平成29年6月15日
公正取引委員会事務総局
近畿中国四国事務所中国支所
はじめに
公正取引委員会は,消費税の円滑かつ適正な転嫁を確保する観点から,消費税の転嫁拒否等の行為(以下「転嫁拒否行為」という。)の未然防止のための取組と,転嫁拒否行為に対する迅速かつ厳正な対処のための取組を進めてきたところである。近畿中国四国事務所中国支所(以下「中国支所」という。)においても,転嫁拒否行為等に対して迅速かつ厳正に対処することを目的として,「消費税転嫁対策調査室」を設置し,中国支所管内(鳥取県,島根県,岡山県,広島県及び山口県)において消費税転嫁対策に係る取組を実施してきたところ,平成28年度における管内の取組状況は以下のとおりである。
第1 転嫁拒否行為に対する迅速かつ厳正な対処のための取組
1 措置件数
管内においては,平成28年度において,転嫁拒否行為に対して,26件の指導を行っている。主な指導の概要は別紙のとおりである。
年 度 | 平成28年度 | 平成27年度 | 合計 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
全国 | 中国地区 | 全国 | 中国地区 | 全国 | 中国地区 | ||
措 置 | 指 導 | 362 《20》 |
26 《1》 |
349 《24》 |
43 《2》 |
1,751 《124》 |
128 《13》 |
勧 告 | 6 《0》 |
0 《0》 |
13 《3》 |
0 《0》 |
38 《7》 |
2 《0》 |
|
違反事実なし | 218 | 11 | 472 | 34 | 1,150 | 71 |
(注) 累計の数値は,平成25年10月から平成29年3月までの累計。また,全国の件数には,中国地区の件数を含む(以下同じ)。《 》内の件数は,大規模小売事業者に対する勧告又は指導の件数で内数である。
2 措置件数の業種別内訳
平成28年度の措置件数(勧告又は指導を行った事件の件数をいう。以下同じ。)について措置を採った特定事業者の業種別で分類すると,管内においては,製造業が6件(23.1%)と最も多く,以下,小売業が5件(19.2%)と続いている。
業種(注) | 全国 | 中国地区 | |
---|---|---|---|
建設業 | 平成28年度 | 56(15.2) | 2( 7.7) |
平成27年度 | 57(15.7) | 6(14.0) | |
累計 | 186(10.4) | 14(10.8) | |
製造業 | 平成28年度 | 66(17.9) | 6(23.1) |
平成27年度 | 67(18.5) | 9(20.9) | |
累計 | 470(26.3) | 29(22.3) | |
情報通信業 | 平成28年度 | 38(10.3) | 2(7.7) |
平成27年度 | 44(12.2) | 6(14.0) | |
累計 | 155( 8.7) | 11( 8.5) | |
運輸業 | 平成28年度 | 15( 4.1) | 3(11.5) |
平成27年度 | 15( 4.1) | 2( 4.7) | |
累計 | 119( 6.7) | 9( 6.9) | |
卸売業 | 平成28年度 | 20( 5.4) | 2( 7.7) |
平成27年度 | 20( 5.5) | 2( 4.7) | |
累計 | 129( 7.2) | 9( 6.9) | |
小売業 | 平成28年度 | 39(10.6) | 5(19.2) |
平成27年度 | 38(10.5) | 2( 4.7) | |
累計 | 215(12.0) | 23(17.7) | |
不動産業 | 平成28年度 | 19( 5.2) | 1( 3.8) |
平成27年度 | 24( 6.6) | 2( 4.7) | |
累計 | 69( 3.9) | 3( 2.3) | |
技術サービス業 | 平成28年度 | 15( 4.1) | 1( 3.8) |
平成27年度 | 20( 5.5) | 6(14.0) | |
累計 | 99( 5.5) | 11( 8.5) | |
学校教育・ 教育支援業 |
平成28年度 | 20( 5.4) | 0( 0.0) |
平成27年度 | 9( 2.5) | 0( 0.0) | |
累計 | 40( 2.2) | 0( 0.0) | |
その他 | 平成28年度 | 80(21.7) | 4(15.4) |
平成27年度 | 68(18.8) | 8(18.6) | |
累計 | 307(17.2) | 21(16.2) | |
全業種 | 平成27年度 | 368( 100) | 26( 100) |
平成27年度 | 362( 100) | 43( 100) | |
累計 | 1,789( 100) | 130( 100) |
(注1) 複数の業種にわたる事業者が勧告又は指導の対象となった場合は,当該事業者の主たる業種により分類している。「その他」は医療福祉,事業サービス業,自動車整備業・機械等修理業,旅行業等である。
(注2) ( )内の数値は,小数点以下第2位を四捨五入しているため,合計は必ずしも100とならない。
(注3) 累計の数値は,平成25年10月から平成29年3月までの累計。
3 措置件数の行為類型別内訳
平成28年度の措置件数について行為類型別で分類すると,管内においては,買いたたき(消費税転嫁対策特別措置法第3条第1号後段)が25件(96.2%)と最も多い。
行為類型 | 全国 | 中国地区 | |
減額 | 平成28年度 | 19( 4.9) | 1( 3.8) |
平成27年度 | 18( 4.9) | 4( 8.9) | |
累計 | 73( 4.0) | 14( 9.7) | |
買いたたき | 平成28年度 | 362(94.3) | 25(96.2) |
平成27年度 | 344(92.7) | 41(91.1) | |
累計 | 1,473(79.9) | 117(80.7) | |
役務利用・利益提供の要請 | 平成28年度 | 0( 0.0) | 0( 0.0) |
平成27年度 | 3( 0.8) | 0( 0.0) | |
累計 | 49( 2.7) | 3( 2.1) | |
本体価格での交渉の拒否 | 平成28年度 | 3( 0.8) | 0( 0.0) |
平成27年度 | 6( 1.6) | 0( 0.0) | |
累計 | 248(13.5) | 11( 7.6) | |
合計 | 平成28年度 | 384( 100) | 26( 100) |
平成27年度 | 371( 100) | 45( 100) | |
累計 | 1,843( 100) | 145( 100) |
(注1) 事業者の中には,複数の行為を行っている場合があり,「合計」の件数は,表1及び表2に記載の件数とは必ずしも一致しない。
(注2) ( )の数値は,小数点以下第2位を四捨五入しているため,合計は必ずしも100とならない。
(注3) 累計の数値は,平成25年10月から平成29年3月までの累計。
4 特定供給事業者が被った不利益の原状回復の状況
管内では,平成28年度において,転嫁拒否行為によって特定供給事業者が被った不利益について,特定事業者28名から,特定供給事業者239名に対し,総額1341万円の原状回復が行われた。
年 度 | 平成28年度 | 平成27年度 | 累計 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
全国 | 中国地区 | 全国 | 中国地区 | 全国 | 中国地区 | |
原状回復を行った特定事業者数 | 293名 | 28名 | 333名 | 39名 | 854名 | 87名 |
原状回復を受けた特定供給事業者数 | 36,137名 | 239名 | 25,059名 | 1,142名 | 94,290名 | 6,200名 |
原状回復額 | 9億2957万円 | 1341万円 | 6億7444万円 | 2893万円 | 20億1555万円 | 6592万円 |
(注1) 各期間の原状回復額は1万円未満を切り捨てている。
(注2) 累計の数値は,平成26年4月から平成29年3月までの累計。
5 転嫁拒否行為等に関する相談件数
中国支所においても,転嫁拒否行為等に関する事業者からの相談や情報提供を一元的に受け付けるための相談窓口を設置しており,当該相談窓口において,平成28年度は12件の相談に対応した。
平成28年度 | 平成27年度 | 平成26年度 | 平成25年度 | 累計 | |
全国 | 444 | 548 | 1,420 | 3,179 | 5,591 |
中国地区 | 12 | 13 | 45 | 38 | 108 |
(注) 転嫁カルテル及び表示カルテルの届出に関する相談を含む。
6 事業者及び事業者団体に対するヒアリング調査
様々な業界における転嫁拒否行為に関する情報や取引実態を把握するため,管内においては,平成28年度は210名の事業者及び71の事業者団体に対してヒアリング調査を実施した。
事業者 | 事業者団体 | |||
全国 | 中国地区 | 全国 | 中国地区 | |
平成28年度 | 2,385 | 210 | 581 | 28 |
平成27年度 | 4,344 | 261 | 682 | 71 |
平成26年度 | 8,744 | 482 | 1,263 | 114 |
平成25年度 | 1,326 | 45 | 401 | 7 |
累計 | 16,799 | 998 | 2,927 | 220 |
7 移動相談会
事業者にとって,より一層相談しやすい環境を整備するため,管内においては,平成28年度は移動相談会を6回実施した。
平成28年度 | 平成27年度 | 平成26年度 | 平成25年度 | 累計 | |
全国 | 36 | 52 | 47 | 75 | 210 |
中国地区 | 6 | 6 | 6 | 5 | 23 |
第2 転嫁拒否行為の未然防止のための取組
1 公正取引委員会主催説明会
消費税転嫁対策特別措置法の内容を広く周知するため,事業者及び事業者団体を対象として,公正取引委員会主催の説明会を管内において実施した(平成28年度は6回)。
平成28年度 | 平成27年度 | 平成26年度 | 平成25年度 | 累計 | |
全国 | 36 | 51 | 30 | 40 | 157 |
中国地区 | 6 | 6 | 2 | 3 | 17 |
2 講師派遣
管内においては,商工会議所及び事業者団体が開催する説明会等に,平成28年度は公正取引委員会事務総局の職員を講師として2回派遣した。
平成28年度 | 平成27年度 | 平成26年度 | 平成25年度 | 累計 | |
全国 | 73 | 27 | 59 | 384 | 543 |
中国地区 | 2 | 2 | 1 | 15 | 20 |
第3 転嫁カルテル及び表示カルテルの届出
消費税の転嫁の方法の決定に係る共同行為(転嫁カルテル)及び消費税についての表示の方法の決定に係る共同行為(表示カルテル)の届出について,平成29年3月末までに,管内において,転嫁カルテル2件を受理している。
また,届出書の記載方法等に関して,平成29年3月末までに,管内において8件の相談に対応した。
別紙
主な指導事例
(平成28年4月~平成29年3月)
1 減額(第3条第1号前段)
リサイクル機械製造業を行うA社は,交通機関の乗車券等の手配業務を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後の手配分について,あらかじめ定めた委託代金から消費税率の引上げ分相当額の一部を減じて支払っていた。
2 買いたたき(第3条第1号後段)
[1] 建設業を行うB社は,大工工事を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
[2] 飲料製造業を行うC社は,シール貼付に係る業務を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
[3] 衣類製造業を行うD社は,ユニフォームの製造及び加工を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
[4] ダイカスト製品製造業を行うE社は,顧問弁護士(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
[5] 自動車部品製造業を行うF社は,産業医に係る業務を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
[6] テレビ番組制作業を行うG社は,カメラ撮影,編集又はナレーション業務を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後の委託代金について,消費税率の引上げ分を上乗せすることなく据え置く,又は,消費税率引上げ前の対価に消費税率引上げ分を上乗せした額よりも低い対価を定めていた。
[7] 出版業を行うH社は,教材に係る原稿執筆,校閲,校正等の業務を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
[8] タクシーに係る共同事業を行うI組合は,社会保険の事務手続に係る業務を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
[9] 食料・飲料卸売業を行うJ社は,自社が使用する事務所,倉庫又は駐車場の賃貸人(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの賃料を据え置いていた。
[10] 自動車部品卸売業を行うK社は,仕入部品等の運送を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
[11] 飲食料品小売業を行うL社は,醤油の納入業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの仕入単価を据え置いていた。
[12] 自動車部品小売業を行うM社は,電気管理に係る業務を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
[13] 燃料小売業を行うN社は,産業廃棄物処理及びドラム缶の積込みに係る業務を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
[14] 老人福祉・介護事業を行うO法人は,送迎運行に係る業務を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
関連ファイル
(印刷用)(平成29年6月15日)平成28年度における中国地区の消費税転嫁対策の取組について(PDF:156KB)
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