平成29年2月2日
公正取引委員会
公正取引委員会は,消防救急デジタル無線機器(注1)の製造販売業者に対し,本日,独占禁止法の規定に基づき排除措置命令及び課徴金納付命令を行った。
本件は,消防救急デジタル無線機器の製造販売業者が,独占禁止法第3条(不当な取引制限の禁止)の規定に違反する行為を行っていたものである。
(注1)「消防救急デジタル無線機器」とは,SCPC方式のデジタル通信方式(1の搬送波当たりのチャネル数が1の方式のデジタル通信方式をいう。)により,260MHz帯の周波数帯を使用する「消防救急無線」(注2)のためのシステムを構成する基地局無線装置,無線回線制御装置,車載型無線装置,卓上型無線装置,携帯型無線装置,可搬型無線装置,遠隔制御装置及び管理監視制御装置をいう。
(注2)「消防救急無線」とは,電波法関係審査基準(平成13年総務省訓令第67号)の別紙2第2の2(4)で定められた審査を受けた無線局を利用した無線通信であって,消防職員が消防業務及び救急業務の活動を行うためのものをいう。
1 違反事業者数,排除措置命令及び課徴金納付命令の対象事業者数並びに課徴金額(違反事業者名,各事業者の課徴金額等については別表のとおり)
違反事業者数 | 排除措置命令 |
課徴金納付命令 |
課徴金額 |
---|---|---|---|
5社 | 5社 | 4社 | 63億4490万円 |
2 違反行為の概要(詳細は別添排除措置命令書参照)
(1) 別表記載の5社(以下「5社」という。)は,遅くとも平成21年12月21日頃までに(株式会社日立国際電気にあっては遅くとも平成22年5月24日頃までに,日本無線株式会社にあっては遅くとも同年9月15日頃までに参加),特定消防救急デジタル無線機器(注3)について,受注価格の低落防止等を図るため
ア 納入予定メーカー(注4)を決定する
イ 納入予定メーカー以外の者は,納入予定メーカーが納入できるように協力する
旨合意した。
(2) 5社は,当該合意の下に,5社の営業部課長級の者らが参加する会合を平成23年12月頃までおおむね毎月開催し,特に平成22年12月頃から平成23年12月頃には,同会合において,全国の消防本部等ごとに納入予定メーカーを記載した「ちず」と称する一覧表を作成し,特定消防救急デジタル無線機器の発注が本格化する平成24年4月頃以降は,おおむね3か月ごとに会合を開催し,前記「ちず」と称する一覧表と類似の一覧表を作成して,納入予定メーカーが納入できているか等を確認するなどして
ア 納入を希望する者(以下「納入希望者」という。)が1社のときは,その者を納入予定メーカーとするほか,納入希望者が複数社のときは,既設の状況,営業活動の状況,発注者の意向等を勘案して,納入希望者間の話合いにより納入予定メーカーを決定する
イ 入札等において落札すべき価格は,納入予定メーカー自らが落札者となる場合には自ら定め,代理店等に落札させる場合には当該代理店等と相談して決定するなどし,納入予定メーカー以外の者は,納入予定メーカーが定めた価格よりも高い価格で入札する又は入札に参加しない
などにより,納入予定メーカーを決定し,納入予定メーカーが納入できるようにしていた。
(3) 5社は,特定消防救急デジタル無線機器について,納入予定メーカーを決定し,納入予定メーカー以外の者は,納入予定メーカーが納入できるように協力する旨を合意することにより,公共の利益に反して,特定消防救急デジタル無線機器の取引分野における競争を実質的に制限していた。
(注3)「特定消防救急デジタル無線機器」とは,消防救急デジタル無線機器(多重無線装置,空中線,電源装置,冷暖房装置,印刷機器等の機器のほか,据付工事,鉄塔の建設工事等の工事を含めて発注される場合には当該機器等を含む。)をいう。
(注4)「納入予定メーカー」とは,発注物件を自ら落札し,又は代理店等に落札させるなどして,もって自ら製造した又は自社の子会社等に委託して製造させた消防救急デジタル無線機器(株式会社富士通ゼネラルが富士通株式会社から委託を受けて製造した消防救急デジタル無線機器を含む。)を納入すべき者をいう。
3 排除措置命令の概要
(1) 5社は,それぞれ,次の事項を,取締役会において決議しなければならない。
ア 前記2の合意が消滅していることを確認すること。
イ 今後,相互の間において,又は他の事業者と共同して,特定消防救急デジタル無線機器について,納入予定メーカーを決定せず,各社がそれぞれ自主的に受注活動を行うこと。
(2) 5社は,それぞれ,前記(1)に基づいて採った措置を,自社を除く4社に通知するとともに,特定消防救急デジタル無線機器を発注する市町村等に通知し,かつ,自社の従業員に周知徹底しなければならない。
(3) 5社は,今後,それぞれ,相互の間において,又は他の事業者と共同して,市町村等が発注する特定消防救急デジタル無線機器について,納入予定メーカーを決定してはならない。
(4) 5社は,それぞれ,特定消防救急デジタル無線機器の納入に関する独占禁止法の遵守について,特定消防救急デジタル無線機器の営業担当者に対する定期的な研修及び法務担当者による定期的な監査を行うために必要な措置を講じなければならない。
4 課徴金納付命令の概要
(1) 課徴金納付命令の対象事業者は,平成29年9月4日までに,それぞれ別表の「課徴金額」欄記載の額(総額63億4490万円)を支払わなければならない。
(2) 日本電気株式会社は,独占禁止法第7条の2第7項第1号に該当する者であることから,同項の規定に基づき,5割加算した算定率を適用している。
5 特定消防救急デジタル無線機器の発注者に対する連絡
(1) 本件審査の過程において,特定消防救急デジタル無線機器の入札等の一部において,次のような疑いのある事実が認められた。
ア 特定の製造販売業者の仕様を発注仕様書等に記載している。
イ 特定の製造販売業者が,指名業者,入札参加資格条件,発注方法の選定等に関与しているほか,指名業者又は入札参加申請業者を把握している。
(2) 発注仕様書等に特定の製造販売業者の仕様が記載されている場合,契約の相手方となるべき者について発注者が意向をほのめかしていると受け取られるおそれがあり,また,特定の製造販売業者が,指名業者,入札参加資格条件,発注方法の選定等に関与したり,指名業者又は入札参加申請業者を把握できることは,入札談合等を行うことを容易にするおそれがあるため,特定消防救急デジタル無線機器の発注者に対し,本日,前記のとおり排除措置命令を行った旨を連絡するとともに,今後,特定消防救急デジタル無線機器を発注するに際しては,前記(1)のようなことのないように留意するよう連絡した。
関連ファイル
(印刷用)(平成29年2月2日)消防救急デジタル無線機器の製造販売業者に対する排除措置命令及び課徴金納付命令について(PDF:690KB)
(平成29年2月2日)別添(排除措置命令書)(PDF:1,402KB)
問い合わせ先
問い合わせ先 公正取引委員会事務総局審査局第四審査
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