ホーム >報道発表・広報活動 >事務総長定例会見 >平成31年・令和元年 >4月から6月 >

令和元年5月29日付 事務総長定例会見記録

令和元年5月29日付 事務総長定例会見記録

[配布資料]

[発言事項]

事務総長会見記録(令和元年5月29日(水曜)13時30分~於官房第1会議室)

平成30年度における下請法の運用状況及び企業間取引の公正化への取組等について

 本日,私の方からは,下請法の運用状況等について御紹介いたします。公正取引委員会では,中小事業者の取引条件の改善を図る観点から,下請法等の一層の運用強化に向けた取組を進めており,その状況を本日,「平成30年度における下請法の運用状況及び企業間取引の公正化への取組等」として公表いたしましたので,その内容を若干御紹介いたします。
 お手元の資料の1頁を御覧ください。下請取引におきましては,下請事業者が親事業者から下請法違反に該当するような行為を受けても,その立場上,公正取引委員会等に報告し難いという事情を踏まえ,親事業者・下請事業者双方に定期的な書面調査を行って,下請法違反行為が生じていないかを確認しております。より一層の情報収集を図る観点から,平成30年度におきましても,前年度に大幅に増加させた調査規模を維持し,親事業者については6万通,下請事業者については30万通を発送しております。
 次に,下請法違反事件の処理状況についてお話しいたします。4頁のグラフを御覧ください。平成30年度におきましては,7件の勧告及び7,710件の指導を行いました。指導件数につきましては,平成29年度から約1,000件の大幅な増加となっておりますが,これは,平成29年度に書面調査の発送数を大幅に増やしたことで,より多くの情報収集が可能となったことが要因であると考えております。 なお,平成30年度の勧告事件につきましては,20頁の別紙1に概要をまとめております。
 このような取組の結果,下請事業者に対してどの程度の不利益の回復が行われたのかを示しているのが,13頁の表,そして14頁のグラフであります。平成30年度におきましては,下請事業者10,172名に対して6億7068万円相当の原状回復を行っております。
 続いて,自発的申出事案の状況についてお話しいたします。15頁の第8表に数字を載せております。平成30年度においては,73件の申出が行われております。平成30年度においては,親事業者の自発的な取組により下請事業者804名に対し,総額1億843万円の原状回復が行われており,親事業者の自発的な取組によって,早期に下請事業者の不利益が回復されたものと考えております。
 次に,働き方改革に関連する下請法違反実例について御説明します。公正取引委員会では,「中小企業・小規模事業者の活力向上のための関係省庁連絡会議」に参画しており,その議論も踏まえつつ,中小企業等の取引条件の改善等に向けて下請法の積極的な運用を進めています。
 その一環として,昨年5月31日に,働き方改革と関連する下請法等の違反のおそれのある想定例を取りまとめた事例集を公表していますが,今回,本資料の24頁,25頁の別紙2にありますとおり,平成30年度における働き方改革に関連する下請法違反の実例を6つ示しております。
 これらの6つの事例は,いずれも下請法が禁止する買いたたきに該当するおそれがある事例で,3つ目のC社以外の事例は短納期での発注により,下請事業者が休日勤務や残業等を余儀なくさせられたもの,C社の事例は下請事業者の人件費を勝手に設定した上で単価を算出するなどして条件を決め,下請事業者にとって困難な条件を一方的に定めていたものでございます。
 次に,下請法の運用に当たっては,違反行為の未然防止を図ることも重要ですので,資料16頁以降に記載しておりますとおり,企業間取引の公正化に向けた取組を実施しております。 下請法や優越的地位の濫用規制のより効果的な普及・啓発を図る観点から,参加者の習熟度や業種に応じた各種の講習会を行っております。また,中小事業者からの求めに応じ,公正取引委員会の職員が,その中小事業者のもとに出向く「中小事業者のための移動相談会」の開催など,きめ細やかな対応を行っております。
 また,次のページになりますけれども,企業間の取引の公正化を図る必要が大きい分野について,実態調査等を実施し,独占禁止法及び下請法の普及・啓発に活用しております。平成30年度は,「製造業者のノウハウ・知的財産権を対象とした優越的地位の濫用行為等に関する実態調査」,「荷主と物流事業者との取引に関する書面調査」に加えて,「警備業務の取引に関する実態調査」及び「金型に係る取引の実態調査」を開始・実施いたしました。
 このうち,調査を終了した「荷主と物流事業者との取引に関する書面調査」については,物流特殊指定に照らして問題となるおそれがあると認められた571名の荷主に対して,物流事業者との取引内容の検証・改善を求める文書を発送いたしました。また,「警備業務の取引に関する実態調査」については,建設業者の関係事業者団体に対して調査結果を示すとともに,業界における取引の公正化に向けた自主的な取組を要請いたしました。
 さらに,公正取引委員会は,中小企業庁と共同して,毎年11月を「下請取引適正化推進月間」とし,下請法の普及・啓発活動を集中的に行っております。
 一般公募により月間のキャンペーン標語を募集した結果,平成30年度は「見直そう 働き方と 適正価格」を特選作品とし,ポスター等で活用いたしました。また,全国62会場において下請法に関する講習会を開催いたしました。さらに,昨年11月27日には,年末にかけて下請事業者の資金繰り等について厳しさが増すことが懸念されることから,親事業者約21万名及び関係事業者団体約1,000団体に対し,下請法の順守の徹底等を要請する文書を発出いたしました。 そのほか,公正取引委員会は,各地域の下請取引等の実情に明るい中小事業者の方々などに下請取引等改善協力委員を委嘱しております。平成30年度には,資料の27,28頁に記載しておりますとおり,各協力委員から下請取引等を巡る最近の状況について御意見を頂いており,こうした生の声を,今後の施策に生かしていきたいと考えております。
 公正取引委員会としましては,依然として下請事業者が厳しい対応を迫られているという状況認識のもと,ただいま申し上げましたように,下請法違反行為に厳正に対処するとともに,下請法違反行為の未然防止の観点から,下請法運用基準の改正等の普及・啓発を図ることなどにより,下請取引の一層の適正化に努めてまいりたいと考えております。
 本件の担当は取引部の下請取引調査室,企業取引課でございます。

質疑応答

(問) 今日,発表された「警備業務の取引に関する実態調査」の件なんですけれども,回答者の全体の11%が下請法上問題になり得る行為を受けたことがあると回答したところなんですが,この11%をどう評価するのか,そこをお願いします。
(事務総長) 今回,警備業者に関する調査は1,000名を対象に調査票を発送しております。その中で,回答があった人の中でさらに11%ということですので,それなりの重みはあるのかなというふうに考えております。もちろん抽出調査ですので,全体でどのくらいこうした行為が広がっているのかというのは,これだけでは確認できるものではありませんけれども,ただ,そうした中で,とりわけ建設業に関わる取引で,そうした問題が比較的多く見られたということでもありますので,先ほど申しましたように,関係団体等に対しまして,また,関係する省庁とも協力しまして,自主点検といいますか,自発的な見直しを求めているところでございますので,それなりの重みを持って受けとめていただきたいというふうに思います。

(問) 今日の衆議院の経済産業委員会の方で,改正独占禁止法の法案が承認されたかと思うんですが,会期末まで1カ月を切る中で,今後の見通しについて教えてください。
(事務総長) ただいま御質問にありますように,本日午前中の衆議院経済産業委員会におきまして,私どもが提出しております独占禁止法改正案を可決いただきました。この後,衆議院本会議での手続等,残っておりますし,仮にそれで可決いただいたとしても,さらに参議院での手続,御審議が残っているかと思います。私どもとしましては,今回の衆議院の経済産業委員会におきましても全会一致で可決いただきましたので,できるだけ早期,速やかに議論,そして御承認いただけるように引き続き働きかけてまいりたいというふうに思います。

(問) 荷主と物流業者の取引の書面調査のところも発表されていると思うんですけれども,638件,自主的に問題行為があるというふうに言ってきているということなんだと思うんですが,この状況の評価とですね,この業界,非常に下請に対する行為とか,働き方とか,いろいろと問題提起をされているという業界だと思うんですけれども,この数字を見た上での課題や現状についての問題意識をお伺いできればと思います。
(事務総長) 荷主と物流業者との取引関係につきましては,私ども,これまで繰り返し調査を行ってきております。また,その結果を踏まえて問題がある,あるいは問題のおそれがあるという場合には,そうした関係の荷主の方々に対して,改善したほうがいいんじゃないですかということを申し上げてきております。
 一般の下請関係でもそうしたことが起こりがちではありますけれども,とりわけ荷主と物流業者との関係というのは,比較的取引先の数,請負業者側の数が少ないということから,請負業者側のほうからなかなか声を上げづらいという状況がより強いと思いますので,私どもとしても繰り返し,こうした形で荷主側に対する啓発活動を行っていかなければならないと思っています。
 特に今,物流業界は,人手不足も含めて非常に大変な状況にあるかと思いますので,そうした全般的な状況も含めて,荷主のほうにはより一層の注意喚起をしていかなければならないというふうに思います。

以上

ページトップへ