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令和元年6月5日付 事務総長定例会見記録

令和元年6月5日付 事務総長定例会見記録

[配布資料]

[発言事項]

事務総長会見記録(令和元年6月5日(水曜)13時30分~於官房第1会議室)

平成30年度における独占禁止法違反事件の処理状況について

 本日,私の方からは,「平成30年度における独占禁止法違反事件の処理状況」について公表いたしましたので,そのポイントをお話しいたします。
 お手元の「概要」の資料の1頁を御覧ください。左上にグラフがありますけれども,平成30年度におきましても,価格カルテル1件,入札談合3件,受注調整3件と,国民生活に影響の大きい事案に対して,過年と同じく厳正かつ積極的に事件審査を行いました。
 他方,平成30年度全体の排除措置命令件数は8件と,例年よりも少ないものとなりました。これは,平成26年度以降の5年間でみますと,主にカルテルや談合以外の不公正な取引方法などに関する命令が少なかったことによります。
 この点に関して右のグラフを御覧ください。後ほど改めてお話しいたしますが,事業者から改善措置の申出等がなされたことを受けて審査を終了し,概要について公表した事案が3件ありました。これらに警告件数を合わせた事件数でみれば,例年と比べても相応の事件を処理したことになると考えております。
 次に,概要の2頁を御覧ください。法的措置を採った具体的な事案としましては,価格カルテル事件の近畿地区に店舗を設置する百貨店業者による事件,入札談合として,宮城県大崎市等が発表する建設関連業務の入札等の参加者による事件3件,受注調整事件として,全日本空輸株式会社が発注する制服の販売業者による事件など3件,不公正な取引方法事件としては株式会社フジタによる競争者に対する取引妨害事件があります。
 次に,3頁目を御覧ください。法的措置である排除措置命令を行うことが審査事件の処理としては中心になることは当然でございますけれども,それだけではなく,事案の特性に応じて迅速かつ効果的な処理を行うことにより,競争秩序の早期回復を図ることも重要だと考えております。
 平成30年度の特色として,こうした観点から,社会的ニーズに的確に対応した多様な単独行為にかかる事案について迅速かつ実効性のある対処をし,IT・デジタル関連分野のほか,土産物やファンヒーター,タクシーと様々な分野において,拘束条件付取引や優越的地位の濫用などの不公正な取引方法に関する事案を処理しました。
 具体的には,資料にございますように,優越的地位の濫用事件等について3件警告を行ったほか,IT・デジタル関連分野の事案として,みんなのペットオンライン株式会社が,ブリーダーに対して他のペット仲介サイトに犬や猫の情報を掲載することを制限している疑いがあった事件,Apple Japan合同会社が,NTTドコモなどの電気通信業者が提供するiPhoneの端末購入補助等について事業活動を制限している疑いがあった事件,エアビーアンドビーが,取引先事業者が他の民泊サービス仲介サイトに民泊サービスの情報を掲載することを制限することにより,取引先事業者の事業活動を制限している疑いがあった事件について,審査を行いました。そして,審査の過程において,事業者から改善措置を行うという申出などがあり,その内容を検討しましたところ,独占禁止法違反の疑いを解消するものと認められたことから審査を終了しております。
 これらの事案につきましては,ただ審査を終了したというだけではなく,独占禁止法の運用の透明性を確保し,事業者の予見可能性を高めるなどの観点から,事案の概要を公表いたしました。
 こうした事案につきましては,昨年12月から確約制度が導入されておりますので,今年度以降は,こういった制度の適用も視野に入れて事件を処理していくことになると考えております。
 次に,4頁目を御覧ください。中小事業者等に不当に不利益をもたらす優越的地位の濫用行為については,審査局に設けました「優越的地位濫用事件タスクフォース」が効率的・効果的に調査を行い,必要な是正措置を講じることとしております。
 昨年の11月に警告を行いました岩手県産株式会社による納入業者に対する優越的地位の濫用事件は,このタスクフォースが担当したものです。このほか,平成30年度におきましては,問題の見られた小売業者,宿泊業者,卸売業者等に対し,56件の注意を行いました。どのような分野の事業者や行為が注意の対象となったか,事案の概要を含め,お手元の一連の資料の中の「別添1」というところにまとめておりますので,御覧ください。

質疑応答

(問) コンビニへのですね,実態調査に入るというような報道があったんですけれども,今の検討状況といいますか,方針を決めているのどうかというところと,あと,そもそもですね,このコンビニに対する公正取引委員会の問題意識というか,その辺りもお聞かせ願えればと思います。
(事務総長) コンビニエンスストア本部と各コンビニの店舗との関係につきましては,御案内のように,フランチャイズに対する考え方ということでガイドラインを公表しておりますし,当然,コンビニエンスストアもフランチャイズの一形態だと思いますから,それに該当するということになります。
 ですので,本部と各店舗経営者との取引において,優越的地位を濫用して正常な商慣習に照らして不当に不利益を課す,こうした行為が行われている場合には,当然,独占禁止法上の問題となり得るのだということは従前から申し上げておりますし,また,昨今,例えば,24時間営業の問題ですとか,そういった点について社会的関心が高まっております。先ほど申し上げましたような意味合いで,店舗経営者の方にとって,若干繰り返しになりますけれども,不当に不利益となる行為が行われているかどうかということは,私どもも関心を持っているところでございます。
 もし,個別にそうした問題が認定できるということであれば,繰り返しになりますけれども,独占禁止法上の問題とはなり得るんだというふうに思っております。
 そこで,今,御質問の1つ目にありました,何らかの調査をするのかということに関して報道がなされていることは承知しておりますけれども,コンビニエンスストア本部に対して何か調査を行うということを現段階で決めたという事実はございません。

(問) 今のところは調査をやるという事実はないとおっしゃいましたけど,早期に調査をするというお考えはありますでしょうか。
(事務総長) こうした優越的地位の濫用が行われているのかどうかという観点からの調査というのは,例年行ってきております。例えば,これまでも,年度はかなり飛んだものを申し上げますけれども,放送コンテンツの問題ですとか,あるいは冠婚葬祭業,比較的継続的にやっているのは大手小売業者と納入業者の関係とか,そうしたものについて,その時々の問題関心,ニーズに合わせた調査を行ってきておりますが,今年度に入って何か新しい調査を開始したということはありません。今後,そういった意味合いの調査を行っていくのかというのは,検討していくことになるかと思います。
 ただ,先ほど申しましたように,その中にコンビニエンスストア本部との取引関係について,入る可能性がゼロだとは申しませんけれども,まだ何も決まっていないという状況です。

(問) 本日御発表の資料の3頁目にございます30年度の課徴金納付命令の額がですね,2億6000万円ということで,3月初旬に,一部事業者の適時開示ですとか報道で,アスファルト合材を巡る審査で課徴金総額600億円というような報道もございまして,それが年度内に入ってくれば,例えば過去2番目に大きな課徴金納付額の年度になるのかなというふうに見ていたんですけれども,それが年度内に間に合わなかったということもあると思うんですが,2億6000万円ということで,これが課徴金減免制度導入以降ですと,過去最少という額になっているかと思います。昨年は18億9000万円であったと思うんですけれども,2年連続で最少という形になったこの傾向といいますか,状況についてちょっと分析をいただければと思います。
(事務総長) 今,御質問の最後に,傾向というお話がありましたけれども,課徴金納付命令を課す事案の大半がカルテルあるいは談合事件ということでございます。
 課徴金は当然のことながら,違反期間中の違反行為に関する売上高に応じて課されることになりますので,その対象違反事件として取り上げた分野の市場規模でありますとか,取引分野の数といった方がいいのかもしれませんけれども,そうしたものによって大きく左右されることになります。仮に,市場規模そのものがそれほど大きくないものであっても,そこでの競争というものがきちんと行われるということが独占禁止法を執行していく上で重要という分野も当然あるかというふうに思っております。
 この課徴金の額というのは,先ほど申しましたように,その時々に取り上げられた事件の内容,分野によって変動は大きく生じるものでございます。今,このグラフの中にも非常に高い年もあれば,それほどでもない年,過去を見ましても,やはり,こうした上下というのは繰り返してきておりますので,それ自身,課徴金の多い少ないというのを何らかの評価対象であるとか,あるいは政策目標であるとか,そういうふうなものに位置付けるのは適切ではないと考えております。
 他方,先ほど私からの発言の中でも申しましたように,平成30年度におきましては,いわゆる単独行為に対する案件を複数取り上げて,迅速な処理というのは図っておりますので,そうしたトータルとして,どういう事件に対して処理,あるいはどういう方法で処理をしていったのかという点で,評価というのはされるべきなんではないかと考えております。

以上

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