[配布資料]
クレジットカードに関する取引実態調査報告書(概要)(平成31年3月13日公表資料)
[発言事項]
事務総長会見記録(平成31年3月20日(水曜)13時30分~於官房第1会議室)
クレジットカードに関する取引実態調査について
本日,私からは,3月13日に公表しました「クレジットカードに関する取引実態調査報告書」について御紹介いたします。
現在,我が国におけるクレジットカードの決済額は50兆円を超え,キャッシュレス決済額の大半を占めております。また,クレジットカード決済額は増加傾向にあり,今後,クレジットカードによる決済が国民生活に与える影響はますます大きくなっていくと考えられます。このような状況を踏まえ,今般,クレジットカードに関する取引実態調査を実施いたしました。
クレジットカード取引は典型的なプラットフォーマー型ビジネスであり,本調査は,当委員会によるプラットフォーマー型ビジネスに対する取組の一環と位置付けられるものでございます。
本調査では,我が国において利用されているクレジットカードのほとんどが国際ブランドのマークが付いたクレジットカードであること,また,国際ブランドの取引上の地位がクレジットカード会社に対して優越している可能性があることを踏まえ,国際ブランドとクレジットカード会社との取引を中心に分析・検討を行っております。
本報告書における提言のうち,「契約内容の一方的改定」に関するものにつきましては,既に種々報道が出ております。本日は,「電子マネー」に関する提言について改めて御紹介いたします。
海外では,店舗の決済端末にクレジットカードをかざすだけで決済を行うことができるICチップ付きのクレジットカードが多く発行されているようです。しかし,我が国においては,同様の非接触型決済として,いわゆる「電子マネー」が一般に普及しており,この「電子マネー」で使用されている通信規格は海外において一般に使用されているものとは異なっています。そのような背景もあり,我が国においては,非接触型決済対応のクレジットカードはほとんど普及していないようです。
しかし,今後,国際ブランドは,我が国においても,海外において一般に普及している通信規格を採用した非接触型決済対応のクレジットカードの発行を積極的に進めていく方針があると理解しております。
その際,国際ブランドが,非接触型決済対応のクレジットカードの発行に必要となる費用について,クレジットカード会社の意見を十分考慮することなく,一方的に,その全てをクレジットカード会社に負担させる場合,また,既存の電子マネーと競合関係が生じ,非接触型決済対応のクレジットカードから,他の電子マネーの搭載を排除する場合には,独占禁止法上問題となるおそれがあると本報告書では指摘しております。
もちろん,クレジットカードに新しい機能が追加され,消費者の利便性が高まることは前向きに評価できるものです。国際ブランドは,非接触型決済対応のクレジットカードの発行を進めるに際しては,クレジットカード会社に不当に不利益を与えたり,消費者・利用者の選択肢を奪うことのないようにしていただきたいと考えています。
公正取引委員会としましては,関係事業者が,本報告書を独占禁止法違反行為の未然防止に役立て,競争促進的な取組を行うことにより,市場における競争が促進され,消費者の利益・便益が向上されることを期待しております。
公正取引委員会は,引き続き,クレジットカード市場の動向を注視するとともに,独占禁止法に違反する行為に対しては厳正に対処してまいります。
デジタル・プラットフォーマーの取引実態に関する消費者向けのアンケート調査について
もう1点,デジタル・プラットフォーマーの取引実態に関する消費者向けのアンケート調査についてお話しいたします。
本アンケート調査は,「デジタル・プラットフォーマーの取引慣行等に関する実態調査」の一環として,デジタル・プラットフォームのサービスに関する消費者の利用状況等に関する情報の収集・把握を目的としています。調査手法としましては,アンケート会社に委託して,デジタル・プラットフォームのサービスを利用している消費者モニターの方に回答していただくという方式を採っております。
この消費者向けのアンケート調査結果も含め,来月中には中間的な報告を公表することを予定しております。
質疑応答
(問) 今,最後におっしゃいましたデジタル・プラットフォーマーの消費者向けの調査なんですけれども,もう既に始められているのか,アンケート会社に委託してということなんですけれども,どのぐらいのサンプルの数を考えているのか,また,どういったことを質問として聞いているのかという辺りを教えてください。
(事務総長) 先ほど発言でも申しましたように,こちらの調査は,先般の事業者向けのものとは異なりまして,アンケート会社に対して委託する方法を採っております。数としましては,2,000ぐらいの規模を考えております。その抽出に当たっては,年齢層であるとか,属性が偏らないような形に抽出をお願いしております。
調査の内容としては,いろいろありますけれども,基本的には,消費者がどのようなサービスを利用しているのか。あるいは,プラットフォームを使う際に,個人情報や利用データについて収集・利用・管理されている,それに対してどういう認識を持っているのか。サービスの切替えについて,どういう状態にあるのか。また,利用する際には様々な利用規約がありますけれども,それについての理解はどうなのかといったことを聞いております。
(問) それはオンラインのアンケートになるんでしょうか。
(事務総長) オンラインです。
(問) これは,もう既に始めているということですか。
(事務総長) 始めています。
(問) ちなみに,いつから始めたのですか。
(事務総長) 先週の金曜日,15日からです。
(問) 先日,クアルコムに対しての排除措置命令の取消しの審決が出ましたが,まず,こちらへのコメントというか,受け止めというか,一言お願いします。
(事務総長) クアルコムの独占禁止法違反について排除措置命令を行い,クアルコム側から不服の申立てがあって,ずっと審判を行っておりました。9年ぐらいかかった審判でございます。そのときに,クアルコムとその契約相手方との間のライセンス契約の内容について,排除措置命令では独占禁止法に違反するということで措置を採ったわけでございますけれども,審判でのいろいろな主張・立証活動を通じて,この排除措置命令については理由がないということで取消しがされておりますので,一つの見方としては,審判制度が有効に機能したというふうに理解しております。その一方で,このような形で取り消されるような命令を基本的には行わないに越したことがないというふうに考えますので,事件を調査する部門においては,こうした経験も踏まえて,今後とも適正な審査を行っていかなければいけないと考えています。
(問) クアルコムに関してですけれども,他国の当局なども,いろいろライセンス制限に関して捜査などが行われていますが,今回の審決の結果が日本語でのみで英語で出ていないということで,結構,世界的にも注目されている案件かと思うんですけれども,英語で出ない何か理由というのはあるんでしょうか。
(事務総長) 日本の措置に関する処分,審決も含めた処分でありますので,基本的に日本語で行われるものだと思います。今後,必要に応じて,内容について別に内緒にしているわけではありませんので,海外向けといいますか,概要等を英語にするということはあり得るとは思います。
(問) 先ほどの15日から始めた消費者向けのプラットフォーマーに対するアンケートなんですが,15日からということだったんですが,いつまでなんでしょうか。
(事務総長) 先ほど,2,000ぐらいを想定していると申し上げましたけれども,基本的には,アンケート会社に委託しておりますので,必要な数が揃ったところまでというふうに考えています。
以上