[発言事項]
事務総長会見記録(平成31年4月3日(水曜)13時30分~於官房第1会議室)
ベトナム組織政令案に関する首相府等幹部向けセミナー等について
本日,私の方からは,先週ベトナムにおいて開催されましたベトナム競争当局の組織設計に関するセミナー及び来週から開催されますケニア競争当局向け訪日研修について御紹介いたします。
発展途上国において競争法制を導入・強化しようとする動きが活発化するのに伴い,我が国の競争法制やその運用について学びたいとする強い要望・関心が示されています。公正取引委員会では,発展途上国における競争法の導入・強化及び法執行能力の向上を目的とした技術支援は重要な施策であると考えており,これらの要望に対して,様々な技術支援プログラムを積極的に提供してきています。本日御紹介しますセミナー等は,その技術支援プログラムの一環でございます。
まず,ベトナム競争当局の組織設計に関するセミナーです。去る3月29日,ベトナムのハノイにおいて,JICA(国際協力機構)の協力の下,ベトナム競争当局の組織設計に関するセミナーが開催され,当委員会から三村晶子委員が出席しました。ベトナムにおいては,昨年6月に競争法が改正され,今年7月に施行されます。この競争法の改正に伴い,新たな競争当局が設置されることになっており,現在,現行のベトナム競争当局が中心となって,世界標準に則った新しい競争当局の設置に向けた政令の整備等の準備が進められています。現行のベトナム競争当局は,ベトナム国内の関連省庁等と政令の内容について調整を行って承認を得る必要があるため,このセミナーにおいて,それら関連省庁等を一堂に集めて,競争当局の在り方について議論を行いました。本セミナーにおいて,三村委員からは,公正取引委員会の組織や権限,競争当局に求められる中立性,公正性,一貫性が持つ重要性等について講演いたしました。なお,本セミナーには,ベトナムの商工省等の関連省庁,国会事務局,共産党等から幹部クラスの職員が出席し,活発な議論が行われたと聞いております。
次に,ケニア競争当局向けの訪日研修です。来る4月10日から19日までの間,JICAの協力の下,ケニアの競争当局職員13名を日本に招へいして,独占禁止法,競争政策等に関する技術研修を実施することとしています。本研修は,ケニア競争当局の職員を対象に,我が国の独占禁止法制とその運用等に関する知識習得の機会を提供し,ケニアにおける競争法制の充実と,その執行の強化に資することを目的として開催されるものです。なお,本研修におきましては,買い手の購買力の濫用について,日本ではどのような対応をしているかなどの議論を行う予定にしています。
公正取引委員会としましては,今後も発展途上国に対する技術支援に積極的に取り組んでいきたいと考えており,こうした支援を通じて,それぞれの国における競争環境の整備が進むことを期待しております。
以上の件の担当課は官房国際課でございます。
公正取引委員会委員の再任について
なお,最後になりましたが,公正取引委員会の委員の同意人事につきまして,3月26日の衆議院及び3月29日の参議院の本会議において,山本和史委員を再任する人事案が可決・承認され,4月1日付けで同委員が再任されました。
山本委員は,平成26年4月に着任して以来,公正取引委員会委員として数々の業績を挙げられており,引き続き,公正取引委員会委員として,独占禁止法の迅速かつ厳正な運用等の競争政策運営における重要な課題に適切に対応していただけるものと考えております。
質疑応答
(問) 毎回聞いて申し訳ないですけど,プラットフォーマーの調査,4月になったんですけど,現状の進捗具合と,その辺の手応えとですね,あと,めどについて,中間報告のですね,お答えをお願いできればと思います。
(事務総長) これまで,この場におきましても,事業者向けの調査,それから,消費者向けの調査を行っておりますということは申し上げております。現在,その調査は進んでおりますので,それを踏まえて,4月中には中間的な公表を何らかの形でしたいと考えております。現時点で,何日かというものは確定してるわけではありませんので,またそのときにはお知らせすることになると思います。
(問) 今日,これから,夕方ですね,官邸の方で未来投資会議,公正取引委員会の杉本委員長も御出席されるとお聞きしてますけども,また地方銀行の統合の在り方の問題について議論するんですけども,事前ブリーフィングの段階での話で恐縮なんですけど,銀行の経営健全化のためにですね,マーケットシェアが仮に高くなったとしても特例的に統合は認めていくべきじゃないかという方向性を打ち出されるやに聞いてるんですけども,これ,公正取引委員会の今までの見解を考えると,ちょっと違うような気もするんですけど,こういう方向で政府ぐるみ,政府ぐるみって,政府を挙げて議論が進むことについての公正取引委員会としての御所感をお聞かせいただけないでしょうか。
(事務総長) 本日夕刻,未来投資会議が開催され,地方銀行や地方交通などについての議論がされるように承知しております。今,御質問にもございましたように,当委員会の杉本委員長も出席する予定としております。ただ,議論の内容につきましては,これから議論されることでございますので,今,この場で先取りしたようなことを申し上げるのは差し控えたいと思います。
いずれにしましても,公正取引委員会としましては,企業結合審査に当たっては,公正,自由な競争が維持されるかどうかというのが,その審査の主眼でございますので,そうした基本的な考え方というのは持っていなければいけないというふうに思っています。
(問) 何度かお伺いしたことで恐縮なんですけど,ちょっと節目なので改めて。今まで,事務総長としてもですね,必ずしもシェアだけじゃないんだということはおっしゃってきたような気もするんですけれども,長崎での例をもう一回ちょっと紐解いていただいてですね,シェアも大事なんだけれども,それだけじゃないということについての御見解を,もう一度ちょっと御説明いただけないでしょうか。
(事務総長) 今し方申し上げましたように,公正,自由な競争が維持できるかどうかというのが,企業結合審査の提要であると思っています。企業が統合するということは,競争者の数がそれだけ減少するということが事実としてあるわけです。ですから,統合した結果,統合した企業の事業能力というのはそれだけ高くなるわけですし,それに対して,競争を仕掛けられるような他の企業が存在するかどうかというのが,審査をするに当たっての中心的な論点になります。
その際に企業シェアが高くなるということは,それだけ,その利用者側,需要者側にとってみれば,取引の選択肢が減るということになりますので,市場シェアというのは,その利用者の方々にとって,十分な取引先の選択が確保できるかどうかというのを見る上で,1つの大きな要素であると思っています。ただ,経済というのは動いているものですから,一旦,企業が統合した後でも,その後の経済状況というのはどんどん変わっていく。それは,ある程度の期間を踏まえて,そうした取引先が変わっていくのかどうか,いけるのどうか,そうしたことを判断するということが重要なのであって,繰り返しになりますけど,シェアというのは,統合した企業の事業能力といいますか,競争に対する影響力を測る1つの大きな要素ではありますけれども,今,申しましたような,将来の統合後の市場の環境の変化というのを十分に勘案する必要があると考えています。
(問) 議論はこれからなので,先取りしないというお話でしたけれども,我々としては,そういう流れだというふうにお聞きしていることを踏まえて,もう一度お聞きしたいんですけれども,独占禁止法の28条でしたか,公正取引委員会はあらゆる組織から,ちょっと一言一句正しいか分かりませんが,独立性を認められている組織であるわけですけれども,そういう中でですね,その委員長が,官邸という組織の中の委員会に入ってですね,必ずしも独立性を,公正取引委員会の主張とはちょっと違う結論に導かれようといしている議論に参加をしていることについて,独立性についての懸念みたいなものはお感じにならないでしょうか。つまり公正取引委員会の判断が別の組織体によって,ちょっと別な形に導かれてしまうような,そういった御懸念というのはおありにならないでしょうか。
(事務総長) 公正取引委員会が行います競争政策の運営に関しては,様々御意見が寄せられることがあると思います。また,公正取引委員会としても政府のいろいろな機関,会議体などに参加して,それぞれの場の議論に参加しています。その一方で,公正取引委員会は,職権行使の独立性が法律で保障されているわけですので,事案を含めてですね,公正取引委員会の全体としての職権行使の独立性が侵されるということがあってはならないというふうには考えています。 ただ,そうした議論,会議体の場に出席して,いろいろな方々と議論をするということが,直ちにそうした職権行使の独立性に影響を与えるというものではないというふうには考えてます。
(問)先週,ラルズに対しての公正取引委員会の審決が確定されたかと思うんですけれども,そちらの方で優越的地位の濫用が問題になって,今,GAFAであるとか,優越的地位の濫用を広げるのであるか,アプライするのであるかというような議論が行われている中,特にラルズに関して注目する点などありましたら,ちょっと教えてください。
(事務総長) 優越的地位の濫用の規制というのは,特定の業種に限って適用されるわけではありません。ただ,御指摘のラルズに対する件というのは,ある意味,伝統的と言っては語弊があるかもしれませんけれども,従来からよくあったタイプの納入業者に対して不当に不利益を課す行為であります。同じような枠組みを,そのまま今御指摘のあったようなプラットフォーマーなどに適用できるのかどうかというのは,きちんと議論をする必要があると考えています。
ですので,今回のラルズに対する審決が,直ちに,プラットフォーマーに対する法適用にそのまま援用できるというようなものではないと思います。
以上