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(平成30年2月23日)大分県農業協同組合に対する排除措置命令について

(平成30年2月23日)大分県農業協同組合に対する排除措置命令について

平成30年2月23日
公正取引委員会

 公正取引委員会は,大分県農業協同組合(以下「大分県農協」という。)に対し,本日,独占禁止法の規定に基づき排除措置命令を行った。
 本件は,大分県農協が,独占禁止法第19条(不公正な取引方法第4項〔取引条件等の差別取扱い〕)の規定に違反する行為を行っているものである。

第1 排除措置命令について

1 違反行為者

法 人 番 号 5320005002426
名   称 大分県農業協同組合
所 在 地 大分市大字羽屋600番地の10
代 表 者 代表理事 力德 昌史
組 合 員 大分県の区域内において農業を営む者等
事業の概要 こねぎ(注1)(味一ねぎ(注2))等の農産物の販売等

(注1) 「こねぎ」とは,土耕栽培により生産されるこねぎをいう。こねぎは,大分県内においては,中津市,豊後高田市,杵築市,宇佐市及び国東市の5市(以下「5市」という。)で主に栽培されている。
(注2) 「味一ねぎ」とは,大分県農協が「味一ねぎ」の銘柄で出荷するこねぎをいう。味一ねぎは,大分県内で生産されるこねぎの中で最も生産量が多く,国,大分県等によって生産者育成支援がなされている。
 なお,以下では,味一ねぎに係る販売事業並びに調整場及びパッケージセンター(以下「集出荷施設」という。)に係る利用事業を「味一ねぎに係る販売事業等」という。

2 大分県農協における味一ねぎに係る販売事業等

(1) 集出荷施設に係る利用事業等

 こねぎを出荷する際には外見を整えるなどのために調整作業(注3)を行う必要があり,また,こねぎの出荷に際しては,こねぎを結束して一束ごとに包装する必要がある。
 大分県農協は,国,大分県等から補助金の交付を受けて集出荷施設を設置し,組合員に利用させる事業を行っている。
 こねぎを生産する大分県農協の組合員の多くは調整作業に関して大分県農協が運営する調整場を利用しているところ,5市及びその近隣の地域において,当該調整場と同程度の処理能力を有する施設は他に存在しない。
 また,大分県農協は,パッケージセンターにおいて出荷前作業(注4)を行っているところ,5市及びその近隣の地域において,大分県農協が運営するパッケージセンターと同程度の処理能力を有する施設は他に存在しない。
(注3) 「調整作業」とは,収穫後のこねぎについて,洗浄及び皮むきを行った上で,一定の品質及び長さごとに仕分ける作業をいう。
(注4) 「出荷前作業」とは,調整作業後のこねぎについて,一定の重量ごとに結束して袋詰めにした上で一定の数量ごとに梱包する作業をいう。

(2) 味一ねぎに係る販売事業

 大分県農協は,組合員が直接又は調整場を通じてパッケージセンターに出荷したこねぎのうち,大分味一ねぎ生産部会(以下「味一ねぎ部会」という。(注5))と協議の上で定めた出荷規格を満たすものについて,組合員から販売を受託し,当該こねぎを「味一ねぎ」の銘柄で出荷している。
 大分県農協は,農産物等の販売方法,取扱品目,精算方法等を定めた販売業務規程に基づき,全国農業協同組合連合会に販売を再委託するなどして,共同販売の方法により,味一ねぎに係る販売事業を行っている。
(注5) 味一ねぎ部会は,5市においてこねぎの生産を行っている大分県農協の組合員によって構成されている,大分県農協の事業推進組織である。

3 味一ねぎ部会による5名の除名

(1) 大分県中津市及び宇佐市においてこねぎの生産等の事業を行っている会社5名(以下「5名」という。)は,大分県農協の組合員であり,平成26年4月14日より前は味一ねぎ部会の会員(以下「部会員」という。)であった。
 5名は,味一ねぎの販売価格の下落に伴って大分県農協から支払われる対価が減少し,会社経営上,大分県農協に対するこねぎの販売委託だけで採算をとることが困難な状況になり,大分県農協以外のこねぎの出荷先を新たに確保する必要が生じたことから,平成24年7月頃以降(一部の者にあっては,同年4月頃以降),大分県農協に対する販売委託に加え,こねぎの商系業者等に対して個人出荷(注6)を行うようになった。
(注6) 「個人出荷」とは,こねぎを生産する大分県農協の組合員が大分県農協以外にこねぎを出荷することをいう。
(2) 味一ねぎ部会は,平成26年3月頃,5名に対し,味一ねぎ部会の承認を得ていない個人出荷を取りやめなければ除名の対象となり得ることを通知し,同年4月14日,当該承認を得ずに個人出荷を続けていることを理由に5名を除名した。

4 違反行為の概要(詳細は別添排除措置命令書参照)

(1) 大分県農協は,前記3(2)の味一ねぎ部会による除名の措置を受け,味一ねぎに係る販売事業等における5名の取扱いについて検討を行い,5名が出荷するこねぎを「味一ねぎ」の銘柄で販売せず,別の新たな銘柄で販売する方針を決定し,平成26年5月22日頃,5名に対し,口頭で当該方針を通知した。
(2) 5名は,前記(1)の方針について,大分県農協に対し,5名が出荷するこねぎを引き続き「味一ねぎ」の銘柄で販売するよう要請した。しかし,大分県農協は,同要請を拒否し,その後も5名に対して「味一ねぎ」とは別の新たな銘柄での販売を検討するよう繰り返し求め,また,平成27年3月10日付けの文書により,5名に対し,前記(1)と同内容の方針を改めて通知した。
 ただし,この段階では,大分県農協は,別の新たな銘柄が決まるまでの当面の措置として,5名が味一ねぎに係る販売事業等を利用することを認めていた。
 なお,5名のうち1名は,前記(1)の大分県農協からの通知以降,5名を代表して大分県農協と交渉を行っていたが,5名の要請が認められないため,平成26年11月頃以降,大分県農協に対するこねぎの販売委託を取りやめた。
(3) 5名のうち前記(2)の1名を除く4名(以下「4名」という。)は,大分県農協から前記(2)の対応等をされたことによって,味一ねぎに係る販売事業の利用を諦めざるを得なくなり,平成27年6月29日付けの文書により,4名が出荷するこねぎの販売に係る新たな銘柄の決定を大分県農協に一任した。
(4) 大分県農協は,平成27年8月28日頃,4名に対し,4名のこねぎについて,出荷場所をパッケージセンターから他の施設に変更すること等を通知した。これに伴い,4名は,大分県農協に出荷するこねぎについて,集出荷施設を利用することができなくなった。
(5) 大分県農協は,平成27年9月1日以降,4名から販売を受託するこねぎについて,出荷前作業を行わず,無銘柄のこねぎとして共同販売するようになった(注7)。
(注7) 無銘柄で共同販売されていたこねぎに係る対価は,味一ねぎに係る販売事業を利用する場合の対価と比べて低い金額であった。
(6) 4名は,前記(5)の共同販売では販売単価が低く,採算が合わなかったこと等から,平成27年9月以降,順次,大分県農協に対するこねぎの販売委託を取りやめた(注8)。
(注8) 5名の中には,平成27年9月以降(前記(2)の1名にあっては,平成26年11月以降),こねぎの出荷量を1割ないし4割程度減少させた者がいた。

5 排除措置命令の概要

(1) 大分県農協は,組合員からこねぎの販売を受託する取引(以下「こねぎの販売受託」という。)に関し,個人出荷を理由として味一ねぎ部会を除名された5名に対して行っている味一ねぎに係る販売事業等を利用させない行為を取りやめなければならない。
(2) 大分県農協は,前記(1)の行為を取りやめる旨及び今後,こねぎの販売受託に関し,個人出荷をしている組合員に対し,味一ねぎに係る販売事業等において他の組合員よりも不利な取扱いをしない旨を,経営管理委員会において決議しなければならない。
(3) 大分県農協は,前記(1)及び(2)に基づいて採った措置を,部会員である組合員及び5名に通知しなければならない。
(4) 大分県農協は,今後,こねぎの販売受託に関し,個人出荷をしている組合員に対し,味一ねぎに係る販売事業等において他の組合員よりも不利な取扱いをしてはならない。
(5) 大分県農協は,今後,自らに農産物を出荷する組合員との取引に関する独占禁止法の遵守についての行動指針の作成及び当該取引に係る事業に関わる役職員に対する周知徹底を行うために必要な措置を講じなければならない。

第2 農業分野における独占禁止法違反被疑行為に係る取組について

 公正取引委員会は,農業分野における公正かつ自由な競争の促進に役立てることを目的として「農業協同組合の活動に関する独占禁止法上の指針」(農協ガイドライン)(平成19年4月18日公表)を策定し,農業分野において独占禁止法上問題となる行為を明らかにすることにより,農業協同組合による違反行為を未然に防止するとともに,農業分野における独占禁止法違反被疑行為に係る情報に接した場合には,「農業分野タスクフォース」において効率的に調査を行い,法的措置,警告等を行うことにより,厳正かつ効果的に対処しているところである。
 また,農業分野における,農業者,商系業者等からの独占禁止法違反被疑行為に係る情報を広く受け付けるため,専用の情報提供窓口を設置している(詳細については,次のウェブページ参照)。
 http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h28/apr/160415_2.html

関連ファイル

問い合わせ先

農業分野タスクフォース
公正取引委員会事務総局審査局管理企画課企画室
電話 03-3581-3386(直通)
公正取引委員会事務総局九州事務所第一審査課
電話 092-431-6033(直通)
ホームページ http://www.jftc.go.jp/

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