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令和元年11月13日付 事務総長定例会見記録

令和元年11月13日付 事務総長定例会見記録

[配布資料]

[発言事項]

事務総長会見記録(令和元年11月13日(水曜)13時30分~於官房第1会議室)

令和元年度上半期における下請法の運用状況,企業間取引の公正化への取組等について

 本日,私の方からは,下請法の運用状況について御説明いたします。
 公正取引委員会では,中小事業者の取引条件の改善を図る観点から,下請法等の一層の運用強化に向けた取組を進めております。本日,「令和元年度上半期における下請法の運用状況,企業間取引の公正化への取組等」を公表いたしましたので,その内容を御紹介いたします。
 お手元の資料の1ページを御覧ください。下請取引におきましては,下請事業者が親事業者から下請法違反に該当するような行為を受けても,その立場上,公正取引委員会等に報告しにくいという事情があります。そのため,公正取引委員会等から親事業者,下請事業者に対しまして定期的な書面調査を行うことで,下請法違反行為が生じていないかを確認しています。より一層の情報収集を図る観点から,平成29年度以降,書面調査の発送数を大幅に増加させました。令和元年度におきましても,親事業者については6万通,下請事業者については30万通を発送しています。
 次に,下請法違反事件の処理状況についてお話しいたします。資料の2ページ及び3ページの棒グラフを御覧ください。令和元年度上半期におきましては,4件の勧告及び4,913件の指導を行いました。勧告件数は,昨年度上半期より1件多く,指導件数につきましては昨年度上半期並みの高い水準を維持しております。
 なお,本年度上半期の勧告事件につきましては,10ページ及び11ページの別紙1に概要をまとめております。
 このような取組の結果,下請事業者に対してどの程度の不利益の回復が行われたのかを示していますのが,5ページの棒グラフになります。令和元年度上半期におきましては,下請事業者4,538名に対して,総額2億4577万円相当の原状回復が行われています。
 続いて,親事業者からの自発的申出事案の処理状況について,同じ5ページの(4)にありますとおり,令和元年度上半期におきましては23件の申出が行われ,下請事業者1,688名に対し,総額5454万円相当の原状回復が行われました。親事業者の自発的な取組によって,早期に下請事業者の不利益が回復されたと考えています。
 次に,令和元年度上半期における働き方改革に関連する下請法違反実例について御説明いたします。13ページの別紙3を御覧ください。
 公正取引委員会は,「中小企業・小規模事業者の活力向上のための関係省庁連絡会議」に参画しており,その議論を踏まえつつ,中小企業等の取引条件の改善に向け,下請法の積極的な運用を進めています。その一環として,昨年5月31日に,働き方改革と関連する下請法等違反のおそれのある事例を取りまとめた事例集を公表いたしました。
 今回,令和元年度上半期において措置を採った実際の事案の中から,働き方改革に関連する下請法違反の実例を4例取りまとめました。そこにございますA社,B社,D社は,荷積みなどの附帯作業や待ち時間,やり直し作業の関係で,下請法上問題となるとともに,下請事業者の働き方改革を妨げるものでした。C社の事例は,自社店舗における商品の陳列等の作業を無償で行わせていたものでありますが,休日に行うことや8時間を超える長時間に及ぶこともあったことから,下請事業者は休日出勤や残業による対応を余儀なくされました。親事業者におかれましては,自社内の働き方改革を進めつつ,そのしわ寄せが下請事業者に及ぶことがないよう,適切な対応をお願いしたいと思います。
 これまで申し上げましたとおり,令和元年度におきましても,当委員会は下請法違反事件に対して迅速かつ効果的に対処していますが,下請法の運用に当たっては違反行為の未然防止を図ることも重要ですので,資料の6ページ以降に記載しております,企業間取引の公正化へ向けた取組を実施しております。
 まず,下請法や優越的地位の濫用規制のより効果的な普及・啓発を図る観点から,参加者の習熟度や業種に応じた各種の講習会を行っています。令和元年度上半期においては,基礎講習会を58回,業種別講習会を5回実施しております。また,中小事業者からの求めに応じ,公正取引委員会の職員が,その中小事業者のもとに出向く「中小事業者のための移動相談会」を5か所で開催するとともに,事業者団体が主催する研修会等に28回講師派遣を行うなど,きめ細かな対応を行っております。
 また,企業間取引の公正化を図る必要が大きい分野について,実態調査等を実施し,独占禁止法及び下請法の普及・啓発に活用をしています。現在,「コンビニエンスストア本部と加盟店との取引等に関する実態調査」と,「荷主と物流事業者との取引に関する書面調査」を実施しています。
 そのほか,公正取引委員会は,各地域の下請取引の実情に明るい中小事業者の方々などに,下請取引等改善協力委員を委嘱して,各協力委員から下請取引をめぐる最近の状況などについて意見聴取を行っています。令和元年度上半期においていただいた御意見は,資料の14ページ,15ページに記載しております。内容は省略いたしますけれども,協力委員からいただいた生の声を今後の施策に生かしていきたいと考えています。
 最後に,令和元年度下半期における取組予定について申し上げます。8ページを御覧ください。公正取引委員会は,中小企業庁と共同して,毎年11月を「下請取引適正化推進月間」とし,下請法の普及・啓発を集中的に行っています。一般公募により,月間のキャンペーン標語を募集した結果,本年度は「無茶な依頼 しないさせない 受け入れない」を特選作品とし,ポスター等で活用しています。また,全国47都道府県の62会場におきまして,下請法に関する講習会を開催しています。さらに,今月中には,親事業者及び関係事業者団体に対し,下請法の遵守の徹底を要請する文書を発出する予定にしております。
 下請事業者の多くが依然として厳しい対応を迫られている状況の下,公正取引委員会としましては,引き続き下請法違反の未然防止に努めるとともに,例えば下請事業者が受ける不利益が重大と認められる事案には勧告を行うなど,迅速かつ効果的に対処することにより,下請取引等の一層の適正化に努めてまいります。
 本件の担当課は,取引部の企業取引課及び下請取引調査室です。

質疑応答

(問) 2点ございまして,1つは下請のことですけれども,下半期はおそらく消費税の増税による価格転嫁の点が下請関連では課題になると思うんですが,そのあたりをどう御覧になっているのかというのが1点です。
 もう一つは,ちょっとざくっとした質問ですが,昨日,未来投資会議で,デジタル・プラットフォーマー取引透明化法ですとか,その辺の検討が本格的に始まったんですが,新法で公正取引委員会はどのような役割を果たしていかれたいのかという,このあたりをまずはお願いいたします。
(事務総長) まず,1点目でございますけれども,本日,公表いたしましたのは令和元年度上半期の事案です。今,御質問にございましたように,本年10月に消費税率の引上げがございました。もちろん,消費税の引上げに伴って,いろいろな買いたたき,あるいは引上げ拒否といったようなことであれば,まず第一義的には消費税転嫁対策特別措置法の適用を考えていくということだと思います。それにつきましても,啓発活動や,違反行為の発見ということに関しては,書面調査等を例年同様かなり強力に進めていって,そうした啓発活動を通じて,まず違反が起こらないようにしていただきたいことでございますし,違反が起こった場合には,今,申し上げたような書面調査等を通じて発見して,的確な措置を行っていく必要があるというふうに思っています。加えて,下請取引の方も何か問題が生じるということになれば,それは消費税転嫁対策等と相まって的確な対応をしていくことが必要であるというふうに思います。
 後者のデジタル市場に関する御質問でございますけれども,政府全体の検討で,いわゆる透明化法というんでしょうか,そういうことが検討されているということでございますけれども,先般,公正取引委員会で,デジタル・プラットフォーマーの取引に関し,ECモールやアプリストアに関する調査報告を公表いたしました。その中で,取引の公正化,透明化に向けて望ましい行動といいますか,調査結果として提案をさせていただいておりますので,そうしたものを踏まえて,この後,検討していただければありがたいというふうに思います。

以上

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