平成30年1月24日
公正取引委員会
公正取引委員会は,毎年度,全国各地区において経済団体代表,消費者団体代表,学識経験者,教育委員会関係者等の有識者と当委員会の委員等との懇談会を開催することで,各地区の実情や幅広い意見・要望を把握し,独占禁止法等の運用にいかしています。
平成29年度においては,各地区における有識者との懇談会を平成29年10月及び11月に別紙1のとおり開催しました。これらの懇談会において有識者から示された主な意見の概要は以下のとおりです(その他の意見は別紙2のとおりです。)。
公正取引委員会としては,これらの意見を踏まえて,今後とも独占禁止法等の的確な運用に努めてまいります。
1 独占禁止法の運用・競争政策の唱導について
- ビックデータやAIの活用が企業の競争力に格差をつけていくものと思う。1社がそのノウハウを独占することのないように規制・監督をしてほしい。また,公正で自由なデータ市場の創造・活性化に向けて関係機関と連携して取り組んでほしい。(京都市)
- 企業が保有するビッグデータは,物,役務及び知的財産権とは異なる新しい分野になると考えられるので,その保有,管理について公正取引委員会がどのように対応していくのかを示してもらいたい。(高知市)
- 震災復興に係る談合は厳しく取り締まらなければならないが,復興を急ぐため,発注者にはスピーディな入札システムを検討するなど緊急時の対応策も必要となる。公正取引委員会は,迅速な復興を支援するため,事件審査で得られた情報を発注者に提供してはどうか。(福島市)
- 人口の減少等を背景に,様々な業界で,経営統合によって強い経営基盤を作ることを目的に業界再編が行われることが考えられるが,そのような経営統合によって中小企業が不利益を受けることのないよう,十分な審査を行ってもらいたい。(長岡市)
- 不当廉売として違反となる基準が消費者にとって分かりにくいと思う。また,不当廉売の規制は,行き過ぎると安い価格が出てこなくなり,消費者に逆に不利益となる。(静岡市)
2 下請法の運用
- 中小企業は親事業者から濫用行為を受けやすいが,取引の立場上,なかなか言い出せないでいる。今後,消費税増税等で下請事業者に様々な影響が予想されることから,通報者の保護,下請法の遵守を徹底してもらいたい。(長岡市)
- 申告を行った下請事業者が不利益を受けることがないよう,公正取引委員会が処分を行った後,そのような行為が行われていないか継続的にチェックすべきである。(福島市)
- 下請事業者の長時間労働につながるような納期の短縮化など働き方改革と逆行するような商慣行も多い。大企業の働き方改革のしわ寄せが下請事業者に来ているように思われる。下請代金に関するものだけでなく,多面的な調査をお願いしたい。(鹿児島市)
3 消費税転嫁対策特別措置法の運用
- 消費税を正しく転嫁できない取引関係がまだ存在する。公正取引委員会には,事業者がより相談しやすい体制を作っていただきたい。(広島市)
- 平成31年10月の消費税率10%への引上げの際には,消費税の転嫁が適正に行われるよう,事前の広報活動にしっかり取り組んでいただきたい。(高知市)
- 最近,大手運送事業者の値上げの報道を受け,ようやく消費税率引上げ分の転嫁を認めてもらえることとなった。業界全体として消費税増税分の転嫁が適正に行われない風潮が運送業界にはあるので,監視などの強化に努めてほしい。(高知市)
4 広報・広聴活動
- 公正取引委員会や独占禁止法に対する馴染みがないという人も多く,相談するための身近な窓口があると良いと思う。消費生活センターのように各拠点に相談所を設置したり,一般的な相談を受け付ける窓口としてフリーダイヤルのようなものを導入して,より相談しやすい体制を構築してはどうか。(長岡市)
- ビッグデータのようなデータの囲い込みや,芸能人やスポーツ選手に関係する有識者検討会のような一般国民にも身近に考えられる内容を報道発表していただければ,報道機関としても,公正取引委員会を自由な競争環境を守る身近な存在として社会に伝えることができる。(京都市)
- 独占禁止法教室を毎年開催したとしても,特定の大学の一部の学生しか受講しないので,どうしても一時的,限定的な効果となる。大学生などへの教育・広報として,より効果的な他の方法を考えてもよいのではないか。(福島市)
- 中学校の社会科教師も,市場経済や競争の意義を余り深く理解できていないことが多い。そこで,独占禁止法についての教師向け説明資料を用意するなど,教師側の理解を深めることも重要である。(旭川市)
5 独占禁止法改正
- 確約制度を運用することとなった場合であっても,法の運用の透明性を確保するため,それがどのような事件であって,なぜ確約で処理することになったのかを明らかにするよう情報公開を徹底してほしい。(長岡市)
- 課徴金制度に「裁量性を持たせる」というと,公正取引委員会がさじ加減を有しているようにも受け止められる可能性があるので,誤解を生じさせないよう説明を工夫すべきである。(広島市)
関連ファイル
(印刷用)(平成30年1月24日)有識者と公正取引委員会との懇談会で出された主な意見等について(PDF:134KB)
問い合わせ先
公正取引委員会事務総局官房総務課
電話 03-3581-3574(直通)
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