[配布資料]
独占禁止法に関する相談事例集(平成30年度)について(令和元年6月26日公表資料)
[発言事項]
事務総長会見記録(令和元年7月3日(水曜)13時30分~於官房第1会議室)
独占禁止法に関する相談事例集(平成30年度)について
本日,私の方からは,相談事例集についてお話しいたします。公正取引委員会では,事業者や事業者団体がこれから行おうとする行為が独占禁止法上問題にならないかどうかについての相談を受け付けており,その主要なものを毎年度,独占禁止法に関する相談事例集として公表しています。平成30年度の相談事例集は6月26日に公表いたしました。
お手元に概要版の資料がございます。1ページ目には,独占禁止法に関する相談の件数を記載しています。平成30年度には1,462件の相談が寄せられました。
2ページ目には,相談事例集の趣旨を掲載しております。相談事例集は,事業者などから寄せられた個別の相談の中から相談者以外にも参考になる主要な事例を選んで,独占禁止法上の考え方を分かりやすく説明したものです。公表に当たっては,相談者が特定されないよう内容に少し手を加えております。
今回の相談事例集には14の事例を掲載しており,うち事業者の活動に関する相談が9件,事業者団体の活動に関する相談が5件になります。これらの事例のうち,独占禁止法上問題となるおそれがあると回答した事例が1件,独占禁止法上問題ないと回答した事例が13件になります。
3ページ以下に事例の概要を記載しております。
今回の相談事例集の特徴を行為類型別に見ますと,流通・取引慣行に関する事例が6件と多くを占めます。そのうち,例えば事例6は,ソフトウェアメーカーが,自社のソフトを利用する顧客に対して優越的地位にあるということを前提に,当該ソフトウェアのアップグレード版を販売する際に保守契約を義務付けることについて独占禁止法上問題となるものではないと回答した,優越的地位濫用に関する事例です。事例7については,電子部品メーカーが電子部品の製造特許等のライセンスを行うに当たって,ライセンスの相手方に対して競合品の製造を禁止することや高額のライセンス料率を定めようとすることが,実質的に知的財産権の行使となると評価でき,独占禁止法上問題となるものではないと回答した技術取引に関する事例です。
また,最近の社会経済情勢を反映した特徴的な相談を取り上げたものとして,事例1のデジタルコンテンツの卸販売業者が,出資会社の意向を踏まえて,自分に出資する会社の競争者である配信業者に対して,デジタルコンテンツの卸売を拒絶することについて独占禁止法上問題となるおそれがあると回答したデジタルエコノミーに関する事例,事例2の福祉用具メーカーによるインターネット販売に関する事例,事例5のエネルギー商品の小売業者によるエネルギー商品のセット販売に関する事例,事例8の,これは人手不足に伴って,ドライバーの労働環境が悪化していることを前提に,ドライバーの労働環境の改善や効率的な輸送の実現のために,大型貨物自動車による共同運送を行おうとすることについて,独占禁止法上,問題とならないと回答した,要は正に働き方改革などにも関連する事例,それから事例9の書籍の物流業務の共同利用に関する事例がございます。
相談事例集は大きな関心をいただいておりまして,平成30年度において相談事例集には約4万件と多くのアクセスをいただきました。また,ホームページでは事業者等が関心がある事例を参照にしやすいように,年度別だけではなく,行為類型別にも掲載しています。例えば事業者の活動に関する事例については,「流通・取引慣行に関するもの」,「業務提携に関するもの」等,事業者団体の活動に関する事例については,「価格制限行為」,「不公正な取引方法」等に分類しまして,事例を参照できるようにしています。これらは公正取引委員会のホームページの相談事例集のページで御参照いただけます。
公正取引委員会としましては,事業者などにおいて相談事例集が活用されることにより,独占禁止法上の考え方への理解が一層深まり,違反行為の未然防止が図られることを期待しております。
なお,個々の相談事例の内容につきましては,御関心があれば,本件の担当課でございます相談指導室にお問い合わせください。
以上