[配布資料]
デジタル・プラットフォーマーの取引慣行等に関する実態調査報告書(オンラインモール・アプリストアにおける事業者間取引)(概要)(令和元年10月31日公表資料)
[発言事項]
事務総長会見記録(令和元年11月6日(水曜)13時30分~於官房第1会議室)
デジタル・プラットフォーマーの取引慣行等に関する実態調査
本日,私の方からは,先日公表しました「デジタル・プラットフォーマーの取引慣行等に関する実態調査報告書」についてお話しいたします。
デジタル経済は,新たな投資やイノベーションを通じた産業の変革や消費者の利便の向上をもたらしていますが,その恩恵を最大限に実現するためには,デジタル市場が競争的である必要があります。デジタル経済では,変化が速く,ネットワーク効果や規模,範囲の経済性等を通じて,「勝者総取り」といった,独占化・寡占化傾向が強いと言われており,公正取引委員会では,この分野における適切な競争法,競争政策の運用が極めて重要であると考えております。
取り分け,デジタル・プラットフォームは,情報通信技術やデータを活用し,第三者へ多種多様なサービスを提供する「場」として非常に影響力を拡大しており,デジタル・プラットフォーマーによる優越的地位の濫用,他のデジタル・プラットフォーマーの排除,競合する利用事業者の排除,競争制限的な企業結合といった競争政策上の懸念があります。
当委員会は,昨年12月に経済産業省及び総務省と共に,「プラットフォーマー型ビジネスの台頭に対応したルール整備の基本原則」を策定いたしました。当該原則において,「透明性及び公正性を実現するための出発点として,大規模かつ包括的な徹底した調査による取引実態の把握を進める」とされていることも踏まえ,まずは問題点の指摘が多いオンラインモールやアプリストアにおける実態調査を進め,その報告書を先月31日に公表いたしました。
本報告書においては,オンラインモールやアプリストアといったデジタル・プラットフォームにおける事業者間取引について,どのような問題があり,その問題に対して独占禁止法がどのように適用され得るのか,あるいは取引の公正性・透明性を高め,公正な競争環境を確保するためには,競争政策上どのような対応が必要なのかといった考え方を明らかにしたところであります。
今後は,本報告書で示しました独占禁止法や競争政策上の考え方の周知に努めてまいります。
また,本報告書は,デジタル・プラットフォーマーが行う事業分野のうち,オンラインモールとアプリストアを対象にしたものであって,「大規模かつ包括的な徹底した調査」の一環でありました。引き続きデジタル広告の分野につきまして,検索市場,SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)市場との両面市場であるとの特性も踏まえ,実態調査を行う予定であります。
したがいまして,現在,公正取引委員会のホームページに設けております「デジタル・プラットフォーマーの情報提供窓口」につきましても,これまではオンラインモールやアプリストアを中心に情報提供いただいておりましたけれども,今後はデジタル広告分野についての情報を中心に募集したいというふうに考えております。
本件の担当課は,経済取引局総務課です。
質疑応答
(問) 今のデジタル・プラットフォームとちょっと関連するかと思うんですけれども,個別の企業で大変恐縮なんですが,楽天が,楽天市場でですね,3,980円以上購入した人は送料無料とするというキャンペーンを始めると発表されているんですが,送料が店舗側,出店側の負担になるんではないかという懸念の声が上がっております。報告書と照らしてみて,オンラインモールが出店側に一方的に不利益を押しつけるような行為というのは,独占禁止法上,何か問題があるのかという見解を教えてください。
(事務総長) 個別企業の個別の販売政策といいますか,事業政策を前提にした御質問でございますので,そのこと自身について,この場で何か申し上げるというのは適当じゃないというふうに思います。
ただ,いずれにしましても,今回のこの実態調査の場合もそうですけれども,主要なデジタル・プラットフォーマーというのは,先ほど申しましたように,その両面ですね,利用事業者,そこで商品を購入する消費者,双方に対して大きな影響力を持っているという立場にあるかと思います。そうした立場である事業者に関して,よく問題になるのは優越的地位の濫用という考え方だというふうに思います。
一般的に申し上げて,優越的地位の濫用に当たるかどうかということについては,自己の取引上の地位が相手方に対して優越しているという場合に,その自社の便益を図るため等の目的で,取引の相手方に対して不当に不利益を与えるようなやり方で取引条件を変更するといったようなことが優越的地位の濫用として,独占禁止法上の問題になり得るということは言えるかと思います。
ただ,今申し上げました様々な要件がございますので,それに当たるかどうかというのは,具体的な事実関係を把握しないと,それは判断できないことでございますし,また,ほかの業態でも同じようなことが優越的地位の濫用に当たるかどうかというような話題になることがございますけれども,ただ,新たな負担を相手方に課していくということ自身が直ちにそういう優越的地位の濫用の問題になるというわけではございませんので,その辺は御留意いただく必要があるかと思います。
(問) 最後に仰ったデジタル広告の実態調査,先週もちょっと伺ったんですけれども,改めて,対象企業としては,どういった業種を想定されているのか,そして,スケジュールとして,いつ頃を目途に行うのか,そして,調査の目的,改めて,どのような問題意識の基に行うのかという点について,お聞かせください。
(事務総長) 以前から申し上げておりますけれども,冒頭の発言の中で申し上げましたけれども,デジタル・プラットフォーマーが行っている様々な事業それぞれについて,最終的には全体として把握する必要があるということから,現在,大規模かつ包括的な調査を行っているところでございます。
その言わば第1弾として,デジタルマーケットとアプリについて取り上げましたので,同じように,デジタル・プラットフォーマーがやっている大きな事業分野として広告というのがございますので,その分野においても,その広告の発注者といいますか,そうした方との間で,どういう関係,状況にあるのかというのを把握していきたい。その中で,今回の報告書においても,そうした観点を持っておりますけれども,独占禁止法上の問題,あるいは競争政策上の問題,あるいは取引の透明性・適正性といった観点からの問題,そうしたものがあるのかどうか,あれば,どういう方向性でより公正な市場を実現していくためにどういう課題があるのかといったことを明らかにしていくということでございます。
対象企業というお話がありましたけれども,先ほど冒頭発言でお話ししましたが,単にプラットフォーマーだけではなくて,そこに広告を載せるという,デジタル広告を載せる側の方たちもおりますし,また,検索だけではなくて,SNSなども利用して,そうしたデジタル広告の仲介が行われておりますので,そちら側の分野にも目を向けなければいけないというふうに思っております。ですので,具体的には,どれぐらいの規模でというのは,現在,調査運営に係る設計をしているところでございますが,現時点では,今申し上げた,それなりの規模の調査になり得ると思いますので,タイムスケジュールについては,今,確定したものはございません。
以上