[配布資料]
「下請取引適正化推進月間」の実施について(令和2年10月1日公表資料)(PDF:276KB)
事務総長会見記録(令和2年10月21日(水曜)13時30分~Web会議形式により開催)
「下請取引適正化推進月間」の実施について
本日,私からは,令和2年度の「下請取引適正化推進月間」についてお話しいたします。
公正取引委員会では,従来から,中小事業者に不当に不利益を与える行為に対しまして,独占禁止法と下請法を積極的に運用して,これらの法律に違反する行為に厳正に対処してきております。また,このような行為の未然防止のために,下請法や優越的地位の濫用規制に関する普及・啓発活動も様々行ってきているところでございます。
本日,お手元に資料としてお配りしております「下請取引適正化推進月間」,これはその一環でございまして,公正取引委員会は中小企業庁と共同して,昭和56年以降,毎年11月を「下請取引適正化推進月間」といたしまして,この期間に下請法の普及・啓発に係る取組を集中的に行っております。
この推進月間では,事業者の方々に下請法の内容を理解していただくため,今年は全国32会場におきまして,下請法に関する講習会を開催する予定です。また,ポスターの掲示や機関誌等への掲載による推進月間の広報等の協力を都道府県や商工会議所,商工会等の各種団体に依頼することとしております。
このほか,推進月間を一層効果的にPRするため,毎年,キャンペーン標語を一般公募しておりますけれども,本年度は「買いたたきの禁止」をテーマに一般公募いたしました結果,「叩くのは 価格ではなく 話し合いの扉」をキャンペーン標語として決定いたしました。
新型コロナウイルス感染症の影響もあり,下請事業者の事業環境が一段と厳しくなっている中で,事業者の皆様におかれましては,下請取引のルールを正しく理解していただき,下請取引の一層の適正化が図られることを期待しております。
私から,以上でございます。
質疑応答
(問) アメリカの司法省がIT大手のグーグルに対して,反トラスト法の疑いで提訴したというニュースを受けて,連日,こういうような動きがアメリカで加速する中で,日本として,公正取引委員会として,今後,例えば,そういう政策面で行くのか,それとも審査面で行くのかとか,何かしらの受け止めと今後の御対応について,思うところがあれば教えてください。
(事務総長) もう既にいろいろ報道されておりますけれども,グーグルが,スマートフォン製造業者等との間で,競合する検索サービスの初期搭載,プレインストールを禁止する独占契約を締結したこと,その他幾つか挙げられておりますけれども,それがシャーマン法の第2条の独占化行為の禁止というものに違反するということで,司法省が地方裁判所に提訴したということであります。これはアメリカでの事件で,かつ司法省が関係している事件ということで,しかも,まだ提訴したばかりということでございますので,何かコメントするという立場でも状況でもないかと思いますけれども,公正取引委員会は,このデジタル分野についてはずっと関心を持って見ておりまして,アメリカやヨーロッパ,その他の国々でのこういう事案についても情報収集を行ってきているところでございます。
今後,裁判所において審理されるということと思いますので,今後の訴訟の進行と,そこで主張される,司法省なりグーグルなりのそれぞれの主張など,そういうものをしっかり,その動向を見ていきたいというふうに考えております。
(問) 各種メディアに載っている話ですけれども,古谷新委員長が各社のインタビューに対して,携帯市場の販売,契約慣行に問題ないかについて,実態調査の実施を検討しているということをお答えになられています。今,現状として,どういった検討段階にあるのかなど,もし,決まっていることなどありましたら,お聞かせください。
(事務総長) 検討しているという状況が特に変わっているわけではないわけですけれども,皆様も御承知のとおり,この携帯電話市場につきましては,平成30年度,公正取引委員会で調査しておりますけれども,その後,通信料金と端末代金の完全分離等を内容とする改正電気通信事業法も施行されておりますし,また,今年の4月には,楽天モバイルが参入し,また最近,5Gサービスの提供開始とか,そういういろいろ競争環境に変化が生じてきておりますので,この平成30年度の調査のフォローアップとなる実態調査の実施を,まさに今,検討しているところでございます。
ただ,検討中でございますので,具体的な調査の実施時期とか内容,そうしたことは,まだ未定ということでございますので,現段階では,それ以上申し上げることはないという状況でございます。
(問) 最初のアメリカの司法省の質問に関連することなんですけれども,公正取引委員会においては,デジタル広告の調査を継続しているかと思うんですが,まず第一に,この調査に何らかの影響を与えることはあるんですか。
(事務総長) 今,お話にありました,デジタル広告の取引実態の調査については,これを4月に中間報告して以降も,引き続き調査継続中ということでありまして,その中では,海外での訴訟や動向,そうしたものも把握しながら行ってきておりますので,今,御指摘にあった司法省の提訴については,これも担当部局でしっかりとフォローした上で,調査に反映できるものは反映していくということになろうかと考えております。
(問) それに関連して,もう一つなんですが,公正取引委員会は日本における検索市場そのものを問題にしたことは今までなかったのかなと思うんですが,先ほどのデジタル広告市場のアンケートの中では,グーグルと,あとヤフーが検索の中でのプレーヤーとして挙げられていると思いますが,この2つは競争していると御覧になっているんですか。それとも,10年前に公正取引委員会が了承したことを受けて,ヤフーはグーグルから検索エンジンの提供を受けているわけですけれども,日本の検索市場において,グーグルは支配的な地位を持っているという認識をお持ちなんですか。
(事務総長) 今の御質問ですが,個別具体的な状況についての公正取引委員会の事実認定や判断というようなことを私がお答えするような内容になってしまいますので,ちょっと今ここでお答えするというのは,なかなか難しいかと思います。今後,実態調査を行っていきますので,今,御指摘のような点について,結果報告書に出てくるかどうか分かりませんが,ちょっと今,お答えはなかなか難しいかと思います。
(問) 携帯電話市場の調査を検討されているという話ですが,市場環境が前回調査から変わってきたという言及がありましたが,携帯電話市場の現状を俯瞰して見たとき,どのような分析をしているのでしょうか。
(事務総長) まさに今,どう見ているかということは,調査をしていった結果として出てくるということかと思いますので,これも私が今,申し上げるのはなかなか難しいと思いますが,この平成30年の調査の後に,中古携帯端末の流通実態の調査というのも行っておりますけれども,そのときも,改正電気通信事業法が施行されることによっていろいろ状況は変わるだろうから,その状況が変わって以降,必要があれば,更に調べるということもあるかもしれないということを,当時,言っていたかと思います。そういうことで,先ほど挙げたような,法律が変わることによって制度も変わっておりますし,また,特に新規参入があるというのは市場の大きな変化でございますし,新たなサービスが始まるというのも大きな変化ですので,変化していることは間違いないと思います。その変化が,平成30年度に実施した調査で指摘したような,競争上の問題の解消に向けていい方向になっているのか,なってないのかということが,公正取引委員会にとって,通常,考える関心事でございますので,そういった点を含めて,今後,実態調査の実施をするかどうか,また,具体的実施内容について担当のほうで検討を進めているということと理解しております。
(問) 米司法省のグーグル提訴に関連して,1つ追加で質問がございます。この提訴に関連して,グーグルの事業分割という話も出ておりますけども,日本の公正取引委員会が独禁法に基づいて事業分割を求めるということは可能なんでしょうか。
(事務総長) まず,私が今,認識しているところで言いますと,アメリカ司法省のこの提訴の内容,出たばっかりですので,私だけじゃなく,担当も含めて完全に承知しているわけではないんですけれども,少なくとも裁判所に司法省が出した文書によると,構造的な措置については具体的に何かああしろと言っているわけではなくて,単に反競争的な弊害を解消するために,必要に応じて構造的な措置を講じることというようなことを一文で言っているだけのようでございますので,アメリカ側でも,この構造的な措置ということについて,どこまで,何を考えているのかということは,今後になってみないと分からないということかと思います。
日本の法律でいえば,1つは独占的状態の規制というのがありますけれども,これはかなり要件が厳しくて,今まで一度も発動されたことがないものでございます。また,競争制限的な行為を排除するために必要な措置を採るということで,法律上は,事業譲渡とかということも否定はされていないということであります。ただ,実際にそういうことが発動された例が頻繁にあるかというと,そういうことは決してなく,今まであった,なかったと言ったら,多分,なかったような記憶です。あくまで法律の規定としては,そういうことということでございます。
(問) 法律に基づけば可能ですけども,前例は,少なくともこういう目立つ大きな企業の案件ではないということで解釈をしますけども,仮に本件,個別事案ではないとしても,大きな企業の分割を求める場合があるとしたら,即座に措置を求めるというよりかは,いったん調査をして実態を見るということになるんでしょうか。
(事務総長) まず独占禁止法に違反する疑い,どれかの規定に当たる疑いというのがまずあって,その疑いに基づいて必要な調査を行って,事実を認定し,通常であれば,違反行為をやめるように命じるということで問題は解消するわけです。その行為をやめなさいということでは問題が解消しないぐらいのことがあって,そのためには事業譲渡とかしないと,もう問題解決しないというような,ある意味,そういう究極的な場合にそういう措置が出てくるというものです。理論的には可能だということですけども,今,お話ししたような話ですので,これまでも実際は具体的な問題行為をやめさせるということで,問題は基本的には解決しているということかと思います。
(問) 追加ですみません。携帯市場の調査についてなんですけども,市場環境が変わったということで,端末のことだけではなくって,今,欧米で問題になっているアプリ市場におけるアップストアの問題だとか,そういったことも視野に入っていると理解していいんでしょうか。
(事務総長) 具体的な内容を検討中でございますので,何とも申し上げられる内容があまりないんですけど,ただ今ご指摘のあったアプリストアの話というのは,既にプラットフォーマー実態調査で調べて結果を公表しておりますので,調査の検討対象には多分,入っていないんじゃないかなと思います。
(問) 携帯の実態調査なんですけれども,古谷委員長は,料金引下げができる環境作りにも貢献できればという趣旨の発言をされておりますけれども,調査の主たる目的というのは,競争環境の実態が,今どうなっているのかということかと思うんですが,結果的に値下げにつながればというお気持ちも,ここには入ってくるんでしょうか。
(事務総長) まさに,独占禁止法に違反する行為があれば,具体的事件として対処しますし,そうでなくても,公正な競争環境の整備については,携帯電話市場についてずっと関心があります。その公正な競争環境の整備という観点から,問題がある点等をこれまで実態調査で指摘しておりまして,そういう点が改善されて,公正な競争環境が整備されれば,その結果として,何と言いますか,消費者にとってお手頃な価格,よいサービスというふうに,よりいい方向に進んでいくという効果や結果が期待されるというのが,競争政策・独占禁止法の考え方ですので,あくまで公正な競争環境が整備される,そうすると,その後にそういう結果がついてくるということかなというふうに考えております。
以上