平成28年6月9日
公正取引委員会事務総局
北海道事務所
はじめに
公正取引委員会は,消費税の円滑かつ適正な転嫁を確保する観点から,消費税の転嫁拒否等の行為(以下「転嫁拒否行為」という。)の未然防止のための取組と,転嫁拒否行為に対する迅速かつ厳正な対処のための取組を進めてきたところである。
北海道事務所においても,転嫁拒否行為等に対して迅速かつ厳正に対処することを目的として,「消費税転嫁対策調査室」を設置し,北海道事務所管内において消費税転嫁対策に係る取組を実施してきたところ,平成27年度における管内の取組状況は以下のとおりである。
第1 転嫁拒否行為に対する迅速かつ厳正な対処のための取組
1 措置件数
管内においては,平成27年度において,転嫁拒否行為に対して,19件の指導を行っている。主な指導の概要は別紙のとおりである。
年 度 | 平成27年度 | 平成25・26年度(注) | 合計 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
全国 | 北海道地区 | 全国 | 北海道地区 | 全国 | 北海道地区 | ||
措 置 | 指 導 | 349 《24》 |
19 《1》 |
1,040 《80》 |
34 《2》 |
1,389 《104》 |
53 《3》 |
勧 告 | 13 《3》 |
0 《0》 |
19 《4》 |
0 《0》 |
32 《7》 |
0 《0》 |
|
違反事実なし | 472 | 18 | 460 | 17 | 932 | 35 |
(注) 平成25,26年度の数値は, 平成25年10月から平成27年3月までの合計(以下表2及び表3において同じ。)。また,全国の件数には,北海道地区の件数を含む。(以下同じ。)《 》内の件数は,大規模小売事業者に対する勧告又は指導の件数で内数である。
2 措置件数の業種別内訳
平成27年度の措置件数(勧告又は指導を行った事件の件数をいう。以下同じ。)について措置を採った特定事業者の業種別で分類すると,管内においては,建設業及び不動産業が3件(15.8%)と最も多く,以下,運輸業及び小売業が2件(10.5%)と続いている。
業種(注) | 全国 | 北海道地区 | |
---|---|---|---|
建設業 | 平成27年度 | 57(15.7) | 3(15.8) |
平成25・26年度 | 73( 6.9) | 2( 5.9) | |
合計 | 130( 9.1) | 5( 9.4) | |
製造業 | 平成27年度 | 67(18.5) | 1( 5.3) |
平成25・26年度 | 337(31.8) | 1( 2.9) | |
合計 | 404(28.4) | 2( 3.8) | |
情報通信業 | 平成27年度 | 44(12.2) | 0( 0.0) |
平成25・26年度 | 73( 6.9) | 1( 2.9) | |
合計 | 117( 8.2) | 1( 1.9) | |
運輸業 | 平成27年度 | 15( 4.1) | 2(10.5) |
平成25・26年度 | 89( 8.4) | 2( 5.9) | |
合計 | 104( 7.3) | 4( 7.5) | |
卸売業 | 平成27年度 | 20( 5.5) | 0( 0.0) |
平成25・26年度 | 89( 8.4) | 2( 5.9) | |
合計 | 109( 7.7) | 2( 3.8) | |
小売業 | 平成27年度 | 38(10.5) | 2(10.5) |
平成25・26年度 | 138(13.0) | 8(23.5) | |
合計 | 176(12.4) | 10(18.9) | |
不動産業 | 平成27年度 | 24( 6.6) | 3(15.8) |
平成25・26年度 | 26( 2.5) | 1( 2.9) | |
合計 | 50( 3.5) | 4( 7.5) | |
技術サービス業 | 平成27年度 | 20( 5.5) | 1( 5.3) |
平成25・26年度 | 64( 6.0) | 5(14.7) | |
合計 | 84( 5.9) | 6(11.3) | |
事業サービス業 | 平成27年度 | 7( 1.9) | 0( 0.0) |
平成25・26年度 | 19( 1.8) | 0( 0.0) | |
合計 | 26( 1.8) | 0( 0.0) | |
その他 | 平成27年度 | 70(19.3) | 7(36.8) |
平成25・26年度 | 151(14.3) | 12(35.3) | |
合計 | 221(15.6) | 19(35.8) | |
全業種 | 平成27年度 | 362( 100) | 19( 100) |
平成25・26年度 | 1,059( 100) | 34( 100) | |
合計 | 1,421( 100) | 53( 100) |
(注1) 複数の業種にわたる事業者が勧告又は指導の対象となった場合は, 当該事業者の主な業種を1件として計上している。「その他」は医療福祉,学校教育・教育支援業,旅行業,自動車整備業・機械等修理業等である。
(注2) ( )内の数値は,小数点以下第2位を四捨五入しているため,合計は必ずしも100とならない。
3 措置件数の行為類型別内訳
平成27年度の措置件数について行為類型別で分類すると,管内においては,買いたたき(消費税転嫁対策特別措置法第3条第1号後段)が18件(85.7%)と最も多い。
行為類型 | 全国 | 北海道地区 | |
減額 | 平成27年度 | 18( 4.9) | 2( 9.5) |
平成25・26年度 | 36( 3.3) | 0( 0.0) | |
合計 | 54( 3.7) | 2( 3.6) | |
買いたたき | 平成27年度 | 344(92.7) | 18(85.7) |
平成25・26年度 | 767(70.5) | 23(65.7) | |
合計 | 1,111(76.1) | 41(73.2) | |
役務利用,利益提供の要請 | 平成27年度 | 3( 0.8) | 1( 4.8) |
平成25・26年度 | 46( 4.2) | 2( 5.7) | |
合計 | 49( 3.4) | 3( 5.4) | |
本体価格での交渉の拒否 | 平成27年度 | 6( 1.6) | 0( 0.0) |
平成25・26年度 | 239(22.0) | 10(28.6) | |
合計 | 245(16.8) | 10(17.9) | |
合計 | 平成27年度 | 371( 100) | 21( 100) |
平成25・26年度 | 1,088( 100) | 35( 100) | |
合計 | 1,459( 100) | 56( 100) |
(注1) 事業者の中には,複数の行為を行っている場合があり,表1及び表2に記載の件数とは一致しない。
(注2) ( )内の数値は,小数点以下第2位を四捨五入しているため,合計は必ずしも100とならない。
4 特定供給事業者が被った不利益の原状回復の状況
管内では,平成27年度において,転嫁拒否行為によって特定供給事業者が被った不利益について,特定事業者14名から,特定供給事業者263名に対し,総額934万円の原状回復が行われた。
年 度 | 平成27年度 | 平成26年度 | 合計 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
全国 | 北海道地区 | 全国 | 北海道地区 | 全国 | 北海道地区 | |
原状回復を行った特定事業者数 | 333名 | 14名 | 228名 | 6名 | 561名 | 20名 |
原状回復を受けた特定供給事業者数 | 25,059名 | 263名 | 33,094名 | 760名 | 58,153名 | 1,023名 |
原状回復額(注) | 6億7444万円 | 934万円 | 4億1153万円 | 272万円 | 10億8598万円 | 1207万円 |
(注) 各期間の原状回復額は1万円未満を切り捨てているため,合計額とは一致しない。
5 転嫁拒否行為等に関する相談件数
北海道事務所においても,転嫁拒否行為等に関する事業者からの相談や情報提供を一元的に受け付けるための相談窓口を設置しており,当該相談窓口において,平成27年度は6件の相談に対応した。
平成27年度 | 平成26年度 | 平成25年度 | 合計 | |
全国 | 548 | 1,420 | 3,179 | 5,147 |
北海道地区 | 6 | 25 | 28 | 59 |
(注) 転嫁カルテル及び表示カルテルの届出に関する相談を含む。
6 事業者及び事業者団体に対するヒアリング調査
様々な業界における転嫁拒否行為に関する情報や取引実態を把握するため,管内においては,平成27年度は216名の事業者及び61の事業者団体に対してヒアリング調査を実施した。
事業者 | 事業者団体 | |||
全国 | 北海道地区 | 全国 | 北海道地区 | |
平成27年度 | 4,344 | 216 | 682 | 61 |
平成26年度 | 8,744 | 246 | 1,263 | 44 |
平成25年度 | 1,326 | 98 | 401 | 1 |
合計 | 14,414 | 560 | 2,346 | 106 |
7 移動相談会
事業者にとって,より一層相談しやすい環境を整備するため,管内においては,平成27年度は移動相談会を2回実施した。
平成27年度 | 平成26年度 | 平成25年度 | 合計 | |
全国 | 52 | 47 | 75 | 174 |
北海道地区 | 2 | 2 | 2 | 6 |
第2 転嫁拒否行為の未然防止のための取組
1 公正取引委員会主催説明会
消費税転嫁対策特別措置法の内容を広く周知するため,事業者及び事業者団体を対象として,公正取引委員会主催の説明会を管内において実施した(平成27年度は1回)。
平成27年度 | 平成26年度 | 平成25年度 | 合計 | |
全国 | 51 | 30 | 40 | 121 |
北海道地区 | 1 | 1 | 3 | 5 |
2 講師派遣
管内においては,商工会議所,商工会及び事業者団体が開催する説明会等に,平成27年度は公正取引委員会事務総局の職員を講師として1回派遣した。
平成27年度 | 平成26年度 | 平成25年度 | 合計 | |
全国 | 27 | 59 | 384 | 470 |
北海道地区 | 1 | 2 | 12 | 15 |
第3 転嫁カルテル及び表示カルテルの届出
消費税の転嫁の方法の決定に係る共同行為(転嫁カルテル)及び消費税についての表示の方法の決定に係る共同行為(表示カルテル)の届出について,平成28年3月末現在で,管内において,転嫁カルテル2件,表示カルテル2件の合計4件となっている。
平成27年度 | 平成26年度 | 平成25年度 | 合計 | |
全国 | 5 | 50 | 1,235 | 1,290 |
北海道地区 | 0 | 1 | 11 | 12 |
別紙
平成27年度における主な指導事例
1 減額(第3条第1号前段)
[1] 建設業を行うA社は,建築資材等の納入業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後に供給を受けた建築資材等の代金について,消費税込みの請求金額から,10,000円未満又は1,000円未満の端数を切り捨てて支払っていた。
[2] 技術サービス業を行うB社は,電気設備の設計業務等を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後に供給を受けたものについて,あらかじめ定めた委託代金から消費税率の引上げ分相当額を減じて支払っていた。
2 買いたたき(第3条第1号後段)
[1] 建設業を行うC社は,住宅の建築工事を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後に引渡しを受けた工事代金(消費税率8パーセントが適用されるもの)に消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
[2] 飼料製造業を行うD社は,一般廃棄物の収集運搬業務を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
[3] 運輸業を行うE社は,自社施設の清掃等を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
[4] 道路貨物運送業を行うF社は,産業廃棄物の処理業務を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
[5] 小売業を行うG社は,LPガスの検針業務等を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
[6] 大規模小売事業者であるH社は,店舗の電気保安管理業務を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
[7] 大規模小売事業者であるI社は,店舗の駐車場の賃貸人(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税相当額を上乗せすることなく,消費税込みの賃料を据え置いていた。
[8] 不動産賃貸業を行うJ社は,自社の支店等の賃貸人(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの賃料を据え置いていた。
[9] 不動産賃貸業を行うK社は,レストラン運営業務を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
[10] 物品賃貸業を行うL社は,農業機械の操作業務等を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
[11] スポーツ施設提供業を行うM社は,自社の会員向けに行うスポーツ指導に関する業務を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
[12] 遊技場運営業を行うN社は,自社が運営する遊技場における遊技機の取付業務等を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
[13] O漁業協同組合は,水産物の品質検査業務等を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
[14] 貸金業を行うP社は,顧客の不動産担保等の信用調査を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
[15] 宿泊業を行うQ社は,自社の施設の整備及び維持管理のために使用する重機等の賃貸人(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの賃料を据え置いていた。
[16] 宿泊業を行うR社は,結婚式の司会等を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
3 利益提供の要請(第3条第2号)
スポーツ関連商品販売業を行うS社は,自社で販売するスポーツ関連商品の納入業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日からの消費税率引上げに伴い,同年3月31日までに納品された商品について,自社の費用負担を明確にすることなく,消費税率の引上げに対応した値札を新たに作成するよう要請した。
関連ファイル
(印刷用)((平成28年6月9日)平成27年度における北海道地区の消費税転嫁対策の取組について(PDF:342KB)
問い合わせ先
問い合わせ先 公正取引委員会事務総局 北海道事務所 消費税転嫁対策調査室
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