平成30年6月13日
公正取引委員会
第1 調査の趣旨
1 公正取引委員会は,これまで入札談合や発注機関の職員による入札談合等関与行為を防止するためには発注機関側の取組が極めて重要であるとの観点から,発注機関における入札談合等防止のための取組等について調査を実施し,現状の問題点や課題を明らかにするとともに,問題点を解決する施策等について,報告書に取りまとめ・公表(注)を行うなどしている。
(注)直近においては,平成23年9月に,国の機関,都道府県・政令指定都市等人口5万人以上の地方公共団体及び政府出資法人を対象に行ったアンケート調査結果等を踏まえた報告書「官製談合防止に向けた発注機関の取組に関する実態調査報告書~発注機関におけるコンプライアンス活動~」を公表している。
2 しかし,依然として,発注機関の職員が入札談合等に関与した事件が多くみられる状況にあり,また,そうした事件が発生している発注機関は国の機関,地方公共団体及び政府出資法人と様々である。特に,地方公共団体においては,そうした事件が人口5万人未満の中小規模の市町村においても発生している。
3 このような現状を踏まえ,発注機関におけるコンプライアンスの向上に資することを目的として,今般,発注機関における官製談合防止に向けた取組について調査を実施した。
第2 調査対象等
1 調査対象
入札談合等関与行為防止法(入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律)の適用対象となる国の機関,地方公共団体及び政府出資法人を対象とした。
なお,地方公共団体については,その全てを対象としている(従来調査においては一部抽出調査)。
2 調査方法
(1) アンケート調査
発注機関2,018機関に対してアンケート調査票を送付し(平成29年12月),1,768機関から回答を得た(回収率87.6%)。
(2) ヒアリング調査
アンケート調査の記述式回答において,他の発注機関にも参考となると思われる取組例を回答した発注機関130機関に対して,電話又は面談の方法によるヒアリング調査を行った。
第3 調査結果(別紙概要参照)
1 調査結果の概要は,別紙「官製談合防止に向けた発注機関の取組に関する実態調査報告書(概要)」の「第2 調査結果」のとおりである。特に,今回初めて調査対象とした小規模な発注機関では,全般的に未然防止の取組が進んでいない結果が明らかになった。
2 また,いずれの発注機関区分(注)でも発注関係事務を外部に委託している割合が高い中,発注機関によるこれら外部委託先に対する入札談合等を未然に防止するための取組は十分に行われていなかった。
(注)本調査では,「国の機関」,「都道府県又は政令指定都市」,「中核市又は人口20万人以上の地方公共団体」,「人口5万人以上20万人未満の地方公共団体」,「人口5万人未満の地方公共団体」及び「政府出資法人」に区分している。
第4 公正取引委員会の対応
1 本報告書では,発注機関にとって参考となると思われる入札談合等関与行為等の未然防止のための取組を多く紹介するとともに,多くの発注機関から研修等において使用可能な支援ツールの作成について要望があったこと,計量経済学的な分析からも研修の実施が未然防止に効果があるとの結果が得られたことから,「1分で分かる官談法」,「理解度チェックテスト」などの支援ツールを作成した(報告書参考資料4参照)。
2 公正取引委員会としては,入札談合等に関して厳正に対処するとともに,本調査結果を踏まえながら,支援ツール等の作成にとどまらず,今後も各種研修会や情報発信等を通じて発注機関のコンプライアンス活動を支援する取組を引き続き積極的に行っていく。
(参考)
研修用テキスト「入札談合の防止に向けて ~独占禁止法と入札談合等関与行為防止法~」