について独占禁止法上の問題の有無について審査を行っている。
最近5年間における近畿地区の企業結合関係届出の状況は,次のとおりである。
22年度 | 23年度 | 24年度 | 25年度 | 26年度 | |
---|---|---|---|---|---|
株式取得届出受理 | 14件 | 22件 | 19件 | 25件 | 13件 |
合併届出受理 | 1件 | 2件 | 0件 | 1件 | 1件 |
分割届出受理 | 1件 | 0件 | 3件 | 1件 | 1件 |
共同株式移転届出受理 | 0件 | 0件 | 0件 | 0件 | 0件 |
事業譲受け等届出受理 | 4件 | 2件 | 4件 | 2件 | 3件 |
合計 | 20件 | 26件 | 26件 | 29件 | 18件 |
2 協同組合届出
中小企業等協同組合法は,同法に基づき設立された事業協同組合及び信用協同組合に対し,同法第7条第1項第1号で規定する小規模事業者以外の事業者が加入したとき又は組合員が同小規模事業者でなくなったときには,その旨を公正取引委員会に届け出ることを義務付けている(同法第7条第3項)。
最近5年間における近畿地区の協同組合届出件数は,次のとおりである。
22年度 | 23年度 | 24年度 | 25年度 | 26年度 |
---|---|---|---|---|
31件 | 27件 | 22件 | 21件 | 38件 |
第3 広報・広聴活動
公正取引委員会では,独占禁止法及び下請法の普及・啓発並びに競争政策の運営に資するため,次のような広報・広聴活動を行っている。
1 独占禁止政策協力委員制度
競争政策への理解の促進と地域の経済社会の実情に即した政策運営に資するため,平成11年度から,独占禁止政策協力委員制度を設置しており,公正取引委員会が行う広報活動等に御協力いただくとともに,独占禁止法等の運用や競争政策の運営等について意見聴取を行っている。
平成26年度においては,上半期に(1)公正取引委員会の今後の活動,公正取引委員会に期待することについて,(2)消費税転嫁対策特別措置法施行に係る公正取引委員会の取組について,(3)競争環境の整備に係る調査・提言について,(4)広報・広聴活動についてなど,下半期に(1)公正取引委員会の今後の活動について,(2)消費税転嫁対策に係る公正取引委員会の取組について,(3)下請法・優越的地位の濫用規制の普及・啓発についてなどの意見聴取を行った。
2 有識者との懇談会
各地の有識者と公正取引委員会の委員長,委員等との懇談及び講演会を通して,競争政策についてより一層の理解を求めるとともに,幅広い意見,要望を把握し,今後の競争政策の有効かつ適切な推進に資するため,昭和47年度以降,毎年,全国各地において有識者との懇談会を開催している。
近畿地区では,これまで7都市で38回開催しており,平成26年度は大津市において,滋賀県商工会議所連合会,一般社団法人滋賀経済産業協会,滋賀経済同友会等の経済団体,消費者団体,マスコミ,学識経験者等の有識者との懇談会を実施し,同時に「成長の基盤たる競争政策と公正取引委員会」をテーマに講演会を開催した。
また,平成4年度から近畿中国四国事務所長等と各地の有識者等との意見交換会(懇談会)を開催しており,平成26年度は福井県大野市,滋賀県長浜市,京都市(2か所),京都府宇治市,同府亀岡市,大阪市(3か所),大阪府豊中市,同府高石市,神戸市,兵庫県姫路市,同県洲本市,同県加古川市及び奈良県大和高田市の計16か所において開催した。
3 独占禁止法説明会等
公正取引委員会では,独占禁止法等の違反の未然防止を図るため,説明会・講習会等を自ら主催しているほか,各種業界団体等から要請を受けて講習会等へ講師を派遣している。
近畿地区では,平成26年度は独占禁止法に関する説明会等を13回実施した。また,入札談合等関与行為防止法に関する研修会等を31回実施した。
4 学生に対する独占禁止法教室の実施
消費者であり,また,将来,経済活動に参加する中学生,高校生及び大学生を対象に,独占禁止法等についての理解を深めてもらうことを目的として,当委員会の職員による「独占禁止法教室」を開催している。
近畿地区では,平成26年度は中学生向け独占禁止法教室を7回,大学生向け独占禁止法教室を4回開催した。
5 一日公正取引委員会
本局及び地方事務所等の所在地以外の都市において,独占禁止法及び下請法の普及啓発活動や相談対応の一層の充実を図るため,独占禁止法講演会,下請法講習会,入札談合等関与行為防止法研修会,消費者セミナー,独占禁止法教室,報道機関との懇談会,相談コーナーなどを1か所の会場で開催する「一日公正取引委員会」を開催している。
近畿地区では,平成26年度は大津市において,11月12日に一日公正取引委員会を開催した(上記2の有識者との懇談会と同時開催)。
6 消費者セミナー
一般消費者に独占禁止法の内容や公正取引委員会の活動について,より一層の理解を深めてもらうことを目的として,地域の一般消費者を対象としたセミナーを開催しているほか,公正取引委員会の職員を消費者団体等の勉強会等に講師として派遣している。
近畿地区では,平成26年度は大津市,京都市,大阪市(2か所)及び大阪府羽曳野市の計5か所において,セミナーを開催するなどした。
7 相談業務
公正取引委員会では,法運用に対する理解を深め,違反行為の未然防止を図るため,相談を受け付けている。
最近5年間の相談受付件数は次のとおりである。
22年度 | 23年度 | 24年度 | 25年度 | 26年度 | |
---|---|---|---|---|---|
独占禁止法 | 1,036件 | 1,039件 | 813件 | 845件 | 813件 |
下請法 | 1,284件 | 1,480件 | 1,495件 | 1,092件 | 1,177件 |
合計 | 2,320件 | 2,519件 | 2,308件 | 1,937件 | 1,990件 |
関連ファイル
(印刷用)(平成27年6月3日)平成26年度における近畿地区の独占禁止法の運用状況等について(PDF:373KB)
問い合わせ先
独占禁止法違反事件の処理状況に関する問い合わせ先 公正取引委員会事務総局近畿中国四国事務所第一審査課
電話 06-6941-2193(直通)
企業結合関係届出等の状況に関する問い合わせ先 公正取引委員会事務総局近畿中国四国事務所経済取引指導官
電話 06-6941-2174(直通)
広報・広聴活動等に関する問い合わせ先 公正取引委員会事務総局近畿中国四国事務所総務課
電話 06-6941-2173(直通)
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