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令和元年10月30日付 事務総長定例会見記録

令和元年10月30日付 事務総長定例会見記録

[配布資料]

[発言事項]

事務総長会見記録(令和元年10月30日(水曜)13時30分~於官房第1会議室)

公正取引委員会における景品表示法の運用状況について

 本日,私の方からは,公正取引委員会における景品表示法の運用状況及び公正取引委員会における一般消費者に対する独占禁止法の普及啓発活動について御紹介いたします。
 まず,景品表示法についてですが,景品表示法の正式名称は,「不当景品類及び不当表示防止法」と言いまして,不当な表示,それから,過大な景品類の提供を規制しています。
 景品表示法は昭和37年に制定され,以来,公正取引委員会が所管してきておりましたけれども,平成21年9月,消費者庁の設立に伴いまして,その所管が消費者庁に移管されました。ただ,消費者庁移管後におきましても,公正取引委員会は消費者庁からの景品表示法違反事件に係る調査権限の委任を受けて,公正取引委員会の地方事務所・支所等におきまして,消費者庁と連携しながら違反事件の調査を行っております。また,地方事務所等におきましては,違反事件の調査だけではなく,景品表示法違反の疑いに関する情報の受付業務や相談業務,また,景品表示法の普及啓発活動にも取り組んでおります。
 景品表示法違反事件の公正取引委員会における処理状況について,主な点を御紹介いたします。お配りしました資料の1ページの表にございますように,公正取引委員会の地方事務所等による調査を踏まえて措置命令に至った事件は,平成27年度から昨年度にかけては毎年度6件でしたが,令和元年度上半期は,既に5件の措置命令を行っております。また,平成28年4月に不当表示を行った事業者に対して課徴金制度が施行されました。公正取引委員会の地方事務所等による調査を踏まえて課徴金納付命令に至った事件は,平成29年度は1件,昨年度は2件,令和元年度上半期は既に2件でございまして,課徴金納付命令額は,これまでの合計で約4500万円となっております。
 また,違反のおそれのある事業者に対しましては行政指導を行っておりますが,公正取引委員会の地方事務所等による調査を踏まえて指導を行った件数は,平成27年度以降毎年度50件程度で推移しております。
 最近の事例は,資料の別紙に記載しております。その冒頭にありますのが,株式会社ロイヤルダイニングに対する件でございまして,これは沖縄総合事務局内にございます公正取引室の調査の結果,同社が運営する焼き肉店のメニュー表示について,外国産牛の部位を使用していたにもかかわらず,黒毛和牛の部位を使用しているかのように示す表示を行っていたことが,優良誤認に当たることが判明して,消費者庁が同社に対して措置命令を行った事案でございました。
 次に,未然防止のための取組について御紹介いたします。
 公正取引委員会の地方事務所等は,これから広告を行おうとする事業者等からの相談に対応しており,資料の2ページにありますように,毎年その数は千数百件に上っております。さらに,公正取引委員会の地方事務所等の職員が消費者団体や事業者団体等からの依頼に応じて,これらの団体が主催する講演会等で景品表示法の説明を行ったり,地方事務所等が自ら主催する消費者向けのセミナーにおいて景品表示法の説明を行っています。
 このような公正取引委員会の取組は,不当表示や過大な景品類の提供の未然防止に大きく寄与しているというふうに考えております。公正取引委員会としましては,今後も引き続き消費者庁と連携して,未然防止に努めるとともに,不当表示や過大景品類の提供が行われた場合には,景品表示法に基づいて,迅速かつ厳正に対処してまいります。
 もう1つ,公正取引委員会における一般消費者に対する独占禁止法等の普及啓発の取組について,簡単に御紹介いたします。
 公正取引委員会では,職員を学校の授業に講師として派遣して,将来を担う学生,生徒に競争の重要性や独占禁止法の内容,公正取引委員会の役割などについて分かりやすく説明して,競争のメリットについて理解を深めてもらうため,全国各地で独占禁止法教室を開催しています。
 独占禁止法教室の平成30年度の開催状況につきましては,中学校が61回,高校が54回,大学・大学院が121回となっており,また,令和元年度上半期におきましては,中学校が6回,高校は20回,大学・大学院が55回となっております。
 独占禁止法教室の授業風景につきましては,カメラ取材,傍聴取材が可能で,独占禁止法教室を実施する際には事前に報道発表しておりますので,メディアの皆様には是非取材をしていただきたいというふうに考えております。取材を御希望される際には,その報道発表資料に問い合わせ先を記載しておりますので,そちらまで御連絡いただきたいと思います。
 また,一般消費者や消費者団体を対象に,独占禁止法が消費者の暮らしに関わっていることを中心に,競争政策や公正取引委員会の活動について理解をいただくとともに,これらを身近なものとして感じていただくため,全国各地で消費者セミナーを開催しています。消費者セミナーにつきましては,平成30年度は83回,令和元年度上半期では46回開催してきております。
 公正取引委員会としましては,こうした独占禁止法教室や消費者セミナーなどの取組を通じて,公正取引委員会の活動や独占禁止法に対する学生,生徒の皆さん,消費者の方々の御理解を一層得ていきたいというふうに考えております。

質疑応答

(問) 大手コンビニの実態調査についてお伺いいたします。
 杉本委員長は,9月25日の会見において実態調査について速やかに着手すると仰っていますが,現時点の進捗状況をまず教えていただきたいというのが1点。その上で,今,業界最大手のセブンが11月1日に時短営業の指針を示す予定になっていますが,こうした各社の運営改善策が出てきていますけれども,そういったことについて,どう御覧になってるのかということを伺えますでしょうか。
(事務総長) コンビニエンスストアチェーンに対する実態調査の着手というのは,どこからスタートというのは,必ずしもはっきりするものはありませんので,そこは順次進めているところでございます。ただ,今後ヒアリング調査でありますとか,チェーンの本部,それから,加盟店の方々へのヒアリングやアンケート調査,そうしたことも行っていくことになりますので,その調査の取りまとめにはそれなりの時間が掛かるかなというふうに思っております。
 また,御質問の後半にございました,特定の社名はともかくとして,コンビニ本部の方でもいろいろな取組をされておりますので,そうしたことについては,この調査の中でも関心を持って,分析結果に関わるような内容もあるかもしれませんので,調査の中でもそういうものを把握していきたいというふうに思います。
 いずれにしましても,既に行われている様々な取組が,本部側と加盟店との間に十分な意思疎通が行われる方向で進められるのであれば,それはそれでよい方向なのかなというふうに思います。

(問) ウェブ上のどんなページを見たかを記憶するクッキーのことに関して,独占禁止法違反になるおそれがある可能性があるとして規制する方向に入ったという一部報道もありますけれども,それに関しては,検討状況等々伺えればと思います。
(事務総長) そうした報道があったことは存じ上げておりますけれども,おそらくそこで挙げられていることというのは,既に私どものほうでパブリックコメントに付しております「デジタル・プラットフォーマーと個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」に関わることなのかなというふうに思います。
 このガイドラインの原案につきましては,9月30日までということでパブリックコメントに付しておりまして,今示しております原案の中には,個人情報等についての取扱いが,やり方によっては濫用行為に該当する可能性があるということを記載しております。その個人情報等の中にはクッキーといった情報も含まれるということは御説明しておりますので,そういう意味では原案を公表した段階から,その趣旨のことは既に伝えられているのかなというふうに思います。
 その一方で,現在,140件ぐらいはあったというふうに聞いておりますけれども,たくさんコメントをいただいておりますので,そのガイドラインにつきましては,そうした御意見を踏まえて,最終的には,今申し上げました濫用行為にどういうものが該当するのか,その他に,そうした収集活動をしていること自身が問題になるということではなくて,それが適切なやり方で行われているのかどうか,その主体が,対消費者との間で優越的地位にあるのかどうか,そうしたことを全部含めて,独占禁止法に違反するのかどうかということを判断することになりますので,ガイドラインの中ではそうしたことが分かるように示していきたいというふうに思います。

(問) 10月4日に開かれました「第1回デジタル市場競争会議」において,デジタル広告についても評価していってはどうかという方向が出されていたと思いますが,それを受けて,公正取引委員会の方で,デジタル広告についての実態調査をする予定があれば,お話しできる範囲で結構なので,どういう趣旨で,どういうフレームと中身でされる予定なのか教えてください。
(事務総長) 現在,包括的なデジタル・プラットフォーマーに関する調査というのを行ってきております。その初めとしまして,現在はオンラインショッピングモールとアプリの販売に関して実態調査を行っているところでして,いわばその次の課題としてデジタル広告というのがあるのかなというふうに考えております。
 今御指摘の会議におきましても,デジタル広告について,今後,調査を検討しているということでございますし,また,同じくその会議におきまして,公正取引委員会の方でもデジタル広告について実態調査の対象として取り上げていく予定だということを申し上げております。
 質問の後半の方ですけど,いつからどのようにということですけれども,基本的にはデジタル・プラットフォーマーというのは,いわゆる多面市場と言われているもので,片方でさまざまな利用者がいる。その片方でそれを使って,そのプラットフォーム上でいわゆる事業を行っている形,また,プラットフォーマー自身も収益の重要な要素として広告事業があるということが言われております。第1弾の調査ではプラットフォーム上で取引をする事業者との関係を調査しておりますので,次のテーマとしては,やはりプラットフォーマーの大きな事業要素である広告についても調べるべきではないかということです。
 具体的に何か独占禁止法上の問題があるということで調べるわけではありませんので,具体的な内容については,これからまた詰めていきたいというふうに思っています。

(問) スケジュールは。
(事務総長) スケジュールは,今,取り上げる予定だというふうに申し上げましたけれども,私どものリソース上の問題もありますので,現在行っております調査が一段落したところで検討に入っていくという感じになるのではないかなというふうに思います。

(問) 先日,確約手続を初めて適用されたと思うんですけれども,改めて適用してみて,その意義と,今後の確約手続の運用の見通しがあれば教えてください。
(事務総長) 今御質問にございましたように,10月25日に株式会社楽天に対してオンライン上の旅行代理業務に関わる行為について確約措置を適用いたしました。
 確約措置は公正取引委員会が違反の疑いがあるということで調査を開始したものについて,その違反が疑われている行為を早期に解消することによって,事業者側にとっては疑われている行為がなくなるということ,それから,疑われた行為によって被害を受けているかもしれない人たちにとっては,早期にそうした状態から抜け出ることができること,また,公正取引委員会にとっても事件を早期に解決することによって,そこで使われるリソースの効率的な利用をすることができる,そうしたメリットがあるというふうにも考えておりますので,今後も適切な事案についてはこの制度を使っていくものだというふうに考えています。
 事業者側サイドのメリットとしては,違反かどうかという最終的な認定を行うことなく事件を終えるということでありますので,例えば課徴金減免制度で課徴金が免除される場合には違反行為者であるという認定がされた上で,別の理由で課徴金の納付が免除されるという仕組みでありますけれども,この確約制度の場合には当事会社にとっては違反であるという認定まで至ることがなく,事件としては終結することになりますし,また,その一方で,公正取引委員会,それから先ほど申し上げた,疑われた行為によって何らかの被害を受けていたかもしれない人たちにとってみれば,着実に違反の疑いがあった行為を取りやめる,その他必要な措置を講じてもらい,それをきちんと実施してもらうということで,最終的に排除措置を行った場合と同等の効果が得られるというメリットがあるというふうに思っています。
 そういう意味で,措置を免除するというわけではありませんけれども,両方にとってメリットがある仕組みだと思っておりますので,繰り返しになりますけれども,今後も適切な事案において,そうした手続は使っていくことと思います。

(問) 先ほどのオンライン広告の関連なんですけれども,実態調査を行うとするとですね,対象としてどういった企業,プラットフォーマーは当然だと思うんですけれども,それ以外にもどういった企業を対象とする可能性があるのかという点と,あと,調査の目的としては,競争環境上,どのようなところに問題意識をお持ちの上での調査になるのか,そのあたりの御説明をお願いします。
(事務総長) 今の2つの御質問というのは関連する話だと思います。やはりプラットフォーマー,特に大きなプラットフォーマーというのは,収益を広告事業から得ているということがありますので,そうしたところにどういった形で,片方では情報を使っているのかとか,そうしたことは調査の対象になるというふうに思いますけれども,まだ具体的に細かい内容まで詰めているわけではありませんので,また必要に応じてお知らせする機会もあるかと思います。

(問) 確約に関してなんですけれども,公表されたものを見ると,以前,確約に準じるような手続としてアマゾンとかの件があったかと思うんですけれども,それより記述がものすごく短くて,違反があるんじゃないかと疑われた行為がどのようなものだったのか実態が分かり得ない内容だったと思うんです。そうすると,早期に解決するという意味では,当事者と被害者と公取にとってはいいのかもしれませんが,それと似たような事業をしている事業者にとっては,何が悪くて,どこまではよくて,どこまでが悪いかとかっていう,事例にならないんじゃないかと思うんですが,そこについてはどう思いますか。
(事務総長) 確約制度は,繰り返しになりますけれども,違反が疑われた行為について,それをいわゆる調査の最終段階まで行かないところで終了させるものです。そういう意味では,何が違反になるのかならないのかというのは,確定させないというか,調査を終えていないわけですから,確定し得ないということになりますので,それから調査結果としてお示しできる内容というのもやはり限定されたものになってくると思います。
 今回が初めてのケースですので,比較する対象は確約としては全くないわけですので,どの程度の事案の中身が,確約認定を公表する際にお示しできるかというのは,その案件についてどの程度調査をしているのか,また,その事案の内容とか性質とか,それによっても異なってくるかと思います。
 ですので,今回の件については公表しましたけれども,今回公表した内容がこのケースにおける公表できるぎりぎりだったということです。

以上

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